共感力が高過ぎて疲れるエンパスとは?セルフチェックや特徴、対処法とは

「人付き合いが苦手」「人と会った後、体調が悪くなる」と感じることはありませんか? その理由は「エンパス」という言葉も話題の共感力にあるのかも!そこで人の話を聞くプロである公認心理士の近江亜佳里さんに話を聞きました。
目次
世界中に5人に1人いるエンパスとは
最近、にわかに話題になっているエンパスとはどんな人のことなのでしょう。
エンパスの第一人者であるロサンゼルスの精神科医であるジュデイス・オルロフ医師は、著書『LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまう人がなくなる本』(SBクリエイティブ)の中で、エンパスを下記のように定義しています。
エンパスとは、神経系が極端に敏感で、反応する力が人よりも強い人たちのこと。一般的に人は、他者の行動や感情から影響を受け過ぎないように、外からの刺激をある程度ブロックできるようになっているのだが、エンパスはその防御力が極端に弱い。その結果、周りのポジティブなエネルギーも、ストレスの大きいエネルギーも、すべて吸収してしまう。
引用元:『LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまう人がなくなる本』(SBクリエイティブ)
また、エンパスであることは日常で次のようなことになりやすいそうです。
- 疲れやすい
- 依存症になりやすい
- 問題のあるパートナーを選びやすい
- 子育ての責任に押しつぶれされやすい
- 仕事環境に左右されやすい
- 特殊な知覚能力をもちやすい
共感できる人も多いのではないでしょうか。
特に、子育ての責任に押しつぶされやすい理由は、子どもの感情や苦痛を自分のことのように感じてしまうからなのだそう。
ジュデイス・オルロフ医師は、「子育てはエンパスにとって大きな脅威である」としながら、同著の中でストレスを軽減するための対策として、「過干渉(ヘリコプターペアレント)にならない」「子どもに対しての境界線を決める」などのアドバイスをしています。
<ヘリコプターペアレントについての記事はこちら>
ヘリコプターペアレントとは?特徴と事例、予防策を解説
エンパスとHSPの違いとは
繊細で敏感な気質といえば、HSPやHSCを思い浮かべる人もいますよね。エンパスとHSP・HSCは何が違うのでしょうか。
ジュディス・オルロフ医師は、同著の中でエンパスとHSPは共通している点が多く、エンパスとHSPの性質が重なっている人もいるとしながらも下記のように書いています。
エンパスはHSPをさらに敏感にした人たちだ。~中略~ エンパスはよく、他者の不快感と、自分の不快感の区別がつかなくなる。
引用元:『LAの人気精神科医が教える 共感力が高すぎて疲れてしまう人がなくなる本』(SBクリエイティブ)
明確な違いがあるというよりも、エンパスのほうが周囲の影響をより受けやすい人のことのようです。
<HSP/HSCについての記事はこちら>
HSCの10の特徴を知れば、接し方や対応が理解しやすくなる
人の影響を受け過ぎて疲れやすい人とは
エンパスは、生まれながらの気質とされていますが、エンパスかどうか分からないけれど、人と会うと心身の調子が悪くなる、エネルギーを消耗したりする人もいるのではないでしょうか。
共感し過ぎて疲れやすいタイプの人について、公認心理師でカウンセラーの近江亜佳里さんは、次のように話します。
「自分の気持ちはさておき、周りの人の気持ちを優先したり、嫌な気持ちになっていないかと気遣ったりする人は共感力が高いと思います。
ですが、相手の話に対して『何とかしてあげたい』『全力で受け止めてあげたい』と思いすぎてしまう人は、結果的に受け止めきれることができなかった場合に余計に疲れてしまう(共感疲れをする)傾向があると思います」
共感する気持ちの根本にあるのは、相手への優しさですが、その思いがうまく機能せずに“共感疲れ”につながっているのかもしれません。
共感力をセルフチェックしよう
近江さんの話を基に、”共感疲れ”をしやすい人の特徴をチェックリストにしてみました。当てはまる部分が多い人は、共感疲れをしやすい傾向にあります。チェックしてみてくださいね。
共感疲れチェックリスト
- 自分の気持ちより他人の気持ちを優先してしまう
- 一緒にいる人が嫌な思いをしていないか非常に気になる
- 人がストレスを感じていると何とかしてあげたいと思う
- 相談してくれる人には全力で応えたい
- コンプレックスが強い
- 小説やマンガなどの創作物にも感情移入しやすい
- SNSなどで見た他人の経験を自分の事のように感じてしまう
- 過去のこと(人の言動など)をよく覚えている
- 協調性が高すぎる
- 探究心が強すぎる
- ガマンすることに慣れている
- 頑張り屋さんで生真面目
いかがでしたか?
上記の特徴は、それぞれが切り離されたものではありません。
例えば、コンプレックスが強い人は、小説やマンガなどの創作物やSNS上の他人の経験に自分のネガティブな思い出や感情を載せてしまいすぎることもあります。さらに、記憶力が良く過去のことを細かく覚えている人は、相手に共感する要素が人よりも多くなり身体も心も疲れやすくなります。
また、自分に期待される役割をキチンと果たそうという気持ちがある生真面目な性格の人は、自分の気持ちを押し殺して(ガマンをして)でも周囲の気持ちや目的を優先させるので結果的に疲弊してしまいます。
あなたの悩み・つらさをカウンセラーに相談できます
ソクラテスのたまごの姉妹サービス「ソクたま相談室」なら、オンライン上でカウンセラーに悩みを相談できます。
相談相手を探してみる
共感疲れには体調管理も重要
ここまで共感疲れをしやすい人のタイプについて説明してきましたが、近江さんは、「人に共感すること自体は悪いことではありません」と話します。
「共感する点がポジティブなことなら、共感しても疲れることはないと思います。むしろ、元気をもらえることでしょう。ですが、ネガティブなことに共感していると、相手や周囲が抱えているストレスも一緒に吸収をしてしまうことで疲れてしまうのです」
では、ポジティブな話にだけ気を配るようにすればいいかというとそうではありません。
「例えば、ママ友と話していて、相手にとっては『うちの子にこんなに良いことがあってね』というポジティブな話でも、聞く側が『うちの子はダメだ』と思うなど、自分の中のネガティブな感情や思い出を引っ張ってきてしまうと疲れてしまいますよね。共感しているように見えて、相手の話を自分の話にすり替えてしまって疲れているパターンです」
共感疲れの原因は、自分の中にあるのかもしれません。では、どうすればいいのでしょうか。
「ネガティブな気持ちや思い出を載せてしまうのは、本人の性格や気質だけによるものではありません。その日の天候や体調、ホルモンバランスの変化など、自分ではコントロールしにくい要素も関わっています。元々、共感力が高過ぎる人の中でも、『今日は疲れてしまうけれど明日は大丈夫』など、疲れる度合いの差はあると思います」

共感疲れしないための4つの方法
もともと、共感力が高すぎる人でも疲れないためにできることはあります。まずは次の4つを意識して行ってみてはいかがでしょうか。
【方法①】他人を丸ごと受けとめようとしない
普段は、カウンセラーとしてさまざまな親子と向き合っている近江さんですが、自身もクライエントの感情や事情に振り回されてしまった経験があります。
「やはり、どんな人間でも他人の人生を丸ごと受け止めて、一緒に歩んでいくことはできないんですよね。自分の役割や許容範囲を超えて、『どうにかしてあげたい』という気持ちが強すぎると、しんどくなってしまいます。自分ができることとできないことは分けて考えなければいけません」
相手のことを100%分かることも、人生を背負うこともできないという割り切りは必要のようです。
【方法②】体調に合わせてスケジュールをずらす
前述の通り、共感疲れにはその日のコンディションが大きく影響します。そのため、「今日はネガティブ思考に陥りそうだな」「自分にゆとりがないな」という人は予定を変えてもらうのも一つの手です。
「共感力が高い人は、自分よりも相手を大切にしやすい傾向があるので、難しいことかもしれませんが、お互いにとっていいことだと思って、自分のコンディションにも気を配ってくださいね」
最近は、LINEなどで突発的に話を打ち明けられることもありますが、その場合も、返信することでネガティブ思考に陥りそうであれば、「今、手が離せないことがあるのだけど、きちんと返信したいから、改めて返信するね」など、真摯に気持ちを伝えながら、タイミングを調整するのもいいですね。
<ほかにもママ友づきあいについての記事はこちら>
ママ友がいないとダメ?子どもに影響はある?小学校でのママ友の作り方
【方法③】自分の気持ちを紙に書き出す
「人と会ったり、話を聞いたりして疲れたな、落ち込んでいるなというときはあえて、自分の気持ちと向き合い考える時間を作りましょう」
例えば、つらい気持ちを紙に書き出して、なぜそう感じているのかなど、過去の経験なども紐づかせて考えていくと気持ちを整理しやすくなるそう。
「もし、考えるのもつらいなら、目を閉じて横になるなど、意識して自分を休ませる時間をつくってください。もし、そのまま眠れるなら寝てください。睡眠や栄養は心を整えるために必要なものです。実際に睡眠時間をたっぷりとって、朝、日光をいっぱい浴びるだけでも気持ちは変わります。
また、寝ている間に脳は記憶を整理するので、起きた時にちょっとスッキリしているはず。もし、昨日の話についてもう1回考えたかったら考えればいいし、忘れてしまえるのであれば考えなくていいですよ」
【方法④】スイッチをオフにする行動を
眠ること以外にも、お風呂に入ったり、好きなものを食べたりなど、気持ちを切りかえる行動をするのもいいそう。
「疲れているときやしんどいときは、自分を休ませて、甘やかしていいんです。ストレスや感情はコップの中の水ようなもので、増えすぎて溢れかえってしまうと疲れてしまいます。常にコップの水が低い位置でキープできていれば、人と会ったり話を聞いたりしたストレスで水が注ぎ込まれても溢れることはありません。
だからこそ、つらいとき、しんどいときだけでなく、自分を整えるためにスイッチをオフにする行動は常日頃から重要ですよ。頑張り過ぎないでくださいね」
特に、他人への共感であれば、会わない時間も多いので切りかえやすいですが、家族への共感となるとそうはいきません。長期戦で向き合わねばいけない人間関係なので、スイッチをオフにする行動でこまめに心を休ませることが重要になるそうです。
あなたの悩み・つらさをカウンセラーに相談できます
ソクラテスのたまごの姉妹サービス「ソクたま相談室」なら、オンライン上でカウンセラーに悩みを相談できます。
相談相手を探してみる
共感できることはひとつの才能
今回の記事では、共感することがネガティブに捉えられがちですが、近江さんは「他人のことを大切に思い、共感することができるのは、誰にでもできることではありません。すごいことですよ」と話します。
「例えば、相手のネガティブな気持ちに寄り添って、相手のつらさをイメージする背景には自身のつらい思い出や経験があるからだと思います。だから、周りの人の話を聞いて疲れ過ぎる自分に対してダメだなんて思う必要はまったくありません。共感できることはあなたの良さなんだと思ってくださいね」
今回の記事で紹介したような対策を試してみたり、必要があれば誰かに相談して”共感できるあなたの強み”とうまく付き合えるようになっていくはずです。
「相談相手には、私たちのようなカウンセラーもいます。気持ちのコントロール法を一緒に考えるだけでなく、抱えている気持ちや考えがうまく話せなくて、『とにかくしんどいです』という段階からお話を聞いていくこともできます。せひ、気軽に相談してくださいね」

エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。