HSCの10の特徴を知れば、接し方や対応が理解しやすくなる
HSCとは、敏感で繊細、感受性が高いなどの気質を生まれ持つ子のこと。「あなたはあなたでいい」と、感じ方が肯定されている安心感があると、その子の良さが発揮されます。今回は、HSCについての理解をより深め、肯定的に受け止められるよう、HSCの特徴や、その子に合った接し方、対応のポイントをお伝えします。
HSCについてより詳しく理解するために
以下の記事で、子どもがHSCなのかということを知るには、HSCの提唱者であり「ひといちばい敏感な子」の著者であるエレイン・N・アーロン博士による23のチェックリストでチェックできることを紹介しました。
【HSC】セルフチェックも紹介 敏感で繊細…5人に1人が当てはまるHSCとは
そして、前回の記事では、HSCの性質である4つの面として「DOES」があること、それらの特徴についてはこちらの記事で紹介しました。
【HSC/HSP】子どもの気持ちに寄り添えるように… 4つの性質である「DOES」を知ろう
では、HSCの特徴には具体的にどのようなものがあるのでしょうか。
今回の記事では、HSCについて、より詳しく理解するために、自らもHSPである斎藤裕医師により、臨床経験や、HSCと関連があるとされる書物や資料をもとに研究・分析を重ねて作成された「HSCの10の特徴」について解説していきます。
自らもHSPの医師が作成した「HSCの10の特徴」
それでは、まずは「HSCの10の特徴」を紹介していきましょう。HSCには、具体的に次のような特徴が見られます。
①刺激に対して敏感
- 音・光・痛み・かゆみ・肌ざわり・暑さ寒さ・空腹などに敏感に反応しやすい。
- 細かいことに気がつく(ささいな刺激でも感知する)。
②刺激を受けやすく、疲れやすい
- 過剰に刺激を受けやすく、それに圧倒されると、落ち着きがなくなる、物事がうまくできなくなるといった状態になりやすく、人より早く疲労を感じてしまったりする。
- 人の集まる場所や騒がしいところが苦手である。
③慎重に行動する
- 目の前の状況をじっくりと観察し、情報を過去の記憶と照らし合わせて安全かどうか確認するなど、情報を徹底的に処理してから行動する。そのため、行動を起こすのに時間がかかりやすい。
- 刺激に慣れにくく、新しい刺激や変化を好まない。
④共感する能力が高い
- 人の気持ちに寄り添って深く思いやる力や、人の気持ちを読み取る力など“共感する能力”に秀でている。
- 細かな配慮ができる。
⑤人との境界線が薄いことが多い
- 他人の影響を受けやすい。
- 他人のネガティブな気持ちや感情を受け取りやすい。
⑥鋭い感性や深みのある考えを持つ
- 直感力に優れている。
- 漂っている空気や気配・雰囲気などから、素早くその意味や苦手な空間・人などを感じ取る。
- 物事の本質を見抜くことがある。
- 思慮深く、物事を深く考える傾向にある。
- 差別や権力・支配を嫌う。
⑦内面の世界に意識が向いていて、豊かなイマジネーションを持つ
- 想像性・芸術性に優れている。
- クリエイティブ(創造的)な仕事に向いている。
⑧人との深いつながりや主体的に生きることを好む
- 自分が交流を深めたい相手を選び、その相手と同じことを共有し、深いところでつながって共感し合えるようなコミュニケーションを好む傾向にある。
- (やりたくないことを)やらされたり、観察されたり、管理されたり、評価されたり、急かされたり、競争させられたりすることを嫌う傾向にある。
⑨自己肯定感が育ちにくい
- 外向性を重要視する学校や社会の中で、求められることを苦手に感じることが多く、人と比較したり、うまくいかなかったりした場合に自信を失いやすい。
⑩自分の気質に合わないことに対して、ストレス反応が表れやすい
- 様々な形での行動や症状としての反応が表れる。(「落ち着きがなくなる」「固まる」「泣きやすい」「言葉遣いや態度が乱暴になる」「便秘」「不眠」「発熱」「頭痛」「吐き気」「腹痛」「じんましん」など)
- 人のささいな言葉や態度に傷つきやすく、小さな出来事でもトラウマとなりやすい。
※HSCには個人差があり、当てはまるものや、その反応の強さ・弱さは、人によって異なります。またこれはHSCの目立って見られる傾向に焦点を合わせて記しており、HSS・HNS*のそれについては触れていません。
*HSS(High Sensation Seeking=刺激追究型)・HNS(High Novelty Seeking=新奇追究型)=強い好奇心を持つ遺伝的気質のこと。
<共感力が高過ぎるエンパスについての記事はこちら>
共感力が高過ぎて疲れるエンパスとは?セルフチェックや対処法を紹介
HSCに合った接し方や対応のポイント
では、「HSCの10の特徴」を踏まえて、実際にHSCと接する時には、どのように対応することが好ましいのでしょうか?
干渉しない
- 指示や口出しをせずに、できるだけ見守る。
- パターナリズム的な干渉を控える。
(パターナリズム=強い立場にある者が、弱い立場にある者に対して、あなたのためになると言って、本人の意志に関係なく受け入れさせていく干渉的関わりのこと)
無理強いをしない
- 急かさない。圧力を加えない。叱らない。HSCは話して聞かせるだけで十分である。
その子のやり方やペースを尊重する
- ほかの子に合わせたり、ほかの子ができているからということを基準にするのではなく、その子が好むものを“選ぶ”、その子がやり出すまで“待つ”という姿勢を意識する。
- 初めてのことで、まだ不安や恐怖心が存在している時に無理強いすると、子どもにトラウマを抱えさせてしまうことがあるため、好奇心が恐怖心を上回り、その子の自発的な意志でやり出すまでじっと待つことを心がける。
ほかの子と比べたりしない
- 周りの子やきょうだいなどと比べない。否定的な言葉を使わないようにする。
避難場所をつくっておく
- 保育園や幼稚園、学校、そのほかにも子どもが苦手とするような場所では、いざという時にその場から離れて落ち着ける〝避難場所〟を確保できると安心。
早めに休ませる
- 刺激を受けすぎて疲れやすく、ストレスに対する反応が出やすいため、疲労が溜まらないうちに早めに休憩を取る。
共感し、子どもの気持ちを代わりに言葉にして語りかける
- 悔しかったこと、嫌だったこと、怖かったことなどに対して感じた、その時の気持ちを受け止める。うまく言葉にできないうちは、泣くことで解放できるようにすることも大事。
- その時も泣き叫んでいる子に「うまくできなくて悔しかったんだね」「こういうところが嫌だったんだね」「こんなことされたから怖かったんだね」と語りかけ、その子の気持ちを代弁するなど、焦らず見守ってあげると、徐々に落ち着いてきて元気になることが多い。
- 実際、子どもは自分の気持ちにぴったりと合う言葉がけをしてもらうと、不思議なくらいに興奮がおさまったりする。
苦手なものから距離を置けるよう工夫する
- 苦手な場所・苦手なこと・苦手な人を子どもとともに確認して、苦手なものから距離を置けるよう工夫する。あらかじめ苦手であろうことには近づかないか、後回しにするなど、事前に打合せをしておく。
いかがでしたか。
HSCの特徴をよく理解できていると、HSCに表れる反応や態度、言葉の根拠がわかりやすくなるため、否定せずに受け止められる機会が増えるのではないかと思います。
敏感といっても、どのようなことに、どの程度敏感であるかなどは、個々で違います。特に当てはまる特徴や、お子さんに合った接し方・対応が見つかりますように!
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<参考文献>
「ひといちばい敏感な子」エレイン・N・アーロン著 明橋大二訳(一万年堂出版)
「敏感すぎる自分を好きになれる本」長沼睦雄著(青春出版社)
「過敏で傷つきやすい人たち:HSPの真実と克服への道」岡田尊司著(幻冬舎新書)
「ちゃんと泣ける子に育てよう:親には子どもの感情を育てる義務がある」大河原美以著(河出書房新社)
「HSCを守りたい」斎藤暁子著(風鳴舎)
「敏感な子の守りかた絵本」斎藤暁子著 斎藤裕監修(アート印刷)
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