【HSC/HSPの夏休み】“つらい”ではなく“楽しい”思い出づくりのために気を付けたいこと
旅行やワークショップなど、「夏休みは、いろんな体験をさせてあげたい」と思う保護者は多いですよね。しかし、中には他の子や家族にとっては楽しいことでも、人知れずつらいと感じる子がいます。そこで、敏感で繊細な気質を生まれ持つ子ども(HSC)の認知、理解を深める活動を
行う「HSC子育てラボ」が、繊細さんが快適に過ごすために心がけたいことを解説します。
目次
HSCの夏休みにありがちなつらいこと
みなさんは、夏休みにはどのような思い出がありますか?
家族旅行、海、山、プール、キャンプ、お祭り、花火大会、親戚の集まり、お盆など、毎年の恒例行事もあったかもしれません。もちろん、家で何もせず過ごしたり、宿題に追われたりした、という思い出もあるかもしれません。
では、それらの思い出は、楽しく充実したものだったでしょうか。
HSPからHSCだった子ども時代の話を聞くと、
本当は…
「たくさんの人の集まりに交じるのが苦痛でつらかった」
「キャンプのようなアウトドアが苦手で楽しめなかった」
「お泊りは楽しみなのに、前日になると、お泊りで眠れなかったらどうしようと不安になって眠れず苦しかった」
「お祭りや花火大会の人混みや大きな音が苦痛すぎた」
「学童・塾が嫌でたまらず、家でゆっくり過ごしたかった」
といった本音を表に出すことができず、実はガマンをしていたという話をよく耳にします。
このような本音は、HSCの気持ちを受け止める接し方を知るための助けになります。
HSCの本音を聞き出すために気を付けたいことは?
HSCといっても、タイプや個性はさまざまです。しかし、相手の気持ちを鋭く察知するHSCは、親の望みや期待も感じ取り、親を困らせてしまうような本音は表に出さず、自分の中に閉じ込めて頑張ることが多くなりがちです。
HSCから“本当の気持ち”を聞き出すためには、“急かさず・決めつけず・根掘り葉掘り聞かず”がルール。お互いに落ち着いた状態の時に、ゆったりしたトーンで話すようにしましょう。
そして、保護者のほうが“本当に気持ちを聞いて尊重したい”という意思を示すことも大切です。
さらに、
- 否定しない
- 子どものペースに合わせる
- 気質や好み、感覚を信じて受け入れる
- 何かを決める時は、子どもにも平等に選ぶ権利がある
- 必要に応じて、親が周りの人に説明(代弁)をして理解を得る
といった意識をしっかり持っておくと、HSCはその心強さを感じ取って、本音を出しやすくなりますよ。
HSCの良さを引き出す接し方のポイント
HSCは、人との関係や環境の影響を強く受けます。
また、感受性が強く、ごまかしが効かない子ほど、好き嫌いがはっきりしていて、やりたくないことをやらされると、ストレスを強く受け、その子の良さが表に出てきません。無理強いしても悪循環になります。
反対に、HSCの感覚を信じ、気持ちやペースを尊重すること、大切に丁寧に対応することは、決して甘やかしではありません。
その子が心地よいと感じ、安心できることで、HSCの持つ、共感的で思いやりがあり、創造力に溢れるといった良さが出て、好循環がもたらされるのです。
もし、お子さんが、計画されていたお出かけに対して「本当は行きたくない」などといった本音を伝えてくれたら、それは、家族の信頼関係をしっかりと築くチャンスだと思ってください。
夫婦で話し合っておきたいHSCとの接し方
ただし、お父さんとお母さんの価値観や受け止め方が異なると、子どもは混乱し、「本音を話すと自分のせいで家の空気が悪くなる」と思ってしまいます。子どもの気質についての知識、接し方のポイントを、夫婦で共有して協力し合うことも大切です。接し方のポイントは次の通りです。
夫婦の共有ポイント
- 否定せず受け止める
- 干渉しない
- 無理強いをしない
- その子のやり方やペースを尊重する
- コントロールしない
- 共感・共有する
- 苦手な人・ものから距離を置けるよう工夫する
- 早めに、こまめに休憩を取る
「ひとり時間がなくてツライ!」HSPの夏休み
夏休みに苦労を感じるのは、HSCだけではありません。保護者がHSP場合、疲れやすく、人一倍ひとりの時間が必要な人が多いもの。子どもが自宅にいる夏休みには自分自身の心身のケアが重要になります。
とはいえ、子どもが幼いほど、自分の時間を確保することが難しいのが実情です。これに関しては、HSC概念の提唱者であるアーロン博士の著書「ひといちばい敏感な子」にある下記の言葉が印象的です。
しばらくは、自分のための時間を時間はあきらめなくてはなりません。他の人はそうしなくても生きていけます。HSPも、少しの間ならできるのですが、やがてつらくなっていきます。
「ひといちばい敏感な子」アーロン,エレイン・N.(1万年堂出版)
つまり、子どもの年齢や状況に応じて、“子どもの感情を優先する”ということへの覚悟を持ちつつ、つらくなる状況への解決策を模索し、工夫をすることで、子どもと落ち着いて向き合える機会を増やせるのではないかと捉えています。
では、実際にはどうすればよいのでしょう。具体的な解決策をいくつか紹介します。
- 伴侶の理解と協力を得る。または誰かのサポートを得る
- 完璧を手放して、やらないことを増やす
- 自分の時間が持てたら、自分のために有意義に使えるよう工夫する
- 負の感情は溜めず、書くなどして外に出す
- 話す(夫婦、お茶会、コミュニティ、カウンセリングなど)
感じ方の違いを把握して心地よく過ごす
筆者の子ども(HSC)は7歳の時、楽しみにして行ったテーマパークで、人の多さや待ち時間の長さ、賑やかさに圧倒されて心が折れ、早々に引き上げたことがあります。
本人は帰り際に、ショップで大好きなぬいぐるみを買って満足し、ホテルの部屋に戻って休憩したらケロッとしていました。
もし、私が子どもの気質がわからず、存分に楽しみを共有できることをとても期待していたらどうでしょう? とてもがっかりしてしまっていたと思います。
保護者は、つい自分が子どもの頃と同じ感じ方を子どもに当てはめてしまいそうになりますが、感じ方も、その強弱も、敏感に反応する対象もひとり一人違います。
敏感で繊細、感受性が高いHSCの子育てでは、子どもの気質を把握し、その子(家族)に合った対応策を掴むことで空回りや悪循環、落胆を少なくすることができます。
家族全員が心地よい思い出の残る夏休みにできるよう、それぞれの感じ方を把握して尊重し、無理せず過ごしてくださいね。
<参考文献>
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