2020.02.06

児童精神科医に質問/HSCのセルフチェック 結果をどう生かしていけばいいの?

人一倍敏感で共感性の高い子どもを指すHSC。5人に1人はあてはまると言われており、「うちの子、HSCかも?」と思ったときにネット上で試せるのが、HSCのセルフチェックです。しかし、このような自己診断はどう扱えばよいのでしょうか? まえまえ先生こと精神科医の前田佳宏さんに話を聞きました。

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セルフチェックはあくまで主観によるもの

HSCのセルフチェックで代表的なものといえば、HSC/HSPの提唱者であるアーロン博士による下記のセルフテストです。

http://hspjk.life.coocan.jp/selftest-hsc.html

 

しかし、セルフチェックってどう捉えていけばよいのでしょう。

 

「そもそも、セルフチェック(自己診断)と医師や心理士などの専門家による診断の違いは、主観によるものかどうか」そう話すのは精神科医の前田さん。PTSD、HSP、愛着トラウマなどを専門に家族のケアにあたっています。

 

「セルフチェックは、主観が入ってしまいます。質問の内容にどの程度当てはまれば“YES”とするのか、その境目は『うちの子はHSCかもしれない』と思って行うのか、それとも『HSCではないだろうな』と思って行うのかによっても変わるものだと思います。つまり、当てはまる項目が多いからといって『うちの子はHSCに違いない!』と断定したり、当てはまる項目の多さでHSC傾向の強さを測ったりできるものではありません。『うちの子には、HSCの傾向があるのかもしれない』ということが分かる程度のものだと考えてよいでしょう」

 

確かにセルフチェックを行う際は、結果をなんとなく予想しながら行ってしまう人が多いはず。さらに、「大事なのは、傾向があると知ったことをどう生かしていくのかということです」と前田さん。

 

 

なぜセルフチェックを行ったのかを考えよう

「そもそも、チェックリストを行ったのは、何か気がかりなことや困りごとがあったからではないでしょうか。『HSC傾向がある』と分かったからといって、そのことが解決するわけではないですよね。

 

もし、チェックリストをした理由が、わが子の育てづらさにあるのであれば、HSC傾向があると分かっただけで子どもを分析したり、理解したりすることに役立つはずです。HSCの特徴に疲れやすいというものがありますが、『うちの子は疲れやすい傾向があるから、疲れたときにどう対処していこうか。疲れない環境をどう作っていこうか』など、わが子に合った付き合い方を考える助けになると思います」

 

では、子ども自身が「自分はほかの子と何か違う」「どうにかして周りに合わせなければ」と苦しんでいる場合はどうでしょうか。

 

「HSC傾向があることが分かって、『ああ、自分みたいな子(HSC)はいっぱいいるんだ。こういう特性があってもいいんだ』と思えるのであればいいですが、もし、HSC傾向があるということを知ったうえで、実際にある“困りごと”や“できないこと”を改善していきたいと思うのであれば、医師や心理士などの専門家へ相談に行くことをおすすめします」

 

 

 

HSCを医師に相談してもいいの?

しかし、HSCは病気ではありません。医師に相談していいものなのかも悩んでしまうところです。そもそも何と言って相談すればよいのでしょうか。

 

「HSCは精神医学の病名ではないので、『うちの子はHSCなのでしょうか? 治してください』と言われても医師は困ってしまいます。受診をするなら、どういうことに困っているのか、どういうことで悩んでいるのかということを伝えてください。HSCについて伝えるのであれば、『うちの子はHSC傾向があるようです』ということをお子さんの情報として加えてもいいですが、すべての医師がHSCを理解しているわけではないのが現状です」

 

「また、HSCは病名ではないので、ストレスを受けやすく生活に支障が表れている人として適応障害と診断されるかもしれません。その場合、認知行動療法などを用いて治療をしていくケースが多いと思います。また、HSC傾向があり強いストレスを受けて二次障害(うつ病、精神症状、問題行動)が出ている場合は、症状に対して治療をしていくことになるでしょう」

 

さらに、HSP/HSCも専門分野とする前田さんの場合、神経系を落ち着かせる最新の治療をHSP・HSCに対して取り入れらることもあるそう。

 

「『ソマティック・エクスペリエンシング(※)』という治療法や箱庭セラピーなど、体が過剰に反応してしまう事に対して、反応をうまく自分でコントロールできるようにしていくという治療です」

 

「最近ではHSP・HSCは愛着のトラウマと関係があるのではないかという見方もあり、過去に“親など重要な他者の顔色を繊細に伺わないと生きていけない”と感じてきたことなどの影響があるのではないかと。ただし、これは、親が何かをしたとか、愛情が足りなかったということではなく、たまたま、子どもが親にいて欲しいと思ったときにいなかったりとか、親が病気になったのを自分のせいに思っていたり、という場合もあります」

 

※ソマティック・エクスペリエンシング…身体の感覚に働きかけ、自律神経を整えて自己治癒力を高め、過去のトラウマによるさまざまな辛い症状を和らげる治療法のこと

 

 

 

セルフチェックをするときの注意点

最後に「病名や診断結果を過剰に捉えてしまうことにも気を付けたほうがいいですね」とセルフチェックの注意点も教えてくれた前田さん。

 

「病気や症状に目が行くほど過剰に捉えてしまう人もいます。例えば、HSCではないですが、患者さんの中には、自己診断などをして『私はこういう病気に違いない』と思い込んでしまっている人もいます。詳しい検査をすると違っている場合もあるのですが、自分で過剰診断をしてしまうんです」

 

「HSCの場合も、保護者が『この子は特性だから変わらない』『ほかの子とは同じようになれないんだ』と成長を諦めたり、保護者が子どもの成長に関心が向かなくなったりするのはよくありません子どもをカテゴライズやレッテル貼りするためのセルフチェックであればしないほうがいいと思います。悩みや問題の本質を見失ってしまいかねませんからね」

 

取材協力

 

 

神田司

神田つかさ

ソクラテスのたまご編集部の一員。大学卒業後、新聞社勤務を経てフリーランスへ転身。週刊誌、女性誌のほか書籍などの編集、執筆も手掛ける。プライベートでは2児の母であり、社会福祉士の資格取得に向けて勉強中。

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