「バカにする」「束縛する」は黄色信号、「キレる」「非を認めない」は赤信号……それ“デートDV”です!

DVというと、激しい暴力や一生のトラウマを植え付けるような強い言葉を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。もちろんそういったものもありますが、実は、見えにくい形となって私たちの日常にも潜んでいるかもしれません。今回は「デートDVをしない」「させない」ために知っておきたい基準や、子どもたち向けの新しい教育ツールをご紹介します。
目次
小学校〜高校で「生命(いのち)の安全教育」スタート
小学生以上のお子さんをお持ちの方は、2023年度から「生命(いのち)の安全教育」という教育内容が全国的にスタートしたことをご存じでしょうか? 小学校〜高校の発達段階に合わせて、性犯罪や性暴力の加害者、被害者にさせないことを目指して行われています。
新年度が始まって2ヶ月弱、全国の学校でどれほど実施されているかはまだ数値で明らかになってはいません。しかし、2018年の東京都の中学校の性教育実施状況調査では、多くの学校が授業時間も内容も十分とは言えない状況でした。
「生命の安全教育」がスタートし、動画などの教材が充実したことによって、その改善が期待されています。「性に触れさせてはいけない、性に詳しくさせてはいけない」という認識を変えるために、全国的に十分に行われてほしい内容ですね。
大人が知らないデートDVも。パリ生まれの「デートDVチェッカー」が登場!
そんな中、アダルトグッズで有名な株式会社TENGAヘルスケアが、「デートDVチェッカー」を日本で初めて製作、配布を開始しました。新たにオープンした性教育従事者向けプラットフォーム「withセイシル」にて実物を注文できるようになっています。
「デートDVチェッカー」は、元々はパリ市で2019年に「暴力チェックメーター」として初めて開発され、現地で中高生に向けて無料配布されたもの。
緑は「良好な関係」、黄色は「これは暴力」、赤色は「危険な状態」を示しています。

TENGAヘルスケアでは、パリ市の監修のもとでこのチェックメーターを日本語に訳して作りました。さらに親しみやすいよう、おちゃめなセイシルキャラクターのイラストつきになっています。

「セックスを強要する」「暴力をふるう」といった、誰でも分かる明らかなDVはもちろんですが、「キゲンが悪くなると無視する」「行動を束縛する」といった、一見気づきにくいようなことも「デートDV」になる可能性があるということが明記されています。
色で視覚化されているのも、誰にとっても分かりやすいポイントですね。さらにサイドには相談窓口一覧が示されており、すでに当事者となっている子どもにとっても助けを求めやすい構造になっています。
このツールは、性教育の授業の際、上記のような学生に伝えづらい内容を分かりやすく伝えるために生かされることが期待されています。
この「デートDVチェッカー」は無料配布されているものであり、家庭でも手軽に手に取ることができます(注文時のアカウント登録などは必要です)。「子どもと性の話をしたいけれど、どう切り出していいか分からない」と悩んでいる方は、ぜひ取り寄せてみてはいかがでしょうか。
しらないうちに、したりされたりする前に。大人も今一度学んでみては?
こうして「デートDV」の内容を見てみると、大人でも「まさかこれがDVだなんて」と驚いてしまう内容も含まれています。
例えば、「あなたのことをバカにする」という項目がありますが、こうしたやりとりは、からかいや冗談などとの境界線が非常に曖昧であり、「私たちの仲なら、これくらいいいんじゃないか」と思ってしまいやすい内容です。
こうしたことを明確に線引きして「DV」と認識するのは、子ども以上に大人のほうが意識改革が大変かもしれません。家庭によっては、日頃の夫婦の在り方自体がこのチェッカーでオレンジ以上の項目に当てはまってしまう……なんてこともあり得るのではないでしょうか。
「DVチェッカー」をきっかけに、お子さんと一緒に本当のDVの基準について学べるとよいかもしれませんね。
<参考資料>
・PR TIMES(株式会社TENGAヘルスケア)
・東京都教育委員会「性教育(中学校)の実施状況調査結果について」
・文部科学省「⽣命(いのち)の安全教育推進事業」

1991年生まれ、ライター兼編集。小学生向けファッション誌のほか、小学校教員向け専門誌の編集を経て、2022年にフリーに。小学校教育や性教育、10代のトレンドなどについて執筆している。夫と猫の3人暮らし。