プログラミング教育は何のため? 答えはグローバルな力を育てる「STEM教育」にある
2020年度から実施される指導要領の改訂にともない「プログラミング教育」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし、その内容について正確に理解できていますか? 例えば、関連ワードである「STEM教育」を説明することはできますか? 今回は、必修化するプログラミング教育についてや、「STEM教育」との関係を紹介していきます。
世界で求められる人になれるSTEM教育とは
“STEM教育”という言葉を知らない人も多いでしょう。“STEM”とは“ステム”と読み、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の頭文字からとられています。
STEM教育は、アメリカでハイテク分野の人材不足が起きたことから、その必要性が強く叫ばれるようになりました。科学、技術、工学、数学という多岐にわたる領域を学ぶことは、イノベーションの担い手の育成につながります。実際、就任時のオバマ大統領は2011年にSTEM分野の教員を新規に10万人雇用すると表明し、在任中、さまざまなSTEM教育に関する施策を実現しました。
イノベーションを担う人材の育成は、アメリカだけの課題ではありません。多くの国が積極的に取り組んでいて、日本の「プログラミング教育」もそうした流れの中から出てきたものだといえます。STEM教育は早期に行うのが望ましいとされています。小学校のうちから導入することで、より効果が見込めると考えられているのです。
日本におけるSTEM教育こそプログラミング教育
「プログラミング教育」といっても、コンピューターを使ってプログラミング言語を記述する授業を受けるわけではありません。また、「プログラミング」という科目が新設されるわけでもありません。
「プログラミング教育」では、各授業において「プログラミング的思考」、例えば複雑な問題を分解して考える、といったアプローチが導入されます。そうした思考を取り入れることで、第四次産業革命後、つまりコンピューターや人工知能がさらに発達した社会でも、力を発揮できる人材の育成を目指しているのです。
それでは、ここで言う「力」とはなんでしょう。
それは、
・情報を読み解く力
・情報技術を手段として使う力
・論理的・創造的に思考する力
・課題を発見・解決する力
・新たな価値を想像する力
・感性を働かせながら、社会や人生をよりよくすることについて考える力
などのことです。
これまでの教育で育まれる力と何が異なるのか分かりにくいと考える向きもあるかもしれませんが、いわゆる「第四次産業革命後の世界」を想定し、そこで発揮できる力の獲得をめざすものです。
STEM教育に今後期待できることとは何か
日本には一定の要件を満たすことで、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)として、文科省から認められた中高一貫校、高等学校がいくつもあります。これらの学校では学習指導要領の枠を超え、理数を重視した教育課程が編成されているのです。
また、平成23・24・25年度SSH意識調査によれば、SSH卒業生の、理系の学部への進学率は8割近くにのぼります。また、大学院への進学率も高く、今後も理数系人材の増加、イノベーションを担う人材の増加への効果が期待できるでしょう。
また、日本のSTEM教育分野の課題のひとつにはジェンダーの問題が指摘されています。日本ではSTEM教育の分野は男性のものだという風潮がいまだ根強く、この分野の科目では男性のほうが成績が高いです。
しかし、こうした風潮があまりない先進国では、成績において統計的な差は見られず、女性のほうが高い成績を出している国もあります。つまり、STEM教育の分野における得意不得意が、生まれたときの性別に根差しているわけではないということです。小学校のうちから、STEM教育に力を入れることで、STEM分野への女性の進出が期待できます。
新たに始まる「プログラミング教育」により「プログラミング的思考」を教育に取り入れることで、どんな成果につながるのか、日本におけるSTEM教育の展開と合わせて注目していきたいところです。
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教育・受験指導専門家の西村創が主宰する「西村教育研究チーム」のメンバー、フリーライター。大学卒業後、書店に勤務し、実用書や旅行書、新書等、幅広く売場を担当。書籍を扱うプロとして常にアンテナを張り、多岐にわたるジャンルに対して学びの姿勢を貫く。その後、医療系商社勤務を経て、難関中学受験をメインに据えた進学塾の講師を務める。 出産を機に退職し、現在はフリーライターと双子の母を兼業中。台風のようなちびっ子たちに日々振り回されている。