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2022.10.08

「さみしいとセックスしてしまいます」。他人事じゃない、“10代の妊娠”のリアル

妊娠・出産というと我が子にはまだまだ先の話、と思われる保護者も多いのではないでしょうか。しかし、国際的な性教育の基準(国際セクシュアリティ教育ガイダンス)によれば、妊娠の話を含めた性教育は、5歳から段階的にすることが推奨されています。
今の10代が妊娠やその可能性に直面した時、何に不安を感じ、どんな行動をとるのか、元養護教諭のにじいろ氏の著書『10代の妊娠 友達もネットも教えてくれない性と妊娠のリアル』からご紹介します。

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子どもたちは、何に悩んでいる?

今回紹介する『10代の妊娠 友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル』の著者、にじいろ氏は、高校の元養護教諭であり、現在は性教育講師・思春期保健相談士として全国各地で性に関する講演や授業を行なっています。

本書は、著者が講演先や自身のSNSに届く、子どもたちのリアルな相談内容や悩みをもとに、子どもたちの悩みに答え、かつ実際の相談先なども紹介している「性に関する10代のための道案内」のような1冊。

大人にとっては当たり前の知識も、子どもにとっては未知の話であることに気付かされるとともに(そもそも大人だって、一つずつ経験したから知っているのであって、学校で丁寧に教えてもらったという人はかなり少数なのではないでしょうか)、大人でも知らない最新の制度や仕組み、そして避妊グッズなどの新発見もあります。

今回は本書から、子どもたちがどのような悩みや不安をもっているのか、またその背景をご紹介。

「うちの子には関係ない」「10代で妊娠なんて、非行少年に決まっている」と考えるのではなく、だれにでも起こりうることとして、関心をもってみてはいかがでしょうか。

※「10代の妊娠 友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル」の「妊娠したかも、どうしよう…」の章から、一部抜粋してご紹介します。

誰にも言えなくて。すみません。

いきなりDMしてすみません。先月彼氏と性行為をしてから、生理が来ません。妊娠したかもと、すごく不安です。自分たちが悪いのはわかっています。こんな相談して迷惑なのもわかっていますが、誰にも言えなくて……。

「10代の妊娠 友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル」(高2女子)

私のツイッターのDM(ダイレクトメッセージ)には、いろいろな相談が届きます。私の講演を聞いたとか、面識がある子たちではありません。ツイッターでたまたま見つけて、相談してくれる子どもたちです。

すべての相談に直接、返事ができるわけではないのですが、必ず返事をするものがあります。それは、「妊娠したかも、どうしよう」という妊娠に関する相談です。送り主は10代の女の子たちがほとんどです。

養護教諭として高校で働いていたときも生徒の妊娠に関する相談はありましたし、講演に行く先の学校でも、生徒から相談を受けることがあります。いろんなタイプの子がいますが、性交経験があるかどうか、妊娠の問題で深刻な悩みを抱えているかどうかは見た目ではわかりません。

ツイッターで相談してくれる子たちが多いのですが、相談内容には共通した点があります。

1つ目は「だれにも言えません」ということ。もちろん親には言いにくいのはわかりますが、友だちや相手の男性にも言ってない(言えない)ケースが多いのです。

2つ目が「すみません」と何度も何度も謝ってくることです。「いきなりすみません」「こんなこと相談してすみません」「何度も連絡して迷惑かけてごめんなさい」といったように、とても低姿勢です。

相談してくる時点では、妊娠が確定しているわけではなく、疑い段階での相談が多いですが、「妊娠したかも、どうしよう」とひとりで思い悩み、自分を責めている様子が痛いほど伝わってきます。

私のツイッターは情報発信が目的で、相談活動をしているわけではないのですが、妊娠の問題は放っておくことはできません。「言いにくいことなのに、よく話してくれたね」とやりとりをはじめます。

妊娠の背景にあるもの

さみしいとセックスしてしまいます。しているあいだは求められている感があってうれしいのですが、終わったあと、妊娠の不安と、またやってしまったという後悔や罪悪感でいっぱいになります。どうしたらこんな思いをせずに済むのでしょうか?

「10代の妊娠 友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル」(高2女子)

10代の妊娠、と聞いて、「そんな簡単にセックスするなんて」と批判的に思うかもしれません。セックスに至る理由、背景はいろいろです。「彼氏を愛しているから」「興味本位で」「早く経験してみたかった」などの理由もあれば、とうてい本人が望んでいるとは思えないものもあります。中にはレイプの結果というのもあります。

「彼氏が会うたびに襲ってきます。抵抗しても、やめてって言ってもやめてくれません。ゴムもつけてくれません」というような、デートDVの相談がよくあります。デートDVとは、恋人間の暴力のことを言います。身体的な暴力や精神的な暴力だけでなく、むりやり性的な行為をするのも、避妊に協力しないのも、暴力行為、デートDVです。

「友だちの家に遊びに行ったとき、むりやりされてしまいました。信じられなくて、抵抗できなくて、泣いたらやめてくれると思ったけど、最後までされてしまいました」

「SNSで(知り合って)相談にのってくれた人と(直接)会って、さんざんな目にあいました。そのあとから連絡が取れなくなりました」などといった性暴力被害もあります。

さみしさを埋めるために不特定多数の相手とセックスしてしまう子、いらいらしたときに自傷行為のようなセックスをしてしまう子、彼氏が避妊をしてくれない子、身近な知人(知らない人も)から性暴力被害にあった子……。

望まない妊娠の背景には、望まない性行為があることも少なくありません。たんに、「性の知識がないから」という問題だけではないのです。

人ごとではない「10代の妊娠」

彼氏と、友だちだと思っていた人と、ネットで知り合った人と……。

本書で紹介されている子どもたちが、「特別な子」ではないということがわかるのではないでしょうか。

本書には、このほかにも避妊の方法や、妊娠後の選択肢、現状の社会制度などが詳しく紹介されています。家庭での性教育の一環として、おうちの本棚においておくのもよいかもしれません。

「10代の妊娠 友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル」(合同出版)

■書名:「10代の妊娠 友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル」
■著者:にじいろ
■監修:高橋幸子
■価格:1,540円
■出版社:合同出版

※本記事は、『10代の妊娠 友だちもネットも教えてくれない性と妊娠のリアル』本文を出版社の許可を得て、一部引用させていただきました。

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