教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

2019.01.08

同じ空間で過ごすだけでOK 家族間コミュニケーション力UP術

海外の論評などでしばしば批判の対象となるのが、日本人のコミュニケーションの曖昧さ。しかし、これはコミュニケーションを成立させる背景が、日本と諸外国では異なるからではないでしょうか。そこで、子どもが最初にコミュニケーションを学ぶ場でもある家に着目して、家族間コミュニケーションをはばむものについて考察します。

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コミュニケーションスタイルは家で変わる

戦後に復興住宅が建ち始めた頃に始まり、現在も住居の基本的なモジュールとして使われている「~LDK」というスタイル。しかし、それ以前の日本では都市型の住居は長屋のような住まい、郊外は田の字型住居などが多く、プライバシー侵害の概念よりも家族はお互いに気遣いあって過ごすというのが日本の家庭環境でした。

 

それは、生活をする者同士(家族など)だけでなく、ご近所間でも動向は共有され、多くを語らずとも伝わる関係性が構築されていました。

 

実はこの関係性がコミュニケーション方法に大きな影響を与えていたのです。お互いの動向を把握しているため多くを語る必要もなく相手を察することができ、曖昧なやり取りでも十分に通じ合うことができる関係性ができていたのです。

 

日本人のコミュニケーションは、曖昧かもしれませんが察することに長けています。それは、居住スタイルにより察することを前提としたコミュニケーションを培ってきたからなのではないでしょうか。

 

 

戦後の住宅状況の変化で人との関係性や距離感に変化が

逆説的にいえば察することを前提とした(曖昧な)日本人のコミュニケーションスタイルを成立させるためには、お互いのことをよく理解し合い、情報を共有できる関係性・距離感が必要です。しかし、戦後の住居の変化で家族間やご近所との関係性や距離感は大きく変化。そのため、現代では家族間でのコミュニケーションにさまざまな歪みが出してしまっているのではないでしょうか。

 

戦後、同じひと間で寝起きと寝食をともにしてきた日本人の居住スタイルは、寝食分離を基本とした「~LDK」タイプの欧米風住居が主流となっていきました。そして、これまでは襖で間仕切りして使っていた部屋の概念も変化し、壁とドアで恒常的に区切られた個室が作られ、子どもに個室を与えられることがステータスに。子どもと親の間にまさに壁ができ、同じ部屋で過ごすことで当たり前に保たれてきた家族間のコミュニケーションにも変化が出てくるようになったのです。

 

欧米式の個室型居住で生活をしていれば、当然相手の姿や気配は感じられません。にもかかわらず、相手を察して理解するという日本人ならではのコミュニケーションスタイルを貫いても誤解が生じ、理解し合えない状況に互いが悩み、意思の疎通自体がどんどん難しくなっていくのです。

 

 

無理に会話をせず理解し合える自然な距離感づくりを

現在、親子間のコミュニケーションギャップに悩んでいる方もいらっしゃるかもしれません。いくら考えても「子どもの考えていることが理解できない」「会話が成立しない」というケースは少なくありません。

 

しかし、家族間コミュニケーションが円滑にできなくなっているのは、親子といえどお互いを知り合えていない状況のまま、日本人らしく「察すること」を親子で互いに要求しているからではありませんか?

 

住まいの変化にコミュニケーションの方法が追い付いていないことも頭に入れないと溝をより大きくしていくだけかもしれません。ですから、家族間コミュニケーションを上手にできるようにしたいと思うのであれば、話しかけ方のスキルを学んだり、無理に会話をしたりする必要はありません。同じ空間で過ごす時間を長くすることから始めてみてはいかがでしょうか。

 

 

 

諸葛 正弥

諸葛 正弥

大手進学塾で長年指導を行ない、2007年に「イラスト図解でわかるプロ教師力アップ術55」(明治図書)を出版。教育委員会・各種学校などで教員研修を行ないながら、私立中高一貫校の学校改革などを手掛けている。また、「ロボット教室」や「学習教室まなび-スタイル」の運営、「よい子を育む家」の監修なども行ない、教育について幅広く活動を行っている。

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