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2019.05.08

家庭学習をしない子が増えている!? その実態と理由は

家庭学習の有無を調べてみると8年間で小学生は8.1%減で60.1%、中学生は13.8%減で61.3%、高校生は13.4%減で40.4%という結果となり、家庭学習をしている学生の割合は減っています。では、この結果をどう考えれば良いのでしょうか。今回は、家庭学習の実態について言及していきます。

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彼らは決して勉強をしなくなったという訳ではない

ベネッセ教育総合研究所の「学校外教育活動に関する調査2017」によれば、子どもが1年間で定期的にしてきた活動について、スポーツ活動、音楽・芸術活動が共に2009年から2017年までの8年間で減少傾向にあり、保護者の意識については「スポーツ活動や音楽・芸術活動より勉強をして欲しい」という割合が増加している傾向にあります。

では一方で、家庭学習の有無を調べてみると8年間で小学生は8.1%減で60.1%、中学生は13.8%減で61.3%、高校生は13.4%減で40.4%という結果となりました。

保護者のアンケートの中で教育費の負担を感じる割合も増加の傾向にあり、学習塾や予備校に通わせるようになった結果、家で勉強をする時間が減少してきているということなのではないかと見ています。

“わかる”と”できる”の違い

ただ、もしこの仮説が正しいのなら、一つの懸念があります。

授業というのは多くの場合、講義であって”知識”の提供と”理解”を促進する活動が主体となります。そしてそれは”わかる”という段階を満たしてくれる時間としては大変に有効と言えます。

しかし、多くの方が経験していると思いますが、授業で”わかった”けれども実際にやってみたら”できない”というギャップが存在します。

本来、家庭学習では自分で宿題などにチャレンジしながら“わかった”を”できた”に変えるための時間であったはずです。

その時間が減少し”わかる”の時間が増える傾向が年々多くなっているのなら、自分で試行錯誤する時間がいずれ失われてしまって単純な分かりやすさだけが残ってしまうのではないか、と心配になるのです。

AIや情報端末の発展がもたらした便利さ

タブレット端末に代表されますが、タッチパネルで誰でも直感的に扱えるようにインターフェースをデザインされたものは分かりやすさの典型なのかも知れません。

そのように私たちを取り巻く新しいテクノロジーは人間自身が思考しなくても済むように便利さが追求されてきました。

国によっては数学の試験に電卓を持ち込み可になっていて機会が計算をする時代なのだから、人間はそれ以外のことをすれば良い、という割り切り方も出てきています。

そういう意味では問題を解くために人間が試行錯誤することや計算などの処理を行うこと自体が不要で、その部分は限りなく単純化された分かりやすさを追求するというのが合理的なのかも知れません。

しかし、それは本当に生物的に目指すべき姿なのかと立ち止まって見ると、少々疑問符をつけたくなります。

人間がなぜ発達したのか

人間は他の動物を違い、なぜこれほど高度な文明を築くことができたのでしょうか。それは諸説あるとは思いますが、一つには道具を生み出し、上手に使いこなしてきたからではないかと思うのです。

道具は人間の機能を拡張し、より高度な能力を発揮し、文字の発明により記憶も脳の外に拡張し、伝達することを可能にしました。

この利便性は人間の肉体的な能力については退化をさせたかも知れませんが、生命活動の延長を行うことには成功し、そして知能的な発展を止めることはありませんでした。

しかし、AIはその性質が異なります。人間がこれまで試行錯誤を行って数々の文明や技術を生み出してきた行為そのものをAIに担わせようとするなら、それは人間の機能の拡張ではなく、人間の役割の放棄にも等しいのです。

ただ、現状で考察する限り、AIは単純な情報処理と判断はできても創意工夫を行うには限界がありそうです。

とはいえ2045年ごろにはシンギュラリティが起こると言われ、本当にAIが人間の知能を超えるようになり、人間の制御を離れることがあるのなら、それは人間が発展してきた条件の一つである”道具を上手に使いこなしてきた”という前提の崩壊を意味し、人間が機械に使われる時代の到来を意味するものになるかも知れません。

自ら考える時間を放棄するには早過ぎる

話を戻しますと、社会がどう変化するかは恐らく誰にも分りません。AIについての予測も現時点でのある学者が立てた節の一つに過ぎません。

それを鵜呑みにしてAIが自分で考える時代になるから、人間は考えなくても良いと結論付けるのはいささか時期尚早で、むしろ人間が人間たる立場を堅持し発展していくAIを上手に使っていける知恵をつけるには、人間がより高度な思考を身につけなければならないのではないかと思います。

そうであれば人間は単に分かりやすさを追求するのではなく、試行錯誤の時間を重視し、自分で課題解決が”できる”経験を増やしておくことが大切となるはずです。

文部科学省が新指導要領で”探究学習”を重視している意味もそこにあると思います。

授業を受ければ良いという幻想から脱却しよう

それなら現在の家庭学習に関する傾向は大問題で、塾や予備校で授業を受けさせていることで保護者や学生が安心しているうちに人間として本来、鍛えていかなければならない自ら考える力を失っているかも知れないという認識を持って、授業を受ければ良いという幻想から脱却していかなければならないのではないでしょうか。

願わくば、スポーツ活動や音楽・芸術活動といった人間だからできる活動が増加しつつ、家庭学習の割合が増えて自分で試行錯誤することが面白いと思うことが当たり前の環境になってほしいものです。

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諸葛 正弥

大手進学塾で長年指導を行ない、2007年に「イラスト図解でわかるプロ教師力アップ術55」(明治図書)を出版。教育委員会・各種学校などで教員研修を行ないながら、私立中高一貫校の学校改革などを手掛けている。また、「ロボット教室」や「学習教室まなび-スタイル」の運営、「よい子を育む家」の監修なども行ない、教育について幅広く活動を行っている。

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