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2024.04.03

上の子かわいくない症候群とは?小学生のわが子へのイライラの原因や対処法

きょうだいへの親の愛情に差がみられることを指す「上の子かわいくない症候群」。上の子が可愛く思えずイライラすることに、自分はダメな親だと自己嫌悪を抱く親は少なくありません。この記事では、その原因や特徴、対処法について、公認心理師の佐藤めぐみさんが解説します。「小学生の上の子が保育園児の下の子より手がかかりかわいくない」という、ソクたまに届いたリアルな悩みを見てみましょう。

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監修者

佐藤めぐみさん公認心理師

オランダ心理学会認定心理士。欧米の大学・大学院で心理学を学び、「ポジティブ育児メソッド」を考案。現在は公認心理師として、育児相談室・ポジカフェでの心理カウンセリング、ポジティブ育児研究所での子育て心理学講座、メディアや企業への執筆活動などを通じ、ママをサポートする活動を行う。アメリカ在住。中学生の娘の母親として子育てにも奮闘中。

「上の子かわいくない症候群」とは

<今回のお悩み>
小学3年生の息子と、5歳の娘(保育園児)の母です。娘は生まれた頃から手が掛からないタイプで何でも素直に言うことを聞いてくれますが、息子は小さい頃から手が掛かるし最近は反抗的な態度を取ることも多く一緒にいるとイライラします。息子に優しくできず、母親失格なのかもしれないと感じています。二人の子どもを同じように愛することはできるのでしょうか。

「上の子かわいくない症候群」という言葉は、読者の皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。下の子がいて上の子がかわいいと思えない母親の心情を指す言葉です。

けれど、最初に伝えたいのは「上の子かわいくない症候群」という言葉は医学的な背景がないものだということ。こういった相談は少なくありませんが、「上の子かわいくない症候群」という言葉を使ってアドバイスすることはありません。

もともと“症候群”というのは、明確な理由は明らかではないけれど何人もの患者に共通した症状が現れることをいいます。上の子がかわいいと思えないことに悩む母親が多いことから生み出された造語で、決して病気ではないということをまずは覚えておいてくださいね。

上の子をかわいく思えない原因は自分? それとも子どものせい?

「なぜ、うちの子は他の子より手がかかるのだろう」
「なぜ、私は他の親と同じように子どもたちを平等に愛せないのだろう」

相談者のお母さんはこんなふうに感じ、悩んでいるのではないでしょうか。

「上の子がかわいくない」と感じる原因は、さまざま。そして、原因は一つに絞り切れるわけではなく、いくつかの要素が絡み合っていることもあります。

ここでは、上の子かわいくない症候群に陥る原因について考えます。ただし、自分やわが子に当てはまるものがあっても、決して責めるような気持ちを抱く必要はありません。上の子かわいくない症候群から脱するためには、まずは原因を考えることが大切なのです。

原因1.小学生の上の子が“言うことを聞かない”から

一般的に上の子かわいくない症候群は上の子が幼児で下の子が生まれて間もないという時期に起こりやすいもので、子どもの成長とともに自然に解消されるものです。

ところが、今回の相談者のお子さんは上の子が9歳で下の子が5歳。二人ともある程度、成長している年齢ですよね。

上の子が小学生の場合に「かわいくない」と感じてしまうのは、

  • 学校や友達間でのトラブルが多い
  • 宿題をしない
  • 片付けができない
  • わざと言うことを聞かなかい、わざと親がダメだと言うことをする
  • 食事に時間がかかりすぎる

など、親が子に注意する状況が多いことが原因。その根本にあるのは、子どもが“言うことを聞かない”ということです。

原因2.「小さいものがかわいい」という感情

上の子と下の子の体の大きさの違いによって、愛情に差が生まれることもあります。相談者のお子さんは9歳と5歳。たった4歳違いでもこの時期の子どもの体の大きさはだいぶ違いがありますよね。カウンセリングを行う中でも「見た目の大きさが違いすぎて、かわいいと思えない」と話すお母さんはいます。

原因3.上の子の発達段階

相談者の上のお子さんは小学3年生。「9歳の壁」といわれる時期にあたります。9歳の壁とは、学校の勉強が難しくなったり、友人関係のトラブルが発生したり、反抗的な態度が多くなったりといった子どもの認知的発達に伴って現れる“壁”のこと。

幼少期の頃とは違った種類の悩みに直面するため、親としても新たに成長しなければならない時期でもあります。しかし、子どもの“壁”によって手が掛かることが多くなると「かわいくない」という気持ちが生まれることもあるのです。

ただし、9歳というのはとても大切な時期。この時期をうまく乗り越えられるかどうかが、思春期の親子関係にもつながります。思春期は、スタート時点で親子関係が既にこじれていると良い方向に進まないことが多いものです。今の状態のまま上の子が思春期に入り、「かわいくない」から抜け出せなくなると悩みはさらに大きくなりがちなので、いま抱いている気持ちをリセットする働きかけはしていきたいものです。

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原因4.上の子が持つ生来の気質

人間は誰しも生まれ持った気質があるものですが、中には“負の粘り強さ”を持つ子もいます。要は、頑固で自分の我を押し通そうとするような性格のこと。

負の粘り強さがある子は、親を試すような行動をします。ゲームの時間、お小遣いの金額など親子間で決めたルールはどの家庭にもあると思いますが、「もっとゲームがしたい」「もっとお小遣いがほしい」などと要求し、どこまで親が許してくれるのかを試すのです。

もちろん、負の粘り強さは気質だけの問題ではありません。例えば「テレビを見る時間は〇分」というルールを設定したにもかかわらず「もっと見たい、もう少し!」と子どもがしつこく訴え、「じゃあ、見ていいよ」と許してしまったらどうでしょう? 親とのやり取りで、子どもは「粘れば見られる」と学習してしまいます。

原因5.下の子誕生前の過保護・過干渉

誰しも一人目の子育ては手探りで行うものですが、それは時に過保護・過干渉な子育てにつながることも…。わが子が苦労しないようにお膳立てする親を「カーリングペアレント」といいますが、親の子どもへの接し方が原因になることもあります。

こういった親子間において、子どもは“とことん尽くしてくれる=愛情”という認識を持ちますが、下の子が生まれると今までのようにはいきません。下の子のお世話に時間を取られがちな親を見て、”愛情が減った”と感じるのです。そうすると、わざと困らせるような行動や手が掛かるような行動、いわゆる「赤ちゃん返り」が起こります。

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原因6.完璧主義によるわが子への期待値の上げすぎ

わが子への誤った期待が「かわいくない」と感じるきっかけになっていることもあります。

「〇歳だから、このくらいはできて当たり前」という親の期待値は、実はレベルが高いという場合が往々にしてあります。実際のレベルを上回っていることが多いと、子どもが応えられないことも多くなります。そのギャップが、親のいら立ちにつながるのです。

「うちの子、時計が読めるんです。なのに、時間管理はできないんです」と話してくれたお母さんがいました。けれど、時計が読めることと時間管理ができることは全く別の話。「〇歳だから~できるだろう」という期待が、もし年齢相応でなければ当然ながらイライラも増えてしまうのです。

それ以外にも、期待値が高くなりがちな理由として完璧主義傾向が考えられます。完璧主義には二つの方向性があって、一つは自分にベクトルが向く自分に厳しいタイプの人。もう一つは他者にベクトルが向くタイプで、他人に厳しい人です。子どもにそれが向けられてしまうと過剰な期待をしてしまうため、怒りを感じることが増えてしまいます。

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他にも、

  • 子どもと自分を同化しているため、わが子にも自分と同じように行動してほしい。
  • 親に厳しくしつけられた自分の幼少期と比較し、わが子の自由奔放さにいら立つ。
  • 自分の欠点が、わが子の中に鏡のように見て取れる。

といったことが原因になることもあります。

一度「かわいくない」と思ってしまうと、その子の言動の全てが“気に入らない”と感じてしまうことは多いものです。

ただし、上の子かわいくない症候群は子どもの発達段階・成長段階との関係性が高く、一過性であることがほとんど。下の子が反抗期を迎える時期には「下の子がかわいくない」と感じる場合もあるかもしれませんし、非常に移ろいやすい感情でもあるのです。

上の子かわいくない症候群はいつまで続く?

前章で挙げた「かわいくない」と感じる原因に、相談者のお母さんは心当たりがあるでしょうか? しかし、原因は何にしろこの気持ちがいつまで続くものなのかも悩むところですよね。

もし、原因が反抗期などの子どもの成長段階にあるのであれば一過性のもの。時間が解決してくれると思います。

一方で、子どもに対する手こずり感が継続すると長期にわたることもあります。その場合“テコ入れ”を何も行わないと、関係が悪いまま続いてしまうことになりかねないので、改善策を検討することが上の子かわいくない症候群から脱する大きなきっかけになります。

もっとも、

  • たたく、蹴るなどの身体的虐待
  • 無視、きょうだい間での差別的扱い、言葉の暴力などの心理的虐待
  • ネグレクト

など厚生労働省の「児童虐待の定義」に当てはまる行為が出てくる場合には、注意が必要です。この場合は、親子関係のテコ入れよりもお母さん自身のケアを優先するべきでしょう。

これって上の子かわいくない症候群?親と子のチェックリスト

親の感情のチェックリスト

私のこれまでの相談事例を見ると、次のような状態と、「上の子がかわいく思えない」という思いは相関があると思われます。当てはまる数が多いほど、上の子に対する思いが下がっていると思われるので、「もしかして」と思う方はチェックしてみてください。

  • 学校から戻ってくると、自分の中でイライラスイッチが入る
  • 手をつなぎたくない
  • 一緒にお風呂に入りたくない
  • 抱きつかれるとゾクっとしてしまう
  • 頭や頬をなでることに抵抗がある
  • 生理的に受けつけられないと感じる
  • 視界に入るだけでイライラしてしまうことがある
  • よくないと思っても気持ちを変えられない
  • 自分に性格などの内面が似ているなと感じる

子どもの行動のチェックリスト

親が「この子はかわいくない」と思うことで出やすくなる子どもの行動や感情の変化は次のようなものが挙げられます。

ただ、見ていただくとわかりますが、このリストの中には、多くのご家庭でよく見られる行動も含まれていますので、あくまで親の方の「かわいくない」という思いがあることが前提のリストになります。「かわいく思えない」+以下のような状態が見られる場合、親側の思いが子どもに伝わっている可能性があると考えられます。

  • 自分に注意を向けようとする
  • 親を困らせる行動をする
  • 感情が不安定なことが多い
  • スキンシップをしたがる
  • 癇癪がひどい
  • ママ/パパは自分のことが嫌いなんだと言う
  • 弟/妹ばかりずるいと言う
  • 親の顔色を見ている
  • ママ/パパ怒ってる?と聞いてくる

上の子かわいくない症候群から抜け出すための5つの対処法

人の感情は、直接コントロールするのは難しいものです。「好きになろう!」と感情を無理に抑え込むと、自分がつらくなってしまいます。気持ちを変えようと焦らず、コツを抑えて「このくらいならできるかも」と思える行動から試してみてくださいね。

【1】上の子との時間を意識する

  • 上の子と二人でお出かけする
  • 上の子と一緒に遊ぶ時間を作る
  • 上の子が好きなおやつを買って一緒に食べる

など、上の子に「あなたのことも考えている」と伝わるような行動が良いでしょう。特に、上の子が赤ちゃん返りをしている場合に有効です。

【2】自分自身の時間的な余裕をつくる

子育て中に時間的な圧迫が多すぎると、心に余裕がなくなってしまいます。意識的にリラックスする時間をつくったり、時には“手を抜く”ことも大切。例えば「毎週水曜日はテイクアウトの日にしよう」など、自分を少しラクにする方法を試してみてください。

ほんの少しの手抜きで下の子のお世話がラクになり、上の子と向き合うが余裕ができるかもしれません。

【3】子どもへの期待値を修正する

わが子に対する期待値の修正をしましょう。「ここまではできるけれど、これ以上はできない」という知識を得るのです。

育児書などを参考にしても良いですが、自分に合った答えが見つからないときには子育ての先輩や専門家に相談してみましょう。話を聞いてもらうことで、気付きがあるはずです。

【4】夫(父親)に協力してもらう

家族全体でバランスを取ることも大事です。上の子に赤ちゃん返りが見られるのであればお母さん自身がその子のケアをする必要がありますが、お父さんがケアできる部分は積極的にお願いしてみましょう。

父子でキャンプをしたり、映画を見に行ったり。相談者のお子さんは男の子なので、男同士分かり合える部分があるかもしれません。

【5】家庭のルールを再考する

「上の子がかわいくない」という場合、子どもに日々振り回されてしまっていることも多いもの。そういうときは家庭のルールをいま一度振り返ることも大切です。

家庭に必要なのは理想のルールではなく、親子で何とか守れる現実的なルール。もし子どもに「〇〇したい」「もっと~」と言われ、そのたびに要求に応えてしまうと、子どもが王様状態になってしまうことがあります。子どもの要求はどんどんエスカレートし、応えてもらえないことに我慢ができなくなります。親もイライラする気持ちが多くなりますし、負のスパイラルに陥ってしまいます。

ルールを決める際は親が勝手に決めるのではなく、親子で話し合ってお互いが納得できるかたちにすることが大切です。

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相談者のお母さんは、「上の子がかわいくない」と感じていることで自己嫌悪に陥っています。けれど、悩んでいるという気持ち自体が実は抑止力になると思うのです。長く子育てをしていれば、気持ちに波や揺れが生じるのは当然。まずはなぜ「かわいくない」と感じるかの原因を見つけて、自分を責めない範囲でテコ入れをしていきましょう。

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濱岡操緒

岩手県出身。大学卒業後、ゲーム会社で広報宣伝職を経験した後、ママ向け雑誌やブライダル誌を手掛ける編プロに所属。現在はフリーランスのエディター&ライターとして活動中。一人息子の中学受験で気持ちに全く余裕がない中、唯一の癒しとなっているのが愛犬と過ごす時間です。

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