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2021.11.10

知能検査WISC4とは|検査内容や結果の活かし方を解説します

5~16歳11ヵ月の子ども向け知能検査WISC-IV(ウィスクフォー)。福祉や医療、教育現場ではよく知られる検査ですが、健康診断や就学前検診で初めて名前を聞いた人もいることでしょう。知能検査といわれてもどんな検査をして、子どもの何が分かるのか不安に思うかもしれません。そこで、検査内容や費用、結果が子どもの生活にどう活用されるのかなど詳しく解説します。

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記事を執筆したのは…

鈴木こずえさん臨床発達心理士・公認心理師

小学校・中学校でスクールカウンセラーとして勤務後、現在は教育相談センターのカウンセラーとして、小中高生と保護者のカウンセリングを行っている。不登校、発達障害、緘黙、行動面での問題など、成長過程での身体・精神両面におけるさまざまな相談に応えている。

世界中で使われる知能検査WISC-IVとは

 WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)とは、5歳0か月から16歳11か月の子どもを対象にした、世界的に広く利用されている代表的な知能検査のひとつです。

正式名は「Wechsler Intelligence Scale for Children-4th edition」といい、その頭文字をとって、一般的にはWISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)とよばれています。

ひとことで知能検査といっても、WISCは、ウェクスラー式知能検査といわれる検査で歴史は大変古く、1939年にアメリカで刊行されたウェクスラー・ベルビュー知能検査が起源とされています。80年以上の歴史のある検査で、理論と科学的根拠に基づいて作られた信頼性の高いものです。

また、ウェクスラー式知能検査には、WISC以外にも、16~90歳を対象にした大人用の知能検査WAIS(ウェイス)、2.6~7.3歳を対象にした幼児用の検査WPPSI(ウィプシ)があるほか、現在、日本で使用されているのは日本版になります。

2022年2月にWISC検査の最新版であるWISC-Vの日本版が発売され、知覚推理指標などの指標が一部変更になりました。WISC-Vについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

WISC(ウィスク)-Ⅴとは?WISC-Ⅳとの違いや検査内容・指標をWISC検査の専門家が解説
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検査を受けられる場所や費用について

知能検査・WISC-Ⅳを実施している機関は主に下記になります。

WISC-Ⅳの実施期間

  • 教育センター・発達支援センター、児童相談所などの公的機関
  • 児童精神科、小児科、発達クリニックなどの医療機関
  • 民間のカウンセリングルームや療育機関

また、検査費用は実施機関によりさまざまですが、公的機関では通常料金はかかりません。また、医療機関では保険適用になる場合があります。ただし、診断書もしくは報告書を書いてもらう場合には別途料金(相場は5000~1万円)が必要になります。詳しい検査費用については実施機関へ問い合わせてみてください。

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発達障害を診断するための検査ではない

80年以上の歴史があるWISCですが、何のための誰のための検査でしょうか。検査をとることの意味を考えてみましょう。

検査の役割とは

知能検査の役割は時代と共に変化してきました。当初の知能検査は学力の基礎力、学習準備状況をみるものでした。そして、ウェクスラー式知能検査も1990年代までは子どもにハンデがあるか否かをみる役割を担っていた面もあります。

しかし、現在は、ハンデや学力を判断するためのものではなく、子どもの困りごとの原因と対策を明らかにするためのものという役割に変化を遂げています。

なぜなら、WISCの結果だけを見て同年齢の集団の中での知的な発達段階の位置や能力の凸凹がわかりますが発達障害かどうかという判断はできないからです。発達障害や学習障害の診断をするのは医療機関のみになりますが、WISCの結果のみで発達障害・学習障害の診断が確定することはありません

子どもを理解し過ごしやすくするための検査

WISCの結果は、子どもを理解するために活用されることになります。お子さんの生活の場である学校などが、子どもの特性を正しく理解することで、子どもが困っていることに、必要かつ的確なサポートを考えていくことができます。

学童や塾、習い事などの場においても、必要に応じて必要な部分を伝えることにより、子ども同士のトラブルを防いだり、子どもに分かりやすい対応をしてもらえたり、子どもに合った学習法を取り入れてもらえたりしていくでしょう。

いろいろな場にサポートがあることで、子どもが安心して学校生活、日常生活を送れるようになるとよいですね。そして、不登校などの二次障害を予防することにも繋がっていくと思います。

また、家庭の場においても、保護者が子どもをより理解できるようになることで、子どもに求めるもの(水準)が変わったり、子どもが工夫できるようにヒントを出せたり、声掛けひとつとっても変化が見られるかもしれません。

ある保護者からは、「WISCの結果を基に子どもと一緒に作戦会議をして、振り返りながら作戦を改善し実践しています」といった声を聞いたことがあります。

WISCの結果を見て、教育や心理の専門家が保護者の方にアドバイスしていくことで、よりよい作戦や作戦の改善につながることもあります。

子どもが生活する場で生かすことができ、「検査をしてよかった」とお子さんも保護者の方も思えることが何より大切となります。

WISCの結果は診断のためのものではなく、周囲の大人や子ども自身が特性を理解し、周りのサポートや協力を得やすいように活用されることで、子どもの困っていたことが解決に向かい、以前よりも過ごしやすくするための検査といえます。

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検査結果で分かるのは全般的な力と4つの能力

では次に、 WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)の具体的な検査の内容について説明していきましょう。

 WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)は、全部で15の下位検査から構成されています。

10個の基本検査と5個の補助検査を行い、5つの合成得点(全検査FSIQ)と4つの指標得点が算出されます。

4つの指標とは、分かりやすくいうと”能力の種類”のようなもので、 得意な力は高い指標、苦手な力は低い指標になります。WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)では、この4つの能力の差をみていき、その子どもの得意・不得意=特性を分析していきます。

では、それぞれの能力についても詳しく説明していきましょう。

全般的な知的能力(FSIQ)とは

FSIQ=知的発達水準であり、全体的な力が同年齢集団の中でどのくらいかが分かります。FSIQは補助検査をのぞいた10種類の基本下位検査の合計から算出され、平均は100となります。

言語理解指標(VCI)とは

言語理解指標(VCI)とは、言語の力をみるものです。言葉の理解力・説明力、言語的習得知識を測定します。言葉によって推理・思考する力や生活の中や学習によって獲得した言葉の力などをみます

知覚推理指標(PRI)とは

見たものから推理する力、見たもの(非言語)の理解力・表出する力をみます。視覚的なものから問題解決する力、新しい場面での解決能力などにも関連します。

ワーキングメモリー指標(WMI)とは

聞いたこと(聴覚的な情報)を記憶し処理する力、注意・集中力などをみます。読み書きの力や実行機能と呼ばれる力にも関連します。

処理速度指標(PSI)とは

見たもの(視覚情報)を素早く正確に処理し、作業を速やかに進める力、注意・集中力などをみます。書字のスキルにも関連します。

検査結果は、FSIQと4つの指標得点、各下位検査得点が折れ線グラフで表され、子どもの個人内の力のばらつきが分かりやすくなっています。

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<最新版「WISC-V」の5つの主要指標については以下の記事で詳しく解説しています。

数字が低い=悪い(ダメ)ではない

次に具体的に検査結果からどんなことが分かるのかということを知ってもらうために、検査結果の見方も解説します。

実際に検査を受けられると、結果を受け取るときに説明があります。詳しい説明は個々によって違うので、今回は基本的な検査の見方を説明します。

全般的な知的能力(FSIQ)から分かること

全検査IQ(FSIQ)は、現時点での子どもの全体的な認知能力です。しかし、IQの数値だけで子どもの能力を判断することはできず、4つの能力と合わせて総合的にみていくことが大切です。

結果で得られる5つの合成得点には、プラスマイナス10程度の誤差があります。そのため、数値は知的発達のおおよその値であると考えて下さい。

ただし、FSIQが同じ数値の子なら”みんな同じ”というわけではありません。4つの指標にばらつきがあるかないか、どのくらい差があるのかによって、まったく違う解釈となります。個人差(他の子どもとの差)よりも、個人内差(子どもの中の能力の差、ばらつき、得意苦手な力の差)に注目し、特徴を捉えていくことが大切です。

4つの指標から分かること

次に4つの指標間の差をみていきます。差があまり出ない場合もありますが、個人内差としての得意な力、苦手な力をみることができます

例えば、言語理解指標(VCI)よりも知覚推理指標(PRI)が高い子の場合、言葉から考えていくよりも、見たものから考えていく方が得意といえます。視覚的な情報を上手く使っていくことができるとよいでしょう。しかし、ひとことで視覚情報といっても、どのようなものでどのくらいの量なら適しているかは子どもによって違います。

また、「聞きながら書く」「見ながら書く」「話しながら作業する」など、一度に2つの感覚を使っていく場合は、ワーキングメモリー指標(WMI)や処理速度指標(PSI)も見ていく必要があります

一方、言語理解指標(VCI)が高い場合は、言葉から考えていくことが得意な子といえます。

ですが、ワーキングメモリー指標(WMI)が低ければ、言葉を理解することは得意でも、一度に伝える言葉の量や伝え方に配慮が必要となります。

また、知っている言葉の数は多くても、場面によって使い分けられる言葉の意味理解や、状況に応じて的確な言葉を選んで表現することが苦手な子どももいます。語彙量(辞書的な言葉)=言語的コミュニケーション力ではないのです。

このように、一つの指標から読み取るのではなく、互いに関連し合っている能力を総合的に見ていくことが必要です。

得意な力で苦手なところを補うことができるといわれますが、どのようにして補うことができるのか、苦手な力がどのように影響してくるのか、得意な力の中にもばらつきがあるのかなども含め、それぞれの子どもの結果を丁寧に見ていくことが必要です。それができるのが、経験を積んだ専門家になります。

<WISCの体験談記事はこちら>

WISC(ウィスク)検査の結果で分かった育てづらい理由と個性の生かし方【編集部の体験リポート】
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検査は約60分、子どもひとりで行う

検査時間は1回60分から1時間30分を目途に実施します。子どもの年齢、注意集中力、その日の状態をみながら、1回でとるか2回に分けるかを決めます。

基本的に検査は子どもがひとりで受けますが、保護者と離れるのが難しい場合は、分離ができるようになってから行うケースもあります。

また、検査を行う人や子どもの言葉が聞き取りやすいように検査は刺激のない静かな環境で行います。ただでさえ検査に緊張はつきものです。新しい場面や人に緊張が高い子どもの場合、少しでも安心して落ち着いて検査に取り組むことができるように、事前に検査環境を確認するなど準備ができると安心ですね。

正しい測定のために実施内容は公表していない

子どもの能力を正しく測定できるようにWISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)は、具体的な検査内容を公表していません。ですが検査者(テスター)の指示に従って、ひとつずつ課題に取り組んでいきます。

途中で注意・集中がきれてしまい、課題に取り組むことが難しくなった場合は、その日は終了し、後日その続きから行います。最後まで取り組めた、という達成感を子どもが持てるようにします。

また、以前検査を受けたことがあり、再度検査を実施する場合は、最低でも1年程度間隔をあけることが望まれます。さまざまな理由から途中で検査を中止した場合も同じです。

子どもが検査を嫌がるときは

いかに保護者が必要な検査だと理解していても、子ども自身が検査に前向きな気持ちになれないこともあるかもしれません。

検査は非日常的な場面であり、少なからず負担や緊張を与えます。年齢が低ければ、クイズのように楽しく取り組める子もいるかもしれませんが、小学校中学年以降になれば、子ども自身が納得して検査を受けることが、検査時のモチベーションに繋がります

子どもが困っているかどうか、自分のことを知りたいと少し思えてきているかどうかで、検査時期を調整することが必要になるかもしれません。

周囲は困っているけれど、本人はそれほど気にしていない、という時は、少し時間を置く方がよいときもあります。最適なタイミングを探っていくことができるとよいですね。

それ以外には、引っ越しの前後、受験の直前直後、家庭環境の変化など、気持ちが落ち着かないときも、できれば時期を検討できるとよいでしょう。

迷われた時は、ぜひ専門家に一度相談してみてください。スクールカウンセラーや教育センターなどで相談ができると思います。

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検査結果が子どもに不利にはならない

WISCの検査を受けることに関して、迷っている人も多いと思います。

もしかすると、検査を受けることが子どものその後の生活に不利に働くのではないか、といった懸念があるかもしれません。

「検査結果が後々の進学や受験に影響するのでは?」と心配になる人もいるかもしれません。ですが、WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)は子どもの学力や優劣を測るものではありません。

現在の教育現場では、子ども一人ひとりに対する困り感に対して、できる範囲で支援・配慮をしていくことが学校の提供義務になっています。

どんな支援・配慮をするのかを学校が一方的に決めていくのではなく、保護者と話し合いながら決めていきます。そのためにWISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)は使われます。

子どもの長いライフサイクルの中で、WISC-Ⅳ(ウィスク・フォー)検査が一つの通過点となり、その後の生活がより豊かで実りあることを願っています。

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鈴木こずえ

小学校・中学校でスクールカウンセラーとして15年以上勤務経験があるほか、現在は、教育相談センターのカウンセラーとして、小中高生と保護者のカウンセリングを行っている。不登校、発達障害、緘黙、行動面での問題など、成長過程での身体・精神両面におけるさまざまな相談に応えている。

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