WISC-Ⅴ(ウィスク5)とは?Ⅳとの違いや検査内容・指標を専門家が解説
WISC(ウィスク)は、日本を含め世界各地で広く行われている児童向けの知能検査です。ウェクスラー式知能検査のひとつで、5歳0か月~16歳11ヵ月の子どもを対象としています。今回は、長年多くの子どもの支援に携わってきたWISCのスペシャリスト・心理士の車重徳さんに最新版のWISC-Vについてお聞きしました。
目次
WISC(ウィスク)検査とは?
WISCとは、(Wechsler Intelligence Scale for Children)の頭文字をとった名称で、デビッド・ウェクスラー博士が作成した5歳0か月~16歳11か月までの子どもを対象にした知能検査です。
WISCにより、○歳○カ月の子のIQの平均値を100としたときに、その子はどれぐらいのIQがあるのかを調べます。年齢だけではなく月齢まで含めるのは、月齢によって検査結果に差が出ることがあるためです。
WISC以外でウェクスラー博士が作成した知能検査には、2歳6か月から7歳3カ月を対象としたWPPSI(ウィプシ)、16歳~90歳11か月が対象のWAIS(ウェイス)があります。なおWISCの最新版WISC-Ⅴは、2022年の2月に日本版が発売されました。
<各検査については詳しい記事はこちら>
▶WAIS(ウェイス)検査とは?
▶子どもの発達検査・知能検査とは?
WISC検査を受けるメリット
1:子どもに合った適切な対処法が分かる
WISCでは子どもの得意なことや苦手なことなどといった特性を数値で可視化して把握することができるため、その後の生活にいかすことができます。
たとえば日常生活で子どもが何らかの支障をかかえていたり、周りとトラブルを起こしたりしやすいといった場合、その原因が子どもの特性と関係がある可能性があります。そんなとき子どもの特性が分かっていれば、親側も「この子は○○が弱い・苦手だからこういう対応をしよう」「ここは苦手だから、得意なことでカバーしよう」というふうに対処ができるのです。
2:不得意な部分を改善できる
検査を受けて低いところがあったとしても、子どもの頃であれば多少時間はかかるものの、トレーニングで伸ばせる可能性があります。
たとえば検査の結果、「場の空気を読むのが苦手」だと分かったとします。「場の空気を読むのが苦手」なのが一概にダメなわけではないですが、日常生活で困りごとが生じやすいですよね。子どもであれば周りからいじめられる原因になることもあります。そんな場合でもトレーニングで数値を伸ばせれば、それまでうまくいかないことが多かった学校生活が、楽しいものとなるかもしれません。
わが子の知能や特性、どこまで知っていますか?
WISCは、子どもの発達状況や得意・不得意を知るのにとても役立つ検査。WISCを受けるメリットや検査でわかること、生活面や学習面にどう活かせるのか、詳しくチェックしてみませんか?
WISC検査について詳しくはこちらWISCの最新版・WISC-Ⅴで何が分かる?5つの指標について
WISCの最新版であるWISC-Ⅴでは、
・FSIQ(全検査IQ)…総合的な知能指数
・5つの主要指標(言語理解・視空間・流動性推理・ワーキングメモリー・処理速度)
を調べます。
WISC-Vを構成する5つの主要指標により、「どういったことが得意で、どういったことが苦手か」を知ることができます。なお5つの主要指標の内容は、以下の通りです。
言語理解指標(VCI)
語彙力や言語で説明する力および他者の話を理解する力を数値化したものです。
言語理解指標の数値が低いと
- 先生の指示や授業内容の理解が難しい
- 音読や作文、読解が苦手
- 言葉でうまく説明できず、相手に分かってもらえない
- 自分の気持ちを言葉で表現することが苦手
といった傾向があります。
<言語理解指標(VCI)について詳しい記事はこちら>
▶WISC-Vの言語理解指標(VCI)とは?
視空間指標(VSI)
視覚的情報を処理し、空間の全体的なイメージをつかむ力、視覚的なパターンや刺激の知覚、分析、貯蔵、検索、操作、思考に関する力を数値化したものです。
視空間指標の数値が低いと
- 片付けや掃除が苦手
- 工作など手先を使って何か作るのが苦手
- 自分が今どこにいるかなど、位置関係を把握するのが難しい
- 図形を描いたり、グラフや地図を読み取ったりすることが苦手
といった傾向があります。
<視空間指標(VSI)について詳しい記事はこちら>
▶ウィスク検査(WISC-V)の視空間指標とは?
流動性推理指標(FRI)
臨機応変に問題を解決する創造的な知能で、新しい場面に適応するのに必要な力を数値化したものです。
流動性推理指標の数値が低いと
- 場の空気を読むのが苦手
- 先の見通しを立てるのが苦手
- 人の気持ちを推察するのが苦手
- 計画的に行動するのが難しく、場当たり的になりやすい
といった傾向があります。
<流動性推理指標(FRI)について詳しい記事はこちら>
▶知能検査WISC-Vの流動性推理指標とは?
ワーキングメモリー指標(WMI)
情報を短時間記憶にとどめ、その情報をもとにして課題を遂行する力を数値化したものです。
ワーキングメモリー指標の数値が低いと
- 人の話を覚えていられない
- 忘れ物が多い
- マルチタスクが苦手
- 音読、作文、読解、計算、暗記などが苦手
といった傾向があります。
<ワーキングメモリー指標(WMI)について詳しい記事はこちら>
▶WISC-Vのワーキングメモリー指標(WMI)とは?
処理速度指標(PSI)
単純な作業を素早く正確に行う力を数値化したものです。
処理速度指標の数値が低いと
- 行動が遅い
- 読み書きが苦手
- 黒板の文字をノートに書き写すのが遅い
- 集中力が切れやすい
といった傾向があります。
<処理速度指標(PSI)について詳しい記事はこちら>
▶WISC-Vの処理速度指標(PSI)とは?
WISC-Ⅴで受けられる細かい検査は計16種
主要下位検査(10)と二次下位検査(6)の計16種があり、各指標の数値を調べるにあたり必要な検査内容は以下になります(検査を受ける子どもがどんな悩みを抱えているか、または検査で何を知りたいかによって、受ける数や内容は異なります)。
指標 | 検査内容 |
言語理解指標(VCI) | 類似、単語、知識、理解 |
視空間指標(VSI) | 積木模様、パズル |
流動性推理指標(FRI) | 行列推理、バランス、絵の概念、算数 |
ワーキングメモリー指標(WMI) | 数唱、絵のスパン、語音整列 |
処理速度指標(PSI) | 符号、記号探し、絵の抹消 |
詳しい検査内容は、検査結果に影響が出るおそれがあるため公表されておりませんが主にクイズやパズル、間違い探しなどを行います。
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結果解説&アドバイスを受けたい方はこちらWISC-ⅤとWISC-Ⅳの大きな違いとは?
WISC-ⅤとWISC-Ⅴの前の版であるWISC-Ⅳは、いくつかの点が異なりますが、大きな違いとしては以下の2つが挙げられます。
1:知覚推理指標が視空間指標・流動性推理指標に分かれた
WISC-Ⅳにおいては、空間認識を見るという項目と、場の空気を読んだり人の気持ちを推察したり、先の見通しを立てたりする項目がひとつになって知覚推理という指標になっていましたが、WISC-Ⅴではそれぞれの項目がわかれて視空間指標、流動性推理指標になりました。
2:「ワーキングメモリー」が聴覚的短期記憶だけでなく、視覚的短期記憶も評価するようになった
WISC-Ⅳにおいてワーキングメモリー指標は、聴覚からの短期記憶だけを評価していましたが、WISC-Ⅴでは聴覚に加え、視覚からの短期記憶の数値をはかることができるようになりました。
<WISC-Ⅳについて詳しい記事はこちら>
▶知能検査WISC4とは?
WISC検査の結果の見方について
WISCの検査結果では、5つの検査項目と、そのすべての検査結果から算出された「FSIQ(全検査)」についての数値が出ます。そして各項目ごとに「合成得点」「パーセンタイル」といった記載があります。
「FSIQ」はいわゆるIQを指し、「合成得点」がその子のIQとなります。なお最小値が40で最高値は160、平均値は100です。グレーソーンは70から80と言われています。
「パーセンタイル」とは、当該年齢レベルでその子より下の数値の子が何パーセントいるのかをあらわします。たとえばFSIQのパーセンタイルが12の場合、この子が10歳0か月だとしたら同じ10歳0か月の中から無作為に100人データを集めて並べると、88番目で下に12人いる、ということになります。
仮にFSIQの合成得点が82、パーセンタイルが12だったとします。IQが82であればグレーゾーンでもなく普通かと思いますが、100人いたら下に12人しかしないことになります。IQだけではなくパーセンタイルも意識して見ることで、「何が得意で何が不得意なのか」がより詳しく分かるのです。
<WISC検査の結果の見方について詳しい記事はこちら>
▶WISC検査の結果の見方
WISC検査はどこで受けられるか
まず前提として、WISCの検査は、検査を作成した日本文化科学社が定めた厳しい基準に沿った、公認心理師を始めとする資格保持者しか行うことができません。そのため、検査を受けるには、前出の資格保持者が在籍する施設などに出向く必要があります(出張で検査を行う施設も一部あります)。
市区町村の教育研究所
学校に「どういう理由でWISCを受けたいのか」を説明し、学校側から教育委員会に依頼して、検査を受ける方法があります。
教育研究所で受けるメリットは無料であることですが、受けられるまでに時間がかかりますし、希望者全員が検査を受けられるわけではありません。また、検査結果をもらえない場合もあります。
病院(公認心理師や臨床心理士が在籍する小児精神科、発達外来)
公認心理師や臨床心理士が在籍する病院でも受けられます。
ただ一度病院に行ってすぐに受けられるわけではなく、何回か通院する必要があります。また予約がなかなか取れない、検査自体もなかなか受けられない、ということもよくあります。
そして病院で受けると検査結果の説明をあまりしてもらえない、という問題があります。検査結果をもらえるとしても別途費用がかかりますが、検査自体は保険適用になります。
放課後等デイサービス
放課後等デイサービスに公認心理師や臨床心理士が在籍している場合は、通所している子どもに限られることがありますが、検査を受けられる場合があります。
民間の施設
数は少ないですが、民間の施設(カウンセリングルームなど)でも検査を受けられます。検査費用は実費になりますが、教育研究所や病院などに比べて待たずに受けられるのがメリットです。また検査結果についてしっかり時間をとって説明してもらえることが多いです。
またソクたま相談室でもWISC検査を扱う専門家が在籍しています。気になる方はチェックしてみてください。
検査にかかる費用や時間
学校を通して教育研究所で受ける場合は無料ですし、病院では保険が適用されます。また病院で検査結果をもらう場合は、別途費用がかかります。民間の施設で受ける場合は2万円程度が相場ですが、施設により異なります。気になる場合はホームページで調べたり、問い合わせてみたりしてください。
なお検査にかかる時間は実質45~60分程度ですが、雑談などをするため最大で90分ほどかかります。
WISC検査を受ける際の注意点
検査の前日の夜は十分に睡眠を取って、検査に備えましょう。平日であれば、できれば学校を休むのが望ましいでしょう。授業や部活などが終わって疲れた状態で受けると、正しい検査結果が出ないおそれがあるためです。また検査を受けると1年間は再検査ができませんので、その点も注意しましょう。
検査を受けたあとにすべき対応とは?
検査結果を見て子どもの得意・不得意を把握し、今後の生活に役立てていきましょう。また検査結果を学校や病院などと共有することで、今後どうしていくかを考える指標としても役立ちます。
検査結果によっては公的な支援がされることもあり、病院の受診がすすめられることもあります。何か不安なことや気になることがあれば、自治体の特別支援教育課や教育相談センターなどに相談してみてください。
わが子の知能や特性、どこまで知っていますか?
WISCは、子どもの発達状況や得意・不得意を知るのにとても役立つ検査。WISCを受けるメリットや検査でわかること、生活面や学習面にどう活かせるのか、詳しくチェックしてみませんか?
WISC検査について詳しくはこちら子育てのお悩みを
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