2020.02.10

体験リポート/子どもの得意・不得意が分かる「WISC-Ⅳ検査」で知ったわが子の能力と育て方

「こんなに〇〇ができないのはうちの子だけ?」「うちの子はこのままで大丈夫?」など、子どもの成長に不安を感じたことはありませんか。子どもの“苦手”が、範囲内のことなのか、それとも、範囲からはみ出しているのかをどうすれば知ることができるのでしょう。そこで、今回紹介するのは、子どもの能力を客観的な数値で知ることができる知能検査「WISC-Ⅳ(ウィスクフォー)検査」です。現在、小学3年生の娘の“苦手”に対して不安を抱える編集部員が実際に検査を体験。その結果、分かったこと、変わっていったことをリポートします。

  • rss
  • google
  • bing

<目次>

1:世界中で使われている知能検査「WISC-Ⅳ(ウィスクフォー)検査」とは

2:約60分という長時間の検査でも子どもへの負担は少ない!?

・いざ「WISC-Ⅳ検査」へ

・気になる検査の内容は?

3:同じ年齢の子どもと比べた娘の能力は?

・困りごとに照らし合わせてみると…

4:弱かった能力は努力すれば上げていける

・空間認識力を上げていくために…

・記憶しながら手作業する力を上げるために…

・コミュニケーション力を上げるために…

5:検査を終えて感じたメリット・デメリット

・メリット

・デメリット

6:「WISC-Ⅳ(ウィスクフォー)検査」を受けるときに注意したいこと

 

世界中で使われている知能検査「WISC-Ⅳ(ウィスクフォー)検査」とは

まずは、「WISC-Ⅳ(ウィスクフォー)検査」について紹介しましょう。

 

「WISC-Ⅳ検査」とは、5歳~16歳11ヶ月の児童を対象にした知能検査のこと。現在、世界中で使われており、60~90分の検査で、下記の4つの指標とそれらを合成して算出する全般的なIQ(全検査IQ)が分かります。

 

 

ただし、検査の目的はIQを知ることではありません。客観的なデータで子どもの個性を知り、今後に役立てていくためのものです。

 

「WISC-Ⅳ検査」で分かる4つの指標

 

言語理解(Verbal Comprehension Index: VCI)

言語の理解力や表現力、言語による推理力や思考力、語彙力など、言葉にまつわる知能。

 

知覚推理(Perceptual Reasoning Index: PRI)

空間の認知や目でみたものを理解し、表現する力。

 

ワーキングメモリー(Working Memory Index: WMI)

注意力や集中力のほか複数の情報を同時に処理したり、順序立てて処理したりする力。

 

処理速度(Processing Speed Index: PSI)

どれぐらい早く物事を処理できるのかという能力。

 

しかし、このような指標が分かるからといって、具体的に子どものどんなことが分かるかピンときませんよね。

 

実は、次のようなことが分かるのです。

 

例えば、黒板を書き写すのが遅い子の場合、なぜ遅くなっているのかということまでは、観察でもしていない限り分かりませんよね。親は、子どもの帰宅後、書き途中になっているノートを見て「書かねばならない時間に、ほかの子と話でもしているのではないか」「そもそも授業をきちんと聞いているのだろうか」と、マイナスの方向へ妄想をしてしまいがちです。

 

しかし、「WISC-Ⅳ検査」で4つの指標結果が分かると次のように分析できるのです。

 

「WISC-Ⅳ検査」で処理速度指標が低いという結果が出た場合…

この子は、処理速度が低いので、黒板の文字を一度では記憶できずに、何度も見返しているのかもしれない。見る動作がほかの子より多いため結果的に書き終わるのに時間がかかるのではないか…。

 

このように、検査結果から子どもの“苦手”の原因がどの能力にあるのかを分析することができるのです。

 

また、「WISC-Ⅳ検査」を実施できるのは、十分なトレーニングを積んだ心理士など。今回は、これまでに700件以上の「WISC-Ⅳ検査」を実施してきた心理士の車重徳さんに検査をしてもらいました。

 

<記事の監修> 

車 重徳さん

心理士、カウンセラー、アンガーマネジメントファシリテーター。長年、発達障害や学習障害、精神疾患の子どもや大人のサポートや指導に従事。「WISC-Ⅳ検査」については、臨床心理士に対しての研修や指導も行っている。

https://www.street-academy.com/steachers/267516

 

 

約60分という長時間の検査でも子どもへの負担は少ない!?

そもそも、「WISC-Ⅳ検査」を行おうとしたきっかけは、幼少期から子どもの言動を抱いていたことと、小学3年生の娘に下記のような悩みがあったからでした。

 

<娘の困りごと>

・(親から見て)ガールズトークの空気を読むのが下手で気が付くとひとりになっている。

・おしゃべりなのに会話のキャッチボールが下手。

・話しかけるタイミングが悪い。

・よく言えばのんびりやさん。悪く言えばノロくて、よくグループ行動で遅れてしまう。

・モノを片付けたり、探したりするのが異常にヘタ。

 

書き連ねてみると小さなことばかりに見えるかもしれません。しかし、「クラスで女子のプループに入れない」「気が付くとひとりぼっち」など、本人が友人関係で悩むことが増えてきたので「WISC-Ⅳ検査」を受けてみることにしたのです。

 

また、上記の内容は、事前に検査を行う車さんにも伝えています。

 

いざ「WISC-Ⅳ検査」へ

検査会場は、ソクたま編集部があるオフィスの会議室。娘にとってはオフィスというアウェイな空間で、検査を行ってくれる車さんも初対面です。

 

比較的、人見知りはしないタイプの娘でも、検査前は「緊張している」と話していました。

 

一方、母親の私が気になっていたのは、本人の集中力です。普段は、学校の宿題をしていてもほかのことに気を取られ、たった1ページの算数ドリルを終わらせるのに1時間もかかってしまうのです。そんな娘が無事に約60分の検査に集中できるのか心配をしていました。

 

しかし、何事もチャレンジしてみないことには始まりません。保護者は検査に同席できないため、娘を車さんの待つ会議室へ送り出しました。

 

待つこと、約1時間…。

 

 

会議室から出てきた娘は、予想に反して楽しそうな笑顔で「先生とお話していたら、あっという間に終わっちゃったよ」とのこと。

 

「WISC-Ⅳ検査」は5歳から受けられますが、集中力が続かない子どもでも受けやすいようにできているのかもしれません。

 

 

気になる検査の内容は?

検査後、約1時間は、車さんによる分析タイムです。その間に、娘にどんなことをしていたのか検査内容を聞いてみると?

 

 

「間違い探しをしたり、絵を見て話をしたり、積み木をしたり。少しだけ難しいなと思うときもあったけれど、学校のテストみたいな紙のテストじゃないから楽しかった」とのこと。

 

と言われても、「この小3レベルの説明では、結局、どんなことをしたのか分からない…」と思ったことでしょう。しかし、娘の国語力はさておき、実は「WISC-Ⅳ検査」の検査内容は、この程度しか説明できないのです。

 

車さんに聞いた話によると、「WISC検査」が以前のバージョン(「WISC-Ⅲ検査」)のとき、検査結果の数値をあげるために検査内容を予習をして挑む親子が出てきたそう。

 

当然、本人の能力以上の結果が出てしまうため、正しい結果が測定できません。二度とこのようなことにならないよう、現在の「WISC-Ⅳ検査」では、検査内容は一切公表できないことになっているのです。

 

 

 

同じ年齢の子どもと比べた娘の能力は?

約1時間後、いよいよ分析結果の公表です。最初に、車さんから娘に対する今後のアドバイスを聞いた後、検査結果の詳細を話してもらうことに。私は、娘本人に配慮して言葉が濁されるのがイヤだったため、ひとりで分析結果を聞かせてもらいました。

 

 

「WISC-Ⅳ検査」では、個人の能力を同じ年齢(月齢)の子の平均値と比較して結果が出ます。娘の分析結果の特徴的な部分をまとめると次の通りでした。

 

<娘の検査結果>

・全体的なIQは同年齢の子どものほぼ平均値

・言語理解力は実年齢より高め

・空間認識が弱いほか、頭の中で情報を整理し、その先を想像するのが苦手

・自分の思いが先行しがち

・耳からの情報を短期的に記憶するのが苦手

・何かを記憶しながら手作業をしていくのが苦手

 

困りごとに照らし合わせてみると…

次に、事前に伝えていた困りごとに照らし合わせながら娘の傾向を聞きました。

 

<こんな困りごとに対しては?>

・(親から見て)ガールズトークの空気を読むのが下手で気が付くとひとりになっている。

・おしゃべりなのに会話のキャッチボールが下手。

・話しかけるタイミングが悪い。

 

車さんによると、周囲の空気を読んだり、人の感情を察するのは年相応レベルということ。では、なぜコミュニケーション能力が弱いのかというと、自分の思いを先行して突っ走る傾向があるほか、耳からの短期記憶が弱いため、会話の際に質問された内容を記憶しながら返事をするのが苦手かもしれず、少しズレた返事をしたりする傾向があるよう。

 

確かに、娘と会話をしていると、理解できないことはないものの「?」と思う返事が返ってくることがあります。例えば、「今日は寒いね」と声をかけたら、「雪だるま作りたいな」と返ってくるような。

 

寒い→冬→雪→雪だるま、といったように会話の相手が大人なら言葉を連想させて会話を続けさせることができますが、同年代のお友達からしたら「会話がかみ合わない」「話しづらい」と思うかもしれません。

 

また、言語理解力が高いため、周囲の友達が理解できない単語を使用してしまうこともあるかもしれないということでした。

 

<こんな困りごとに対しては?>

 ・よく言えばのんびりやさん。悪く言えばノロくて、よくグループ行動で遅れてしまう。

行動が遅いのは、記憶しながら作業するのが苦手だったり、物事をていねいにすすめたくて時間をかけてしまう傾向があるからとのことでした。

 

<こんな困りごとに対しては?>

・モノを片付けたり、見つけるのが異常にヘタ。

モノを片付けたり、見つけたりするのが下手なのは、空間認識が苦手なため。どこに片付ければいいのかという判断ができなかったり、モノを探すときは視界に入っていても、そのモノに焦点を合わせることが苦手なためということでした。

 

車さんの分析は、娘の普段の言動と照らし合わせると思い当たることばかり。そのときどきにモヤッと湧き上がり、言葉にしづらかった娘への違和感が理論立てて話してもらえたので頭の中がスッキリしました。

 

 

ちなみに、車さんが娘に対して話したことは、娘の夢(ファッションデザイナー)に絡めたアドバイスでした。夢を叶えるために今からできることとして、本で見たステキな洋服を描きうつし(記憶しながらの手作業)それを人形用に作ってみる(視覚情報を頭の中で具現化する=空間認識力を上げる作業)ということをすすめてくれました。

 

 

弱かった能力は努力すれば上げていける

また、分析結果だけでなく、どうすれば苦手な部分を改善していけるのかというアドバイスもしてくれた車さん。

 

空間認識力を上げていくために…

すすめてくれたのは、パズルや迷路のほか、手先を使って組み立てたり作ったりするもの(レゴなど)。

 

記憶しながら手作業する力を上げるために…

間違い探しや「ウォーリーを探せ」のように同じようなものがたくさんあるなかから目当てのものを選んでいくもの。

 

コミュニケーション力を上げるために…

少女マンガなどを読ませて、そのときの登場人物の気持ちを母娘で話し合う。また、娘と同じように言語理解が高い読書好きな子や年上の子のほうが会話が合うかもしれないとのこと。

 

また、コグトレなど認知機能を鍛えるトレーニングもいいそうです。

 

コグトレについてはこちらの記事で紹介しています。

【コグトレ➀】認知機能を高めて学力やコミュ力アップへ

【コグトレ②・無料プリント付き】認知機能を上げるトレーニングにトライー覚える・数える編―

【コグトレ③・無料プリント付き】 家庭で認知トレーニングー写す・見つける・想像する編―

 

車さんいわく、「WISC-Ⅳ検査」は、再び受けるまでに約2年は間を空けたほうがいいといわれています。その間、上記のような方法で苦手なところを楽しくトレーニングしていけば、今は低い能力も上がっていくそうです。

 

検査後には、こちらの本を購入しました

 

 

検査を終えて感じたメリット・デメリット

現在、「WISC-Ⅳ検査」から約1カ月経ち、検査を受けたことに関して感じているメリットとデメリットは次のようなことです。

 

メリット

・娘への理解が深くなった

・怒るより、見守るようになった

・苦手なことも改善していけることが分かっているので不安が減った

 

これまではできないこと、娘のできないことに対して「なぜ」「どうして」と思う部分が大きかった気がします。

 

例えば、これまではモノを探すのに時間がかかっていると「またなの?」とすぐに怒っていましたが、今は、娘の苦手分野だからと思い、「多少時間がかかっても見守ろう」「探しているこの経験もトレーニングのひとつ」だと思えるようになったのです。

 

娘自身も、「やっぱりモノ探しは苦手だから間違い探しをもっとやらなくちゃ」と言って、これまではゲームやネットに費やしていた時間を間違い探しに使うようになりました。

 

これまでは、一方的に怒って終わりだったトラブルが、母娘ともに成長するための過程としてとらえられるようになった気がします。

 

 

デメリット

・能力が弱いのは、親のせいかもしれないと落ち込む。

・子どもによっては能力の弱さに落ち込むかもしれない

 

車さんも話していましたが、結果を聞くと多くの親が「この子の能力が弱いのは、(親である)私のせいかもしれない」と思うそうです。

 

私も、「この子が赤ちゃんの頃から積極的に育児サークルなどに参加して、同年代の子ともっと触れさせておけば、コミュニケーション力は上がったのかな」などと悩んだりしました。

 

自分を責めてしまいがちな親の場合、「WISC-Ⅳ検査」で受けるダメージは大きいかもしれません。

 

しかし、車さんいわく「大事なのは、過去ではなくこれからです」。落ち込んでも、前を見ていけるように気持ちを切り替えられるのであれば、結果を知らないより、知っている方が子どもを成長させてあげられるのではないかと感じました。

 

 

また、私は、車さんから聞いた話をかみ砕いて娘自身にも伝えました。それは、やみくもに「間違い探しをしようよ」「レゴをしたら」と言ってものってくれないと思ったからです。

 

先ほどの検査で、どういうことが分かったのか、苦手な部分を直していくためには何をしたらいいのかを話したことで、娘と見ている方向がひとつになった気もします。

 

しかし、苦手なこと・弱い能力を指摘されることでプライドが傷ついて後ろ向きになったり、反感を覚えてしまうような子だったりすると、立て直すのに時間がかかるかもしれません。

 

 

 

「WISC-Ⅳ(ウィスクフォー)検査」を受けるときに注意したいこと

これまで、私たち母娘が体験した「WISC-Ⅳ検査」について書いてきましたが、あくまでこれはわが家のケースです。

 

検査をする人や受ける人の状況によって、料金も教えてもらえる内容も異なります。

 

今回、娘の検査を行ってくれた心理士の車さんは、個人的に「WISC-Ⅳ検査」を受けたいという人に対応して出張検査を行ってくれています。検査費用は、ほかに比べてかかりますが、細かな分析から、具体的な困りごとへのアドバイスまでかなり親身に答えてくれました。

 

一方、例えば、学校の発達相談室や自治体の発達支援センター教育委員会を経由して心理士に検査をしてもらう場合、基本的には検査費用は無料です。しかし、どこまで詳しく分析してくれるかは心理士によります。また、「特別支援学級」「特別支援学校」への進路・進級のために受ける人も多いので、冬~春にかけては検査申し込みが殺到し、数カ月待ちになる場合もあるようです。

 

さらに、発達障害などの診断のために病院やクリニックで「WISC-Ⅳ検査」を行うケースもあります(保険適用)。ただし、あくまで診断材料のための検査なので、分析などはしてくれないケースがほとんどのよう。なかには、結果すら教えてもらえないこともあるそうです。

 

 

また、「WISC-Ⅳ検査」は、発達障害を診断するときの指針のひとつに使われることがあります。ですが、発達障害を診断するためのものではありません

 

医学的な診断には、医師による総合的な判断が必要です。「WISC-Ⅳ検査」だけで発達障害かどうかは判断できません。ですが、病名などはさておき、「子どものことをもっと理解したい」「子どもが生きやすい環境をつくりたい」「子どもの個性を生かして成長させてあげたい」と考えるなら、「WISC-Ⅳ検査」は親子にとって大きな助けになると思います。

 

※記事内容の大半は個人の感想によるものです。検査の詳細などは、各専門家、専門機関へ相談ください

 

神田司

神田つかさ

ソクラテスのたまご編集部の一員。大学卒業後、新聞社勤務を経てフリーランスへ転身。週刊誌、女性誌のほか書籍などの編集、執筆も手掛ける。プライベートでは2児の母であり、社会福祉士の資格取得に向けて勉強中。

\ SNSでシェアしよう /

  • rss
  • google
  • bing
  • この記事が気に入ったら
    いいね!しよう

    最新情報をお届けします