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2024.06.27

WISC-Vの処理速度指標(PSI)とは?低い子の特徴や対応のコツを専門家が解説

WISC-Ⅴ検査の主要指標のひとつ「処理速度指標(PSI)」は、子どもが持つ情報処理や作業のスピードと正確さを測る指標です。
処理速度が低い子の特徴や困りごととともに、トレーニング方法や接し方のポイントについてWISC-Vの検査を多数実施している心理士の車重徳さんに解説してもらいました。

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監修者

車 重徳さん

発達障害ラボ代表、心理士、カウンセラー、教員、 保育士、介護福祉士。長年、発達障害や学習障害、精神疾患の子ど もや大人のサポートや指導に従事。 「WISC-Ⅴ検査」については、公認心理師や臨床心理士に対しての研修や指導も行っている。

WISC-Vの処理速度指標(PSI)とは?

WISC-Vの処理速度指標(PSI)とは?

WISC検査の指標のひとつである処理速度指標(PSI)とは、視覚的に得た情報を処理し作業するスピードと正確さを数値で示したもので、さらに「継次処理」と「同時処理」の2種類にわけて見ることができます。

①継次処理

継次処理とは、ひとつずつ作業を進めることを意味します。学校生活であれば、先生が黒板に書いた文字をノートに書きうつす作業などを指します。

この継次処理が苦手だと黒板の文字をノートに書き写すのが遅くなります。場合によっては授業についていけなくなり、不登校になる子も。しかし、トレーニングをすればこの作業スピードを改善することも可能です。

同時処理

同時処理とは2つのことを同時並行で進めることを意味します。学校生活では、先生の話を聞きながらメモしたり、音読したりすることなどが該当します。

そもそもWISC-Ⅴ(ウィスク5)検査とは

WISC-Ⅴ(ウィスク5)検査とは、5歳0か月~16歳11ヵ月の子どもを対象とした知能検査です。○歳○カ月の子のIQの平均値を100としたときに、その子のIQがどのくらいなのかを調べます。

2022年2月に発売された最新版のWISC-Vでは、全体的な知能指数だけでなく5つの指標についても知ることができ、「子どもの得意なこと・苦手なこと」を把握できます。

処理速度指標(PSI)の検査項目は?

処理速度指標の数値を出すために受ける検査の内容は、「符号」と「記号探し」の2二つです。必要に応じて補助検査である二次下位検査が実施されます。

※注 WISC-Ⅳにおいて基本検査と呼ばれていたものはWISC-Vで主要下位検査となり、WISC-Ⅳにおいて補助検査と呼ばれていたものはWISC-Vで二次下位検査となっています。

必ず受ける検査(主要下位検査)

検査項目検査で分かること
符号板書されたものなどを書き写す能力
記号同時処理能力

必要に応じて受ける検査(二次下位検査)

検査項目検査で分かること
絵の抹消たくさんあるものの中から必要なものを見つけ出す能力

WISC検査の5つの主要指標のなかには、ひとつ前のWISC-Ⅳから最新のWISC-Vに移行するにあたって、検査内容などに変更があったものもあります。しかし、処理速度指標に関しては、検査内容や検査の数、検査結果の見方などについての変更点はありません。

<関連記事>WISC-VとWISC-Ⅳの違いや検査の概要については、こちらの記事で解説しています。

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わが子の知能や特性、どこまで知っていますか?

WISCは、子どもの発達状況や得意・不得意を知るのにとても役立つ検査。WISCを受けるメリットや検査でわかること、生活面や学習面にどう活かせるのか、詳しくチェックしてみませんか?

WISC検査について詳しくはこちら
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処理速度が低い子どもの特徴とよくある困りごと

処理速度が低い子どもの特徴とよくある困りごと

処理速度指標の数値が低い子には、どのような困りごとがあるのでしょうか。生活面と学習面に分けて紹介します。

日常生活での特徴や困りごと

  • 行動がいつもワンテンポやツーテンポ遅れてしまう
  • 朝の登校や明日の準備などが遅い
  • お友だちと同じスピードで遊べないので、孤立してしまう

処理速度指標の数値が低い子は、行動が周りの子たちより遅れがちな傾向があります。そして宿題や学校の準備、お片付けなど、日常生活のなかでやらなければいけないことをなかなかやらない、ということも多いのです。

また、行動やコミュニケーションの速さの違いから友達とうまく遊べず、人間関係の面でも苦労することがあります。

学習面での特徴や困りごと

  • 授業でノートへの板書が間に合わない
  • 解けるはずの問題でもテストで時間切れになる
  • 宿題になかなか取り掛かれない

ひとつずつ作業を進める継時処理が苦手なことで、学校の授業で黒板に書かれた文字をノートに書き写すことができず、書き終わる前に先生が黒板を消してしまうということがあります。

また、テストでは、あとで見返した時に解ける問題があったとしても、実際のテストの時間では時間切れになってしまい、全部の問題に手を付けることができない、ということも珍しくありません。宿題になかなか取りかかれず、怠けているように見えてしまうこともあります。

また、学習障害がある場合、この処理速度指標の数値が低いということも少なくありません

処理速度だけ低い子や言語理解が高く処理速度が低い子の特徴

処理速度の低さ単体だけでなく、WISC検査の各指標のバランスによっても悩みを持つ可能性があります。

例えば、言語理解の能力が高いと色々なことが分かっているのですが、処理速度の能力が低いことによってなかなか行動に移すことができず、結果として口先だけで行動が伴わなくなってしまうことがあります。

WISC-Ⅴ検査の流動性推理指標(FRI)やWISC-Ⅳ検査の知覚推理指標(PRI)の数値が高い子は自分を客観的に見ることができます。しかし、同時に処理速度の能力が低いと、客観的にみた際に自分と周囲に乖離があることが分かってしまい、結果として自己肯定感を下げてしまうことがあります。

また、ワーキングメモリー指標(WMI)の数値が高く記憶力が良くても、処理速度指標の数値が低いために行動が遅くなる、ということもあります。全体的な知能が高くてもこの処理速度指標の数値が低い場合は、なかなか作業が進まず苦しむ、ということもあるのです。

処理速度が高い子どもの特徴とよくある困りごと

処理速度が高い子どもの特徴とよくある困りごと

処理速度指標の数値が高い子どもは作業スピードが速く、単純作業をさっとこなし、板書も得意であることが多いようです。

学習面などでこの処理速度指標の数値が高くて困ることは特にありません。しかしあえて挙げるとすれば、他の子より作業が早く終わってしまうために暇を持て余してしまい、場合によっては他の子にちょっかいを出してしまったりすることがある、ということでしょうか。

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処理速度を鍛えることはできる?具体的なトレーニング方法

検査を受けた結果、数値が低かったら落ち込んでしまうかもしれません。しかしトレーニングをすることで、苦手な部分を改善できる場合があります。ここでは具体的にどのようなことをすればいいのかについて紹介します。

処理速度を鍛えることはできる?具体的なトレーニング方法

処理速度の能力を伸ばす一番簡単な方法としては、鉛筆で「点つなぎ」をすることが挙げられます。時間制限を設けて、きれいに点をつなげていくトレーニングをしましょう。

他には、粘土遊びや、コマ回しや竹とんぼ、おはじきといった昔からある遊びがおすすめです。コマであれば紐をおさえながら回すというのは結構大変なことですし、おはじきであれば相手を落として自分だけ台の上に乗るというのは、力加減が難しいものです。

処理速度の能力を伸ばす方法

これらのトレーニングにおいては、親指、人差し指、中指などそれぞれの指をバラバラに使いこなせるか、というのがカギになります。小さいものをつまんだりねじったりひねったりこねたりして、それぞれの指を別々に使いこなせるようにすることが、板書(鉛筆による動き)をスムーズにすることに繋がります。

また特に小学生の男の子で多いのが、筆圧のコントロールが苦手なことで作業スピードが遅くなる、というケースです。そういった場合でも、おはじきで親指、人差し指、中指、薬指それぞれの指ではじくことで感覚統合のトレーニングができ、指の力加減をコントロールできるようになる効果があります。

処理速度が低い子への接し方のポイント

処理速度が低い子は、日常生活や勉強の面でさまざまな困りごとを感じやすいといえます。では、できるだけスムーズに過ごせるようにするためにはどのように接したら良いのか、コツを紹介します。

処理速度が低い子との接し方のコツ

  • やるべきことに取りかかりやすい環境を整える
  • 事前に効率的なやり方を伝える
  • 作業を効率的にするために必要なものを与えてあげる
  • 作業時間を事前に長くする方法を教えてあげる

処理速度が低い子どもは何をするにも時間がかかってしまうため、やるべき作業にすぐに取り掛かれるような環境調整をしてあげることが大切です。宿題であれば、すぐに取りかかれるように机の上にプリントや課題を開いておいてく、などです。

また、何をするかにもよりますが、作業が必要な場合にどうすれば効率的に作業を進めることができるかを教えて、必要なものがあれば準備しておくことで、スムーズに行動できるでしょう。

作業に時間がかかるのであれば、作業時間を長く取れるようにすることを教えるのも有効です。宿題をやり終えるのに通常30分かかるのであれば、1時間かかることを見越した上で取り掛からせます。

同時処理が強いのか、継次処理が強いのかを判断し、本人にあった方法を教えてあげることが大切です。この傾向を知るためにも、WISC検査が役に立つといえます。

処理速度が低く発達が心配な場合の相談先

家庭でトレーニングするだけでは不安、といった場合などは、専門家に相談してみてください。学校や専門機関、スクールカウンセラーなどに相談し、対応や支援を検討していきましょう。

また、ソクたま相談室に在籍する専門家に相談することも可能です。手元にあるWISC-Ⅴの検査の結果をもとにアドバイスをもらう、ということもできるので気軽に相談してみてくださいね。

わが子の知能や特性、どこまで知っていますか?

WISCは、子どもの発達状況や得意・不得意を知るのにとても役立つ検査。WISCを受けるメリットや検査でわかること、生活面や学習面にどう活かせるのか、詳しくチェックしてみませんか?

WISC検査について詳しくはこちら
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<関連記事>WISC-Vのその他の各指標については、以下の記事で詳しく解説しています。
言語理解指標とは?高い子の特徴や低い子への対応
視空間指標とは?高い子・低い子の特徴と対策
流動性推理指標とは?高い・低い子が抱えやすい問題や対応法
ワーキングメモリー指標とは?短期記憶力と発達障害との関連

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「ソクラテスのたまご」編集部

大人のための子育て・教育情報サイト「ソクラテスのたまご」で、子育て・教育の専門家150名以上の取材協力や監修のもと子育てに関する確かな情報を発信中。子育て・教育の悩みに特化した日本最大のオンライン相談サービス「ソクたま相談室」を運営。編集部員は、全員が子育て中の母親、父親です。|公式インスタグラム公式LINE

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