教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

2019.07.08

夫婦のコミュニケーション不足が子どもの自己肯定感に与える影響とは?

先日、NHKが放送したドキュメンタリー番組によると、夫婦が1日会話をする平均時間は10分程度なのだそう。この数字多いと思いますか? それとも少ない? もっとコミュニケーションを取りたいと思っている家庭もあれば、時間があっても何を話したらいいのかすら分からないという家庭もあることでしょう。しかし、そんな夫婦の関係が子どもの性格や生き方に影響を与えることはないのでしょうか。今回は“夫婦の関係と子どもの自己肯定感”について家庭教育師の藤田郁子さんが解説します。

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夫婦が価値観を否定し合うと子どものエネルギーは奪われる

最初に、以前、私が出会ったある家族のケースを紹介します。


その家庭には、小学生の子どもと教育熱心で厳しい父親、大らかな性格の母親がいました。父親は「子どもの将来のため」に自分が卒業した学校へ行かせたいと考えており、そのために子どもに習い事や塾に通わせながら、家では父親自身が勉強をみていました。

 

一方、母親は、子どもが嫌がっていることが分かっているため「子どもがかわいそう」と父親に言いますが、父親は「お前は何もわかっていない!」と怒鳴り返すだけでいつも夫婦ゲンカに…。家庭内はどんどん険悪な雰囲気になっていき、子どもは「自分のせいで親がケンカする」と悩み、エネルギーが欠乏していった結果、不登校になってしまったのです。


このケースのように、親が「子どものため」と思って行っていることが、逆に子どものエネルギーを奪ってしまう場合があります。今回のケースの場合、その原因のひとつが夫婦の価値観の違いでした。

 

夫婦ともに「子どものため」と思いながらも価値観の違いがあったため、本来であれば子どもがエネルギーチャージをする家庭で、エネルギーを奪うことになってしまったのです。

 

子どもは、親の想像以上に親の顔色をうかがうものです。親が怒る、悲しむことを避けようとします。「家庭内が険悪になっている原因が自分にある」と感じている子どもは、自分の存在を否定し、言いたいことも言えずにストレスを溜めていってしまいます。

 

そもそも価値観は、生きてきた時代や経験によってつくられます。そのため、夫婦や親子で価値観が違うのは当たり前のこと。子どもが自分を否定しなくてもいいように、まずは、夫婦間、親子間で話しやすい環境をつくり、お互いの価値観を知ることから始めなければなりません。

 

そのためには、パートナーや子どもの話を途中で奪わず、最後まで顔色を変えずに話を聞くようにしましょう。パートナーや子どもの話をしっかりと聞き、互いの価値観を尊重できるようになれば家庭の雰囲気も子どもの自己肯定感も変わっていきます。

 

 

 

会話がなくても夫婦のコミュニケーション力は高められる

さらに、夫婦のコミュニケーション力を高めるためにお伝えしたいのが「オアシスはさいこお」というあいさつのルールです。

 

私が所属するスコーレ家庭教育振興協会が小学生を対象に行った調査によると、「一番幸せな時はどんなときですか?」という問いに一番多かった答えが「お父さんとお母さんの仲が良いとき」でした。

 

夫婦のみならず、同居している家族の仲がいいと、家庭が明るく居心地の良い場所になり、子どもは精神的に安定するものです。しかし、夫婦ともに忙しい日々、すれ違いになることも多く、会話できる時間があまりない場合はどうすればいいと思いますか? 

 

そこで考えられたのが「オアシスはさいこお」です。やり方は、簡単。下記の挨拶を意識的に使うようにするだけです。

 

オアシスはさいこお

オ おはようございます
ア ありがとうございます
シ しつれいします
ス すみません
は はい
さ させていただきます
い いただきます
こ こんにちは
お おかげさまで

 

関係性によってすべてをこのまま言わなくても大丈夫です。例えば、家族に対してなら「おはようございます」ではなく「おはよう」でも構いません。どう言い換えるのがいいのか、家庭ごとに似合う言い方を考えてみてください。大切なのは、挨拶や声かけをていねいに行うことです。

 

「おはよう」というたったひとことでも、毎日続けるとその日の相手の体調や心境が伝わるようになるものです。お互いに声をかけ合うことは、気遣い合うということ。それだけで家庭にあたたかな空気が流れるようになっていきますよ。


また、「オアシスはさいこお」は、保護者が他人に対して美しい言葉づかいをすることで、子どもに美しい言葉が身についていくメリットもあります。子どもは美しい言葉を日常的に聞くことでマネをします。家庭に心地いい言葉、あたたかな空気が溢れると、子どもは情緒が安定して自分に自信がもてるようになっていきます。

 

また挨拶ができる子は、どの社会でも他者からも認められやすくなり自己肯定感を持ち続けることができますよ。

 

 

 

コミュニケーションはキャッチボールと同じ

ほかにも、夫婦・親子のコミュニケーション力を高めるために、次の3点を試してみてください。

 

①相手と目を合わせる(出来れば顔をむけるのではなく、おへそを向けて向き合う)

②相手の投げたボールをしっかり受け止める

③優しく相手の取りやすいところにボールを返す 

 

①~③を実践すれば、コミュニケーション能力は格段に上がります。コミュニケーションのコツは、優しく相手が取りやすいところに投げるということ。こちらが取りにくいきついボールを投げれば、相手も同じボールを返してくるというように、お互いに思いやりのボールを投げることでコミュニケーションは上手にいくのです。

 

たまには投げたボールがとんでもない所に飛んでいったり、ボールを受ける気力がない日もあるかもしれません。そんなときは、無理せず「ごめんね」という態度が必要です。

 

そして、何より大切なのは「聴くよ」「聴いてくれてありがとう」というお互いを尊重する姿勢ではないでしょうか。夫婦・親子の温かいコミュニケーションに包まれて育つ子どもは、家族から尊重される存在であり、愛される存在なのだと自己肯定感をもつのです。

 

藤田郁子

藤田郁子

1961年、神戸市生まれ。日本家庭教育学会認定の家庭教育師。幼児生活団の指導者・保育士・健康体操インストラクターなどの経験があり、1991年に公益社団法人スコーレ家庭教育振興協会に入会。日本家庭教育学会第24回大会(2009年)、同32回大会(2017年)では、研究論文を発表したほか、ゲームなど、身体から心の交流をはかる「ふれあいトレーニング」や「キッズ保育者研修」のトレーナーとして活躍中。スコーレ協会の首都圏北地区のリーダーも務めている。

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