【教育政策方針の伝達のしくみ】事例で知る文部科学省と教育員会の関係とは
国が定めた教育政策の方針は、最終的にどのように教育現場に伝えられ、教育が行われているのでしょうか。国の教育行政を行っている文部科学省と地方の教育行政を行っている教育委員会の関係を見ながら、国の教育方針が、教育委員会を経て各学校に伝えられるしくみについて、学校施設の修繕を事例に挙げながら解説します。
国の教育方針はどんな風に学校へ伝えられるの?―通知について―
前回の記事で書いたように、現在日本で行われている教育の全体的な方針は、文部科学省が定めており、その方針は、文書によって、文部科学省から教育委員会そして各学校へ伝えられます。
この文書のことを“通知”といい、教育委員会や各学校へ伝えられることを“通達”といいますが、“通知”自体を“通達”と呼ぶこともあります。
国の教育方針を示した文書である“通知”は、文部科学省から、まず各都道府県の教育委員会へ伝えられます。
高等学校や私立の小・中学校の場合、各都道府県の教育委員会から直接各学校に通達されます。一方、公立の小・中学校の場合は、各都道府県の教育委員会から、いったんその学校がある各市区町村の教育委員会に通達され、さらに各市区町村の教育委員会から各学校へ通達されるというしくみです。
文部科学省と教育委員会の関係―指導・助言について―
次に国が定めた教育方針が、教育委員会を経てどのようにして学校現場に伝わり、教育が実施されるのかについて、具体的に紹介します。2018年6月に文部科学省が通達した、学校設備に関する通知を事例に、文部科学省と教育委員会の関係をみていきましょう。
2018年6月、京阪神地域で起こった地震によって、大阪府にある小学校のブロック塀が倒壊し、死傷者が出る事故が起こりました。その事故を受けて出されたのが「学校施設の維持管理に関する(通知)」です。
同通知には、以下の内容が書かれています。
学校施設は、児童生徒等の学習・生活の場であるとともに、非常災害時には避難所として地域住民の避難生活の拠点としての役割も担うものであるため、日常のみならず災害時においても十分な安全性・機能性を有することが求められます。(中略)学校施設の管理者におかれては、当該施設が常に健全な状態を維持できるよう、適切に維持管理を行っていくことが必要です(中略)このことについて、都道府県教育委員会教育長におかれては、域内の市町村教育委員会に対し、また、都道府県知事におかれては、所轄の私立学校に対して周知するようお願いします
この通知から、文部科学省が、まず各都道府県の教育委員会に対し、コンクリート塀を含めた学校の設備の点検を徹底するよう、各市区町村の教育委員会及び私立学校に呼びかけるよう伝えていることが分かります。
このように、文部科学省が教育委員会に対し、その方針に基づいて教育政策を実施してもらうよう働きかけることを、“指導・助言”といいます。
国の教育方針は、最終的にどうやって学校現場に伝えられるの?
各都道府県の教育委員会は、文部科学省の“通知”をそのまま、あるいは地域の実情に合わせて若干変え、各市区町村の教育委員会に送ります。
その通知は、さらに各市区町村の教育委員会から各学校に伝えられます。この通知の場合、各学校は、通知を受けて、学校の設備の点検を行います。点検の基準は、最終的には各学校で決め、それに基づき実施します。
その後、各学校は、設備の点検を行った結果を、所轄の市区町村の教育委員会に、定められた期日までに報告します。
各市区町村の教育委員会は、各学校の調査結果を集約して、各都道府県の教育委員会に報告します。さらに、各都道府県の教育委員会は、文部科学省に報告をするという流れです。
公立学校の場合、プールのブロック塀などの学校設備の修理費は、各地方自治体の教育予算から賄われています。
なお、地方自治体の教育予算の出所は、下記の図のとおりです。
どの学校の何の設備の修理に対して予算を配分するかは、地方自治体の裁量で決まるため、その対応は、各都道府県及び各市区町村によって異なります。
例えば、プールのブロック塀の破損具合が同じ程度でも、早急に修理が進む地域や学校がある一方、なかなか修理が進まない地域や学校があるのは、このためです。
まとめ
今回は、国の教育方針を文書にした“通知”と、その伝達のしくみから、文部科学省と教育委員会の関係性について解説しました。
国で定めた教育方針は、まず各都道府県の教育委員会、各市区町村の教育委員会に“指導・助言”をし、次に教育委員会で、地域の実情を踏まえて検討してから、各学校に“指導・助言”を行います。
このように、文部科学省と教育委員会は、互いに協力・連携して、実際に教育を行う学校現場に対して、国の教育方針に基づいて教育を行うよう、働きかけているのです。
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琉球大学博物館協力研究員。博士(社会科学)。専門は沖縄近現代教育史。 沖縄戦直後の沖縄が、教育によっていかに復興しようとしたかを主な研究テーマとし、沖縄独自の教科書など、沖縄戦前後に散逸した希少史料の発掘とその分析作業に取り組んでいる。 著書に『占領下沖縄の学校教育』(六花出版)、『つながる沖縄近現代史』(ボーダーインク社)、『ワークで学ぶ教育課程論』(ナカニシヤ出版)など。 第43回沖縄協会沖縄研究奨励賞社会科学部門受賞(2022年1月)。 https://www.hagiwaramami-lab.com/