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2024.02.15

不登校の子に親ができる対応とは?適切な接し方や行動、自己肯定感の守り方

子どもが不登校になると、親は「早く学校に行ってほしい」と思うものです。ですが子どもにとって「学校に行く」ことが必ずしも正解とは限りません。ではいったいどう対応すればいいのでしょうか。
今回は、不登校支援・養護教員の経験があり、不登校や発達の凸凹に悩む親子を多数サポートしてきた公認心理師の高橋智世先生に、不登校の子どもへの接し方や不登校との向き合い方、不登校の子どもの自己肯定感の保ち方などについて、お話を伺いました。

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監修者

高橋智世先生

不登校支援・養護教員を務め、不登校や発達の凸凹に悩む親子をケアしてきた公認心理師。明るく優しい笑顔で気持ちがラクになるコツを教えてくれます。

不登校の定義とは?不登校をめぐる現在の状況

文部科学省によれば、不登校とは「長期欠席者、年間に30日以上の欠席者の中で、何かしらの心理的、情緒的、身体的、あるいは社会的要因、背景により登校しない、あるいはしたくともできない状況にあるもの、ただし、病気や経済的な理由によるものを除いたものを言う」といった定義がされています。

※「ええがぁLABO」資料より抜粋

ただ実際に不登校の子の中で、「学校に行きたくないから」と言って休むケースは少なく、多くは「頭やお腹が痛い」など、体調を原因に欠席しているのが現状です。しかし文部科学省の不登校の定義にもあるように、不登校の人数には「病気で休む子」はカウントされていません。
それを考慮すると、令和3年度の不登校の子は約30万人という統計があるものの実際はもっと多く、40万人くらいと推測されます。

※「ええがぁLABO」資料より抜粋

主体的に「不登校を選択する子」も増えている

不登校というと、いじめなど人間関係が原因と思われがちです。もちろんそういう理由で不登校になる子もいますが、最近では、みずから「学校に行かない」選択をし、積極的に不登校をしている子が増えています。
その背景には、コロナ禍で長期間学校に行かないことが普通になり、オンラインで学ぶ体験をしたことがあります。「勉強は家でタブレット端末を使ってやればいい」「わざわざ嫌な思いをして学校に行かなくていい」と気づいた結果と言えます。

※「ええがぁLABO」資料より抜粋

日本は不登校の子が増えているのに、不登校の子への支援が遅れている

ただ問題は、不登校の子は増えているのに、そういった子たちの受け皿が足りていないということです。

※「ええがぁLABO」資料より抜粋

日本では、不登校の子への公的支援が遅れていて、実際に不登校と定義された30万人うち36.3パーセントの 不登校の子がどこにも相談せず、どこからもサポートを受けていないと言われています。

「学校に行かない」という選択自体は決して悪いことでないのですが、その後の選択肢や相談先、つながる場所がないというのは、子どもにとっても親にとっても辛いことです。

不登校の親の経済的負担も問題に

不登校の子の受け皿としては、フリースクールと不登校特例校が知られています。しかし民間が運営するフリースクールは高額な傾向にあり、家庭の経済状況によっては通えない場合もあります。また子どもが不登校で家にいるために親が仕事をやめないといけない、労働時間を減らさざるをえないというケースも多く、それにより生活が困窮する家庭もあります。
なお不登校特例校は公立であれば無料ですが、そもそもの数が少なく、近隣になければ通うことが難しいのが現状です。

不登校のおもな原因と、不登校の子どもへの接し方のポイント

子どもが不登校になる原因はひとりひとりで異なりますが、その中でも多く見られるものについて紹介します。

小学校低学年の場合

小学校低学年での不登校の原因で多いのは、「母子分離による孤独や不安」です。

幼稚園や保育園までは、幼稚園の先生や保育士さんがお母さんのように子どもを見てくれます。そういう意味では、家庭と園での環境はそこまで大きく変わりません。しかし小学校に入って急に集団指導をされるようになると、子どもによっては大きなストレスを感じます。そして、校門までは行くけれど校内に入れないなど、行き渋りになることがあります。

【不登校になった子どもへの接し方のポイント】

小学校低学年で「お母さんと離れたくない」という理由で不登校になっている場合は、まずはお母さんの気持ちを安定させることが大事です。

「お母さんからどうやったら引き離せるか」と子どもに焦点がおかれがちですが、お母さん自身が「この子は私から離れても大丈夫」と思えるよう心の状態を整えることが、回り道に見えて一番効果があります。

そして、早い段階で担任の先生やスクールカウンセラーに、お母さん自身が相談してみることをおすすめします。その結果、お母さんがどんと構えて落ち着いた様子になれば、子どもも安心して「学校に行ってみようかな」と思えることもあります。

小学校中学年の場合

小学校3、4年生頃は、子どものコミュニケーション能力が急激に上がっていく時期です。また勉強が難しくなってくる時期でもあり、今まで勉強で困ることがなかったのに、急についていけなくなった…ということもよくあります。

【不登校になった子どもへの接し方のポイント】

小学校中学年で不登校になった場合は、何か具体的に学校生活で困りごとがあるかどうかを冷静に見てみる必要があります。

たとえば、実はグレーゾーンも含む発達障害があり、今まで背伸びして頑張ってきたけれど、本当は学校に行くのがしんどかったとか、発達障害はないけれどもともと集団で行動するのが苦手だとか、周りの空気を察するのが苦手である、といった理由で不登校になっていることも考えられます。

実際にどういう場面で何に困っているかを聞いてあげて、場合によってはスクールカウンセラーに相談してみるのもいいでしょう。

不登校の原因をつきとめられずぼんやりとした状態では、子どもだけでなく親も辛いはずです。必要であれば、思春期外来や児童精神科にかかることも有効ですし、早めに対処することが大事です。

小学校高学年の場合

小学5年生ぐらいになると、人間関係が難しくなります。特に女の子はグループを作りたがる傾向があり、そこに入れない子を排除しがちです。そして排除された結果、学校に行きたくなくなってしまう子もいます。

【不登校になった子どもへの接し方のポイント】

不登校の子に対し「私もそういうことがあったけど、乗り越えられた。だからあなたも頑張って」と上から目線で話しかけるのではなく、「お母さんはこう思うけど、他の人の意見も聞いてみた方がいいよね」と子どもを一人の人間として認め、子どもにとって安心できて気持ちを素直に吐き出せる場所、相談できる人を確保してあげることが大事です。

中学生の場合

中学生になって急に不登校になる子は、かなり多いものです。実際、不登校が始まる時期で一番多いのが、中2と言われています。
思春期ということで心身ともに急激に発達しますし、何より人の目が気になる時期です。何かをして一度失敗し笑われてしまい学校に行けなくなる、なんてことはよくあります。

【不登校になった子どもへの接し方のポイント】

学校で何か失敗した結果、周りの目が気になり思いつめて苦しむ子も多いので、無理をさせず、早めに休ませてあげた方がいいでしょう。

そして中学生の場合は、いろんな選択肢を提示してあげることが大事です。小学生であれば何もしなくても中学生になれますが、中学生になるとやはり進学が心配になりますよね。 ですが通信制の高校に入学する方法もあります。
また中学校も授業に出ず試験だけ受けてもいいし、部活だけ行ってもいいし、フリースクールに通ってもいいんだと教えてあげると、子どもは安心します。

このように選択肢を早めに提示し、子どもに選ばせてあげましょう。選択・決断を委ねられていると分かると、子どもは自分が親に尊重されていると思えますし、自己肯定感も保てるものです。

幼い頃からの子どもの傾向、特徴をさかのぼって思い出してみる

どの年齢で不登校になった場合でも、子どもが小さい頃はどうだったかをさかのぼって思い出すことで、不登校になった後にどうすればいいのかが見えてきます。

中3で初めて不登校になったとしても、実は保育園の頃から人との関わりが苦手だった、こだわりが強かった、ということがあります。それなのに、無理に学校に通わせても子どもが辛いだけです。

子どもが幼い頃から今にいたるまでどうだったかを、スクールカウンセラーなどの専門家に伝え、不登校の原因や今の状況を整理し、次に何をすればいいのかを探っていきましょう。

こんなサインがあったら黄色信号?不登校になる前触れを確認しよう

夜ちゃんと眠れているか

学校で楽しく過ごせていて、毎日が充実している場合は、夜はぐっすり眠れるものです。ですが「学校が合っていない」場合は、夜に熟睡できない、なかなか寝付けないことがあります。

子どもが寝る前に部屋をのぞいてぐっすり眠れているか、寝付けないでいるかなど、確認してあげるのもいいと思います。そこで睡眠のトラブルがあるようなら、ひとつのサインとして気に留めてください。

朝、通学前にしんどそうじゃないか

通学前の子どもの様子からも、不登校の前触れを見ることができます。朝なかなか起きられない、何かしら理由をつけて学校に行かないようにする、「お腹が痛い」と言う、ゆっくり準備をしてなかなか学校に行かない、といったことです。それらは「学校に行きたくない」という気持ちがあっての行動ということも多いのです。

また家の中では親に心配をかけないよう元気に振る舞っていても、玄関を出て少し歩くと、暗い表情になり不安な様子を見せることもあります。そうしたひとつひとつの小さなことから子どもの気持ちを察知し、早めに「学校に行きたくない」という黄色信号に気づいてあげましょう。

※子どもの登校しぶりについてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

不登校の前触れが見られたら…子どもにしてあげたいこと

休みの日などに、子どもに学校生活について具体的に質問してみましょう。つい「学校は楽しい?」「大丈夫?」などと聞いてしまいがちですが、頑張り屋の子は「うん、楽しいよ」「大丈夫だよ」と答えるだけで、本音を聞くことができません。
そうではなく、もっと具体的に「学校の中で一番楽しいことは何?」「学校のことで全部好き、得意な人なんていないけど、なんか苦手なことってある?」など、子どもが率直に答えやすい質問をしてあげましょう。
「実は英語の先生がすごく苦手で…」「算数がとにかく嫌だ」などと答えてくれるかもしれません。

ポイントは、親と子どもというよりも、人と人という感覚で子どもに接することです。「お母さんは国語が苦手だったんだけど、○くんは国語が好きなんだね」といった感じでフラットに話し、聞くことです。

不登校との向き合い方

親も子どもも、5年後の未来に焦点を合わせて考えることがポイントです。

たとえば1週間後にテストがある、1か月後に修学旅行がある場合は、親としては「受けさせたい」「行かせたい」という気持ちが強くなりがちですよね。ただそれは親の希望であって、子ども自身はやりたくない場合だってある、ということを頭においてほしいのです。

子どもの安心感というのは1か月、半年程度の短期間では、そう簡単に回復しません。目安としては5年後ぐらい先を見て「子どもがやりたいことができていたらいいな」ぐらいに考えてあげてください。5年後に焦点を合わせると、今日学校に行けなくても、算数で10点しか取れなくても大きな問題と感じなくなるものです。

不登校の子どもは幸福度が下がる=自己肯定感が下がる傾向に

子どもは不登校になると、「幸福度が下がる」傾向にあります。実際、「とても幸せ・幸せ」と感じる割合は、学校に通っている子どもだと82%で、不登校の子どもの場合は43%であるというデータもあります。

※「ええがぁLABO」資料より抜粋

それは「学校に行かないと自分はダメなんだ」という思い込み、学校に行かないことに対しての周りの目が影響していると思います。周りの目という点では、親がどう子どもに接するかによっても幸福度は変わってきます。
幸福度が下がっているということは、自己肯定感も下がっている状態なのです。

子どもの自己肯定感を上げる声かけとは?

もし子どもが学校に行きたくない、辛くて仕方ないという話をしてきたら、それを悲観的に受け止めるのではなく、「あぁそんなことを思っていたのね。言ってくれてありがとう」と言ってあげましょう。

「学校に行かない、行けない自分はダメな人間なんだ」と思ってしまうと、その後ずっと自己肯定感が下がり続けることになります。
そこで子どもに否定的な反応をするのではなく、「そんなふうに自分の気持ちに気づけたことは、すごいことだよ。他の子だって、言わないだけで我慢しているかもしれない。そんな中で、あなたは自分で気づいて勇気を出して言えたということは、素晴らしいんだよ」と言ってあげることが、子どもの自己肯定感を上げるのにおおいに役立ちます。

褒めることはどんな小さなことでもOK

不登校になり、家から出られなくなってしまった場合もあるでしょう。そんな時でも「今日は起きてくれてありがとう」「あなたの顔を見られてすごく嬉しい」「ご飯を全部食べられてすごい」など、どんな小さなことでもいいので褒めてあげてください。別に勉強をしなくたって、何かすごいことをしなくって、家にいても褒めるポイントはいくらでもあると思います。

子ども自身も学校に行かないことに引け目を感じているかもしれませんが、「親に迷惑をかけてしまっている自分はダメだな」と思わせないようにする、というのが大切です。

子どもの中にはプライドが高く、褒められると逆にバカにされているように思う子もいるので、そういう場合は「○くんのおかげで助かったよ」「やっぱり○ちゃんがいないとだめだな~」のような声かけをして、子どもを頼りにしている、役に立ってくれているということを日常生活の中で伝えてあげてください。こういったことを積み重ねが、子どもの自己肯定感を上げることにつながるのです。

子どもの自己肯定感が回復してきたらしたいこと

そんな感じで日々子どもが自己肯定感を取り戻してきて、外に対して恐怖心がなくなってきたら、今度は子どもを社会につなげる手助けをしてあげましょう。
たとえば自分の職場に連れて行き大人と接する機会を作る、外国の人と触れ合う集まりがあれば一緒に行く、というように、いろいろな場所に連れて行くのです。
今までの狭い世界から一歩出て、いろんな人と触れ合ってみることで、様々な価値観があることが分かります。

どんどん自分から手放して他とつなげていくことで子どもは自己肯定感を上げていき、社会的に自立していきます。

子ども自身が「役に立っている」「必要とされている」と思えることが大事

スクールカウンセラーなどに相談したりすることは、子どもの心理的安全性を保つ上で必要です。ただ、「人にお世話されている状態」というのは、自己肯定感を上げることにはつながりません。
一方で自分が誰かの役に立っている、必要とされていると思えると、ぐんぐん自己肯定感が育っていきます。それは子どもに家のことを手伝ってもらう、というようなちょっとしたことでもいいのです。「○○をして喜ばれたから、次は△△をしてみよう」というように、自然とステップアップしていくのです。

不登校になってからの悩みを解決するために、親ができること

1:話しやすい相談先を見つける

学校の中ですと、最初に担任の先生に相談をするケースが多いと思います。しかし担任の先生に話しにくければ学年主任の先生でも、養護教諭の先生でも、スクールカウンセラーでもいいのです。話しやすい、相談しやすい相手を親自身が見つけておくことをおすすめします。

また学校以外の場所にも、相談先を見つけておきましょう。フリースクールやオンラインの相談所、不登校の親の会でもいいと思います。自分たちと同じ境遇の人たちとつながって、話をし、聞くことで気持ちが落ち着くこともあるはずです。

できれば、学校以外に2つぐらい相談できる人や場所があるといいですね。それは自分の親や友人でもいいのです。そこでいろんなアドバイスをもらうと思いますが、その中で取り組んでみたいことがあればやってみましょう。

※不登校の相談先についてはこちらの記事で詳しく紹介しています。

2:不安に思うことを可視化する

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不安に思うことを具体的に書きだすと、落ち着いて客観的な対応ができるのでおすすめです。
子どもが不登校になったけど宿題は家でさせて持って行った方がいいのか、給食費はどうしたらいいか…などを書き出して、ひとつひとつ対処していきましょう。
そうした事務的なことに関する不安は、書き出してリストアップすると、意外とあっという間に解決していくものです。そしてその後は、子どもとどう接するかという重要なことを考えるのに、時間を使えます。

「学校に行くようになること」が最終目標ではない

不登校の子どもと接するうえで忘れてはいけないのが、子どもにとっての最終目標は必ずしも「学校に行くようになること」ではない、ということです。もちろん本人が望んで学校に行きたいとなればそれでいいですが、そういうケースばかりではありません。
子どもが最終的に社会的に自立する、親から離れてもひとりで生きていけるようになることが何より重要です。

そして社会的な自立のために、子どもは学校に行った方がいいのか、行かないほうが後々いいのかを考えてあげてください。今無理して学校へ行ったとしても、それにより精神的にダメージを受け、ずっと家から出られなくなってしまう、ということの方がずっと問題です。

不登校の子を持つ保護者へのメッセージ

まずは自分を絶対に責めないでください。子どもが不登校になったのは、親が原因ではありません。そしてひとりで抱え込まずに頼れるところに頼り、自分を追い込まないようにしましょう。

自分の気持ちを吐き出せる場所を見つけてつながり、周りの人に積極的に頼ることは、親だけではなく子どものためでもあります。子どもは親だけではなくいろいろな人と関わることで視野や可能性が広がり、自己肯定感が上がります。

不登校であることに対し、ネガティブな感情を持つ必要はまったくありません。不登校は本来は悩むことではなく、ひとつの選択肢として尊重されるべきなのです。

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