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2021.11.12

【発達障害傾向・グレーゾーン】小学校での困りごとへの対応とは?支援や相談先を紹介

発達障害傾向があると言われたことがあったり、「うちの子はグレーゾーンなのかしら」と思っている保護者にとって本格的な集団生活が始まる小学校は不安がいっぱいなのではないでしょうか。「どんな困りごとが待っているのか」「育て方が悪いと責められないか」覚悟するのもつらいですよね。しかし、困りごとや対応について事前に情報を知っておくと少し気持ちも違うかもしれませんよ。

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記事を執筆したのは…

毛利三貴さん臨床心理士・公認心理師

大阪出身。大学院在籍中から発達障害支援に携わり、修了後は発達障害者支援センター職員として勤務。現在は公的機関の心理職として復帰し9年目。不登校を中心に、青少年及びその保護者への相談活動を行っている。

グレーゾーンの子は一定数いる

発達障害を疑い、勇気を出して医療機関を受診しても、発達障害の傾向はあるけれど診断基準は満たしておらず、「グレーゾーン」と言われることがあります。診断がつかなかったことにホッとする反面、ではこの先どうすればいいのだろうと戸惑ってしまう方もいるかと思います。

しかし、発達障害の確定診断がつかなくても、なにか困りごとがあって発達障害を疑ったはずですし、その困りごとが解決されていなければ、その子は大変な思いをしながら毎日を過ごしているはずです。​

文部科学省の2012年の調査によると、通常学級(普通級)に在籍する子の中に”特別な教育的支援を必要としている子”が6.5%いるということが明らかになっています。6.5%という数字は発達障害についての話で取り上げられることが多いので、聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。発達障害傾向のある子が1クラスに2〜3人いるという計算になります。

しかし、実数はもう少し多いと感じている教員や専門家の声もあり、カウントされなかった「グレーゾーン」も含めると、それ以上いることが予測されます

例えば、自閉症は、その傾向の強い人から弱い人までが切れ目なく繋がっている、スペクトラム(連続体)となって存在していることがわかってきました。つまり、誰しもその要素を持っており、健常と障害という境界線ではっきりと分けることはできないということになります。

ですから、診断はつかなくても置かれている環境によって支援が必要になる子がいるということです。

去年度は何事もなく過ごしていた子が、クラスや担任が変わったことで落ち着かなくなったり、反対に問題児と言われていた子が環境が変わることで適応した生活を送れるようになることもあります。

そのくらい支援を必要とする子がいることは特別ではないのです。

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勉強についての困りごとと対応、支援

では、ここからは支援を必要な子が小学校でどんな困りごとを抱えがちなのかを見ていきましょう。

勉強についてありがちな困りごと

  • 作文が苦手
  • 文章問題を解くのが難しい
  • マス目に文字がおさまらず、はみ出てしまう
  • 図形の見取り図や展開図、表やグラフが苦手
  • 国語の教科書の音読でつっかえてしまう、読み飛ばし、読み間違いが多い
  • 九九が暗唱できない
  • 教師の話を集中して聴くことが難しい
  • 黒板の字をノートに写せない、または時間がかかる

上記はあくまで一例ですが、勉強についての困りごとは、注意集中が難しくて起こっていることもあれば、本人の認知特性が影響していることもあります

例えば、文章問題が苦手だったり、作文を書いても内容が乏しい子は言葉を理解したり、言葉を表現する能力の弱さが背景にあるのかもしれません。

また、図形問題が苦手な子や、文字の形がうまく整わなかったりマスからはみ出してしまう子は、目で見たものを理解したり総合的に処理する力が弱いことがあります。

九九ができなかったり、先生が指示したことをすぐに忘れてしまう子はワーキングメモリー(作業に必要な情報を一時的に記憶し処理する能力)に弱さがあることも考えられます。

勉強についての対応・支援とは

言語理解の苦手さがある子には絵や図など、見てわかる物を使って伝えたり、言語指示を出す際には簡潔に、ゆっくりはっきり伝えてもらうなどの支援が効果的です。

反対に視覚的処理が苦手な子には、言葉での説明を付け加えたり、位置や場所など言語化して確認していくことが有効です。

いずれの場合も、本人が苦手なやり方を押し付けるのではなく、本人が得意で理解しやすい方法に置き換える工夫があると良いです。

最近の教育現場では、タブレット端末を使って読み書きなど学習への困難に対する合理的配慮も考えられるようになっています。

しかし、学習面での困りごとがどのような認知特性から生じているのかは詳しく調べてみないとわかりません。「なぜできないのだろう」「何度やってもなかなか身につかないのはどうしてだろう」と思われたら、WISC-ⅣやK-ABCⅡなどの検査を受けてみるのが良いかもしれません。

<WISC-Ⅳについての記事はこちら>

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また、グレーゾーンの子でも必要と判断されれば特別支援学級を選ぶことができます。入る基準や判定方法は地域や状況により異なりますが、子どもの状態、本人・保護者の意見、専門家の意見が考慮され、最終的に決定されます。

また、通常学級に籍を置きながら、その子の特性に合った個別の指導を受けるために通級指導教室に通うことも選択肢のひとつです。普段は通常学級でみんなと一緒に過ごしながら、週に何時間か通って必要な支援を受けることになります。

<通級指導教室についての記事はこちら>

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在籍校に通級指導教室がない場合は近隣の学校で通級指導教室があるところを利用することになります。

支援内容についても教室によって異なりますので、まずは学校や教育委員会に問い合わせてみてください。

日常生活・集団生活の困りごとと対応、支援

次に日常生活や集団生活ではどのような困りごとが起こりがちなのでしょうか。

日常生活・集団生活でありがちな困りごと

  • 言葉での指示だけでは理解しにくく集団行動から外れてしまう
  • 必要なものがすぐに見つけられず、授業の準備が間に合わない
  • 忘れ物が多い。必要な物を無くしてしまう
  • 周りの活動のペースについていけない
  • 偏食が強く給食が食べられない
  • 集団でのザワザワした声などが気になる
  • 運動会や学芸会、避難訓練など日常と違う行事があると混乱する
  • 当番活動がうまくできない

学校生活は集団で動くことが多く、保育園や幼稚園までと違い、大人に個別に関わってもらえる機会はぐんと減ります。教師が生徒に一斉指示を出し、みんながそれに従って動くのですが、指示が耳に入らなかったり、指示は理解しても行動が周りのスピードについていけないと置いてけぼりになってしまうことが心配されます。

また、変化が苦手だったり、音や匂いなどの感覚に過敏さがあったりすると、日常生活はなんとか大丈夫でも特別な学校行事の時ににうまく参加できないことがあります。

給食当番や係活動など、与えられた役割を遂行する力も求められます。

日常生活・集団生活への対応・支援とは

全体への指示に応じられない場合には、個別の声かけや理解しやすい形で伝えてもらう必要があります。

また、工夫次第で次の行動に移りやすくなることがあります。

工夫例

  • 持ち物の分類が難しい場合、教科別に色分けしたファイルにまとめてみる
  • 口頭での指示で動きにくい時には机にやるべきことのメモを貼る

上記のように、その子が動きやすくするためのひと工夫が必要です。

行事や当番活動など、授業中以外の場面での困りごとについては、どんな活動が苦手で、どうしてそのような状況が起こっているのかを考えていかなくてはいけません。担任へ学校での状況をよく聞いて相談をしてみましょう。

コミュニケーションの困りごとと対応、支援

「仲のいい友達はできるのかな」「トラブルは起きないかな」と人間関係の悩みも尽きませんよね。

コミュニケーションにまつわる困りごと

  • 感情や状況など言葉でうまく説明できず誤解されやすい
  • 場面や状況、相手の表情を理解できずトラブルになる
  • 相手の話を最後まで集中して聞いていられない
  • 会話に参加することが難しく、輪に入ることができない
  • 約束を忘れてしまう
  • 友達との距離感がわからない

クラスメイトとトラブルが起こる背景には、ルールや順番を理解できなかったり、相手の状況を見て、それに見合った反応をすることが難しいということがあるのかもしれません。

特に、コミュニケーションにおいては、言葉でうまく表現できないと自分の気持ちを伝えられず、すぐに手が出てしまうことや自信のなさからみんなの輪に入れなくなることがあります。

コミュニケーションへの対応・支援とは

まず、友達と接する時の基本的なルールを知っておく必要があります

社会生活を送る上で良好な人間関係を築くために必要な技術や能力を「ソーシャルスキル」といいます。友達づきあいのコツとでもいえるでしょうか。

声の大きさや表情、相手との距離、また、その場に合わせた表現や態度を練習しておくことで、誤解されることも減り、トラブルを未然に防ぐことに繋がります。

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いじめについての困りごとと対応、支援

発達障害やグレーゾーンだからといって必ずしもいじめにあうわけではありません。しかし、相手とのコミュニケーションが苦手だったり、周りの雰囲気を読み取って行動するのが苦手な子どもは、変な奴だと思われてしまったり、場合によってはからかわれる対象になったりすることがあります。

いじめへの対応・支援とは

まずは、子どもの様子に最大限注意を払いましょう。

いじめられていることを理解していなかったり、なんだか嫌な気持ちだけど、それをうまく表現できなかったりすることもあります

ですから、日頃から学校でどんな風に過ごしているのかを話してもらえる関係を作っておくことが大切です。

周りの子どもたちが、「この子は少し変わっているところもあるけど、こんなすごいところもある、こんないいところもある子なんだ」と受け止めてくれることで状況が改善することもあります。クラスのみんながその子の存在を認めてくれるようなクラスの雰囲気を作ってもらいたいものです。

実際にいじめが起きてしまったら、学校との連携は不可欠です。

保護者としてはわが子がいじめられたときに冷静に対応することは困難です。しかし、学校や教師と敵対関係になっても良いことはありません

本人の困っていることを伝え、協力して子どもを守っていく方法を話し合ってみてください。担任教師ではうまく話が伝わらないと感じたときには、学年主任や教頭など管理職へ相談することもできます。

<担任教師と合わないと感じたときはこちらの記事>

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診断がなくても支援は受けられる

グレーゾーンと言われたり確定診断がつかなかったとき「診断がつかなかったから支援が受けられないのではないか」と思う方もいると思います。しかし、確定診断はなくても、必要に応じて合理的配慮を受けられることが法律に記されています。

子どもの特性について事前に学校に伝えておき、また周りにも理解を求めていくことで、必要な支援を受けることができ、トラブルを未然に防ぐことにもつながります。

学校・医療・そのほかの機関とチームで支援を

子どもが抱える困りごとに1人で立ち向かっていくのは困難です。

学校、医療機関、療育機関、家庭など、その子を取り巻く色々な立場の人たちが、それぞれの得意分野を活かして、多面的に子どもを捉え、対応を検討していくことがより良い支援につながっていきます。

「チーム」で子どもを支えていくというイメージです。チームでの支援には、まず情報を共有することが第一歩です。

医療機関を受診して検査を受けた場合は、学校の先生と結果を共有しておきましょう。検査の結果は支援を考える上で重要なヒントになります。

検査結果をもらってもよくわからなかったという場合は、スクールカウンセラーや特別支援コーディネーターなどにもう一度検査結果のデータを見てもらい、本人の特性に基づいた支援を計画してもらいましょう。

もちろん子ども本人もチームの一員です。子どもの思いや意志を尊重しながら、チームで知恵を出し合い、良い方法を探していきましょう。

保護者自身の心のケアも忘れずに

発達障害は外見からは分かりにくく、その症状や困りごともさまざまです。グレーゾーンならなおさら周りから理解を得るのは一苦労です。

本人の性格やしつけが原因ではないのに、「自分勝手」「わがまま」と捉えられて誤解を受けることもあります

子どもが困っている様子に気づいたらなるべく早くどこかに相談をし、支援を得られる状況を作っていくことが大切です。困っている状況に速やかに対応していくことで、いじめ、不登校、抑うつなど二次的な問題を予防することにつながっていきます。

また、日々接して一緒に悩んでいる大人の方もストレスを感じやすくなりますが、保護者は自分のことを後回しにしてしまいがちです。保護者自身も心が疲れていると感じたら、ひとりで抱え込まずに下記の場所に相談してみてください。

子育てに悩んだときの相談先

  • 児童相談所
  • 自治体の教育相談窓口
  • 発達障害者支援センター
  • 教育センター
  • 地域の保健所
  • 「ソクたま相談室」などのオンラインカウンセリング

上記は子どものことについての相談ごとを受け付けてくれる機関です。どちらに行っても相談にのってくれると思いますし、対応できない場合は適切な機関を紹介してくれると思います。

ただし、自治体によっては機関の名称が違う場合もあるので、1番身近なスクールカウンセラーに相談し(スクールカウンセラーは地域の相談機関についても情報を持っています)、適切な機関に繋げてもらうのが確実だと思います。

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子どもの成長で状況は変わっていく

本人の抱える困りごとと向き合うのは親にとって辛く苦しいことですが、今、気づいたことでこれからの対応を考えることができます。

子どもは日々成長しています。ほかの子よりも時間がかかることがあったとしても、いろいろなことを習得していきます。また、苦手なところは大人になっても残るかもしれませんが、自分の苦手に気づけたからこその自分なりの対応の仕方も身につけていくのです。

発達というものは時間と共に変化していくので、一度の受診で出た診断がその子の将来を決めてしまうわけではありません。

成長に伴って別の困りごとが出て来れば、再度受診して検査してもらうこともできますし、診断の有無に関わらずいろいろな相談機関を利用することもできます。

あの手この手でわが子と向き合いながら、長い道のりを一緒に歩んでいきましょう。

学校という物差しで測れば、周りと同じようにできないことはとても気になることかもしれません。しかし、子どもたちはみんなそれぞれ個性的でとても魅力的です。

おうちに帰った時は学校という物差しを置いて、子どものすごいところ、素敵なところに自分で気づけるように声かけをしてあげたいものです。

お手伝いができる、兄弟姉妹のお世話ができるなど、その子なりの良いところが必ずあるはずです。「私ってこんなことは苦手だけどこんなことは得意なんだ!」と思えることが自分を支える力になり、やがて新しいことに踏み出す力になりますよ。

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毛利三貴

臨床心理士・公認心理師。大阪出身。大学院在籍中から発達障害支援に携わり、修了後は発達障害者支援センター職員として勤務。その後、結婚を機に退職し専業主婦を経て、現在は公的機関の心理職として復帰し9年目。不登校を中心に、青少年及びその保護者への相談活動を行っている。プライベートでは三児の母で、自身も育児に奮闘中。

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