• facebook
  • twitter
  • LINE
  • hatena
2022.10.31

いじめも自殺も増加する小学校で始まった「メンタルヘルス予防教育」とは

いじめや不登校、自殺など、小学生にまつわる心の問題は、年々、深刻さを増しています。そんな中、京都府を中心とした全国の小中学校で始められたのがメンタルヘルス予防教育プログラム「こころあっぷタイム」です。

  • facebookfacebook
  • twittertwitter
  • LINELINE
  • hatenahatena

小学~高校で最もいじめが多い学年とは

2022年10月に文科省が公表した「R3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、小学校のいじめ、不登校、自殺の認知件数が過去10年間のうちで最も多いことが分かりました。

いじめの認知件数は小学2年生が最も多い

いじめの認知件数を学年別に見てみると、最も多いのが小学2年生で10万件を超えています。

令和元年度令和2年度令和3年度
小学1年生8万77598万17879万6142
小学2年生9万64168万435410万976
小学3年生9万19817万86299万4781
小学4年生8万28837万13858万4125
小学5年生7万12555万99017万1991
小学6年生5万47674万52405万3016
※ 各学年の認知件数には、特別支援学校小学部・中学部・高等部の認知件数を含む
引用元:R3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査文部科学省

上記は認知されているいじめの件数なので、今まで見過ごされてきたトラブルがいじめとされ認知された可能性もありますが、令和3年度の小学2年生は、コロナ禍で入学式も後ろ倒しになり、学校全体が感染予防対策に混乱する中で入学した学年です。給食の個食、私語の制限など、友人同士の関わりに制限があったり、保護者同士のつながりも作りづらかったりしたことも背景にあるのかもしれません。

また、いじめ行為の内容は、「冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる」が多いようです。

いいめの認知件数が多い低学年の場合は、言っている本人はあまり深く考えておらず、言われた側の気持ちを考えるまでに及んでいない可能性も考えられます。

いじめ問題の現状。なぜ学校でいじめがなくならないのか? <前編> 【連載 いじめのトリセツ Vol.2】
いじめ問題の現状。なぜ学校でいじめがなくならないのか? <前編> 【連載 いじめのトリセツ Vol.2】
栗岡まゆみさんの連載2回目となる今回は、いじめ問題の現状について。いじめから子どもを守る法制度は整い、各種の取り組みが成されているのに、なぜいじめはなくならない.....

不登校が学年が上がると増えていく

昨年度、全国の小中学校で不登校とされた児童生徒は、過去最多の24万4940人でした。その中で小学生は8万1498人。学年別の推移は下記の通りです。

令和元年度令和2年度令和3年度
小学1年生2,7443,3954,534
小学2年生4,5495,3357,269
小学3年生6,7158,0281万289
小学4年生9,4661万11081万4712
小学5年生1万32821万56031万9690
小学6年生1万65941万98812万5004
引用元:R3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査文部科学省

学年が上がるごとに児童数は増えていき、令和3年度は特に増え幅が大きくなっていました。また、「不登校の要因」は下記の通りです。

児童数(人)割合(%)
いじめ2450,3
いじめを除く友人関係をめぐる問題5,0046.1
教職員との関係をめぐる問題1,5081,9
学業の不振2,6373,2
進路に係る不安1600,2
クラブ活動、部活動等への不適応100,0
学校のきまり等をめぐる問題5370.7
入学、転編入学、進級時の不適応1,4241,7
家庭の生活環境の急激な変化2,7183,3
親子の関わり方10,79013,2
家庭内の不和1,2451,5
生活リズムの乱れ、あそび、非行10,70813,1
無気力、不安40,51849,7
上記に該当なし3,9944,9
※ 「長期欠席者の状況」で「不登校」と回答した児童生徒全員につき、主たる要因一つを選択 ※ 割合とは、不登校児童生徒数に対する割合

約半数となる49,7%の理由は、具体的なエピソードのない「無気力、不安」です。トラブルがあれば解決法を考えることもできますが、漠然とした無気力や不安となると途方に暮れてしまいそうです。

小学生の子どもが「学校に行きたくない」と言ったら?理由や親の対応を元教師がアドバイス
小学生の子どもが「学校に行きたくない」と言ったら?理由や親の対応を元教師がアドバイス
小学生のわが子が「学校に行きたくない」と言い出したら、このまま不登校になるのでは、と不安を感じる保護者の方もいるでしょう。登校したくないと思う原因や子どもの本心.....

自殺の理由はほとんどが「不明」

令和3年度に小学、中学、高校から報告があった自殺した児童生徒数は368人(前年度415人)です。そのうち小学生は8人。令和2年度は7人、令和元年は4人となっており、人数はわずかながら増えています。

なぜ、子どもが自殺に至るのか、その理由は周囲が推察するしかできません。文科省でも「自殺した児童生徒が置かれていた状況」を調査していますが、大半が「不明」とされています。

小中学生の自傷行為|リストカットする子どもの心理や悪化させない親の対応を専門家がアドバイス
小中学生の自傷行為|リストカットする子どもの心理や悪化させない親の対応を専門家がアドバイス
わが子がリストカットなどの自傷行為をしている…。その事実を知った保護者は驚きと悲しみに襲われることでしょう。それが小学生となれば、ショックはさらに大きいはず。子.....

心の危機は乗り越えられると知る教育

いじめや不登校、自殺など、子どもを取り巻くさまざまな課題から子どもたちを救うべく、京都市を中心に全国73校で導入されているのが、同志社大学心理学部の石川信一教授や、発達障害を扱うクリニックの神尾陽子院長などの専門家が中心となって開発したメンタルヘルス予防教育プログラム「こころあっぷタイム」です。

「こころあっぷタイム」は、精神的に傷ついても潰れずに立ち直っていく力(レジリエンス力)を高め、心の危機は乗り越えることができるということ、身近に困っている人がいるときに使える方法を身に付けていくことが目的です。

レジリエンス教育でメンタルが弱い子どもの立ち直り力を育てよう
レジリエンス教育でメンタルが弱い子どもの立ち直り力を育てよう
小さなことに凹み、臆病になっているわが子。「学校でやっていける?」「今後の人生は大丈夫?」と不安になりますよね。そこで注目なのが「子どもが立ち直る力を育てる」レ.....

マンガを使って自分と他者の心を知る

具体的には、どんなことをするのでしょう。

「こころあっぷタイム」の対象は小学4~6年生で、心の専門家ではなく教師が実施する全12回のカリキュラム。認知行動療法とポジティブ心理学の技法を用いた内容になっています。

教材は子どもたちに身近な日常の場面を描いたオリジナルのマンガ。「いらいら」「不安」「落ち込み」という心の問題を登場人物を通じて理解していきます。

「こころあっぷタイム」で使われているマンガ。子どもに親しみやすいタッチで描かれています 
©2017 Shin-ichi Ishikawa & Yoko Kamio

また「こころあっぷタイム」では、子ども同士でグループで話し合う時間も大切にしています。楽しい雰囲気の中でいろいろな子の考え方を聞き、他人を理解することで自分自身の理解を深めることにもつなげていきます。

「こころあっぷタイム」では、こころの問題への対応をアイテムで表現。シーンに合わせて何を使えばいいか子ども達が話し合います
©2017 Shin-ichi Ishikawa & Yoko Kamio

子どもがプログラムの成果を実感

実際に「こころあっぷタイム」のプログラムを受けた後の子どもの変化を保護者、教師によると下記についての向上を実感できているそう。

  • 自己効力感:ある結果を生み出すために必要な行動をどの程度うまくできるか
  • 社会的スキル:良好な人間関係をつくり保つために必要な行動をどの程度うまくできるかという確信の程度
  • 心理的な問題:他人や自分自身への理解

「こころあっぷタイム」の開発者である同志社大学心理学部の石川信一教授によると、同プログラムの意義は子どもたちの“今”を守るだけにとどまりません。

成人期の心理的問題の半数は児童期に始まることが明らかになっており、小学生の時点でメンタルヘルス予防に取り組むことは、心の危機を自力で乗り越えていける大人を育てていくことになります。20年後、今の子どもたちが社会で活躍するようになる頃、社会全体の在り方が変わっているかもしれません。

不安について親子で話し合おう

また、「こころあっぷタイム」のプログラムを学校内で行えばいいわけではなく、家庭も両輪として取り組んでいくことが必要。家庭でできることは、親子で話し合うことのようです。

文科省の調査では不登校になっている理由の約半数が「無気力・不安」でした。石川教授は「何に不安を感じているのか、何を怖いと感じているのか分からず漠然としているのがよくない」と話します。

子どもが不安を感じているときは、何に対して不安を感じているのかを親子で話し合い、子どもの強みを生かすために家庭でできることと、学校でできることを振り分け、家庭でできなければ学校でできるように取り組んでいくことを石川教授は提案します。

現在は、小中学校を中心に実施されている「こころあっぷタイム」ですが、汎用性は高く、高校や特別支援学校、放課後等デイサービス、就労支援施設などでの実施も見据えられています。

学校法人慶応義塾によると、心の問題に関連する社会経済的損失は約2兆円になるとされています。社会問題である心の問題を教育を通じて解消していく「こころあっぷタイム」に注目してみてくださいね。

子育てのお悩みを
専門家にオンライン相談できます!

「記事を読んでも悩みが解決しない」「もっと詳しく知りたい」という方は、子育ての専門家に直接相談してみませんか?『ソクたま相談室』には実績豊富な専門家が約150名在籍。きっとあなたにぴったりの専門家が見つかるはずです。

子育てに役立つ情報をプレゼント♪

ソクたま公式LINEでは、専門家監修記事など役立つ最新情報を配信しています。今なら、友だち登録した方全員に『子どもの才能を伸ばす声掛け変換表』をプレゼント中!

浜田彩

エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。

\ SNSでシェアしよう /

  • facebookfacebook
  • twittertwitter
  • LINELINE
  • hatenahatena

ソクたま公式SNS