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2020.09.30
2020.10.15

自分の子どもが嫌い! わが子を愛せなくなる親の心理の共通点とは

子どもの言動から、わが子が「かわいくない!」と衝動的に思ったことのある親は意外と多いのではないでしょうか。しかし、子どもへの愛情が継続的に途切れてしまったとしたら…。公認心理師・佐藤めぐみさんの連載「親子の悩み相談室」5回目となる今回は、娘のことが嫌いと感じる母親からの相談に答えます。

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わが子が嫌いな親の背景に見えるもの

今回のお悩み

私は娘のことが嫌いです。どこが嫌いなのかと聞かれても分かりませんが、性格も合わないし相性が悪いのではないかと思います。見ているとイライラして、抱きつかれるとゾクッとして嫌悪感でいっぱいになります。なぜ、私は娘を愛せないのでしょうか。こんな自分も大嫌いです。(小5娘の母)

私がこれまで相談を受けてきた中でも、「わが子を嫌いになってしまいました」という母親からの悩みは多くありました。しかしほとんどが一時的、一過的なもの。しばらく時間を置くと、子どもに対する気持ちは元に戻っています。

相談者のお母さんの“嫌い”という気持ちが一時的なのか継続的なのか、文面からは読み取れない部分もありますが、お子さんを愛せない状況に苦しんでいる現状はとてもつらいと思います。少しでもお役に立てるよう「子どものことを愛せない」という場合によく見られる背景や要因、向き合い方などについてお伝えしていきます。まずは、親が子どもを愛せないと感じる要因について考えてみましょう。

【1】子どもが親の思い通りにならない

わが子を嫌いになってしまうきっかけの一つとして、“子どもが親の思い通りにならない”ということが挙げられます。例えば“手間をかけて作ったご飯を食べてくれない”とか、親が子どもに良かれと思ったことを受け付けてくれない場合です。あとは、何かにつけて文句ばかり言う子どもに対して「何なんだろう、この子は…」と嫌悪感を抱くようになったというケースもあります。

また、「上の子かわいくない症候群」という言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。“症候群”と病的なものとしてカテゴライズすることに私はあまり賛同していませんが、要は下の子が生まれて大変な時期に、2~3歳上の子のイヤイヤ期が重なり「かわいくない!」と思ってしまうような時期のこと。これもまた、子どもを一時的に愛せないパターンとしてよく見られます。

つまり、親が思い描いている通りの反応・言動が子どもから得られない場合、子育ての負担が大きくなった場合に“わが子が嫌い”と感じる瞬間が出てくるのです。

【2】きちんと物事を進めたい完璧主義者

二つ目として挙げられるのは物事をきちんと進めることを好み、得意としている人が遭遇しやすいパターン。特に仕事をテキパキこなせるような人は、子育てを始めると仕事のようには上手く回しきれない矛盾にイライラしてしまうことが多いようです。

読者の皆さんなら分かると思いますが、子育ては仕事のように自分のペースで進めることはできません。子どもの体調や機嫌によって予定が変更になることはありますし、子どものペースに合わせていて自分の時間が取れないことも日常茶飯事ですよね。

しかし、完璧主義傾向にある人は想定外のことが起きる子育てに関してストレスを感じやすくなってしまうのです。

【3】子どもの気質

三つ目として挙げられるのが、子ども自身の気質が影響するもの。

生まれ持った気質として、かんしゃくを起こすとか意固地になってみるとか…相手を試したり不快に感じさせる行動を取ったりするような場合があります。ちょっとしたことでかんしゃくを起こしたり、意固地になって反抗されたりするとそういった子どもに対応していると、どんな親でもスムーズに物事が進まないことが多くなりイライラしてしまいます。

そして、そんな子どもの性格に関して「育て方が悪いのかな」と自分を追い詰めてしまう母親は多いのですが、ある研究では全体の約10%、10人に1人は親が扱いにくいと感じやすい気質のタイプの子であるといわれています。親が真摯に向き合っていても「あ~大変だな」と感じやすいタイプの子がいるので、自分を責めすぎないでほしいと思います。

ただ、わが子のもともとの気質である“育てにくさ”に何年も気が付かず、その場を取り繕うことだけに奔走してしまうと、子どもは自分なりの“形式”を編み出していくことが多いので、その点は注意が必要です。例えば買い物でスーパーに行ったとき、大泣きしたらお菓子を買ってもらえたとしましょう。そうすると、子どもはスーパーで大泣きすればお菓子を買ってもらえる、親はお菓子を買えば解決するという良くない行動のパターン化が定着しがちです。しかしこれは、時が経てば経つほど後から変えていくのがどんどん難しくなってしまうので気をつけたい部分です。

子どもの気質をどのような方向性に導いていくかはしつけを含む親の働きかけで大きく変わるので、もし「うちの子、大変なタイプかも」と思ったら早い段階で正しいアプローチを知ることがポイントになります。

【4】親子の相性

“親は集中力のあるタイプだけれど子どもは集中力がない”、“親はグループでワイワイ話すのが好きだけれど子どもは一人で過ごすのが好き”など、対照的な気質を持つ親子の場合、親は子どもを理解できないことが多く出てくるものです。そういう場面が、「この子のことが嫌い」と感じるきっかけになることもあります。

逆に、同じ気質ゆえ理解はできるけれど衝突することが多いというケースもあります。例えばお互い気が強くて意固地である場合、当然ぶつかり合いが増えるので負の感情を持ちやすくなってしまうのです。

【5】ジェンダーの刷り込み

5つ目は、“母親ならこうあるべき”という強いプレッシャーがきっかけとなるケースです。

イギリスのボウルビィ博士が提唱した「愛着理論」というものがあります。要約すると幼少期に最低でも一人の養育者との強い絆がないと後々、心理的・社会的問題を抱えるようになるという理論です。

“養育者”は、母親でなければならないというものではありません。しかし、後に“養育者=母親”という解釈が盛り込まれたことで生まれたのが「三歳児神話」です。

1998年版『厚生白書』で三歳児神話を明確に否定していますが、日本には“母親なんだから”、“母親は家事育児をして当たり前”という性にあてはめる傾向が未だに根強く残っています。「かわいいから子どもを産んでみたら?」という無責任な発言をぶつけられたことのある既婚女性も少なくないのではないでしょうか。これは、母性の押し売り=“女性の幸せは子どもを産むこと”だという押し付けです。

もちろん、子どもを産む選択をしたならその責任はしっかり果たさなければなりません。けれど「母親なんだから~」というジェンダーの刷り込みに苦しむ母親は少なくありません。子育てで悩んでいても「母親だから我慢しなきゃ」という思いにとらわれ過ぎて自分を追い詰めてしまった結果、子どもを愛せないということに陥ることもあるのです。

ここまで5つ子どもが嫌いになってしまうきっかけについて解説しましたが、要因は一つではありません。子どもの気質や親の気質、しつけ…さまざまな要因が相乗して生み出される感情です。しかし、いずれのきっかけにも共通するのが子どもは親の思い通りにならないことが多いという点。このメカニズムが“子どもが嫌い”という心理を生み出してしまうのです。

親と子どもは別人格。思い通りにならないのは当然!

子どものことを理解できないとき、子どもに対して一瞬でも“嫌い”と感じてしまったとき、相談者のお母さんと同じように多くの親は自分の感情に罪悪感を抱きます。

けれど、親子といえど気質や趣味嗜好まで全く同じということはなかなかあり得ません。「子どもには子どもの考えや生き方があるよね」という思考を少し持つだけでも、子育てのイライラ緩和につながります。

良くないのは、自分のテンプレートで子どもを見てしまうこと。子どもに対して「パパの子だからできるよ」「お母さんはあなたよりもっと勉強したよ」など、自分と子どもを同一視して話す親は少なくありません。特に同性同士、母親なら娘の気持ちが分かるような気がして自分と重ねてしまう傾向にあります。それゆえ、子どもが自分とは違う価値観を持つことに違和感を抱きやすくなるのです。

自分と子どもは違う生き物、子どもには子どもの人生があるということは意識して子どもと接するようにしたいものです。

愛情は連鎖する。母親自身が愛情不足で育った可能性も…

相談者のお母さんの場合、どの段階からお子さんを愛せなくなってしまったのかが気になりますが、お母さんとしては「愛したい」という気持ちがあるのではないでしょうか。

前章で解説したようにわが子が嫌いになってしまうのには、さまざまなきっかけがあります。

しかし、永続的に子どもを愛せないことに悩む母親に多い傾向として、自分自身が親との関係がうまくいっていなかったということが挙げられます。

子育ての悩みは自分の育った環境も影響する

例えば親に無視されてきたり傷つけられてきたりという心が満たされない状況で幼少時代を過ごした場合、わが子が愛情を求めること自体が理解できないことがあります。「私は子どもの頃、親に甘えられることなんてなかったのに…」と感じ、子どもに対してイライラしてしまうのです。

また自分の自己肯定感の低さに悩むお母さんにに話を聞くと多くの場合、その方の母親、もしくは父親が登場します。幼い頃に自分が肯定してもらえなかった背景が見えてくるのです。「褒めてもらったことがないから、子どもにもどうやって褒めたら良いのか分からない」という相談案件は、ものすごく多いですね。

愛情は連鎖します。子育てで自分がいま困っている要因を探ると、しばしば一代前にさかのぼることがあります。

今回の相談内容でも“お母さんの親⇔お母さん⇔お子さん”世代のつながりで見ていくことは、前に進む大事なポイントになるように思います。

次章では愛情や愛着というものが人間の成長においてどんな役割を果たすかについて詳しく解説しましょう。

愛情の欠乏が子どもの生きづらさにつながる

先ほど「愛着理論」についてを紹介しましたが、では“愛着”とは何なのか、そこを簡単に解説します。

愛着というのは心理学用語で、子どもがある特定の人に示す愛情のことをいいます。“アタッチメント”とも呼ばれています。愛情を注いでくれる人との精神的な絆とも言い換えられます。その子自身の人間性や人間関係、社会性に直結するもので、アタッチメント(愛着)が欠乏すると子どもの情緒や人間関係の問題、生きづらさにつながってしまいます。

愛着不足のサインとして多いのが、注意引き行動。一般的に子どもは、親に見守ってもらう・褒めてもらう・喜んでもらうというポジティブな感情を向けてもらうことで愛着や愛情を感じています。しかしそれが得られない場合、振り向いてもらうためにわざと怒られるようなことをして注意を引くことがあります。妹や弟が生まれて上の子が“赤ちゃん返り”するのも、典型的な注意引き行動です。

相談者のお子さんは小学5年生なので、幼少期の子どものような分かりやすいサインはないかもしれません。けれど、抱きついているということはお母さんから何か反応が引き出せているからだと思うのです。「ゾクッとする」とき、お母さんはどのような反応をするのでしょうか。「やめなさい!」と拒否するのか、心の中の気持ちを隠してあしらうのか。どのような反応にせよ、お子さんは「こういう風に抱きついたら、お母さんに構ってもらえる」と思っているのかもしれません。

子どもがもっとも必要とするのは温かく見守る存在

“母親の役割は食欲を満たすだけのものなのか”ということに疑問を持った心理学者のハーロウ博士による、アカゲザルの赤ちゃんで実験した「代理母実験」というものがあります。針金で作ったごつごつの母親と毛布でふわふわにした人形の母親に哺乳瓶をつけ、どちらを選ぶかを実験したところアカゲザルの赤ちゃんは、ほとんどの時間を毛布で作られた人形と過ごしました。哺乳瓶が空になっても、毛布の人形につかまりながら針金の人形の方に口だけを伸ばして飲んでいたのです。

この実験で、母親に求めるものは食欲ではなく温もりだということが結論づけられています。もちろん、それは母親ではなく父親でも良いのです。大事なのは、温かく見守る存在愛着を持てる存在がいること。

“お母さんだけ”ではなく、子どもを見守る人数が多ければ多いほど温もりやアタッチメントは増えます。つまり、今回の相談の場合も周りのサポート、助けを求めることが大事なのではないでしょうか。

一人で抱え込まず、第三者に話を聞いてもらって

今回のお悩みに対するアドバイスは、誰にでも当てはまるものではありません。私のアドバイスを読んでスッと気持ちが軽くなる人は良いですが、このアドバイスに無理矢理、自分を当てはめようとはしないでくださいね。

子どもが嫌いということが一時的なのか永続的なのか。永続的だとしても要因や質はいろいろ違ってきます。“子どもが嫌い”になる心のメカニズムを解説しましたが、アドバイスのフォーマットがあるわけではありません。一度、専門家に直接相談してみるのが良いと思います。

「愛さなくちゃ」と思って、愛せるものではありません。なぜ、子どもを愛せなくなったのかを誰かに話すことで、解決のきっかけをもらえることは多分にありますよ。

「子どもが嫌い」という気持ちは他人に話しづらいものであるため自分だけで抱え込んでしまい、その結果、自分を追い詰めてしまうという母親は非常に多いです。けれど、人に相談したり話を聞いてもらったりすることで頭の中が整理され、物事が改善するということはよくあります。

自分だけで抱え込むには、大きすぎる悩みだと私は思います。お母さん自身にとってもお子さんにとっても、影響をできるだけ大きくしないためにも外に話を持ちかけることが必要です。親や友人など信頼できる身近な人、自治体や民間の子育て相談窓口など一度、自分の気持ちを吐き出してみましょう。解決策を見出すことも大切ですが、まずはお母さん自身の肩の力が抜けるような相手や場所を見つけてくださいね。

<構成・執筆 ソクラテスのたまご編集部>

佐藤めぐみ

佐藤めぐみ

公認心理師、オランダ心理学会認定心理士。欧米の大学・大学院で心理学を学び、「ポジティブ育児メソッド」を考案。現在は公認心理師として、育児相談室・ポジカフェでの心理カウンセリング、ポジティブ育児研究所での子育て心理学講座、メディアや企業への執筆活動などを通じ、ママをサポートする活動を行う。ドイツ在住。中学生の娘の母親として子育てにも奮闘中。

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