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2020.02.21

家庭における体罰の定義とは? 事例と回避テクニックを紹介~アンガーマネジメント【第19回】

4月から子どもへの体罰を禁止する「改正児童虐待防止法」が施行されます。前回の記事では、しつけのための体罰の問題からアンガーマネジメントの必要性を紹介しました。今回は、厚生労働省が体罰に当たると公表している具体的なケースを例に挙げながら、どのようにアンガーマネジメントを生かせば体罰を回避できるのか考えていきます。

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子どもが苦痛や不快感を感じればしつけではなく体罰

前回の記事(下記)は読んでいただけましたか? 

しつけ?虐待?家庭内体罰で後悔にしないために【改正児童虐待防止法によせて】/アンガーマネジメント【第18回】

こちらの記事では、しつけと体罰について体験を交えて解説しましたが、そもそも、一般的に体罰とはどのような行為を指すのでしょうか?

厚生労働省は、同省が主催した「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」の中で、“たとえ親がしつけのためだと思っても、子どもの身体に何らかの苦痛または不快感を引き起こす行為(罰)は、どんなに軽くても体罰である”と規定。さらに“どのような行為が体罰になるのか”具体例を示したガイドラインの素案をまとめており、以下のように紹介されています。

体罰とされるケースの具体例

  • 口で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた
  • 大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
  • 友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
  • 他人のものを盗んだので、罰としてお尻を叩いた
  • 宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった

「私は体罰なんてしていない!」と思っていた人も、上記のケースが体罰に該当することを知り「近いことをしたことがある」とショックを受けているかもしれませんね。中には「子育てが分からなくなった」「今さら変えられない」「こんなのは理想論だ」と思う人もいることでしょう。

しかし、体罰をする状況というのは、ひどく怒っているときのはずです。怒りをコントロールするアンガーマネジメントの方法を使えば、怒りによって起こすアクションは変わっていきます。

「改正児童虐待防止法」をきっかけに、どのようにしたら体罰を回避しながら親として子どもと関わっていけるかを一緒に考えていきましょう。

【体罰回避のヒント①】怒りを自分で大きくしていませんか?

早速、具体的な体罰と回避術を見ていきましょう。

しかし、その前に一つ大きな約束をしてほしいのです。それは、どんな場合であっても「しつけのための体罰という選択肢は捨てる」という意識を大前提にもつことです。

「ときには体罰はOKでしょ」という認識が少しでもあると、結局体罰という手段を使いかねません。「体罰に変わる方法」を見つけるという強い意志をもつことが大事です。

体罰ケース1
口で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬を叩いた。

このケースでは、アンガーマネジメントテクニックの

  1. 怒りの温度計
  2. 自分ルールの見直し
  3. 「べき」ログ

以上の3つのテクニックを使って、自分の中で怒りを大きくさせていないか振り返ってみます。

【テクニック①】怒りの温度計とは…?

“何回も”注意していることは、徐々に怒りの温度が高くなり、最終的には「ドカン!」と爆発した怒りとなって表現されてしまいます。注意しようとするときは、出来事そのものを10段階の怒りの温度計で計ってみましょう。

どのくらいになりますか?

もし、2回目、3回目と注意することが増えるにつれて、温度が高くなっていたとしたら要注意。不適切な怒り方につながる可能性大です。10段階中6以上の強めの怒りを感じているのであれば、どうしたら気持ちが落ち着くか、自分で気分転換に取り組みましょう。怒りを高いままにしないことが大切です!

怒りの温度計に関する詳しい記事:忙しい朝の親子バトルを防ぐための方法とは?

【テクニック②】自分ルールの見直し

口で言うのは「3回まで」など、自分で決まりごとを作っていないでしょうか。自分ルールは、万人に通用するものではないのですが、人に押しつけてしまいがち。ルールに自分が縛られてしまうほか、ルール違反があると許せなくなるので怒りにつながってしまうのです。

【テクニック③】べきログ

「親の言うことは聞くべき」「言うことを聞かないときには力でわからせるべき」など、何らかの「べき」という考えが心の中にありませんか? 「べき」は、自分が正しいと信じている理想や価値観であると同時に怒りの正体でもあります。

「べきログ」で、自分の中にある「べき」を書き出してみてください。どんな「べき」があって、どれくらい重要に思っているのか重要度も書き出してみるとよいですよ。

「べき」ログに関する詳しい記事:あなたを怒らせている正体 “~であるべき”に気づいて

以上の方法を行ってみると、頬を叩きたくなるほどの強い怒りにまで至らず、体罰を回避することができるはずです。

【体罰回避のヒント②】体罰が正義になっていない?

次は、3つのケースをまとめて考えて体罰回避をしていきましょう。

体罰ケース2、3、4
・大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
・友達を殴ってけがをさせたので、同じように子どもを殴った
・他人のものを盗んだので、罰としてお尻を叩いた

ここで必要なことは、「罰」そのものの考え方・捉え方を変えていくということ。3つのケースに共通しているのは、体罰が「悪いことをしたことに対する報復=お仕置き、こらしめ」になっているということです。

【テクニック④】自分の中の正当性を見直し、改める

いわゆる「目には目を、歯に歯を」という“正義の裁き”の意味合いがあるということです。そこには、間違っていることや悪に対する「正義」や「正しさ」があります。その正当性は、その人(=親)にとって正しいと疑わず、譲れないことだったりします。さらには、その正しさが覆されると怒りが強くなってしまうのです。

社会で生きていくためには、子どもに道徳的なことやルールについて教えることは必要です。時には諭したり叱ったりすることもあるでしょう。ただ、ここでは長年信じてきた価値観や正しさから一歩抜け出して、体罰という方法をとらない代わりにどうすればよいのかを考えていかないといけません。

“悪いこと”をした子どもに対して、「本当に必要ことは何か?」と考えてみてください。それは、“罰すること”ではなく、同じことを繰り返さないために“子ども自身が行動や考えを変えること”です

アンガーマネジメントでは、このように他の考え方に変える作業が大事になります。自分の正しさを横に置き、捉え方に変えていくことは一筋縄ではいかないかもしれません。

けれども、まずは親自身が「悪いことをしたら罰しなければならない」という認識から「悪いことをしたら、今後繰り返させないために何ができるのか」と認識を変えていかなければ、報復・仕置きとしての体罰を撲滅していくことはできません。

【体罰回避のヒント③】相手の立場で考えてみよう

最後のケースです。

体罰ケース5
宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった

このケースでは、「宿題をしない」という出来事について、子どもとどのように関わっていけばよいか?がヒントになります。

【テクニック⑤】子どもを理解し、問題解決できる5つのステップ

  1. 子どもの気持ちの理解
  2. 心構え(話し合う姿勢、問題点の絞り込み)
  3. 子どもの考えが先
  4. 親の考えを正当化せずに提案し、子ども自身が決める
  5. 実践と軌道修正

宿題をして欲しいというのは親心ですが、実際に子どもが宿題をしないのは何かの理由があるのかもしれません。アンガーマネジメントでは、相手の立場に立って考えてみるということがキー(鍵)となります。相手に対する許容度を広げることで、怒りが減っていくからです。

相手の立場を考えるのに役立つ記事:子どもとうまくいかない!? 関係改善のために親子がそれぞれできること

体罰行為の背景には、怒りの問題があります。そのため、体罰撲滅には、怒りのコントロールが不可欠といえるでしょう。

紹介している内容は一つのアプローチにすぎず、この他にももちろん方法はあります。ただ、身近な親子が体罰、あるいは虐待の加害者と被害者の関係にならないためにも、怒りや暴力に振り回されず幸せに暮らしていけるためにも、アンガーマネジメントの知識やテクニックを役立てていただけたらと切に願っています。

今日からできることを少しずつトレーニング。アンガーマネジメントにレッツトライ!

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長縄史子

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会(東京)アンガーマネジメントファシリテーター。子育てや教育・福祉・司法関係において、心に触れる実践的なアンガーマネジメントを伝え、一人一人が大切にされる教育社会を目指して怒りの連鎖を断ち切るために活動を続けている。著書に「マンガでわかる怒らない子育て」(永岡書店)「イラスト版子どものアンガーマネジメント~怒りをコントロールする43のスキル」(合同出版)などがある。 https://www.angermanagement.co.jp/

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