2020.01.22

しつけ?虐待?家庭内体罰で後悔にしないために【改正児童虐待防止法によせて】/アンガーマネジメント【第18回】

昨年、国会で成立した改正児童虐待防止法。今年4月から施行され、親権者の体罰は法律で禁止されることになります。そこで今回は、しつけのための体罰の問題からアンガーマネジメントの必要性を考えていきたいと思います。子どもの頃、家庭内で厳しい体罰を受けてきた筆者が今思うこと。家庭内に加害者と被害者をつくらないためにできることとは。 

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約6割の大人が体罰を容認している現状

「親による体罰禁止」を盛り込んだ改正児童虐待防止法が今年2020年4月1日から施行されます。おそらく多くの保護者が“体罰はいけないこと”だと分かっているつもりでしょうし、この法改正によって子育ての難しさを感じている人もいるかもしれません。

 

日本ではしつけの一環として体罰を容認する風潮があります。「しつけのために叩くのはやむを得ない」「愛情があれば叩くことに問題はない(=愛のムチ)」「悪いことだとわからせるために痛みは必要」「甘ったれには鉄拳制裁が必要」だと考える人がいます。

 


上のデータは、2017年に子どもの支援を専門にした国際NGO「公益社団法人セーブ・ザ・チルドレンジャパン」が全国2万人の大人を対象に実施した「しつけによる体罰等の意識・実態調査」です。「しつけのために、子どもに体罰をすることに対してどのように考えますか」という問いに対して、約6割の大人が体罰を容認しているという結果が出ました。

 

また、「(しつけのための体罰は)決してすべきではない」と回答した43.3%の中でも、“お尻を叩く”“手の甲を叩く”といった罰や、“怒鳴りつける”“にらみつける”など心を傷つける罰を容認する人が一定数存在しているほか、子どもの言動に対してイライラする頻度が高いほど、叩く・怒鳴るといった体罰などの頻度が高く、実際に子育てをしている家庭のうち70.1%でしつけの一環として体罰などが行われていることも分かっています。

 

「しつけのための体罰はやむを得ない」という考えが根底にある以上、体罰をゼロにするのは難しいことです。まずは、「いかなる時もしつけのための体罰は要らない」という考え方を意識するところからスタートしなければ体罰はなくならないのです。

 

 

 

母から受けた体罰で感じていたこと

今回の法改正は一定の抑止力になるかもしれません。現在、法律で体罰を禁止している国は世界に58カ国あり、初めて取り入れたスウェーデンでは、1960年代には体罰をする人が9割以上、体罰容認が5割を超えていたそうですが、現在はともに数パーセントにとどまっているそうです(The Ombudsman for Children in Sweden)。この数値的推移は体罰容認者が多い日本において希望が持てるものだと思います。

 

ですが、いくら法律で禁止されても「体罰は必要ない」という意識改革と、一人一人の感情のコントロール、いわゆるアンガーマネジメントを身につけていかなければ体罰自体を無くすことはできません。「家庭の中でアンガーマネジメントを!」は、加害者も被害者も作らないという教育社会を目指す私の活動の原点でもあります。

 

なぜなら、私は子ども時代に家庭の中で日常的に体罰を受けていました。今日は母の機嫌が良いか悪いか顔色を伺うようになり、子どもながらに思ったことは「“叩かないとわからない”ではなく叩かなくてもわかる」「頭ごなしに怒鳴らないで」ということ。

 

子どもへの体罰は大人の感情のはけ口になることが多くあります。振り返ると、転勤で約3年おきに知らない土地に引っ越し、ワンオペ育児で3人の子育てをしていたこともあり、母はストレスがたまっていたと思うのです。だからといって体罰をしていい理由にはなりません。体罰は恐怖や痛みで子どもをコントロールし、即効性があるので使い続けやすくエスカレートしやすいこともあります。

 

最初は手で叩いていたのが、物を使うようになる、叩く強さや物言いが段々強くなる。私もひどく叩かれた後、脳しんとうを起こした経験があります。見えている物が砂嵐のようになり真っ暗になり、そのときに思ったことは私が死んだら母は捕まるだろうかという期待と不安、一方で人生何だったのかこんなことで死んでたまるかという葛藤でした。このことは家族も知りません。何をされても子どもは親のことがやっぱり好きなのだと思います。

 

 

 

アンガーマネジメントで今ある暴力もなくせる

今は声を荒げることなくすっかり穏やかになった母ですが、当時を振り返り、下記の記事で取り上げた「怒りの特徴チェック」をしてみると、怒りの頻度、持続性、強度、攻撃性のすべてに当てはまっていました。

 

【怒り診断】自分の怒りのタイプを知ることから始めよう

 

一度怒ると止まらない、朝から晩までイライラ、思い出し怒りをし、叩く、物を投げつける、自分も周りも疲弊する…そんな毎日の繰り返しでした。

 

母の行動に対して「虐待では?」という話はここでは議論したくありません。ただ、私が言いたいのは、怒りの感情がわいたとしても、アンガーマネジメントを身につけていたならば、暴力を手段としないしつけができたこと、ひどい体罰が日常になっていたとしても言動は変えていけるということです。

 

例えば、当時、母がイライラしたときに何ができたかということを考えたとき、下記の記事で紹介したアンガーマネジメントのテクニックのひとつ“冷静になるためにその場を離れる”ということができたと思います。

 

忙しい朝の親子バトルを防ぐための方法とは?

 

反抗期に入るとなおのこと、親子げんかは勝ち負けの勝負になりやすいもの。相手を目の前にすると気持ちが落ち着かず一触即発になりやすいので同じ土俵にいること自体危険です。また「間違いを今、正さなければ」「親として子どもに負けられない」「きちんとしつけなければ」というある意味の親としての呪縛や、“べき思考”があると怒りが強くなりやすく、冷静な具体的戦略が持てないまま感情を丸出しにしてしまうので被害が大きくなるのも当然です。

 

怒りの感情があることを認めた上で、下記の記事で紹介した“アンガーログ”や“べきログ”を書き出して、積み重なりそうな怒りの問題を整理することが大切だと思います。

 

怒りのパターンを知ることができる「アンガーログ」をつけてみよう

 

 

 

アンガーマネジメントが事件を未然に防ぐ

そして、親自身が子育ての問題を吐露できる場も必要です。立ち話程度でも今抱えている問題に対して語れる場があれば気持ちは楽になるかもしれません。アンガーマネジメントトレーニングのほかにグループシェアが有効だと感じています。

 

「~せねばならない」という決めつけや思い込みの価値観は一人ではなかなか変えられません。価値観の違いに触れたり、他の人の方法を知る、一人で抱えないということが体罰を減らす一歩になると思います。

 

「もし、私たち親子がアンガーマネジメントを知っていれば傷つけ合わずに済んだのに」と思いますが、過去は巻き戻せません。今、自分が子育てをしている中で、当時の母の気持ちもわかります。でもその頃と違うのは私は親子でアンガーマネジメントを知っていること、試行錯誤しながらも取り組んでいることです。

 

次回の記事では、厚労省が挙げている体罰になるケースを取り上げながら、アンガーマネジメントのテクニックでどう回避できるかを紹介していこうと思います。

 

みなさんも、「もし、あのとき…」などと思わなくてもいいように、今日からできることを少しずつトレーニング。アンガーマネジメントにレッツトライ!

 

長縄史子

長縄 史子

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会(東京)アンガーマネジメントシニアファシリテーター。子育てや教育・福祉・司法関係において、心に触れる実践的なアンガーマネジメントを伝え、一人一人が大切にされる教育社会を目指して怒りの連鎖を断ち切るために活動を続けている。著書に「マンガでわかる怒らない子育て」(永岡書店)「イラスト版子どものアンガーマネジメント~怒りをコントロールする43のスキル」(合同出版)などがある。 https://www.angermanagement.co.jp/

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