新年度は不登校から学校復帰するきっかけに?再登校へ向け親ができる対応
新年度は、担任もクラスメイトも一新される時期。不登校の子に「再登校のきっかけになってほしい」と期待する保護者も多いことでしょう。
新年度が学校復帰の機会になりやすい子の特徴や再登校に向けて親ができるサポート、復帰できなくても準備しておけることを教育アドバイザーの若山修也さんが解説します。
目次
新年度は不登校の子の学校復帰へのきっかけのひとつ
新年度を迎える時期、「学校に復帰するチャンスかも」という願いは強くなりますよね。
たしかに、担任の先生やクラスメイトがかわったり、長期休みが明けたりと環境が変化するこのタイミングは、再登校のきっかけの1つになることが考えられます。
岡山県総合教育センターが行った調査でも、「クラスの環境が変わったこと」が小中学生が学校に復帰をした要因の1つとして上位に挙げられています。
一方で、新年度・新学期など環境が変化する時期は、子どもにとって不安が大きくなる時期であることも忘れてはいけません。「新しいクラスになって不登校が始まってしまった」というケースも多くあります。
新年度のタイミングで気持ちよく復帰できれば、もちろん親も子も嬉しいことですが、うまくいかなかったとしても落ち込む必要はありませんよ。
新年度が復帰のタイミングになりやすいケース
不登校になっている背景や理由は、さまざまなケースがあり複雑です。「これが原因」「今回はこういうパターン」と単純化し分類することはできませんが、新年度が学校復帰のタイミングになりやすいのはどのようなケースなのでしょうか。具体的にみていきましょう。
<新年度が復帰のタイミングになりやすいケース>
- 担任やクラスメイトとの関係に不安を抱えていた場合
- 復帰するタイミングを探していた場合
担任やクラスメイトとの関係に不安を抱えていた
「いじめ」をはじめとしたクラスメイトとのトラブルや、学級担任との相性の問題で学校にいきづらくなったケースは、新年度は学校に行きやすくなる可能性があります。
特に小学校は、学校での時間のほとんどを担任と過ごします。クラス替えで人間関係が大きく変わることで、人間関係の不安が一新される場合があります。小学生に限らず中学生にとっても、クラスの人間関係は、学校に安心して通うための重要なポイントです。
ですが、クラス替えがあったからといって人間関係のトラブルのすべてが解消するわけではありません。同じクラスではなくても、学校で会う可能性のある特定の人の視線が気になる、など、繊細な人間関係の中で苦しんでいる子どももいることを忘れないようにしましょう。
本人が復帰するタイミングを探していた
復帰する決心が本人の中で固まってきていても、欠席していた気まずさから「なんとなく行きにくい」と感じている子どもは少なくありません。その場合、新年度は気持ちを切り替えるきっかけになることがあります。
一方で、「学校に戻る準備や決心はついている」という子どもの言葉を受け止める際には慎重な判断が必要です。
子どもが「春休み明けには学校へ行きたい」と言っていても、必ずしも学校に戻る準備ができているわけではないからです。親の心配する姿、焦る姿を見て、その場しのぎに「お母さん、春休み明けたら学校に行くから」と話すケースもあるということを頭の隅に置いておきましょう。
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若山さんへの相談ページを見てみる新年度がベストなタイミングではないケース
新年度は学年の入れ替わり、環境の変化の時期ではありますが、必ずしもそれがベストなタイミングではない子もいます。
<新年度が学校復帰のベストなタイミングではないケース>
- 子どもの準備が追いついていない場合
- 学校自体に苦手意識や恐怖心を抱いている場合
子どもの準備が追いついていない
新年度や新学期は環境がリセットされるタイミングである反面で、「新しい人間関係を築かなくてはいけない」「担任の人間性が分からない」という不安があり、想像以上のエネルギーが必要です。
気持ちの準備が整っていない子どもと、新学期だから絶対に学校行かせたい保護者が意見を交わしても、心の距離がどんどんと離れてしまう心配があります。
保護者が、「新年度だから復帰をさせなければ」と不安や焦りで苦しい思いをしていると、プレッシャーが子どもにも伝わってしまいます。親も子も少しでもリラックスした時間を過ごせることを大切にしてみましょう。
学校自体に苦手意識や恐怖心を抱いている
学校に行くことや学校自体が心身の不調の一因となっている子にとって、新年度はストレスがひときわ大きくなる時期と考えられます。テレビや家族の会話などから、「もうすぐ新年度」といった話題を聞く機会が増えるからです。
まずは学校以外の安心できる子どもの居場所を探すことが、遠回りのように見えて、その子には必要なステップである可能性があります。
新年度の再登校に向けて親ができる対応
新年度だけが登校再開のタイミングではありませんが、子どもの状態を見たり、本人と話したりする中で復帰できそうなのであればサポートをしたいですよね。そこで、保護者の心構え、できること、気をつけることを考えていきましょう。
学校復帰を決めるのは本人
学校に復帰するかどうかを決めるのは周囲の大人ではなく本人です。しかし、頭では分かっていながらも「そろそろ新年度だね、学校どうする?」という言葉がけをして、子どもにプレッシャーをかけてしまう保護者は少なくありません。
もちろん、子どものことを思って出てくる言葉だと思いますが、子どもの気持ちや意思を先回りした声がけは、子どもの意思を確認するのではなく、その場しのぎのコミュニケーションになる可能性があります。
もし、何も聞かずにいられないのであれば、「4月に入ったね(学校どうする?は言わない)」など、”事実だけを言葉にする”ということを意識しましょう。
学校への連絡や教師との連携
4月に入ると学校は新体制になっています。具体的なクラス発表などはまだでも、職員室は新たな学校生活に向けて慌ただしく準備をしており、不登校中の子のことを気にかけているはずです。
焦る必要はないのですが、本人に学校復帰の意志があるならば、学校に伝えておくとよいでしょう。
学校や教師のこれまでの対応に不安や苦手意識を持っている人もいるかもしれませんが、学校や教師は敵ではなく一緒に子どものことを考えていく大切な存在です。連絡を入れておくことで学校としても必要な準備ができるはずです。
また、中には「早速、三者面談をしましょう」とがんばってくれる教師もいます。ですが、子どもの様子を見て、「うちの子のリズムはまだそこまで追いついていなさそうだな」と感じるのであれば、その旨を伝えて、学校と保護者間の連絡で歩幅を合わせていくようにしましょう。
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若山さんへの相談ページを見てみる学校復帰できなくても新年度にできる4つのこと
結果として新年度が子どもにとっての学校復帰のタイミングとはならないケースでも、少しずつ準備をすることはできます。むしろ、今からできる方法で環境を整えていくことも大切です。
<学校復帰に向けて新年度に親ができること>
- 新担任との情報共有
- 再登校しやすい復帰スタイルを複数用意しておく
- 登校できないことを落ち込み過ぎない
- 保護者が相談できる場所・人を作る
1.新担任との情報共有
まずは新しい担任と今に至るまでの経緯や現在の子どもの様子を共有しましょう。学校でも引き継ぎは行われていますが、あなた自身の言葉でも話をすることが信頼関係を築いていく第一歩となります。
特に新担任にとっては、これまでの子どもの変化と現時点の親の意向が最初に知りたい情報です。
例えば、「三者面談など特別な場面では学校に行けたから面談の機会があれば把握しておきたい」「子ども宛の電話は、最初はよかったが段々と億劫がるようになった」「定期的な連絡はありがたいが、頻繁でなくても今は良さそうだ」などを伝えると、新担任も見通しを持ってあなたの子どもへの関わり方を考えることができます。
2.再登校しやすい復帰スタイルを複数用意しておく
朝から学校に行き授業を全て受けて帰ってくるという形での登校ではなくても段階的に登校を再開するといった選択肢があります。まずは行事だけ参加したり、放課後に面談したり、保健室や相談室などでの別室登校から再開するケースがあります。
登校再開までのステップは、通っている学校の考え方によってさまざまです。これまでに段階的な登校で不登校が解消した例があったか、質問をしてみるといいでしょう。
また、遠回りに感じるかもしれませんが、学校以外の地域の施設、児童館、図書館、児童福祉施設等に通うことから、学校への復帰につながるケースもあります。地域の情報は、「住んでいる自治体名 不登校支援」とネット検索すると情報収集ができます。
3.登校できないことを落ち込み過ぎない
久しぶりの登校というと、特別なことのように思えることでしょう。しかし、学校への復帰を期待するあまり、”登校すること”がゴールだと思ってしまうのはいいことではありません。
中には、「登校できたらスマートホンを買ってあげる」など、ご褒美を考えてしまう保護者もいますが、果たして”登校できた=復帰に成功”となるのでしょうか? 再び登校するようになっても、気持ちや体調に波がある子はたくさんいます。
また、もし、新年度に登校ができても、そのまま通い続けられるわけではありません。保護者が、登校できた日は喜び、登校できない日は落ち込んでしまうなどの動揺を見せることで、子どもは登校することがさらなるプレッシャーになるだけでなく、「登校できない自分はやっぱりダメなんだ」と自己否定感が強くなってしまうこともあるのです。
「新年度になったら復帰できるかも」と期待する気持ちは決して悪いことではありません。しかし、学校に久しぶりに行けた日があったとしても、それは回復の途中の一歩目であり、ゴールではありません。新年度に登校できてもできなくても、焦らず見守り続けることは変わらないのです。
4.保護者が相談できる場所・人を作る
新年度が思うように登校復帰に結びつかない場合でも、相談先を見つけることはできます。
春休みや新年度は、不登校等支援団体のカウンセリング件数も増える時期です。「カウンセリング」と聞くと、周りの目や評判が気になるという人、尻込みしてしまう人もいるかもしれません。現在は気軽に相談できるオンラインカウンセリングや、スマホでチャット形式で相談できる仕組みも登場してきています。
保護者が周囲に相談ができず苦しんでいる状態を子どもは敏感に感じ取ります。相談先を作り、あなた自身の不安を解消をしておくことが大切です。
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若山さんへの相談ページを見てみる休んでいる間に選択肢を広げることも大切
不登校中のサポートについて「子どもの心のエネルギーが足りないので、ゆっくり休ませてあげましょう」というアドバイスを目にしたことがある人は多いのではないでしょうか。
しかし、「休ませるといわれても苦しいし、難しい…」と感じる人も多いはずです。学校復帰だけにこだわらず、子どもを温かく見守り続けることは簡単なことではないですよね。
特に新年度、登校再開に向けて自然と期待は膨らむものですし、焦って「学校はどうするの?」と声をかけたくなるのも当然です。
実は、このような焦りや不安は、選択肢が限られていたり、残されていなかったりするときほど膨らんでしまうものです。
新年度が始まる前の今の時期は、不登校の子どもに限らず、ほかの子も一斉に学校を休んでいる期間です。
学校の授業がストップしている時期だからこそ、学校側と段階的な登校再開の選択肢を検討できたり、学校以外の子どもの居場所の選択肢を探せたりします。
新年度が始まるタイミングの今こそ、広い視野で子どもとの関わり方を考える時期にできたらと願っています。
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通信制高校を代表として学校教育に10年以上携わり、不登校に悩む生徒、保護者の個別相談を1000件以上受けてきた。中高英語科の教員免許のほか、重度訪問介護従業者資格を保有。現在は、教育大手の民間会社で未来の学校のあり方を模索するほか、さまざまな親子の相談にのっている。