不登校の原因・理由を解説|親が家庭でできる対応とNG行動とは?

不登校の原因は個人やご家庭によってさまざま。この記事では「不登校の原因って何?」「親はどう不登校の子どもに接するべき?」「不登校の子はどう過ごせばいいの?」とお悩みの保護者の方のために、不登校の主な原因と対応について解説します。また、不登校に悩むご家庭を支援する相談先についても紹介します。不登校のお子さんと向き合うためのポイントをぜひつかんでくださいね。
目次
文部科学省のデータで見る不登校の原因と人数
文部科学省の令和3年度の報告によれば、全国の小学校、中学校、高等学校の不登校児童・生徒数は以下のようになっています。小学生は学年が上がるごとに増え、最も多い小6で約25,000人。中学生になると最も多い中3で6万人に迫る人数です。高等学校でも約5万人と、すでに「不登校は特別な例」といえる人数ではなくなっています。


(出典)
- 文部科学省:令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
- 令和3年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要「小・中学校における不登校の状況について」および「高等学校における不登校の状況について」
【小学校・中学校別】不登校の状況と原因
不登校の原因についても統計データが出されています。ここでは小学生、中学生の学齢別に分けて、文部科学省の統計をもとに原因を見ていきます(高校については、令和3年度は調査結果がないため割愛しています)。
小学生の主な不登校の原因
小学生の場合は、以下のようになっています。

多くを占めているのは「無気力」で1位です。特にこれといった理由は無いものの、「なんとなく行きたくない」というケースが多いとわかります。
2番目に多いのが「親子の関わり方」で、中学生の2倍近い割合になっています。
一般的に、小学生は親子関係がまだ密接なため、子どもは保護者からの影響を強く受けます。そのため、親が過保護すぎると子どもはストレスを受け、不登校になるおそれもあります。
また小学生でも、クラスや学校でのいじめ、友人関係の悩みなども、割合はそれほど多くないものの存在しています。学年別でみると小学校2年生が最も多く、低年齢化が見られます。この理由は専門家の意見では、定義の変更により理由が詳細化したこと、早期教育の弊害などが挙げられています。
(参考)東洋経済オンライン

「生活リズムの乱れ、あそび、非行」も多くなっています。近年ではインターネットの影響やITツールの利用の影響もあるでしょう。子どもがネット犯罪被害を受けるケースや、逆に子ども自身が加害者になるケースもあるため注意が必要です。
(参考)政府広報オンライン:「あなたのお子さんは大丈夫?スマホ、携帯にご注意を!ネット犯罪の落とし穴」3.子供が加害者になることもあるの?
中学生の主な不登校の原因
中学生の不登校の原因も、小学生と同じく「無気力・不安」が最も多くなっています。とくに理由は無いけれど学校になんとなく行きたくない…そして休むことが増えると、そのまま学校に行きづらくなる生徒もいます。
中学生の場合、小学生と異なるのは「学業の不振」が、小学生は約3%だったものが、中学生では6%を超え2倍になっている点です。高校受験の影響はあるでしょう。万が一失敗すると社会的な身分がなくなってしまう(=浪人になってしまう)ことで、プレッシャーを受け、メンタルが不安定になるお子さんもいます。
高校受験のためには内申点も必要なので、日頃から定期テストや小テストを頑張らなければなりません。授業は小学生の頃よりスピードアップし、学習内容は難しくなるため、その負担が影響していると考えられます。
また中学生という思春期の只中では、クラスや学校でのトラブル、友人関係の悩みもあるでしょう。「いじめを除く友人関係をめぐる問題」が小学生は約6%に対し、中学生は11%を超え、やはり2倍近くになっています。
以上の学業不振や対人関係の悩みから、精神的健康状態が不安定になる生徒もいます。保護者との関係や家庭環境による影響も、まだ精神的に未成熟で、思春期や反抗期にある中学生では十分に考えられます。

不登校になる主な原因|4つのケースに分けて解説

ここでは不登校の主な原因といわれるものを、原因の出どころ別にまとめました。
学校に原因があるケース
学校に原因があるケースとしては、以下のような要因が考えられます。
- 学業不振:学校の勉強についていけない 進学や受験へのプレッシャーなど
- 環境の変化:進学や進級による環境変化についていけない など
- いじめ・対人関係:学校内の人間関係のトラブル など
文科省のデータでは、学力不振による不登校は意外に数が多くなっていましたね。授業についていけないことで出来ない自分をカッコ悪いと思ってしまったり、友達に知られたくないと感じたり、わからない授業をただ聞いているのが苦痛になったり…なども理由としてあるようです。
なお、近年は文部科学省の通達により、不登校の生徒においては一定の条件がそろえば、学校に登校しなくても出席扱いとみなす事例が出てきています(後述)。
家庭が原因となるケース
家庭に原因があるケースとしては、以下のような要因が考えられます。
- 家庭環境の問題:貧困、家庭内不和、若年層の介護、家庭内暴力 など
- 保護者の関わり方の問題:極端な放任(ネグレクト)、極端な過干渉 など
- 家庭の事情による環境の変化:離婚、再婚、失業、転校 など
1の原因は、子どもだけでは解決しようのない、影響力の大きい問題です。貧困や家庭内暴力は社会問題としてたびたび話題にのぼっています。若年層の介護は、最近話題になったもので、ニュースなどで目にした人もいるのではないでしょうか。
2の「保護者の関わり方の問題」には、親の過度な期待や、受験において子どもにプレッシャーをかけることも含まれます。例えば、「一族全て●●大学出身だから必ずそこに合格しなければならない」「代々医者だから医学部に合格しなければならない」などが、筆者が実際に見聞きした例でもありました。
ほか、夫婦の子育てスタイルの違いや受験に対する考え方、教育費への費用をどれくらいかけられるかなども、家庭内不和の原因になってしまうことがあります。
発達障害や精神的なものが原因となるケース
不登校の原因として、発達障害や精神的なものも考えられます。
- 発達障害といわれるもの:自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)など
- 精神的なもの:うつ病、神経症、不安障害、無気力症候群 など
例えば、学校の勉強や受験、友人関係への過度のストレスが原因で精神的な病気を発症し、学校に通うことが難しくなるケース。また、発達障害の特性により学校の環境にうまく適応できず、不登校の原因となるケースです。
これらの原因が不登校に影響している場合は、何よりも本人の心身の健康を考慮しなければなりません。特に保護者は子どもに寄り添って理解するよう努めないと、事態が悪化することもあります。「体は元気なんだから、学校に行きなさい!」「病気じゃないでしょ!」などの言葉がけや、無理強いは禁物です。
適切な医療機関の受診、早期の発見と適切な支援はもちろん、家族や周囲の人々の理解も大切です。専門的な支援を含めたアプローチを心がけてください。
理由が特にない、はっきりしないケース
不登校になっているお子さんの中には、上で紹介した理由が複数絡み合っていて、原因特定が難しいケースもあります。このようなお子さんは、継続的な対話やカウンセリングを通じて本人の気持ちや状況を理解し、様々な観点からの支援・対策を検討する必要があります。調査結果の「無気力・不安」も、これに分類されるケースがあります。
なお、理由が特にないお子さんの場合、学校や担任と連絡をとりながらしばらく時間を置いているうちに、自然と学校に復帰できることもあります。保護者は、焦らずじっくり子どもの話を聞き、様子を見て「待つ」姿勢が大切です。
【ポイント】コロナ禍による不登校の状況
コロナ禍においては、不登校が激増したという調査結果や報道があります。友人と自由に会って会話できない異常な状況で、メンタルに不調を訴えたお子さんや学生さんもいました。
現在コロナによる行動制限が少しずつ解除されています。コロナによる影響で不登校になっていたお子さんの場合も、本人の希望を最優先に、学校と連携して少しずつ慣らしていくなど対応していってくださいね。
(参考)朝日新聞デジタル:
「小中学生の不登校急増、最多24万人 行事中止や休校…コロナ禍なお」2022年10月27日
「コロナ3年、学校現場に影 不登校激増、小中高生の自殺も多数」2023年1月15日
保護者が不登校の子どもにしてあげたい対応・NG対応

実際に不登校になった子どもたちに、親はどのような態度で接してあげればよいでしょうか。保護者が心がけておきたい対応、NGな言葉を解説します。
「行きたくなければ行かなくていいよ」子どもの気持ちを尊重する
不登校のお子さんに対する保護者の対応で最も大切なことは、子どもの気持ちを尊重し、無理強いしないこと。学校に行きたくないと言うお子さんには「行きたくなければ、行かなくていいんだよ」と言ってあげましょう。子どもの話をしっかり聞いて、理解し、受け止めることが大切です。
例えば、学校でいじめにあっていて、本人が転校したいと希望するならば前向きに検討してもよいでしょう。いじめられる環境でガマンを続けていても何もいいことはありません。学校側が理解を示してくれるならば改善の余地はありますが、そうでないならば「逃げる」ことは悪いことではありません。
学業不振が原因なら、授業についていけるようになれば復学できることもあります。本人が「本当は、勉強したい。でもわからなくてつらい」と言っているケースです。家庭で保護者が勉強を見てあげられるならいちばんいいのですが、塾に通う方法もあります。
この場合も、お子さんの希望が最優先。「学校以外で勉強したい」と本人が言うなら、塾や家庭教師を探してみましょう。最近では心理カウンセラーを置いて不登校のお子さんに対応している個別指導塾なども増えています。

放置しない!「親はいつでも手をさしのべてくれる」と子どもに示す
不登校のお子さんにどう接すればいいかわからず、腫れ物にさわるように何もしない保護者の方もいるようです。また、最初から子どもに興味をもたず放置している家庭もあります。
子どもは放置されると心を閉ざしてしまいます。根気よく声をかけ、様子を観察しましょう(ただし、過度な干渉は禁物です)。
「あなたへの興味を失っていないよ」「そばにいるよ」「困っていればいつでも助けるよ」と態度で示してあげて、何かできることがあれば、積極的にサポートをするように心がけましょう。
子供の安心できる「居場所」をつくる
ここでいう「居場所」は、「子どもが安心していられる場所」という意味です。学校は行きたくないお子さんでも、習い事の場には行けるケースもあります。先行研究でも不登校のお子さんのための「居場所」が大切としています。
例えば、学校には行けないけれど、幼少期から通っていた空手教室だけは通い続けられたというお子さんの例がありました。お子さんが「行きたい、やりたい」と思う習い事や通う場所は、できるだけ制限せず続けさせてあげましょう。人とかかわることで、学校ではできない経験ができたり、家に一人でこもっているより息抜きになることもあります。
ただし、「学校に行けないなら、今習っている習い事ぐらいは続けなさい!」と無理強いすることは逆効果なので注意しましょう。あくまでも、子どもの主体性が大切です。
もちろん、家庭内でお子さんが安心できる環境づくりも大切です。不登校の子どもは家で一人になってしまうことが多いため、居心地の良い場所をつくることで、その子の気持ちを安定させることができます。物理的な環境だけではなく、「家族が信頼しあっている、居心地の良さ」も大切なポイントです。
(参考)
- 文部科学省:「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」
- 「【論文】不登校生徒への支援を考える」,6章「どう支援するか」:橋本 怜(信州大学 理学部 数理・自然情報科学科),庄司 和史(信州大学 教職支援センター)
学校と密に連絡をとる
不登校のお子さんがいるご家庭は、担任や校長との連絡を密にし、子どもの学校生活や進路について情報共有しましょう。学校とよい関係を築いておくことで、子どもが「学校に戻りたい」と思ったときにスムーズに再登校の準備ができます。
多くの学校では、少しでも登校できるなら、保健室で1時間程度でも過ごすと出席扱いになるようです。また最近は文部科学省が「ICT等を利用した学校以外での学習を指導要録上の出席扱いにする」と決定しました。
「不登校児童生徒の中には,学校外の施設において相談・指導を受け,社会的な自立に向け懸命の努力を続けている者もおり,このような児童生徒の努力を学校として評価し支援するため,我が国の義務教育制度を前提としつつ,一定の要件を満たす場合に,これらの施設において相談・指導を受けた日数を指導要録上出席扱いとすることができることとする。」
(出典)(別記1) 義務教育段階の不登校児童生徒が学校外の公的機関や民間施設において相談・指導を受けている場合の指導要録上の出欠の取扱いについて
特にお子さんが受験を控えている場合は、出席日数などについて担任や校長と連絡を密にとってください。上にある「一定の要件を満たす」ためには、学校との連携は不可欠です。出席日数が足りずお子さんが行きたい高校を受験できないことにならないよう、保護者の方は心がけておいてくださいね。
不登校は悪いことではない、ひとつの選択肢だと伝える
不登校について「考え方を改める」ことが、最も重要なことかもしれません。不登校はひとつの生き方の選択肢であって、後ろめたいことではないのです。いろんな人生があること、学校もさまざまな形態があることをしっかり親子で認識し、確認しておきましょう。
近年の高校生では、より自分らしい生き方を求めチャレンジするために、最初から登校の不要な通信制高校を選ぶ生徒さんが増えています。また通信制高校自体の進化もすすんでいます。
例えばフィギュアスケート選手の紀平梨花さんや男子テニス選手の望月慎太郎さん、複数の囲碁や将棋の棋士・女流棋士が在籍しているN高等学校・S高等学校が有名ですね。このほかにもさまざまな通信制高校があります。
【注意!】不登校のお子さんに、してはいけない保護者のNG対応4つ
- 不登校が悪いことのように言う
- 子どもを責める、怒る、罰を与える、全否定する言葉を投げつける
- 無理やり学校に行かせる
- 放置する、興味を示さない
上で紹介した、「してあげたい対応」の真逆ということがおわかりではないでしょうか。
子どもが不登校になる理由には様々な要因があり、それを一方的に子供の責任や過失として責めることは適切ではありません。「子どもファースト」の心がけを第一に、周りからのサポートも利用して、根気強く子どもを支えてあげてくださいね。
子どもが不登校になった場合の相談先

「うちの子、不登校かも?」となったら、専門の支援を受けたり、学校や専門機関との連携を図ったりするなど、お子さんの状況に合わせた適切なサポートを提供することが重要です。
学校
まずは学校としっかり連絡を取り合い、相談しましょう。
各自治体の支援センター
各自治体には、不登校に関する相談や支援を受けることができる支援センターがあります。自治体の教育委員会や福祉部門に相談することも可能です。
自治体の支援センターには、資格をもった専門スタッフが在籍していることが多く、お子さんの状況を把握して適切な支援を提供してくれるでしょう。お住まいの自治体に相談してみてくださいね。
民間の不登校支援サービスの利用
民間の不登校支援サービスには、NPO法人などがあります。カウンセリングや教育プログラムの提供などが主なサービスで、塾などでも対応可能な場合もあります。ほか、教育相談窓口などを設けている教育サービスなどもあり、利用は無料~有料までさまざま。信頼できる実績のあるサービスがあれば、ぜひ利用してみましょう。
まとめ
不登校の原因は人それぞれで一様ではありません。多様な原因・理由が存在します。しかし「お子さんの不登校の原因を知りたい」「笑顔で過ごせるようになってほしい」という保護者の願いは、皆さん同じではないでしょうか。
保護者の方は、お子さんの不登校についてご家庭内だけで抱え込まず、支援してくれる外部の支援やサービスも利用しながら向き合ってください。一歩一歩、焦らず進んでいってくださいね。

教育に関する有識者の皆さまと一緒に、子を持つお父さん・お母さんでもある「ソクラテスのたまご」編集部のメンバーが、子どものために大人が知っておきたいさまざまな情報を発信していきます。