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2021.02.17

中学生に多い起立性調節障害とは|症状や治療、学校生活、家庭でできるケアを医師が解説

「朝、起きられない」「午前中はフラフラする」子どもにそう言われたら、あなたは何と言いますか?「遅くまで起きているからでしょ」「寝不足じゃないの?」と思うかもしれませんが、それは起立性調節障害という病気かもしれません。不登校になる原因のひとつとしても知られ、中学生に多いとされる起立性調節障害について小児科医の武井剛医師に話を聴きました。

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不登校の原因にもなる起立性調節障害の症状とは

日本財団が2018年10月に行った「不登校(不登校傾向)に関する調査」(12~15歳、計6,500人を対象に実施)によると、「中学校に行きたくない理由」という質問の答えで上位を占めたのが「朝、起きられない」という回答でした。インターネット上を検索してみると、不登校の3分の2が起立性調節障害だという説も多々見かけられます。

では、起立性調節障害とはどのような病気なのでしょうか。

「起立性調節障害とは自律神経の機能が低下して血圧の調節がうまくできなくなり、立ち姿勢でいたり、起き上がろうとしたりするとめまいや動悸、失神、吐き気、頭痛、腹痛などの症状が起きることを指します」と話すのは、小児科医の武井剛さん。

ひとことで起立性調節障害といっても症状のタイプはさまざまで下記のようなものがあるそうです。

起立性調節障害の症状タイプ

  • 起立直後性低血圧
  • 寝ている状態から立ち上がった時に低血圧になり、めまい、立ちくらみ、動悸が起きるタイプ。起立性調節障害の中でも最も多い症状。

  • 体位性頻脈症候群
  • 立ち上がると脈拍が上がってめまいやふらつき、頭痛などが起きるタイプ。

  • 神経調節性失神
  • 交感神経と副交感神経のバランスが崩れて急激に血圧が低下し、突然失神するタイプ。

  • 遷延性起立性低血圧
  • 起立した直後は問題はないものの、立ったままでいると数分後に血圧が少しずつ低下していくタイプ。失神してしまう場合もある。朝礼中などに倒れてしまうのがこのタイプ。

症状は午前中に重く症状が出るケースが多いようですが、場合によっては夕方まで起き上がることができないようなケースもあるようです。

小学生の5%、中学生の10%が起立性調節障害

上記のような起立性調節障害の症状が現れるケースは、思春期になると増えるといわれています。小学生は全体の5%に症状がみられ、中学生になると10%ぐらいに増えるといわれているそう。

「どうして思春期に増えていくのかハッキリとした原因は分かっていません。ホルモンバランスの変動や体格の変化など、さまざまな要因が考えられています。また、中学生になって夜型の生活になるなど生活リズムの変化も影響しているかもしれませんね。そもそも起立性調節障害をなぜ発症するのかは解明されていません。ただし、先天性ではなく生活習慣は影響があるといわれています。

昨年は新型コロナの影響で休校期間があり、昼夜逆転の生活になってしまったり、生活リズムが乱れたりして、学校が再開されても起立性調整障害の症状が出て復帰できなくなった子がたくさんいます。例年より明らかに調子が悪い子は増えていますね」

話を伺った人

武井剛さん小児科専門医

東京大学卒業後、大学病院小児科及びこども病院神経内科で研修。現在は東都文京病院小児科にて、小児全般の診療を行いつつ、起立性調節障害を含む「心と体の病気」の子どもたちを診療中。日本小児科学会認定小児科専門医。日本小児科医会認定「子どものこころ」相談医取得予定。

わが子が起立性調節障害なのか知る方法を紹介

前述の症状やタイプを見て、「うちの子も起立性調節障害かも」と感じた人もいることでしょう。しかし、“朝がつらそう=起立性調整障害”というわけではなく、寝不足という場合もあるそう。そこで、自分の子が起立性調節障害なのかを知る方法を武井さんに教えてもらいました。

起立性調節障害チェックリスト

子どもの様子を思い出し、下記チェックリストの中で、“たまに”でも当てはまる項目をチェックしてください。

起立性調節障害チェックリスト

□ 立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
□ 立っていると気持ち悪くなる、ひどくなると倒れる
□ 入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
□ 少し動くと動悸や息切れがする
□ 朝なかなか起きられず午前中は調子が悪い
□ 顔色が青白い
□ 食欲不振
□ おへその辺りの腹痛を訴える
□ 倦怠あるいは疲れやすい
□ 頭痛がある
□ 乗り物に酔いやすい

いかがでしたか? 3項目以上当てはまる場合は起立性調節障害の可能性があるそうです。

「起立性調節障害の可能性がある場合でも、すぐに病院で治療をしなくてはいけないというわけではありません。何とか学校に行けているのであれば、生活習慣を見直すことで症状が改善されていく可能性があります」

起立性調節障害を家庭で改善する方法

それでは、見直すべき生活習慣とはどのようなものなのでしょうか。

【見直しポイント①】規則正しい生活リズムを意識する

中学生に必要な睡眠時間は8~10時間といわれています。例えば、学校が遠かったり朝練があったりして6時に起床するお子さんの場合、遅くとも22時には寝ないと十分な睡眠時間が確保できないことになります。現代の子どもたちには意外に難題なのです。

なかなか寝付けない場合は、入浴後1.5~2時間くらいの体温が下がってきたあたりを入眠時間に設定したり、就寝前2~3時間は可能な限りブルーライト(スマホ、タブレットなど)を避けるようにするとよいでしょう。

また、起床時は、すぐに起き上がることはできなくても寝起きにしっかりと日光を浴びるようにすることも大切です。

【見直しポイント②】ゆっくり起き上がり、立ち続けるときは足をクロス

立ちくらみで倒れて骨折してしまうケースも少なくありません。そのため、立ち上がるときはうつむきながらゆっくりと立ち上がり、最後に頭を挙げるようにしましょう。また、朝礼や電車登校など、どうしても立ち続けなくては行けない場合は足踏みをしたり、足をクロスしたりして血液が下半身に溜まらないようにしましょう。

【見直しポイント③】1日30分以上歩くようにする

低血圧の症状を出さないためには、血液を下半身に溜めないように運動して足の筋肉を収縮させる必要があります。そこで、1日30分以上歩くことが推奨されています。家の中でずっと過ごしていると自律神経にもよくないそう。

【見直しポイント④】部活だけでも参加できたほうがいい

起立性調節障害の子には、部活から参加するだけでも段々症状が良くなることがあるそう。武井さんも夕方から調子がよくなるのであれば参加した方がいいと患者さんに話をしているとのこと。

「真面目な子ほど、『部活だけ行くと怠けていると思われるんじゃないか』と心配しますが、『体調を改善するために必要なことだから』と説明すると、学校に理解してもらえることが多いですよ」

【見直しポイント⑤】1日1,5~2リットルの水分をとる

中学生の場合、毎日1.5~2L程度の水分をとったほうがいいよう。利尿作用があるカフェイン入りの飲み物でなければジュースでもOKです。

【見直しポイント⑥】1日10gの塩分をとる

1日10gの塩分というのは、1日3食、普通の味付けの食事を食べていれば取れる量です。「ただし、高血圧の家族のためにあえて減塩を心がけている家庭や薄味を好む家庭の場合は、梅干を食べつなどをして塩分をとったほうがいよいでしょう」

【見直しポイント⑦】日中はできるだけ横にならない

昼間に横になって過ごしてしまうと、調節力がさらに低下して悪循環になるということが分かっています。起き上がれないような場合は別ですが、起き上がっていられるなら、できるだけソファやいすで背もたれにもたれて休むのが理想です。

「いくつかポイントを挙げましたが、これらは試してみて体に悪いことはありません。病院で治療を受けなくても、このような生活習慣の見直していくだけで改善されていくケースも多いですよ」

ですが、病院へ相談することが悪いわけではありません。

「来院する家庭の状況はさまざまで、不登校になってしまってから受診する人もいれば、ときどき起きられない日がある程度の場合もあります。起立性調整障害なのか、怠けているのか半信半疑みたいな感じでいらっしゃる方が多いです。しかし、通常の生活が行えないというのはそのままにしていい状態ではありません。

また、親御さんがお子さんの言うことに対して半信半疑という状態が続くことは、お子さん自身にとっても『信じてもらえていない』というストレスにもつながります。ストレスは自律神経にもいい影響を与えず、起立性調節障害においては悪循環です」

起立性調節障害の診断や治療法とは

受診をする際は小児科へ。ただし、どの病院でも診療できるとは限りません。「受診するなら診療可能か確認をしてからのほうが、二度手間にはならないと思います」と武井さん。

病院では、先ほどのチェックリストのような内容を確認し、起立性調節障害の可能性があると次のような検査をします。

「午前中の時間帯に急に立ち上がって血圧がどう変化していくのかを調べます。10分間に何度も繰り返して血圧を測り、どのタイミングで血圧が下がるのか、どのように回復するかということを調べるのです。

この検査で起立性調節障害の中でもどのタイプに当てはまるのかを判断して生活習慣を見直すことで改善する余地があれば指導をし、それでも学校に行けるほどよくならない場合には薬物療法を併用していきます」

完全に治るのは半数程度

一般的に思春期を終える高校卒業ごろの年代でピークを終えるとされる起立性調節障害ですが、薬物療法をしていても完全に治る人は半分程度なのだそう。

「思春期が終わるころに全く症状が無くなる子もいますが、成人後でも立ちくらみがあるという人は結構います。

ただし、自分の体質を理解して、立ちくらんだときに転ばないように気を付けて生活したり、生活習慣だったりを気を付けていくことで生活に支障がないレベルに抑えることができるケースがほとんどです。自分の状態をちゃんと把握しておくことがすごく大事になってきますね」

学校は治ってからではなく可能な範囲で行く

思春期を終える頃に感知するとしても数年続くかもしれない起立性調節障害との付き合い。学校生活や進学について不安になってしまいます。

治してから学校に行くのではなく、行ける範囲で通うことを勧めています。午前中より午後の方が調子がよければ、午後からでも学校に行くようにと患者さんに話しています。

最近は、学校側も起立性調節障害の対応に慣れてきている印象です。簡単には治らないということが分かっている学校も多く、柔軟に対応してくれることが最近多いですね」

高校へ進学をする際も「良くなるまで待とう」ではなく、可能な範囲で教育を受ける機会をもつようにしたほうがいいそう。

「通信制高校などは、症状が重くてほとんど登校できない場合でも教育の機会を失わないので選択肢のひとつになると思います」

ほかにも、夕方以降なら活動できるのであれば、定時制高校という選択肢もありそうです。

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「起立性調節障害の改善や予防に大事なのは親子二人三脚で何とかしようという気持ちです。親御さんがどんなに心配しても、どんなに注意しても、お子さん本人が“やらされている”だけでは症状を増悪させるストレスにしかなりません

子ども自身も病気のことをきちんと理解して、その上で「学校に行きたい」「少しでも症状をよくしたい」という気持ちで努力することが大切とのこと。

「お子さんの声に耳を傾け、一緒に作戦を立て、それでもうまくいかないときには焦らず見守り、うまくいったときにはともに喜びながら乗り越えていけるとよいですね。そのチームメンバーが親子だけでは足りなければ、小児科医がお手伝いします」

神田司

神田司

ソクラテスのたまご編集部の一員。大学卒業後、新聞社勤務を経てフリーランスへ転身。週刊誌、女性誌のほか書籍などの編集、執筆も手掛ける。プライベートでは2児の母であり、社会福祉士の資格取得に向けて勉強中。

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