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2019.11.26

【中学生の不登校・体験談】学校復帰を遠ざけた母の言動とは? 不登校中も続く友人関係が助けに 

現在、都内で飲食店を営む矢野さんは、中学時代に約2カ月の不登校の経験がある男性。最初は「行きたくないなぁ」という軽いニュアンスの欠席だったはずが、自宅で過ごすうちに「もう学校には行けない」と考えるようになっていったそう。「最初の対応が違っていれば…」と当時を振り返る彼の話からは、学校へ行かない子どもとの向き合い方、学校へ行かないときの環境づくりなど、親として子どもをどう見守るかというヒントがありました。

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学校へ“行かない”がいつの間にか“行けない”になった

エスカレーター式の私立学校に幼稚園のときから通っていた矢野さん。学校も友達も大好きだったという彼が学校を欠席し始めたのは、中学2~3年の頃でした。自律神経のバランスが崩れ始めて、朝、目覚めても体のダルさが抜けず、休みがちになっていったそう。

「不登校の理由として、学校でイジメにあったり、家庭で大きな事件が起きたりという劇的な出来事があったわけではありません。体調不良も、思い返すと自分が怠惰だっただけなのかもしれないとすら思います。当時の気持ちを正確に覚えているわけではありませんが、『学校に行かない!』という決断をしたわけでもなく、最初は深く考えずに学校を休んでいたんだと思います」

不登校の専門家も、不登校の原因はいじめなどの明確な出来事ではないことが多いと語っています。詳しくはこちら。

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しかし、自身が考えていたよりも学校へ行かないことに対する周囲の反応が強かったようで、特に母親の様子は思春期の彼に精神的なダメージを与えました。

「母親は、元々感情の起伏が激しいタイプでしたが、僕が学校に行かなくなってから顕著にヒステリックになっていきました。1日中泣いていたり、僕のマンガをビリビリに破ったり、僕を無理やり車に乗せて学校の門の前に投げ出して帰って行ったり…。そんな母親を見て『何とかしてあげたい』とは思いましたが、『これ以上悲しませないために僕が何とかがんばろう』とは思えませんでした」

「不登校は自分の怠惰な性格のせいなのかも」と感じていた矢野さんにとって、母親の行動は、自分自身や周囲に対する恥ずかしい気持ち、情けない気持ちを刺激して増大させることになりました。「こんな自分じゃ恥ずかしくて学校へは行けない」とますます学校へ行きづらくなっていったのです。

不登校中の生活習慣と心療内科

もうひとつ、矢野さんの足を学校から遠のかせてしまったのが、昼夜逆転の生活です。

「もともと夜型の生活でしたが、不登校中は昼夜が完全に逆転していました。昼に寝て、夜は起きているという生活で、どんどん体調が悪くなっていった気がします。ダルくなったり、頭が痛くなったり、気持ち悪かったり…。昼夜逆転の生活をしていると『自分は病人だ』と自己暗示をかけてしまう気がするんです。学校には行かなくても健康体でいられるようにしておけばよかったと思います」

不登校だった期間は、夜起きて、テレビを見たり、マンガを読んだりして過ごすことが多かったと矢野さん。日中には、母親に連れられて心療内科などで受診をしたこともあったそう

「6軒ぐらいの病院に行った記憶があります。どの病院も行うことは同じで、話をして軽い精神安定剤や漢方などを処方されました。これだけ回っても『行ってよかったな』と思える病院はひとつもなかったですね。医師から心に響く言葉がもらえた訳でもなく、薬を飲んで体調や気持ちが変わることもありませんでした。毒にも薬にもならずという感じです」

不登校中も途絶えなかった友人関係

体調も精神面も劇的に変化するということはないまま、不登校生活は1カ月以上に。それでもずっと心のどこかで「こんな自分を変えたい」と思っていた矢野さんは、学校へ復帰します。

「どんなきっかけがあって登校したのか、実はよく覚えていないんです。ただ、ラッキーだったことに、全く学校に行っていない期間でも、連絡をくれる友達がいたり、仲のいい友達が家に泊まりに行かせてくれたり。学校に行っていなくても友達との仲が変わらなかったのは、心強かった気がします」

登校してみると、途中で「帰りたい」と思うこともなく、不登校前と変わらず普通に過ごすことができ、勉強面も同級生のノートを借りて取り組めば、何とかなったそう。再び学校へ通い始める矢野さんに、母親はホッとした様子でした。

「結局、登校できるようになったあとも、行ったり行かなかったりを中学卒業まで繰り返していました。普通に行ってた子と比べると、多少、成績は悪かったと思いますが、一回分の定期テストを遅れて受けたくらいで、勉強で困った記憶はないですね。不登校だったことで苦労した記憶は特にありません」

両親との仲はよく、当時のしこりはない

その後、高校、大学と順調に進学していった矢野さん。4年生のときに親戚の営んでいた飲食店を引き継ぐことを決意し、大学を中退。調理師専門学校へ入学し、調理師免許を取得して、現在は店を切り盛りしています。

「その飲食店は、僕の両親の出会いの場でもあり、僕にとってルーツの場所。なくしたくありませんでした。不登校時の母親とのやり取りを話すと不仲のように思われるかもしれませんが、実は、当時も家族仲が悪かったわけではなかったし、僕も母親が嫌いというわけではありませんでした。今も母親とは普通に話しますが、当時のことを話すことはありません」

「今にして思えば母親がヒステリーを起こすのは絶対によくなかった。もちろん親のせいにするつもりはないし、学校へ無理やり連れて行ったのも僕のためを思っての行動だったことも分かります。ただ、欠席し始めた序盤の応急処置を間違えなければ、もうちょっと早く学校に行けたのではないかなと思うんです。今、子どもの不登校のせいで当時の僕の母のように動揺している保護者の方がいても、序盤の対応は慎重になってほしいと思います」

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また、不登校で悩む親子に対し「メールや電話だけで友人とつながるのはよくない面もある気がする」と矢野さん。

「僕の頃は携帯電話でしたが、今の子だとスマホになりますよね。ただ、危ないのは、スマホは暇が埋められて、社交欲も満たされて、外に出る理由がなくなってしまう。もし当時にTwitterやインスタがあったら、人間関係はそこで満足していただろうなと思います。(スマホを)取り上げるのもよくないと思いますが…難しいですね」

不登校当時の自分や環境のことを客観視し、坦々と話す矢野さん。彼の最後の言葉にあるように、わが子が不登校という状況になったとき、保護者がどう対応するのかは、言動のひとつずつが難しく、悩ましいものです。ひとつの家庭内で抱え込み、家族それぞれが自身を追い詰めることのないよう、相談できる場所を探してみてください。

不登校の相談窓口例

不登校親の会

全国に支部がある「不登校親の会」。登校拒否や不登校に悩む親同士が交流することができます。

一般社団法人 不登校支援センター

最大規模のカウンセリング実績、臨床データを保有する団体。まずは、50分の無料相談を受けることができます。

そのほか、教育委員会には「教育センター」や「教育相談所」など、教育相談を行うための相談窓口を設けているほか、不登校の支援を行う「教育支援センター(適応指導教室)」で不登校に関する相談活動なども行っているので活用してみてください。

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浜田彩

エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。

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