【中学受験】受験生のやる気とストレス。小学校はどのようにサポートしている?
中学受験を控える子どもたちの学校での様子は、想像できるでしょうか? 子どもたちは時にプレッシャーやストレスを感じていたり、不安や悩みを抱えたりしています。そんな子どもたちを支えていくために教師の私がしていたこと、今まで見てきた家庭の様子などを紹介します。子どもが受験に安心して臨めるヒントが1つでも発見できればうれしいです。
中学受験をする子ども。学校での様子は?
中学受験を控えている子どもたちは、これまでの学校での様子と違う姿を見せることがよくあります。ソワソワしたり口数が減ったり、逆に口数が増える子どももいました。教師の私の目から見て、「合格できるかできないか」ということを常に考えながら過ごしているのだろうなという印象でした。
受験をする子どもの中には「合格しなかったら、そのことを知られたくない」「あの子もライバルだ」と変に意識してしまい、人間関係がギクシャクするということもありました。
受験のために塾に通い疲れている様子を見せる子、学校の勉強がおろそかになっていく子もいました。そういった場合「学校の勉強をしていない」という部分だけが周りの子どもたちに見えてしまうため、「ずるい」という感情を抱かれると感じたこともあります。周りの子どもたちには「今、その受験生がおろそかになっている勉強は少しずつ取り戻していく」ということで納得をしてもらいました。また、受験生には「学校では普段通りに過ごせるように、無理をしないようにすること」と声掛けをしていました。
しかし、進級後の自分がイメージできたり、将来について真剣に考えたりなど、子どもたちの前向きな様子を見ることもできます。また、普段通りに過ごしていれば周りの子どもたちはそれほど中学受験に対して意識しないため、それほど気負わずに挑むことができるのです。
受験期間中と受験後。教師はどのようにサポートしているのか
受験をすると決めたら、できるだけ早く担任に伝えましょう。早ければ早いほど、学校はその分、長く受験生のサポートやケアをすることができます。受験に対してノータッチという学校もあるかもしれませんが、苦手な分野や不安なことについて相談することは、どの学校でもできること。困っている子どもや保護者を、放っておく教師はいませんから。
受験の知らせを受けたら、教師はまず「受験がその子にとって良いものになるか」「受験する学校の校風がその子にマッチしているか」について考えます。もし受験が子どもにとってプラスにならなければ、子どもにとっては負担でしかありまん。もちろん、もし教師がその受験について疑問を持っていたとしても最終決断は家庭の判断ですので、教師は強く否定することはありません。しかし、受験について学校ともよく話し合い、他の意見も柔軟に聞く姿勢が大切だと感じています。
受験が決まってからは、得意・不得意の分析をして子どもや家庭に知らせたり、子どもが頼ってきたときに空き時間を使って問題を一緒に解いたり解説したりすることはしますが、特別な授業や対策を行うことはありません。また、受験生だからと特別扱いすることしませんでした。なぜなら学校の勉強と受験勉強は別ものであり、学校の勉強を犠牲にするということはできないからです。子どもがプレッシャーを感じないように、できるだけ普段と変わらない学校生活を送れるように心掛けていました。
しかし、子どもの精神面にはいつも以上に配慮をしていました。受験をする前にはどんな結果になった場合も自分の道を見失わないように、万が一の時のショックをできるだけ和らげられるように、次のような声掛けをして受験後の自分の姿(合格であれ不合格であれ)をイメージさせておきます。
「合格したら自分はどのような目標に向かい、どのような道を歩んでいきたいのか」
「不合格だった場合、その事実を受け止められるか。また、第二の道としてどのような進路が考えられるか」
後者を想像できない場合やショックが大きそうな場合は、家庭に相談して今後の支援について話し合いを行いました。また、プレッシャーを与えないように世間話程度に受験勉強の様子を聞き、いつでも相談に乗れるような環境を整えておける配慮も行いました。
受験後は同じクラスや学年に合格・不合格の子どもが混在することもあるので、合格者を大々的に祝ったりクラスで合格・不合格の発表を行ったりはせず、合格をした子どもには個人的にお祝いの言葉を伝えます。不合格の子どもには今までの努力を褒め、中学受験を経験したことの価値を伝えました。
教師は子どもが受験前も受験後も、前向きな気持ちで進級できるようにサポートするよう常に心掛けているのです。
教師の本音 ~受験生を持つ親にお願いしたいこと~
これまでの教師生活で受験をする子どもたちの姿を見てきて、子どもが“安心して受験できる家庭”と“そうでない家庭”があることに気が付きました。双方の家庭の様子を交えながら、教師が親に心掛けてほしいと思っていることを紹介しましょう。
子どもの将来のために中学受験を望む親はたくさんいますが、子どもの意思を尊重するということ、中学受験だけが全てではないということを忘れないでほしいと思っています。
ある家庭では、中学受験に有利になるために「習い事で良い結果を出させる」「塾に毎日通わせる」など、子どもにかなりの負担がかかっている様子が見られました。一方、別の家庭では体力のつくご飯を作ったり説明会に同行したり、資料や情報を集めたりするなど体力的・精神的サポートに力を注ぎ、親にしかできないことを見つけて子どもを支えようとしている様子が見られました。
もし自分が子どもだったら、どちらの家庭の方が自分の支えとなるでしょうか?
また、受験をする場合その経済的負担も大きいですが、決してそれを子どもにぶつけないようにしてほしいと思います。
ある家庭では経済的な不安やストレスから、親が子どもに強くあたるということがありました。その子どもは自分を責めてしまい、親にも不信感を持ってしまい結果、受験も親子関係もうまくいかなかったのです。
最初に少し触れた通り、受験をするからといって学校の勉強を二の次にしたり、休ませたりすることは周りの子どもたちに不信感を抱かせることにもつながります。それは受験をする子ども側にとってもストレスや負担になるので、普段通り子どもが学校に通えるようにスケジュール管理をしてあげることも大切です。
もちろん声掛けや賞賛は必要ですが、行き過ぎると苦しい思いをしたりやる気がなくなったりする子どももいます。したがって教師は、「いつも子どもの気持ちに寄り添い、親も受験する子どもと同じ立場で接する」ような家庭であってほしいと願っています。
親が子どもの近くで見守り、支えてあげられる存在でいることが子どもの良好な精神状態には大切。親にとっても子どもにとっても、中学受験はさまざまな苦労がある試練でしょう。悩んでいること、迷っていることがあるなら、塾だけでなく学校にも相談してみてくださいね。
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短大卒業後、小学校教員を8年間経験。その8年間の経験から、自分や教育に対する様々な疑問を抱き始め、まずは自分を変えようとヨーロッパへ留学。現場では得られないたくさんの経験を積み重ねるが、留学中も教育への関心はたえず、非常勤講師として小学校に勤務中。好奇心旺盛なため、やりたいと思ったことには進んで挑戦中。