自分を褒めることのできる子は伸びる! 子どもの自己肯定感を高めよう
小学校に上がっていない小さな子どもが「僕、すごいでしょ!」と言うのを聞いたという人、多いのではないでしょうか。時には、大人からでも「すごいでしょ! 私、頑張ったから」のように聞くことがあります。自分で自分を褒めることができる子は伸び代も大きいというのが教師体験で感じたこと。そういった自己肯定感の高い子にするには、成功体験が必要ですが、どうすれば成功体験を積ませることができるのでしょうか。
目次
自分に対してマイナス思考の発言をする子ども
塾でのことです。自分は“できない”と思い込んでいる、マイナス思考の癖がついている子がいました。問題の解答を間違えると、すぐに「自分はできないから」と言うのです。私は、その言葉を聞くたびに「そんなことないよ」と答えていました。
自己肯定感の高い子、低い子の差は成功体験の頻度にもあると言えます。また親や教師、周りの大人からの言葉がけが原因になることもあります。成功体験が多ければ子どもは「やる気」になっていきますが、「あなたはできない、ダメだなあ」などと言われると「やる気」がなくなってしまう子もいます。
しかし、「私はできないから」とずっと言っていた子でも「この問題ができればすごいよ」と言われた問題に正解したり、できると思われていた子が間違えたのに自分が正解していたりすると「やる気」が出てくるようです。先のマイナス言葉をずっと言っていた子も、今では「できないから」とは言わなくなりました。成功体験を積んでいくうちに「やる気」になるのです。
また周囲の大人や教師などからマイナス言葉を言われてきた子でも、成功体験を積んでいくうちに「自分だってやればできるんだ」と思えるようになってくるはずです。
マイナス言葉とプラス言葉。言葉の力が与える影響とは
親や教師、周囲の大人が子どもに対して“マイナスの言葉”を言っているのを聞いた、もしくは自分が言ったり言われたりしたという人もいるかもしれません。私は、小学生の頃から「音痴」「歌、下手だね」と周りの大人に言われていました。自分でも自覚があったため、人前で歌うことを避けるようになりました。人前で歌うのを避けているから音痴のまま、歌も下手なままという状態になり歌うことに劣等感を持つようになってしまいました。
逆に、小学生の頃に苦手意識のあった文章を書くこと、今では好きになりました。大学時代、毎回1200字程度の文章を提出し、教授から評価をもらうという「文章表現」という授業がありました。私が書いた文章は何度か授業で取り上げられ、その際に教授から言われた言葉を今でも覚えています。「君はプロの文章家に成れるよ! 絶対!」です。今、こうして現実に執筆の仕事も行っています。やっぱり、“言葉の力”はその子の将来を左右してしまうくらいに影響があるものなのです。
子どもが自分で自分を褒める時に大人がしてはいけないのは、否定すること。子どもの自尊心を傷つけてしまい兼ねないからです。「僕(私)すごいでしょ!」と自分で自分を褒めるほど、否定されることには弱いかもしれません。
一つ、私の失敗談を紹介しましょう。学校の授業で子どもに「できて当たり前の問題だ! できなければだめだよ! もっと、ちゃんと覚えておかないとね」と言ったことがあります。子どもにやる気を持たせたくて挑発したのですが、子どもの中には「よし、頑張ろう」とは思えない子もいたはず。「僕は覚えていないからダメなんだ」のように…。塾でもテストが終わった後、いつもよりしっかりと答えを書けていたのに、いきなり「これをがんばらなきゃ」と言われ、「やる気をなくした」と言っている子を見たことがあります。
子ども自身にマイナス思考の言葉を言わせない、大人は子どもに“マイナス言葉”を与えないようにしたいもの。それでは、子ども自身がプラスの言葉を自分で言えるようにするにはどうしたら良いのでしょうか。
大人は、自分で自分を褒める子の気持ちを共有して
私の経験で話すと、学力の高い子ほど自分で自分を褒めることが多い傾向があるように感じます。「ねえ見て、見て! 僕、上手にできたでしょ」「私、上手だからね」「ねっ! 見てみて! あれっ! ぼくが一番初めに気付いたたんだよ! 僕、すごいでしょ!」「私、踊るの上手だからね。見ててね」など、プラスの言葉をよく聞きます。自分で自分をよく褒めているのです。
子どもがこのように言ってきた時、大人である私たちはどのように対応すれば良いのでしょうか。
絶対にやってはいけないのは、先ほども書いたように否定してしまうこと。まずは、共感してあげましょう。驚いて、褒めてあげましょう。必要があれば、その後でアドバイスするのです。
この点については「良い叱り方/悪い叱り方 子どものやる気は叱り方に左右される!」にも詳しく書いているので、参考にしてみてください。
時には失敗体験を盛り込むことも大切
“自分で自分を褒める”のが良いのは、なぜなのでしょうか。次のようなサイクルができると考えられます。
「自分で自分を褒める → 自分はできると思える → 実際にできるようになる → 自信がつく → また自分で自分を褒めることができる 」
もちろん、成功体験だけでは失敗した時の挫折が大きくなるのでそのさじ加減を知りたいという声もあるでしょう。
学校の授業では“成功体験”を積ませる教え方が基本ですが、あえて子どもが間違えさせることも行います。皆が間違えると予想できる時に、わざと失敗させるのです。自分だけではなくほとんどの子が間違えるのですから、間違えさせても自信を喪失してしまうほどの影響はありません。わざと間違えさせておいて「みんな間違えたでしょ。気を付けないといけない問題だね。これからは間違えなくなるね」とアドバイスします。
例えば、2年生で次のような文章問題があります。
「2L入りのペットボトルを5本買いました。①お茶は全部で何Lありますか。②もう1本買うと、お茶は何L増えますか。また、ぜんぶで何Lになりますか」
①は2×5=10で10Lと、ほとんどの子がすぐに正解します。時々、5×2としてしまう子がいますが、どうして違うのか説明します(ちなみに、掛け算は「1当たり分」が先)。
問題は、②です。「何L増えるか書いて、先生に見せにおいで」と言うと、クラスの半分くらいの子が12Lと書きます。実際は、“増えた分だけ”を問われているので12Lは間違いで正解は2L。よくできると言われている、思われているような子でも間違えます。「先生に見せにおいで」と言う時にすでに、間違えてくるということは想定内。このように、わざと間違えさせることもあるのです。
また、“負けを認められる子を育てる”ことも行います。百人一首に取り組ませると時間はかかりますが不思議と負けを認められるようになってきます。100回以上、百人一首をすると負けを認められるようになると言われています。“なぜ百人一首で負けを認められるようになるか”についての研究の流れはあるようですが、まだ解明はされていないようです。
学校では毎日、百枚もの札を使うと時間がかかりすぎるため、私は五色に色分けされた「五色百人一首」を使っています。
自分を褒めることのできる子に育てるために
自分で自分を褒めることができるようにするために、どうすればいいのでしょうか。
例えば、問題の答えを先に教えてしまうことがあります。その理由や証拠を見つけたり、調べさせたりして「自分で解けた! できた!」という成功体験を積ませるためです。
また、社会科の学習で「工場は海沿いに配置されることが多いのはどうしてか」など先に海沿いに配置されるということを教え、その理由を資料集などで調べさせます。算数では「凸凹した面積は125㎠です。どうして125㎠になるか考えましょう」といった問いかけもできます。国語では読解問題の解答を先に教えてしまい、この段落で筆者が「~と言っているから」などと見つけさせることもできます。工夫次第でどの教科でもできるのです。
特に算数では答えを先に知っておけば、その答えにたどりつかなければ間違いだと分かります。正解にたどり着くまで時間がかかってもいいのです。その分、正解にたどり着いた時の子どもの喜びは大きくなり、自信を持つことができるでしょう(何度も考えても、正解にたどりつけない子もいるかもしれません。この時は教えてあげてください。これも失敗したときの挫折経験と捉えることができます)
先に答えを教えてしまい、証拠を見つけたり理由を考えさせたりすることは家庭でもできるのではないでしょうか。子どもに自信を持たせるためにも、失敗した時の挫折の大きさを減少させるためにも、“自分で自分を褒めることができる子”に育てていきたいですね。
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東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/