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2019.10.03

良い叱り方/悪い叱り方 子どものやる気は叱り方に左右される!

子どもが「もう、やだ!」「自分ってダメな子なんだ」のように、やる気をなくしたり劣等感を持たせたりするのが悪い叱り方。逆に「あっ、そうか。今度から気をつけよう」「今度こそ頑張ろう」のような思いを持たせるのが良い叱り方です。では、どうすれば、良い叱り方ができるのでしょうか。子どもを持つ親なら、誰しも一度はわが子の叱り方について悩んだ経験はあるはず。今回は、悪い叱り方と良い叱り方を比較しながら考えてみましょう。

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子どもが素直に反省できない悪い叱り方とは

子どもが書いた詩があります。題名は「怪獣ママラー」。

「頭に角があって 悪いテストをもって帰ると 目はギラギラ光り長くのびる にげ出そうとすると たちまち視力高線でやられてしまう 鼻は高く 口はさらのように大きい 鼻をまげると 口からテスト用紙が出てくる 手はヒョロヒョロして ムチにもなる 足は太く さからうとふみつぶされる 怪獣ママラーが ぼくの部屋をあらしにくる」


江川ひろし著『成績がどんどん伸びる1分間刺激会話法―話のしかたを知っておくのは親の責任』 (プレイブックス)

どのような感想を持ちますか。子どもの母親は、きっと“叱る”ではなく“怒る”ということをしていたのでしょう。“叱る”と“怒る”は違います

【叱る】
自分の感情で言葉を発するのではなく、子どもに「どこがいけなかったのか」「どうすれば良かったのか」を気付かせるように話す(相手中心の行為)

【怒る】
自分の感情に任せて言葉を発する。子どもに「どうすればいいのか」を考えさせていない、伝えていない(自分中心の行為)

しかし、“怒る”でなく“叱る”という行為でも以下のような場合、子どもは素直に反省することができません。

①子どもの性格を否定する
②みんなの前で恥をかかせる
③他の子と比較して叱る
④怒鳴る
⑤叩く・殴る
⑥いきなり叱る 

6つの悪い叱り方とその理由

①子どもの性格を否定する

 「ダメな子ね」「グズね」「頭悪いなあ」と聞いて喜ぶ子はいません。子どもに「僕(私)はできない子なんだ」と劣等感を持たせてしまいかねません。もしくは「そんなことない!」と反抗的な態度を育ててしまうかもしれません。叱る時は、子どもの性格に触れてはいけないのです。

②みんなの前で恥をかかせる

私は過去に、大失敗した経験があります。授業中にふざけすぎていた子を叱りましたが、この時の私の叱り方が良くありませんでした。クラスの一人ひとりにふざけすぎるのが良くない理由を言わせて、いわゆる“つるし上げ”のようなことをしてしまったのです。その子は、皆の前で恥ずかしい思いをさせられ、皆からあれこれ言われるのが嫌になってきていました。家庭でも同様で兄弟姉妹がいる場合、特にお兄さんお姉さんを叱る時には弟や妹の前で恥をかかせないようにしたいものです。

③他の子と比較して叱る

子どもの書いた、こんな詩があります。

「きれいな音のするオルガン、かわいい、かわいい着せ替え人形も私は買ってもらえない。弟の一郎はいいなあ。ミットを買ってもらった。お正月にはお父さんとスキーに行けるという。私はスキーに行けるかな? せめてスキーだけでもいきたいな。でも通知表が悪かったからしかたがない。でもやっぱりオルガンがほしい。着せ替え人形もほしい。だから私は通知表なんか死んじゃえ! と心の中で時々どなる。すると心の中が少しさっぱりする」 

江川ひろし著『成績がどんどん伸びる1分間刺激会話法―話のしかたを知っておくのは親の責任』(プレイブックス) より

同じ親から生まれた子どもでも皆、同じ成績になるということのほうがむしろ少ないのではないでしょうか。子どもは大人が思っている以上に敏感。上の詩を書いた子のように、比較されたことを悟り劣等感を持つこともあるのです。

④怒鳴る

「子どもを怒鳴ってもいいという医者には出会ったことがない、もしいたら教えてほしい」と聞いたことがあります。医学の世界では、怒鳴ることが子どもの脳に良くないということは常識になりつつあります。また、発達障害を持った子は自分のことじゃない時に突然、大声で怒鳴られると困惑してしまいます。どうして怒られたのかが理解できないのです。怒鳴ると子どもの脳に悪影響を及ぼしてしまうのです。怒鳴ることによって二次的な障害を起こしかねません。怒鳴ることで、反抗的な態度をとりやすくしてしまうこともあるでしょう。

⑤叩く・殴る 

叩く・殴るという行為も「④怒鳴る」で書いた通り。二次的障害を起こす可能性が高いと言われています。

⑥いきなり叱る

学校の授業中、子どもたちが私語で騒がしい時でもすぐに注意しない先生がいます。しばらく騒がしいまま授業が続いた後に突然、「静かにしろ!」といった怒鳴られた経験をした人もいるのではないでしょうか。子どもたちは一時、静かになりますが、そのうちまた騒がしくなります。怒鳴られて驚くだけで、どうして怒鳴られたのかは納得していないからです。騒がしい中で授業を続けていた先生が「どうして急に怒鳴るの?」と思う子がいても不思議ではないのです。次のようなこともあるでしょう。子どもが100点満点のテストで60点でした。この時「こんな悪い成績とっきて!」といきなり叱ってはいけません。もしかしたらそのテストは難しく、他の子は50点以下なのかもしれません。

子どもを叱る前に「どうして?」とまず理由を聞いてあげるようにしましょう。

覚えておきたい良い叱り方5つのルール

「良い叱り方」には5つのルールがあると教えてもらったことがあります。

①子どもの性格にふれるな
叱る際に子どもの性格を責めたり非難するのがNGだという理由は、先に述べた通りです。 

②大きな失敗は叱らず、小さな失敗こそ大きく叱る
例えば子どもが家の中で、野球ボールを投げて遊んでいたとします。手が滑りボールが窓ガラスに当たり窓が割れてしまいました。大きな失敗です。こんな時は、厳しく叱らなくてもいいのです。子どもは家の中でボールで遊んでいたことを「しまった!」と思うからです。大きな失敗というのは、親に叱られる前に子ども自身が「自分が悪かったんだ、今度から気をつけよう」と思っている可能性があります。先に書いたように、いきなり叱らず「どうして?」と聞いてあげることも大切。小さい失敗をきつく叱るのは、小さい失敗ほど何度もしやすいと考えられるからです。子どもが「ちょっとぐらいいいや」と思うと失敗を繰り返してしまうかもしれません。2度目の失敗を防ぐために、小さな失敗をこそきつく叱りましょう。

③行為を叱って人柄は叱らない
子どもに「部屋を片付けて」と頼んでも、なかなか片付きません。そんな時「もう、何やってんの。あんたはノロマでグズなんだから!」と子どもを叱った場合、子どもはどのような気持ちになるでしょうか。素直に片付けようと思うでしょうか。きっと思わない子の方が多いでしょう。子どもの人柄や性格に触れて叱ると、怒り出したり泣いてしまったりするかもしれません。叱るのであれば、「片付けようとしなかった行為」を叱らなければいけなかったのです。「部屋を片付けておくと、使いたいものがすぐに見つかるでしょ。あわてて探さなくてもいいのよ。今から片付けようね」といったように促すのが良いのではないでしょうか。

④叱る理由をはっきりさせる
私は、学校で子どもに“どんな時に叱るのか”を話すようにしています。①危険なことをしている時 ②いじめにつながる行為をしている時 ③やればできるはずなのにやろうとしない時の3つ。先に約束しておくことで「先生はこういう時は叱ると言ったよね」と言うことができるからです。家庭でも、どんな時に叱るのかあらかじめ話しておくことはできます。子どもをどうして叱ったのか伝えるための方法として、他には「イエスバット法」「サンドイッチ法」が使えます。「イエスバット法」とは最初に共感してから、今度からは「こうしてほしい」と子どもに伝える方法。「サンドイッチ法」とは初めに共感する、次にしてほしい行動を伝える、最後に励ますという方法です。

⑤ついでに叱るな、いつまでも叱るな
叱る時だけではなく、子どもへの指示は“一時に一事”が大切。「教科書を出したら3ページの問題をやりなさい。できたら先生のところに持ってきなさい。先生に合格と言われたら道具箱の中をきれいにしておきなさい」というのは良くない指示。これは、私の教師人生で何度も教えられたことでもあります。「先生、今から何するんですか?」と言う子、長い指示を頭の中に入れることのできない子どももいるのです。家庭で子どもを叱る時も同じ。勉強の取り組み方について叱っているのに、つい別のことまで一緒に叱ってしまうこともありますが、そうすると子どもは叱られた原因が分からなくなり混乱してしまいます。

子どもを叱る時の参考に…

最後に、子どもを叱る時どんな言葉でどのように叱ると良いのか例を挙げましょう。

  • 共感して次の行動を示す
    「お皿を割っちゃったの、けがはなかった? お母さんも時々、割るから偉そうなことは言えないけど今度から気をつけてね」
  • 一時に一事で短く伝える
    「出かける時は、きちんと一言いいなさい」
  • 叱る理由をはっきりと伝える
    「机に落書きしてはいけません。机の4つ端を見てごらん。丸くなっているでしょ。机を作る人がけがをしないように丁寧に作ってくれたんだよ」
  • イエスバット法を使う
    「計算の練習よくやっていたよね。でもね、今度からはノートに途中の式もきちんと書くといいね」
  • サンドイッチ法を使う
    「漢字テストの練習頑張ってたよね。でも点数伸びなかったの。じゃあ、今度練習するときは指書きをする時に画数をしっかり声に出すようにしてみようか。よし、頑張ろうな」

他にも、良い叱り方に使える言葉はまだまだあるでしょう。夫婦で、保護者同士で情報交換してみるのも良いかもしれませんね。

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須貝 誠

東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/

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