教育は未知にあふれている

ソクラテスのたまご

2019.06.24

専用シートを使って子どもの長所を再発見 親の言葉こそ自己肯定感を高める特効薬

あなたは子どもの長所をいくつ挙げられますか? 毎日一緒にいる保護者だからこそ見逃してしまいがちなのが子どものいいところです。しかし、だからといって本当の子どもの姿を見逃したままでいると子どもの自己肯定感を高めるきっかけをなくしてしまっているのかもしれません。今回は、家庭教育師の藤田郁子さんが“保護者が放つ言葉の影響力”と自己肯定感の関係について解説します。

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ほめポイントを見つける「長所発見シート」

前回の記事では、自己肯定できる子どもに育てるためには、ほめることが必要だと書きました。しかし、ほめることには落とし穴があります

 

実は、子どもは、やみくもにほめられてもうれしいとは感じず、保護者の愛情は伝わりません。大事なのは、子どもがほめてほしいときに、ほめてほしいと思っている部分を逃さずほめることです。

 

とはいえ、保護者と話していると「子どもの欠点ならいくつでも言えるのですが、長所となると浮かばなくて…」とよく聞きます。子どもの長所が分かっていなければ、ほめるタイミングもポイントもなかなか見えません。

 

そんな長所が浮かばない保護者に使ってみて欲しいのが下記の「長所発見シート」です。

 

長所発見シート

長所発見シート ダウンロードはこちらから

 

子どもの“長所と美点”を毎日3つずつ、5日間分書き出してみましょう。いざ書き出してみるとなかなか書けないということや、実は子どもの本心を分っていなかったということに気付かされるはずです。

 

書いた長所は、声に出して読むのもおすすめです。書き出し、言葉を発することで今まで意識していなかった子どものいいところに気付けるようになっていきますよ。

 

子どもの長所を言葉にしたら、あとは日常生活の中で伝えてあげましょう。親子の会話の中でさりげなく子どもの長所を話題にすることで、子どもは自信をもち、自己肯定感がもてるようになるのです。

 

「長所発見シート」は、保護者が自分を見つめ直すときにも使うことができます。親としての自信を失いかけているときは、謙遜せずに自分の長所を書き出してみてください。親自身が自己肯定感をもつことも大切なことですよ。

 

 

保護者の言葉で存在意義を見失った少女の話

ほめるということは、大げさな言葉でおだてるということではありません。重要なのは、その子を肯定することです。

 

そして、人間が自分を肯定するときの土台になるのが自尊感情です。自尊感情とは、自分を尊ぶ力、言い換えれば“自分は他者から愛されるだけの価値ある存在である”という自覚と自信をもつことです。

 

人間は、自尊感情が壊れてしまうと自己肯定ができないばかりか、自己否定になり自殺願望をもつようになります。“自分の存在を否定された”と感じた子どもは生きている価値を見いだせなくなり、自分を消してしまいたくなるのです。

 

以前、私が出会った少女もその一人でした。ある日、私が家庭教育セミナーを終えて陸橋を歩いていると「死んでやる!」と背後から叫び声が聞こえてきました。振り向くと、陸橋の手すりから体半分を投げ出し、今にも飛び降りそうな彼女の姿が目に飛び込んできたのです。

 

私は「自殺だけは避けなければ」と駆け寄り、携帯電話を握って泣き叫ぶ彼女を見守っていました。しばらくすると、彼女が私に気づき、今度は私に向かって悪態をついてきたのです。私は彼女を刺激しないようにひたすら話を聴きました。するとポツリポツリと自分のことを話し始めたのです。

 

彼女は高校2年生でした。高校生になりバイトを始め、彼氏もできた。なのにバイト代は母親が奪って返してくれず、彼氏の悪口を言うそう。挙げ句の果てに「あんたができたから、あんなろくでもない奴(父親のこと)と一緒になった。あんたなんか、いらなかった」と言われたそうです。

 

その言葉が彼女の口から出たとき、私は胸をえぐられた気がしました。「だったら私がいない方が幸せになれるんだ!」と言い放つ彼女。私は、とっさに「あなたはこんなにもキレイ。今死んだらもったいないよ。夢はないの?」と言いました。そして「夢はある。幸せになりたい」と答える彼女を抱きしめ「あなたならなれるよ。自分を大事にしてね」と伝えると、彼女は「あんたがお母さんだったら良かったのに」とつぶやき、最悪の事態はまぬがれました。

 

ですが、彼女が本当に自分のことを認めて欲しかったのは母親です。何度も泣き叫んでいた「死んでやる」は、「死にたくなるほど辛い」という心の声であり、その辛さを分って欲しいのは、ほかの誰でもなくお母さんなのです。子どもの存在価値を脅かす言葉は親であっても言ってはいけないと痛感した出来事でした。

 

 

 

肯定されることで現実に負けない力が育つ

次は、さっきの少女とは逆に親からプラスの言葉かけをしてもらっていた少女の話を紹介したいと思います。

 

彼女は小学5年の頃、ノートに「死ね」「かっこつけ」「大キライ」などと落書きされたり、机の上に雑草を山のように盛られたりといういじめ被害にあっていました。

 

普通ならば、不登校になってもおかしくないほどのいじめです。しかし、ごくたまに気持ちがついてこない日に欠席する程度で小学校卒業までの2年間を乗り切ることができたのでした。

 

なぜ、彼女ががんばることができたのか、彼女を支えたのは「ママはあなたが大好きだよ」という母親からの言葉した。さらに、母親は、毎日のように彼女の長所を言い続けてくれたそうです。

 

保護者の言葉は、ときに子どもを死に向かわせるほどの恐ろしい力をもっています。その一方で「ありのままのあなたを受け止めている」という保護者からの言葉は、子どもにとって、悲しみや寂しさを洗い流す愛のシャワーになるのです。愛のシャワーをいっぱい浴びた子どもは辛い現実を乗り越える力、どんなことがあっても負けない力を身にまとうことができ、自己肯定感の高い子どもになっていくのです。

 

 

<参考資料>

「生きる強さを育てる家庭の底力」 永池榮吉(KKロングセラーズ)

 

藤田郁子

藤田郁子

1961年、神戸市生まれ。日本家庭教育学会認定の家庭教育師。幼児生活団の指導者・保育士・健康体操インストラクターなどの経験があり、1991年に公益社団法人スコーレ家庭教育振興協会に入会。日本家庭教育学会第24回大会(2009年)、同32回大会(2017年)では、研究論文を発表したほか、ゲームなど、身体から心の交流をはかる「ふれあいトレーニング」や「キッズ保育者研修」のトレーナーとして活躍中。スコーレ協会の首都圏北地区のリーダーも務めている。

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