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2023.07.13

【専門家が回答】子どもに怒鳴るのをやめてほしい…短気な夫への解決策

「夫が子どもに怒鳴りすぎる…」そんな不安を抱えていませんか?昔とは子育ての常識が変わっている現代。何が正しいのかわからずに、思い悩んでしまうこともあるかもしれません。夫が子どもを怒りすぎてしまうとき、どう対応すればいいのでしょうか?家族問題のスペシャリスト、新井寛規さんが解説します。

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記事を執筆したのは…

新井寛規さん

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

怒鳴る行為は「虐待行為」になり得る

一昔前は、「父親が子どもに怒鳴る」ということは、よくあることでした。しかし、現代では父親が子どもに怒鳴ることは「よくないこと」とされています。 なぜなら、親が子どもに怒鳴ることは、子どもの精神的、感情的、身体的感情に悪影響を与える可能性があるからです。

厚生労働省の「児童虐待の定義と現状」によると、言葉による脅しは心理的虐待にあたります。なかでも、「怒鳴る」という行為は最も手軽にできる虐待行為になり得ることを覚えておきましょう。

アダルトチルドレンになる可能性も

また、怒鳴られると子どもは不安や恐怖、孤独を感じる可能性もあります。「アダルトチルドレン」という言葉をご存じでしょうか。「アダルトチルドレン=子どもっぽい大人」という意味ではありません。

「アダルトチルドレン」とは、子ども時代に「子どもらしく」できずに大人になってしまった人のことを指します。子どもの頃にわがままを言えなかったせいで、子どもの頃に感じた不安感や怖さ、寂しさを抱えたまま大人になってしまいます。そうすると、大人になったとき、人に対してどのように接したらよいのか分からなくなってしまうのです。(厳密には医学用語ですらありません)。

不安や恐怖など、自宅での心理的安全性が担保できない状態が継続している場合、子どもは自己肯定感が低下したり、攻撃的になったりすることもあります。さらに、心臓病や高血圧などの身体的健康問題を発症するリスクが高くなるという意見もあります。

怒鳴られて育つと脳が萎縮する

また、脳への影響も忘れてはいけません。怒鳴られすぎると、脳萎縮や肥大、変形が見られます。

親に怒鳴られることにより、前頭前野、視覚野、聴覚野などがダメージを受け、記憶、学力、意欲、感情コントロール不全などにつながることもあります。

 特にひどい状態になると、怒鳴られている間のストレスに脳が耐え兼ね、「解離」(記憶・知覚・意識といった通常は連続してもつべき精神機能が途切れる状態)が起こり、解離性健忘症や、解離性同一障害(多重人格)を引き起こす原因にもなるのです。

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つい怒り過ぎてしまうことって、どの親にありますよね。その時は反省をしても、またつい怒り過ぎてしまう…。ですが、怒り過ぎると、子どもの脳や心に一生残る悪影響を与え.....

(参照:厚生労働省eヘルスネット)

夫が子どもを怒鳴るのはなぜ?

なぜ、父親は子どもを怒鳴ってしまうのでしょうか。父親が子どもを怒鳴ってしまう原因について、考えてみましょう。

自身も親に怒鳴られて育った

女性と比べて、男性は体罰の内容が重いものが多いということがデータで分かっています。そして、男児は女児よりも体罰を受けている割合が高いことも事実です。

平成28年度の厚生労働省の調査によると、18歳未満の男児の12.5%が、体罰を受けています。一方、女児の体罰を受けた割合は9.2%です。男児は、女児よりも多動的な問題行動が多いこと、男児の方が女児よりも体力があり、体罰をしてもダメージを受けにくいという思い込みが強いこと等の要因が考えられています。

父親自身が男児のとき、怒鳴るなどの体罰を親から状態的にうけている場合、怒鳴ることが正しい子育てと考えている可能性もあります

大きなストレスを抱えている

実は近年、「女性パートナーからのモラハラ」が問題となっています。日本では昔から、「カカア天下」という言葉がありましたが、モラハラ問題においては、どうしても「男性パートナーから女性」というイメージが強いです。

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「(妻からのプレッシャー等から、家に)帰りたくない」と、公園や駅前のベンチ等で時間をつぶすサラリーマンも多くいます。家庭問題だけでなく、仕事、育児や家事の手伝い、休日の家族サービス等が過度なストレスを父親に与えます。(母親の方が大変という意見もありますが、あくまで父親に限って記述しています)。そのストレスを、子どもに怒鳴ることで発散しているケースもあります

子育ての知識がない

日本はまだまだ「母親」が育児の主体者です。父親は仕事はもちろん、知識や経験が乏しい人も多く、子育ての意識が低い方もいます。一般的な子どもの行動を知らないと、「受け入れられない」と感じることもあるでしょう。

例えば、イヤイヤ期、「なんで」の時期などの年齢による特徴や、急なテンションの上がり下がりなど、手間がかかる場面でそう思う方も多いのではないでしょうか。

子どもをコントロールしたい

「子どもが母親の言うことは聞くが、父親の言うことはあまり聞かない」という話は、よく聞く話です。言うことを聞かないから、どうしても怒鳴ってしまうというケースです。

子どもといっても他人であり、ひとりの人間ですので、無理やり手足を持ってコントロールすることはできません。自分の価値観を押し付けるのではなく、子どもに愛情とサポートを示し、子どもと対話する時間を取るようにしてください。

 虐待やマルトリートメント(子どもに対する不適切な関わり)に限らず、他人への攻撃性の高さは、不安の表れです。私は、子どもに怒鳴る父親は、精神的に弱い方が多いのではないかと思います。

夫が子どもに怒鳴らないための対策

では、怒鳴らないようにするための対策として、どんなことが考えられるのでしょうか。

家で子どもを怒鳴る場合

家での怒鳴り声は、隣近所に聞こえることもあります。父親が家で怒鳴る場合は、児童相談所への通告の可能性を考えましょう。緊急対策として、父親に「あなたが怒鳴ることで児童相談所の人がくるかもしれない。怒鳴っているのはアナタ(父親)だから、その対応をお願いしたい」と伝えることで、抑止力になるかもしれません。

予防策としては、怒鳴る、無理やり指示するなどの力技で解決するリスクを伝えましょう。どうしても腹が立つ場合は、母親プラス第3者で子育て相談などを活用しても良いでしょう。

また、父親がなぜ怒鳴っているのかを理解することが大切です。父親がストレスやプレッシャーを感じているのかもしれませんし、子どもの行動にイライラしているのかもしれません。父親の気持ちを理解することで、適切な対処法を考えることができます。

外で子どもを怒鳴る場合

家で怒鳴っているケースと違い、外という他者の目がある場で怒鳴る父親の場合、子どもに対する怒りを全くコントロールできていないケースが多いです。まずは子どもを守るため、父親を落ち着かせましょう。

また、怒りに任せて暴力に発展してしまうことは避けたいので、一旦その場で「先に帰っておいて」と距離をとることも考えてください。

家であっても外であっても、どうしても父親を止めることができない場合は、専門家の助けを求めることも検討しましょう。

児童虐待の対応機関のようなイメージも強い児童相談所や市の相談室などは、「子どもの権利を守るための機関」ですので、きっとあなたの力になってくれるはずです。ソクたま相談室の専門家に相談することも良いと思いますね。

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夫が子どもを怒鳴ったときの対応法

それでもパートナーが叱りすぎてしまったり、怒りすぎてしまうことはあります。そのような場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。

夫婦といえども他人ですので、なぜ怒鳴るのかを聞いてみることが第一です。できるだけ落ち着いた空間(子どもが寝た後など)で、母親は「怒鳴ってほしくない」ことも説明してください。

父親なりの理由がある場合は、怒鳴る以外の方法を一緒に考えます。理由がないときは、父親の家庭環境や性格、認知能力などに原因がある場合もあるため、「私もすごく子育てで腹が立つことがある。あなた(父親)も子育てに真剣だから腹が立つんだよね」と一旦共感しつつも、「一緒にやめていけるように頑張ろう」と共に寄り添っていく姿勢を忘れてはいけません

怒鳴る以外の抑止方法を知る

怒鳴る親は、怒鳴る以外の抑止方法やアプローチ方法を知らない場合も多いかと思います。そんなとき、下記の4つ方法を共有したり、一緒に試してみてはいかがでしょうか。

①強化子理論を活用する

強化子とは、行動を強化するための刺激物です。強化子は、行動を繰り返すように促す効果があります。強化子には、物理的な強化子と、社会的な強化子の2つがあります。社会的な強化子を使う方が、効果が高いと言われています。

  • 物理的な強化子…食べ物/おもちゃ/お金
  • 社会的な強化子…ほめ言葉/笑顔/ハグ

強化子は、子どもが望んでいるものであり、それを行動が起こった直後に与えることで行動を修正していく理論です。やめさせたい行動に対して強化子を用いて行動を抑制していくこともできます

②タイムアウトや計画的無視

タイムアウト(感覚遮断)とは、なにか困った行動に熱中してしまっている子どもを、退屈な場所(できる限り視覚や聴覚の刺激がない空間)に連れて行き、ひとりで座らせておいて興奮を覚まさせる方法です。

暗いところや恐怖を覚えさせることが目的ではなく、ねらいはあくまで感覚遮断による沈静化であることに注意する必要があります。

また、計画的無視(消去)とは、ある「特定の困った行動」を無視することで、注意注目獲得行動(ためし行動)を抑制する方法です。

親や先生自身が興奮してしまっているときには、自身が一時的に子どものいる部屋から離れる「非隔離型タイムアウト」という方法もあります。

言葉以外で気持ちを伝える

一般的に親は育児に、言語を主としたコミュニケーションである、「バーバルコミュニケーション」を使っています。しかし、言葉だけが適切なコミュニケーション方法ではありません。

表情、身振り手振り、声のトーン、服装、インテリアなど、言葉以外の手段で相手に自分の思いや考えを伝える「ノンバーバルコミュニケーション」を意識してはどうでしょうか。ノンバーバルコミュニケーションは、子どもに与える印象を変えたり、相手の考えや感情を理解したり、自分の思いや考えをより正確に伝えたりすることができます。

ノンバーバルコミュニケーションを効果的に活用するためには、自分のノンバーバルコミュニケーションを意識することが大切です。自分の表情、身振り手振り、声のトーン、服装など、相手にどのように映っているかを意識することで、自分のノンバーバルコミュニケーションをコントロールすることができます。

さらに、ノンバーバルコミュニケーションを読み取ることも重要です。実は気付いていないだけで、子どもの方からノンバーバルコミュニケーションによって様々な信号が出ていることも珍しくありません。是非とも、意識して感じるようにしてみてください。

何回言っても聞かない子どもや、言葉でのコミュニケーションが苦手な子どもには、有効な手段と言えます。

子どもとのルールを考え直す

頭ごなしに怒っても、また同じ行動を繰り返してしまう子どもはとても多いと思います。そうであれば、時間や出来事によって、条件や制限、ルールをつくることが必要かもしれません。

例えば、「○時になったら宿題をする」「✕時になったらお風呂に入る」等です。ただ、これだけでは少し指示として弱いので、ここからルールをつくっていきます。「○時に宿題をやると、お母さんは手伝うことができる。けれども、それ以外の時間はできない」「✕時にお風呂の栓を抜きます」等、言葉にせずに環境を変化させることも、視野に入れてみましょう。

離婚も視野に入れるべき?

ここまで、夫と話し合うこと、共感・寄り添って並走すること、通報などのリスクの説明、子どもへの悪影響を伝える等の対応策を伝達してきましたが、それでもまったく効果がない場合は、第3者への相談です

できれば2人で相談をしてほしいところですが、なかなか難しい現状があるかもしれません。

もし、お互いの両親や親族に味方になってくれる人がいれば、そういった身内に助けてもらえないかを考えてみましょう。父親も、実母や実父の言うことであれば、素直に聞くかもしれません。

それでも難しい場合で、かつお子さんに身体的、精神的な体調不良の症状がでている場合は、離婚も考えてよいかもしれません。何度もお伝えしていますが、夫婦喧嘩や慢性的な怒鳴り声を家で聞くことは「虐待」です。今の生活と、子どもへの悪影響を天秤にかけて、後悔のないよう、しっかり考えてください

カップルカウンセリングという選択も

ストレスなく子育てを行うために、カップルカウンセリングを利用することも方法の1つです。

夫婦カウンセリングとは、夫婦間のコミュニケーションや関係性を改善するために、専門家の助けを借りて行うカウンセリングです。夫婦で抱えている問題を話し合い、解決策を見つけていきます。専門家である第三者を交えることで、夫婦仲やお互いの理解を促進することができます。

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受けたがらない夫の場合は、妻の方から、「一緒についてきてほしい」とあくまで妻自身が辛いという形で受けてみることも手段の1つです。事前に専門家に現状を伝えておいて、うまく妻の目的の達成にもっていくこともできます。

「風邪」や「花粉症」などと異なり、家族の「辛さ」や「不安」は肉眼で見ることができません。取返しのつかなくなる前に、「怒鳴る」という行為にどのような意味があって、どのようなリスクがあるのかを、もう1度考えることが第1歩です。

新井 寛規

新井 寛規

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。家庭教育師。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

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