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2022.08.15

夫婦仲の悪さが子どもに与える影響とは?機能不全家族を立て直す方法

親の夫婦関係は子どもに大きな影響を与えます。当事者である夫婦は自分たちのことで必死かもしれませんが、一度、子どもに目を向けてみてください。子どもが子どもらしくいられていないと感じるのであれば、今後の家族のあり方を考えるときです。家族問題の専門家である新井寛規さんと一緒に夫婦、そして家族を立て直す方法を考えましょう。

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記事を執筆したのは…

新井寛規さん

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

機能不全家族とは

機能不全家族とは「子育て」「団欒」「地域との関わり」「家族間の助け合い」といった本来家庭に存在すべき機能が、健全に機能していない家庭のことを指します。

その特徴として、家族構成員の「アルコール依存」「虐待」「構成員同士の共依存」「構成員同士の不和(家庭不和)」などが挙げられています。

また、このような機能不全的な家庭となっている場合は、その家庭を構成する親、または祖父母などが、機能不全家族で育った経歴がある可能性も高いといえるでしょう。

家族は1つのチームであり、家族を構成するメンバー同士がそれぞれ役割を担っています。父や母がその役割を指すこともあり、例えば、母であれば子育てや家事の統括、父であればその家族のメインとなる収入を得るといったものが挙げられます。

もちろん逆に母がメインとなる収入を得て、父が家事や育児をする家族もいるでしょう。逆転していても、家族の中での必要なことを分担しているのであれば、さほど問題ではありません。

ただ、家族を形成する役割を果たしていないと、組織そのものが崩壊していくことがあります。とりわけ、依存症や疾患などで身体や精神が非常に不安定な状態にある家族がいる場合は、その役割をほかの誰かが背負わなくてはなりません。

例えば、父が全く子育てや仕事をしない人であるとするならば、母が子育てと仕事を両立しなければなりません。それでもうまくやっていける家族もいますが、中にはできない人たちも、確かに多く存在しているのです。

カサンドラ症候群で家庭が壊れるイメージ

カサンドラ症候群の夫婦も機能不全家族の可能性がある

アスペルガー(自閉症スペクトラム)×カサンドラ症候群夫婦も機能不全家族になってしまう可能性があります。

夫(妻)がアスペルガー症候群の場合、夫は妻の気持ちを読み取ることや、状況を把握して行動することが苦手であるケースがよく見られます。これは、アスペルガー症候群の特徴であり、ほかにも「コミュニケ―ションが難しい」「こだわりが強い」「パニックとなる」といった特性をもつ人も多いです。

その場合、通常の家族の役割とは違う生活スタイルを考えなくてはなりません。夫のこだわりに合わせて妻や子どもの生活を変えたり、通常の家族以上に妻や子の役割が増えたり、諦めなければならないこともあるでしょう。

しかし、誰かに負担が多くのしかったり、諦めることが当たり前になったりする生活が続くうちに妻(夫)のカサンドラ症候群という新たな問題に発展し、さらに家庭が回らなくなってしまうことがあります。

この負のループから抜け出すことは相当難しいといえます。私は機能不全に陥っても、無理をしてなんとか「いい家族」を保とうとする家族をいくつか見てきました。ですが、みなさん、とても苦しそうで、中には不安障害やうつ病を発症するケースも珍しくありませんでした。

ちなみに私が見てきた家族のほとんどが子育て世帯です。そして、機能不全家族の場合、大人以上に影響を受けるのが子どもだということがわかっています。

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夫婦仲が子どもに与える影響とは

家族の中で親(保護者)の存在は子どもにとって非常に大きく、夫婦の共依存状態や不和状態も危険です。夫婦喧嘩や不和状態を頻繁に子どもに見せる行為は、「面前DV」という虐待の一種だからです。常態的な面前DVは子どもの脳を委縮させます

また、アルコールや薬物、ギャンブルなどの依存症に親が陥っている場合、子どもの脳は状態が変化し、自分で自分の欲求をコントロールできなくなっています。家庭のこと(育児、炊事や掃除などの家事、仕事、金銭管理など)は後回しになり、マルトリートメント(児童虐待)やDV、モラハラにつながる可能性が高くなります。

とりわけ、大人と違い子どもは自立能力が低く逃げる選択肢がないため、その影響を直に受けてしまいます。

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親がカサンドラ症候群の場合、子どもはどうなる

夫婦の関係が悪くなる原因の1つに、夫婦どちらか(あるいは両方)の発達障害であるケースがあります。夫がASD(アスペルガー症候群/自閉症スペクトラム症)で発達に課題のある場合、妻や子どもの要求にまっすぐ応えることができないこともあります。

家族がうまくフォローしたり、子どもが成熟してその意味を少しずつ理解してくれれば良いのですが、何らかの理由やきっかけで妻や家族がその負担やストレスに耐えきれず、カサンドラ症候群夫婦になってしまうというケースもあります。

カサンドラ症候群は不安障害や抑うつを伴うケースが多いため、養育力が低下し、マルトリートメントや面前DVを発生させることも珍しくありません。

つまり、親がカサンドラ症候群になることで、子どもに下記のような影響を与える可能性があるのです。

  • 脳の成長を妨げる
  • 感覚を鈍らせる
  • 身体の不調(頭痛、めまい、腹痛など)
  • 精神状態の不安
  • コミュニケーション能力の低下
  • 感覚統合機能の低下
  • 認知能力、非認知能力の低下

夫婦間で相手に対してさまざまな感情を抱き、考えるところもあることでしょう。しかし、夫婦仲が原因で子どもがつらい気持ちになることは望んでない夫婦も多いのではないでしょうか。次の段落では、夫婦仲が悪くても、子どものためにできることはないかを解説します。

カサンドラ症候群で子どもが傷ついているイメージ

夫婦仲が悪くても健やかに育てる方法

夫婦仲の改善は容易ではありません。子どものために何ができるのかを一緒に考えてみましょう。

【方法①】子どもの前でケンカをしない

最も大事なことが、子どもの前でケンカをしないことです。前述した通り、子どもの前で夫婦喧嘩をすることは、子どもの脳にマイナスの影響を与えます。

暴力はもちろん、たとえ口ゲンカでも子どもの脳が萎縮してしまう可能性が示唆されています。視覚や聴覚の感覚系にまでダメージを与えるため、精神の正常な発達を妨げるといっていいでしょう。

【方法②】子どもの前でお互いの悪口を言わない

ケンカではなく、夫婦や家族間の悪口や嫌がらせも面前DVに当たります。そもそも悪口や愚痴を慢性的に聞くことは、言っている方も聞いている方も相当なストレスを与えることがわかっています。

それは家族や夫婦間に限ったことではありません。学校や職場など、あらゆる場所や場面を含みます。特に子どもの脳はまだ未発達な部分も多く、子ども自身に向けられた悪口でなくても直接的なダメージを受けます

近年は共感覚や過敏な子どもも多いため、酷い場合は子ども時代に聞いた悪口やケンカがトラウマとなり、大人になっても尾をひくケースがあります。悪口と同様に、嘘や無視などといった嫌がらせ、不仲な態度等もやめましょう

子どもの前だけでもいいので、夫や妻を褒めてみてください。実際の夫婦仲の改善にも役立ちます。「どこを褒めればいいのか分からない」という場合は、「ありがとう」というお礼のことばや挨拶でもかまいません。

「何を今さら…」と思うかもしれませんが、子どものためと思って実践してみてください。夫婦の一方が変われば、もう一方もそれに気づき、考えるきっかけになるかもしれません。

【方法③】夫婦や家族間で上下関係をつくらない

夫婦や家族の中で、上下関係をつくることはやめましょう。「親の背中を見て子どもは育つ」という格言がありますが、極端な亭主関白や鬼嫁を日常的に子どもに見せると、刷り込みになります

「(父のように)いばってもいいのだ」「(母のように)人を使ってもいいのだ」と学習するおそれがあります。自己中心的でわがままなに育ってしまうかもしれません

前提として夫婦の不仲な状態で子育てをすること自体、あまりよいことではありません。ですが、夫婦の不仲には複雑に問題が絡み合って、本人たちだけでは解決の糸口さえ見えない場合も多いはずです。当事者や家族間の話合いで解決できないようであれば、積極的に専門機関を使う道も視野に入れてください

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機能不全家族を立て直す3つのステップ

夫婦仲の改善は難しいですが、不可能というわけではありません。相当ハードルが高いケースもありますが、機能不全に陥ってしまった家族でも、立て直せる可能性があるのです。私のこれまでの経験の中で、改善された家族の共通項を探し、どのようなステップを踏んでいけばいいのか考えてみました。

【ステップ①】機能不全家族だと知り、受け入れる

最も高いハードルは「受け入れる(受容する)」ことです。一見簡単に見えますが、決して簡単なことではありません。そもそも、機能不全家族という言葉を知らない人も多く、当事者のほとんどは自覚がありません。

家族の精神疾患や不安障害、子どもの問題行動など、何か大きなきっかけで気づくことが多い印象です。家族の誰か、あるいは複数の構成員に過剰な負担やストレスがかかっている場合が多く、自身がそうであれば、まずは自分が無理をしていることを認める必要があるでしょう。認めた上で、今度はそれを家族間に共有(カミングアウト)しましょう。これは解決の最初の一歩であり、決して恥ずかしいことではありません。

【ステップ②】つらい原因を考える

自覚した後は、過度のストレスをなぜ感じるのか(あるいは感じさせるのか)を冷静に考えましょう。家で考えることが難しい場合は、職場や外で考えてみてください

家にいるとさまざまな無自覚の圧力(バイアス)がかかり、客観的に考えることが難しいかもしれません。特に、カサンドラ症候群のように機能不全の原因が家族間のコミュニケーションにある場合は、家内で考えることは難しいと思います。

原因がある程度はっきりしているのであれば、無理のない選択肢を考えて書き出してみてください。自身の判断が難しい場合は、第三者や相談機関などに聞くのも有効です。ちらい現状や渦中にある方は、認知能力の不全が起きやすいということも覚えておきましょう。

【ステップ③】自分自身を改善する

家族といえども他者です。自分がいかにつらくても、他人を変えることは容易ではありません。相手への過度な期待をやめましょう。とりわけ、カサンドラ症候群の場合は、パートナーへの期待が高すぎるとうまくいきません。ASD疾患の理解を深め、現状を知るようにしましょう。専門家を活用することもいいですね。

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家庭の問題はひとりでは解決できない

家族というものは、さまざまな要素で成り立っています。それぞれの家族にそれぞれの問題があります。私は年間でのべ100世帯以上の家庭の支援をし続けて5年以上になりますが、まったく同じ問題の家庭は1つもありませんでした。他人と比較して自己嫌悪になること不毛なことはないとまで思っています。

「夫婦仲を改善したい」と思ってこの記事にたどり着いた人は、まず1つ「ステップをクリアしている」と思ってほしいです。その気づきがなければ、決して改善に向かいません。

家族の問題は、1人で解決できる問題ではないと私は考えています。近年、夫婦相談の数は増加傾向にあります。夫婦問題を第三者に相談することは、珍しいことでも、恥ずかしいことでもありません

機能不全家族についても、すべての家族に何かしらの機能不全があるという研究もあります。自身や家族の大切な人生ですので、落ち着いて考えて、「仕方がない」「ガマンするしかない」と諦めてしまわずに前向きに歩んでいってくださいね。

新井 寛規

新井 寛規

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。家庭教育師。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

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