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2021.09.17

怒り過ぎると子どもの脳が委縮。怒り方を変える4つの方法とは

つい怒り過ぎてしまうことって、どの親にありますよね。その時は反省をしても、またつい怒り過ぎてしまう…。ですが、怒り過ぎると、子どもの脳や心に一生残る悪影響を与えかねません。そこで、怒り過ぎることがどんな影響があるかを知り、どうすれば怒り過ぎることをやめられるのか一緒に考えてみませんか?

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今回の相談

子どものことは愛しています。ですが、気づくとキツイ言い方をしたり、大きな声を出したり、ネチネチと叱ったり、怒り過ぎてしまいます。このままではいけないと思いますが、気づくとまた叱ってしまいます。子どもの性格や心に悪影響はないのか心配ですが、しつけをしないわけにもいきません。怒り過ぎを止める方法や正しい叱り方を教えてください。(小学3年女の子の母)

怒り過ぎは子どもの脳を変形させる

近年の研究によると怒られ過ぎると子どもの脳が萎縮、肥大する変形が見られることが分かっています。

「福井大学の友田明美教授(小児神経科医・脳科学者)が、ハーバード大学と共同で行った研究によると、子どもの頃に不適切な養育(マルトリートメント)を受けて育つと、ほぼ100%の確率で脳の特定領域が萎縮、肥大、欠損するということが分かりました。

特定の領域とは言語能力を司る言語野、視覚・聴覚を司る前頭野などですが、これらの場所が損なわれると、人とコミュニケーションを取ることや、会話をキャッチボールすることが、脳的にできなくなります。生きていくうえで必要な社会的能力が脳的に働かなくなってしまうのです」

このように話すのは新井寛規さん。児童養護施設や市の家庭児童相談室で、相談員として不適切な養育に悩む多数の親子と向き合ってきました。

話を伺ったのは…

新井寛規さん

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

「私が見てきた事例では、地図上に危険な箇所が描かれた”街の危険マップ”のような絵を見せて『この絵の中で危険なところはどこですか』と聞いても、どこが(何が)危険なのか理解できない子がいました。脳の視覚野が傷つき、視覚的に危機を察知することができなくなってしまっていたのです」(新井さん、以下略)

脳への影響は、さらに下の世代にも広がっていきます。

「”児童虐待を受けた子どもが親になると、その人もまた児童虐待をしてしまう”という負のループについては知っている方もいるかもしれませんが、それは考え方などによるものではなく脳への影響もあります」

怒り過ぎが子どもの心に与える影響とは

心への影響は単に“傷つける”という言葉に収まらないレベルで子どもの将来に影を落とします。

「怒られ過ぎた子どもは自尊心が傷ついています。自尊心が傷つくと自分のことも、他人も信用できなくなり、何を信じればいいか分からなくなって、もろく崩れやすい状態になってしまう。そこで、自分を守るため、近づかれないよう周りを攻撃するようになります。反対に、家庭の中に安心感があるほど心は強くなっていきます

また、障害との関連性も高いとのこと。

「不適切な養育を受けた子どもたちは、愛着障害を生じる可能性が高くなります。愛着障害の症状は、ADHDや自閉症の行動に非常に類似していることが分かっており、本当はマルトリートメントによる心理的な作用が原因で、集中力がなくなっていたり、初めてのことが苦手になっていたりするのに、『軽度の自閉症です』と誤診されてしまうケースが非常に多い印象です。

ADHDや自閉症は投薬治療を行いますが、愛着障害に投薬治療は一切効果がありません。愛着障害の場合は、信頼できる場所や人を増やすことが治療になります

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「マルトリートメント」(不適切な養育)とは

ここまで“不適切な養育”という意味で出てきている「マルトリートメント」という言葉ですが、“不適切”とはどんなことを指すのでしょうか。

新井さんによると、国際児童虐待常任委員会は「マルトリートメント(不適切な養育)」を下記のように定義しているそうです。

マルトリートメントの定義

  1. 18歳未満の子どもに対する
  2. 大人、あるいは行為の適否に関する判断の可能な年齢の子ども(おおよそ15歳以上)に よる
  3. 身体的暴力、不当な扱い、明らかに不適切な養育、事故防止への配慮の欠如、言葉によ る脅かし、性的行為の強要などによって
  4. 明らかに危険が予測されたり、子どもが苦痛を受けたり、明らかな心身の問題が生じて いるような状態

引用元:「わが国における児童虐待の諸問題 ─日米における児童虐待の定義について─」四天王寺国際仏教大学紀要 第44号(2007年 3 月) 安部行照 (平成19年)

「上記の定義をみれば分かるように身体的暴力、事故防止への配慮の欠如、脅かし、性的行為の強要などがマルトリートメント(不適切な養育)に当てはまります。この定義は、WHOや国際児童虐待常任委員会による”国際基準の虐待の範囲”とほぼ一致します。

性的行為の強要については、行為だけでなく性的なポルノ画像や映像を子どもが見ることができる場所に置いておくということも当てはまります。子どもが苦痛を受ける、心身に影響が出るような状態のことがマルトリートメントになるのです」

日本はこれまでに国連委やWHOから『児童虐待における意識を変えなさい』と強烈な指摘を受けており、国際的に”児童虐待に対する意識が低い国”とみなされています。

「アメリカでは、小学校低学年以下の子どもをひとりで留守番させることが児童虐待となり、法律で罰せられる州も少なくありません。『日本も海外と同じ基準で定義すべきだ』と一概に言うことはできませんが、海外では虐待にあたることが、マルトリートメントという受け入れやすい言葉に置き換えらえることで、日本国内の虐待への危機感がさらに薄れてしまわないか心配です」

<新井さんの著書はこちら>

マルトリートメントとしつけの違い

上記の定義を見ても分かるように、国際的な虐待やマルトリートメントの定義・基準は、日本の”虐待”よりも厳しい基準です。

日本では”しつけ”という言葉で虐待が見過ごされてしまいがちです。ですが、しつけと虐待はそもそも真逆のものです。虐待の主語は大人であり、身体的、精神的に傷つくことや子どもを支配しようとしている状態を指します。虐待をしつけと思っている大人は多いですが違います。

反対にしつけは、子ども自身が自分の意志で「直そう」と思えるような大人のサポートです。日本で今までしつけといわれてきたほとんどのことは、世界的には虐待に当たります」

無視や夫婦ゲンカも虐待・マルトリートメント

虐待というと叩いたり、育児放棄をしたりということをイメージしますが、警察庁の発表によると、2020年に児童相談所(児相)に通告した10万6991人のうち、約7割が精神的な虐待(心理的虐待)といわれています。心理的虐待とは、ひとことで言うと、子どもの心を死なせてしまう虐待のことです。具体的には、次のようなことが当てはまります。

心理的虐待の一例

  • 怒鳴る
  • ひとい言葉をなげつける
  • 子どもが泣くまで叱り続ける
  • 子どもを無視する
  • 子どもの目の前で夫婦ゲンカをする
  • 子どもの目の前で、家族間のDV(ドメスティックバイオレンス)が起こる(面前DV)
  • 兄弟(姉妹)や性別で行動を制限する

適切な養育・しつけをする方法

では、どのような言動で接すれば正しいしつけになるのでしょうか。

「子どもの前では基本的に笑顔でいるのがいいですね。ストレスが溜まるぐらい笑顔でいる必要はないですし、24時間ずっと笑顔でいるのは難しいですが、なるべく子どもの前ではニコニコしましょう

一方で、大切な話(しつけ)をするときは真剣な顔で子どもに向き合い、「今から大事な話をするけどいい?」と言います。このとき、言った後に間を空け(沈黙する)たり、目線を子どもに合わせると“真剣モード”に空気が変わります

このとき、もし子どもが少しだらけた姿勢をしていても無理に正させる必要はありません。態度や聞く姿勢まで指摘してしまうと、本来伝えたいことから話がそれてしまいます。1度に多くのことを聞くことができる子どもばかりではありません。聞く姿勢を正すことを伝えることは、別の機会でも構いません

「例えば、忘れ物について注意し対場合、頭ごなしに怒るのではなく『忘れ物が多いと先生に聞いたけど、それでいいと思う?』と聞いてみてください。子どもの中には『いいと思う』と答える子もいますが、否定をしないでください。

受け入れた上で『あなたがずっと忘れ物をしてしまう人間になったら、お母さんは悲しいよ』というアイメッセージ(「私は」というメッセージ)を伝えましょう。

『忘れ物をしてダメな人間になってしまうよ』など、相手を主語にした話し方ではなく、自分を主語にしながら『私が悲しいから手伝うので、あなたも一緒に頑張ってみない?』と言うと、子どもの『直していこう』と考え直すハードルが下がります。

アイメッセージでお母さんの意見を伝え、ユーメッセージ(「あなたは」というメッセージ)で子どもの意見を引き出すことは、有効な技術と言えます。

そして、もし忘れ物をしなかったらほめてください。望ましい行動をしたらほめてあげることで望ましい行動が増えていきます

とはいえ、頭では分かっていてもなかなか理想通りに振舞えないのが育児の難しいところです。ですが、すぐにうまく行動できなくても、今、この知識を得たことで意識に少しでも変化が生まれれば、子どもへの接し方も少しずつ変わっていくはずです。

「日本では『虐待は絶対にしてはいけないこと』という意識が強いですが、誰にでも虐待やマルトリートメント(不適切な養育)をしてしまう可能性があります。『私も虐待をしてしまうかもしれないから気を付けなきゃ』という危機感をもつことで意識が変わるのではないでしょうか。専門家である私ですら虐待する可能性はあると思っています」

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怒り過ぎた影響を和らげる方法

また、マルトリートメント(不適切な養育)をしてしまっても、影響を和らげる方法はあるようです。

マルトリートメント(不適切な養育)を一切したことのない家庭は少ないと思います。ですが、親子の信頼関係がしっかりとできていれば、もしマルトリートメント(不適切な養育)をしてしまっても、マイナスの影響をフォローすることは可能です。

また、慢性的に怒鳴っている家庭はハードなストレスが常にかかっているので論外ですが、まれに怒鳴ってしまうことがあっても後で『言い過ぎたね。ごめんね。嫌なことがあったり疑問に思うことがあったりしたら言っていいからね』と子どもにきちんと伝えることで、マルトリートメントの影響は緩和されます

叱った後に「やり過ぎてしまった」と後悔した経験は、ほとんどの親にあることだと思います。そのときは、そのまま流さずに「親も間違えることがある。でも、あなたのことはすごく大事に思っている」という子どもへの愛情や本音を伝えることで、叱り過ぎたことで親子の信頼関係にヒビが入っても、再構築していくことができます。

「できれば、親子の信頼関係は幼児期に形成しておきたいですが、児童期に入っても時間をかければ形成できないことはありません。非常に難しいですが諦めないでください」

怒り過ぎてしまうのを抑える4つの方法

実際に怒り過ぎてしまう親と向き合ってきた新井さんですが、マルトリートメント(不適切な養育)をする親に対してどのようなアドバイスをしているのでしょうか。

【方法①】うまくできなくて当たり前と自分を許す

「私が親御さんから話を聞く際は、『自分でも悪いことだと思っている行動(怒り過ぎ)をなぜしようとしたのか』ということから伺います。お母さんから話を聞いていると、『母親としてきちんとしなければならない』『母親だからできて当然』という周囲からの圧力に苦しんでいる方も少なくありません。

『上手くできない自分が許せない』『周囲が許さない』という環境のせいで子育てのハードルが高くなって強いプレッシャーを感じているのです。しかし、誰もがお母さんになるのは初めてで、分からないことがあって当然です。

母親自身へのプレッシャーや母親の愛着(アタッチメント)障害など、さまざまなな問題が絡み合っている場合、まずは意識的な改革からしていく必要があります。

周囲からはそう見られていなくても、本人は母親としてがんばっている方も少なくありません。そんな方々には、『ここまで全部やりきっている親は少ないですよ』という言葉を伝えてあげるだけで楽になって、子どもへの接し方を変えていく方向へ意識が向くことがあります」

【方法②】SNSを子育ての基準にしない

ほかにも、SNSを信用する親も増えてきているそう。

「SNSでは極端な部分しか見えないことが多く、上手く子育てしている方のSNSばかりフォローしていると、投稿内容が子育ての基準になって、『私はこんな風にうまくできない』と苦しくなってしまいます。まずはSNSは基準にならないと意識を変えるように伝えます」

【方法③】データを見て客観的事実を知る

中には、データを見せると安心する保護者もいるそうです。

「例えば、脳萎縮のデータがこれだけありますよと提示してみてはいかがでしょうか。私の相談者さんの中にはデータを見ても『じゃあどうすればいいの!』と泣きながら訴えてくる方もいますが、そういう方は『親はこうあるべき』『しつけはこうあるべき』と考える癖が強くなっている傾向にあります」

【方法④】身近にピアカウンセラー、パラカウンセラーを作る

「こうあるべき」という思いが強い場合は、考えをほぐせるようにピアカウンセラー(話を傾聴してくれる人)や、パラカウンセラー(癒しをくれる人)のような存在を、身近な友人や家族につくってみるのがよいそう。

「海外では、職業的なカウンセラーではなく、簡易的なカウンセリングのようなことをしてくれる知人・友人・パートナーをもっていることが珍しくありません。

もちろん、『ウチのこは』のようなサービスを活用して、プロのカウンセラーにお願いするのもよいでしょう。特に日本では、カウンセリングを軽視している人が多いと感じます。早期にカウンセリングを受けることで、精神疾患や虐待など様々な予防となります。私自身も、早急にカウンセリングをすすめるようにしていますし、もっと早くカウンセリングを入れていれば、問題にならなかったのではないか、というケースも数多くあります

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夫(妻)が子どもに怒り過ぎる場合の対処法

家庭によっては、自分ではなく夫(妻)が子どもを怒り過ぎてしまうケースもあります。

「まずは、自分自身が不適切な養育は何かを知り、夫(妻)と共有してください。そして、あなたがパラカウンセラーやピアカウンセラーになってみてください

『あなたのこういうところがいいよ』と言ってあげることは、悪いところを止めることにもつながります。いい行動を強化することと、悪い行動を弱化することは実は同しなんです。いいところを伝える、できることを伝える、ということが大事です。

プラスして『こういうところはいいけど、〇〇という関わりよりも、△△という関わりの方が子どもに良いらしいよ。私は難しいけれど、あなたならうまくできるんじゃないかな』ということも伝えられるとなおいいですね」

子どもと一緒に成長していけばいい

叱り過ぎについての悪影響などを伝えてきましたが、「ひとりで抱え込まないで欲しい」と新井さんは話します。

「今回の相談にあるお子さんは、小学校3年生です。まずは、その年齢まで成長させるためにはきちんと養育してこられたと思います。そして、そこに至るまでにはつらいこと苦しいことがたくさんあったはずです。お母さんになったからといって、すぐに“お母さん業”が完璧にできるようになる人はほとんどいません。子どもが成長するのと同じように、お母さんも一緒に成長していけばいいのです。

実は虐待の専門家である私も、パラカウンセラーを作っています。すべての親に相談ができるピアカウンセラー、パラカウンセラーがいたほうがよいのではないかとすら思います。海外では、身近な人がメンターとなって仕事やプライベートをサポートしているケースも多いのです。

日本も昔は、地域のつながりが強かったため、地域の年長者がそのような立ち位置にいたのかもしれません。

ひとりで抱え込まないように相談できる人を作ってください。話せる人が誰も思い浮かばなかったときは、あなた自身のために、カウンセラーや相談員を気軽に話し相手にしてくださいね」

<取材・文/ソクラテスのたまご編集部>

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新井 寛規

新井 寛規

小規模フリースクール「ろぐはうす」センター長。小学校教員、児童養護施設児童指導員、学童保育士、市家庭相談員を経て、2018年大阪府に学習生活支援センターろぐはうすを設立。現在、大学教育学部非常勤教員、保育士・教員養成専門学校の教員、保育士国家試験予備校非常勤講師、市府県放課後支援員研修講師、市府県子育て支援員研修講師、保育教育児童福祉コンサルティング、啓発活動を行っているほか、「境界に生きるー。」(UTSUWA出版)などの著書も手掛けている。

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