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2022.02.18

海外留学をさせる意味とは?心構えや奨学金制度を紹介します

コロナ禍でハードルが高くなっているものの海外留学に憧れる学生は少なくありません。しかし、親世代が学生だった頃と今では、海外留学に違いはあるのでしょうか。令和の時代に海外留学をする意味はどこにあるのか、奨学金制度はどうなっているのか、文部科学省のグローバル人材育成プロジェクト「トビタテ!留学JAPAN」広報の西川朋子さんに話を聞きました。

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話を伺ったのは…

西川朋子さん
文部科学省「トビタテ!留学JAPAN」広報・マーケティングチームリーダー

大学卒業後、留学情報誌を専門とする会社の起業・経営に携わったのち、PR・マーケティング代理店での新規事業立ち上げ、ITベンチャーでの広報を経て、2014年から文部科学省が手がける官民協働の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」プロジェクトチームに参加。

異文化の中で過ごすことに意味がある

インターネットを通じて簡単に世界とつながることができるうえ、新型コロナウィルスの影響で国境を超えるハードルが高くなっている今。一方で教育分野ではグローバル化への対応が課題のひとつに挙げられています。

「急激な少子高齢化が進むこれからの時代、日本ではもっと海外の人々とアイデアを出し合い一緒に仕事をしていく機会が増えるといわれています」と話すのは、文部科学省で「トビタテ!留学JAPAN」の広報を務める西川朋子さんです。

「トビタテ!留学JAPAN」とは、文部科学省がグローバル人材の育成のために民間企業等と協働して行ってきたプロジェクトのこと。高校生・大学生を対象とした留学奨学金制度「日本代表プログラム」をはじめ、海外に興味がある高校生がSNSやイベントを通じてつながる「#せかい部」など、留学機運を高める活動が実施されてきました。

「トビタテ!留学JAPAN」

「これからは、国籍や性別、価値観、ライフスタイルなどが異なる人々が、それぞれの個を尊重して認め合い、それぞれのいいところを活かしていくダイバーシティ&インクルージョンの時代です。

若いうちに留学して異なる文化や価値観の人々の中で生き延びるという経験は、ダイバーシティ&インクルージョンの時代の中で、物事を推し進めていくために必要な経験になると思います」(西川さん、以下略)

必要とされるグローバルな人材とは

では、そもそもグローバルな人材とは、どんな人なのでしょう。

「細かな定義はいろいろありますが、ひとことでいえば、どこにいても自分らしく実力が発揮出来る人のことなのではないでしょうか。例えば、日本だと活躍出来るのに、海外に行くと出せる力が半減するのはもったいないことですよね」

つまり、言葉や文化の違いに関係なくパフォーマンスを発揮できるというのがグローバル人材ということ。

「SDGs達成に向けた問題が山積する時代、いろいろな困難が立ち向かってくる中で、複雑な問題を解決するためにさまざまなバックグラウンドの人たちと共に、主体的に向き合えるグローバル人材がこれからの時代に必要なのだと思います」

ただし、世界各国も同じように”グローバル人材育成が大切”と考えているかといえば必ずしもそうでもなさそうです。

「例えば、いろんな民族・移民が周りにいるカナダ人やアメリカ人にとってはグローバルであることは日常なんですよね。世界中から来た人と一緒に働くのが当たり前という感じだと、グローバル人材という言葉自体を使わないようです」

だからこそ、日本人が他民族の文化の中で暮らす海外留学は、日本の当たり前を疑う機会として意味があるものなのかもしれません。

留学経験に意味をもたせるための方法

しかし、海外に行けば、自動的に多様性の中で生き抜く力を得られるわけではありません。「トビタテ!留学JAPAN」の奨学金制度を活用し、いわば日本の代表として海外へ飛び立つ若者は、どのような経験をするのでしょうか。

「『トビタテ!留学JAPAN』では、学業成績や語学力ではなく、熱意、好奇心、独自性を重視して選考をしています。具体的には、審査の段階で留学計画書を提出してもらいます。

計画書は、大学生には、今までの経験や将来の展望につながる留学理由、今回の留学経験をその後どう生かすのかということなどを書いてもらいます。高校生は、留学計画書の最後に、自由なフォーマットに自己アピールをしてもらいます。マンガ描いたり、写真を貼ったりしても構いません。書類審査を通過した方は、面接に進んで採用経験豊富なトビタテ寄附企業の方などに審査していただいています」

大学生の場合、過去に留学制度を活用したOB・OGが留学計画書をボランティアで添削してくれるケースもあります。しかし、何度も書き直すうちに、「やっぱり自信がない」と応募を取りやめてしまうこともあるそう。

「結果はともかく、『受けてみたこと自体が学びになった』と言われることも多いので、その前に諦めてしまう人の話を聞くと残念に思います。受験などでこれまで落ちたという経験がない学生だと、挫折することが怖いのかもしれません。ただ、壁に突き当たったとき、落ち込んで何も出来なくなるのではなく、『越えていこう』と、もがけるかどうかということは重要だと思います」

海外留学では、『自分って何者なんだろう』『自分の強みって何なんだろう』『そもそも日本ってなんだろう』など、普段、日本で受け身で生きているだけでは考えもしなかったことに向き合うことになるといいます。

「現地の人に『あなたはどんな人なの?』『何が好きなの?』『何が出来るの?』と言われて、自分を見つめ直さざるを得なくなったとき、自分で考えてアピールすることができれば、居場所や自分というものを確立することができます。

でも、事前のマインドセットができていないと、留学先の人々とうまくコミュニケーションできなかったときに落ち込んでしまい、1ヵ月ほど寮から出られなくなってしまったり、ホームステイ先の部屋にこもったまま日本の友達とラインしたりしてしまいます。

そこを打ち破って現地の人と友達になれるかどうかっていうか、というところが留学のすごく大事なところなんです。

ですから、トビタテの奨学生には事前研修であらかじめ、『留学は楽しいことばかりではない。苦労もあるけど、それこそが成長のチャンスだよ』と伝えています」

強烈なマイノリティ、アウェイを経験し、自己を確立することこそが、激動のグローバル時代に海外留学をして経験すべきことの真髄なのかもしれません。

「留学する上で目的意識は、あったほうが踏ん張れるという点でベターです。で同時に、殻に閉じこもって悶々とするだけでなく、人に対してオープンに自分を出して、つらいときには『つらい』『助けて』と自分をアピールすることも大切ですね」

オンライン留学に意味はあるのか

一方、コロナ禍ということもあり、注目を集めているのが、日本からインターネットを通じて海外の学校の授業を受講したり、学生と交流したりする、いわゆる「オンライン留学」というプログラムです。前述のマイノリティ、アウェイ体験の効果はあまり期待できなそうですが、意味があるのでしょうか。

「意味はすごくあります。特に中高生の場合、外国の人との交流に初めてチャレンジするというケースも多いと思いますが、安心安全な場所で気軽に始められるのはいいですよね。コミュニケーションをとっていくうちに、相手の国や相手自身について興味をもつことができ、裾野が広がると良いきっかけになると思っています。

しかも、移動を伴わないので、今月はフィリピン、来月はイギリスという風にもでき、オンラインは本当に国際交流を盛んにできる大きなツールになると思います。

できれば、その後、現地に行くというステップが今後広がるといいですよね」

選択肢が広がる奨学金制度を紹介

新型コロナウィルスの影響もあり、現在、新たな募集は行っていない「トビタテ!留学JAPAN」の奨学金制度。再開できるように、現在、検討・調整が行われています。

『トビタテ!留学JAPAN』の『日本代表プログラム』の今後の在り方は検討中の状態ですが、『トビタテ!留学JAPAN』のホームページからは、いろいろな財団や自治体による奨学金制度を調べることができる独立行政法人 日本学生支援機構』の検索ページへ飛ぶことができます。

大学生以上向けの奨学金が中心にはなりますが、将来の参考に、ぜひチェックしてみてください」

また、海外の大学・短期大学への進学も選択肢に入れてみるのもいいかもしれません。

「海外の大学はお金がかかるというイメージかもしれませんが、日本の大学に行くのとほぼ同じぐらい費用、もしくは、日本よりも安く行ける海外の大学って実はたくさんあるんですよ。

例えば、イタリア、フランス、ベルギーやオランダ、ドイツ、フィンランドなどEU圏の大学の中には、学費が年間20~100万円前後という学校が多く、英語のみで受講できるコースもあります。

世界ランキングでも上位の国立大学で学べるのに、学費が年数十万円というのは、コストパフォーマンスが高いと思います。アジアだとマレーシア、台湾やタイ、韓国なども英語で学べて、年間30万円~100万円前後の学費で通える大学があります」

ただし、いずれも外国語で専門分野を学んで単位をとり、卒業するのですから、日本の大学で学ぶ以上の努力が必要だと思います。難易度が高いと思うか、国際性や語学を確実に身に付けられていいと考えるかは、気持ち次第です。

「一方、アメリカの場合は学費は年間200万円~700万円、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランドの大学の学費は年間200万円~400万円程度かかるため、奨学金の活用を検討してもよいかもしれません。

独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の海外留学支援制度では、海外の大学進学や大学院進学の奨学金を毎年、国費で支援しています」

「トビタテ!留学JAPAN」でも海外大学、大学院進学のセミナーを行ったり、過去のセミナーのアーカイブや、各国大使館が監修する国別留学ガイドをホームページに載せたりしているそうなので子どもに合った方法を検討してみてはいかがでしょうか。

情勢も経済的にも不安定な時代ですが、子どもの夢や可能性は奪いたくないですよね。親にとっても子にとっても後悔のない選択になるよう、海外へはばたく子どもたちをソクたまは応援します。

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浜田彩

エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。

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