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2021.03.15

グリーンスクール(バリ)|親子で見学をして分かった魅力や必要な英語力、能力とは

「グリーンスクール」という学校について聞いたことはありますか? 2008年、インドネシア・バリ島で開校され、「サスティナビリティ(=持続可能性)」「未来のリーダーの育成」をモットーとしたインターナショナルスクールです。自給自足による給食、自然エネルギーで電力自給など「世界一エコな学校」として注目されているグリーンスクールとは一体どんな学校なのでしょうか。子連れで見学した経験をもつ教育コンサルタントの萩原麻友さんに、学校の全貌や教育内容について伺いました。

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地域と連携して作られた壁も窓も扉もない竹の校舎。それがグリーンスクール

「世界一環境にやさしい学校」
「世界中から優秀な子どもたちが集まり、起業家スピリッツを養う学校」
「日本人初の卒業生が、環境活動家として活躍している」

子どもを持つ親の興味をそそるキーワードでさまざまなメディアに取り上げられてきた「グリーンスクール」。

2008年、インドネリア・バリ島に開校されたグリーンスクールは、カナダ人のジョン・ハーディさん、アメリカ人のシンシア・ハーディさん夫妻が創設しました。

夫妻は、アメリカの民主党クリントン政権下の副大統領アル・ゴアによる、地球温暖化問題を扱ったドキュメンタリー映画「不都合な真実」を観たことをきっかけに、「環境問題や持続可能社会の実現のために何かをしなくては」という思いから、バリ島でグリーンスクールの開設を思い立ったそうです。

「グリーンスクールを訪れたとき、最初に度肝をぬかれたのは、校舎のインパクトでした。現地に生えている竹や材木だけを使って作られ、教室には壁も窓も扉もありません。建築家もインドネシアの方で、竹の持つ美しさが存分に生かされた、曲線的で流れるようなデザインにひきこまれました。

グリーンスクールは『地域に根ざす』ことをコンセプトにしていて、地域や地域の住む人たちとの連携をとても大切にしています。その思いが、校舎のつくりからひしひと感じられました」(萩原さん、以下同じ)

グリーンスクールの室内。自然光が差し込み、自然を感じながら学びます

話を伺った人

萩原麻友さん教育コンサルタント

学校見学と図書館が好きなフリーランスの教育コンサルタント。元留学カウンセラー。東京大学教育学部卒。二児の母。公立小から転校した国内インターで7年、アメリカのボーディングスクールに4年留学していた帰国子女。現在は、小中高生の海外進路について悩む保護者の相談に応えています。
萩原麻友さんのサイトはこちら

グリーンスクールの学費は? 英語力ゼロでも入学できるの?

グリーンスクールには、3歳から高校3年生までの子どもたちが世界中から集まっています。その数約500人。(新型コロナウイルス感染症の影響により、現在約300人が継続中。2021年2月現在)

年度は毎年8月始まりで、9月1日時点の年齢によって下記への入学(転入)になります。

グリーンスクールの編成

  • Early Years/3歳〜6歳の3学年
  • Primary School/小学1〜5年生にあたる5学年
  • Middle School/小学6年生〜中学2年生にあたる3学年
  • High School/中学3年生〜高3年生にあたる4学年

1クラスの人数は、Primary Schoolは19〜21名、そのほかのクラスは最大16名なり、学年横断型の活動もあります。

気になる学費ですが、2020年度の場合、初年度登録料は日本円で約27万円

年少・年中の学費は日本円で年間約115万円、年長は約136万円、小学1〜3年生は約160万円と学年が上がるごとに高額になり、高2〜3年生は約210万円になります。

「決して安くはありませんが、日本国内の私立小学校やインターナショナルスクールへの入学を検討しているご家庭であれば、想定内の金額だと思います。ちなみに、日本人は全校生徒の約10%(2019年5月末訪問時)で、幼児期、学童期に入学するケースが多いようです。

入学すると、在籍期間は最低1年。幼児期、学童期は1年単位で生徒が入れ替わるケースも少なくないようです。生徒の約10%は地元インドネシアの奨学生で、通学のためのお金は、基金や校内にあるリサイクルセンターの売り上げでまかなわれているそうです」。

グリーンスクールへの入学に際しては、特別な試験があるわけではなく、事前に入学の意思を確認するための親子面談が行われるくらい。いわゆる“学力”で落とされることはありません

「英語力が心配な保護者の方が多いと思いますが、お子さんが幼稚園くらいまでは、英語力ゼロでも大丈夫だと思います。6~11歳向けに留学生向けの英語イマージョンプログラムがあり、語学補習が可能です。何より子どもには吸収力や適応力があるので、慣れるのも早いと思います」と、萩原さん。

ゼロから1を生み出す! 起業家精神を養う教育カリキュラム

グリーンスクールの教育カリキュラムのいちばんの特徴は、行動基準のベースが下記の3点であること。

  • 地域に根ざす
  • 環境を優先する
  • 孫が自分の行動でどのような暮らしになるかを想像する

また、事前に出された課題についてのディスカッションやプレゼンテーションの授業を重視し、さまざまなプロジェクトを生徒主導で進めていくことです。

「現地を見学して印象に残っているのが、子どもたちがグループで取り組んでいた『スクール内の遊び場に置くターザンロープを作ろう』というプロジェクトです。

実現させるためには、どのような素材を使ったら環境にやさしいのかを考えて子どもたちが計画と予算を立てていることです。

『どのようにお金を集めたらよりたくさんの人に還元できるのか』『環境にどのようなインパクトを与えるのか』などについて、教師や地域の人、保護者、プロジェクトをサポートする専門家と関わりながら進めていくのです。

自ら課題や問題意識をもち、周りの人と関わりながら、頭と手を動かしゼロから1を生み出す。まさに起業家精神を養うのにふさわしいカリキュラムであることを実感しました」

徹底した環境保全を実践した学校生活を送れる

校内で使われている電力は、太陽発電と川の水と使った水力発電でつくられ、通学バスは、高校生が発案して校内でつくられたバイオ燃料で走るというグリーンスクール。

トイレは、用をたした後におがくずなどを入れて微生物の力で自然に分解し、分解した排泄物を堆肥として畑にまき再利用していく「コンポストトイレ」を取り入れています。その畑でとれた野菜を学校のランチで食べるため、子ども達は、循環していくシステムを日常生活で自然に学ぶ事もできます。

「従来型の学校社会と対比させ、持続可能をテーマに子どもの全人格的な成長をめざすグリーンスクールには、その理念に賛同する世界中の著名人や一般の人から寄付金が集まっています。そして、『こんな学校づくりに関わりたい』と、優秀な教育者が世界中から続々と名乗りを上げてきています

おがくずが配置されたグリーンスクールのトイレ

体験入学できる「ファミリーキャンプ」とは

2008年に開校以来13年。学校としての歴史はまだ浅いグリーンスクールですが、卒業後は、アメリカの最難関大学のひとつであるコーネル大学に進学したり、学校に通いながらクラウドファンディングで資金を集め、環境に関わるプロジェクトを立ち上げ起業したりなど、卒業生は世界で活躍しています。

日本では、横浜市に住む露木志奈(つゆきしいな)さんが高校の3年間をグリーンスクールで過ごし、卒業。その後、慶應義塾大学に入学しましたが、現在は「日本の中高生に気候変動について知ってほしい」と大学を休学し、環境活動家として全国の学校を訪れ、講演活動を行っています。

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行が続いていますが、グリーンスクールでは、徹底した予防策を講じながら、今後はオンラインとオフラインを組み合わせたハイブリッド型の授業を展開していくそうです。

「グリーンスクールは、経済的な面も含め、子どもの教育に対する関心が高く、国際教育や環境教育に興味のある方、今の日本の教育に物足りなさを感じている方、テストや成績にとらわれず、新しいことに子どもを挑戦させたいと思っている方に向いていると思います。

ただ、ひとつ知っておいていただきたいのは、グリーンスクールは、『保護者も含めてコミュニティの一員とみなされる』ということ。保護者同士、保護者と教師、学校、保護者と地域などさまざまな関わりを求められるので、保護者の方にもある程度の英語力、コミュニケーション能力が必要です」

興味がある家庭は、バリの気候や文化にふれながらワークショップや冒険ツアーを楽しめる「ファミリーキャンプ」のプログラムに“体験入学”のスタンスで参加されてみるのがよいのではないか、と萩原さん。

「私が見学ツアーに参加した当時、息子は5歳でしたが、高低差のある広大な敷地を散歩しながら道端に落ちたココナツの実を足でつついたり(笑)など、本人なりに楽しんでいました」

「子どもがいちばん伸びて成長するのは、本人の興味がいちばん発揮される場面です。そのために私たち保護者ができることは、目の前のわが子をじっくり観察し、そのときどきで成長を促す環境を整えること。この意識を大前提に、グリーンスクールをはじめさまざまな学校を知っていただきたいですね」

「グリーンスクール」は、ニュージーランド、南アフリカ、メキシコにも開校(予定)しています。どのスクールも地域のカラーが色濃く反映され、バリとは違った雰囲気なのだそう。今後の展開も楽しみです。

※費用・入試方針などは変わる可能性があります。実際に検討するときはスクールへ確認ください

<参考サイト>
グリーンスクール(バリ)

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長島 ともこ

フリーライター、エディター、認定子育てアドバイザー。妊娠&出産、育児、教育などの分野の企画、編集、執筆を行う。PTA活動にも数多く携わり、その経験をもとに、書籍『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』『卒対を楽しくラクに乗り切る本』(厚有出版)などを出版。「PTA」「広報」をテーマに講演活動も行う。2児の母。

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