不登校の中学生に親が取りたい3つの対応策とは|不登校支援の専門家が解説
子どもが不登校になると親はさまざまな不安を抱きます。「社会との接点を失ってしまって大丈夫?」「このまま引きこもりになってしまうのではないか」「高校受験はどうなるんだろう」。家にいる子どもを見ていてどうしようもない不安が募ってくるとき、保護者はどう対応したらいいのでしょうか。そこで、不登校や学習嫌いの子への学習支援を行う「学習支援塾ビーンズ」の塾長である塚﨑康弘さんにインタビュー。子どもが不登校になったとき、家庭はどのような場所となり、社会との関わりはどうして促していけばいいのかアドバイスをもらいました。
目次
不登校の子どもを無理やり学校に行かせるのは、絶対にダメ
「わが子が中学校に行けなくなり、社会との接点がなくなる不安の根底には、高校受験への不安があるのではないでしょうか」と話すのは、「学習支援塾ビーンズ」の塾長である塚﨑康弘さんです。しかし、だからといって、親が一番してはいけない対応は無理やり登校させることなのだそう。
「親として子どもの幸せを望むからこそ、『引きこもりになったらどうしよう』と焦ってしまう気持ちは理解できます。不登校になり家に居続ける姿に『この子は自分の将来について真剣に考えていないのではないか』と思うこともあるでしょう。
しかし、不登校の子どもの多くは学校に順応できなかった経験から、自分に自信を持てず、心の中で、『自分がうまくやれないから不登校になった』『自分がダメだから社会から疎外されてしまった』と感じています。自分の将来について考えることを放棄してしまっているのです。そんな感情を抱えている子に将来のためだからといって親が社会に出ることを強要して、いい結果につながると思いますか?」
わが子が学校に行かない理由がわからない…という悩みにはこの記事もおすすめです。
このような社会から疎外されたような自己否定感は、自分の意志で不登校を選択したように見える子にも少なからずあると塚﨑さんは話します。
「まずは、『自分の将来や外の世界のことを考えてもいいんだ』と、自己肯定感や外への興味を取り戻せるようになることが先決です」
そのためには、「まずは家庭のあり方を見直してみてください。まずは、家庭が子どもにとって安心できる場所であることが大切です」と塚﨑さん。安心できる場所とは、どのような場所で、そのために保護者はどんな対応をすればよいのでしょうか。
不登校の子どもに親ができる3つの対応策
「安心できる場所というのは、自分を認めてくれる場所ということです。そのために保護者の方に行ってもらいたいのは、『ありのままのあなたでいい』『あなたが存在してくれるだけで私たちうれしい』という気持ちを伝えるコミュニケーションをとること。保護者から存在を肯定されることが子どもの自己肯定感を養うのに最も効果的です」
また、存在を肯定するというのは、言葉で伝えることだけではありません。次のような対応を通して子どもを肯定することを塚﨑さんは提案します。
【親の対応①】子どもの「したい」を肯定する
親として子どもにして欲しいこと、子どものためになるんじゃないかということはいろいろ思いつくと思いますが、「本当は○○して欲しいな」という期待や、「○○してみたら」という誘導は子どもに重荷になるので避けましょう。子どもから「〇〇をしたい!」という思いが本人から自発的に出てくることを待ち、意思を尊重するようにします。
【親の対応②】「その瞬間」を褒める
例えば、何かを「したい!」と思った子どもが実際に挑戦し、達成したとします。親としては「得意を伸ばしたい!」「成長につなげたい」「もっと大きな自信につなげたい」と思い、「次は〇〇してみない?」「次もがんばろうね」と言いたくなってしまうかもしれませんがNGワードです。まずは、その瞬間(今の出来事)のみを見て、ほめましょう。
【親の対応③】一緒に作業(伴走)をする
親の中には、「たとえ不登校でも子どもにはさまざまな可能性があると伝えたい」と感じる人もいるかもしれません。しかし、それを言葉をかけるよりも効果があるのが“伴走”だと塚﨑さんは話します。
「大人がいくら『あなたには才能があるよ』『君ならできるよ』と言っても、子どもは『何の根拠もないのにお前は何を言ってるんだ』と思って信じないんですよね」
そこで、塚﨑さんは言葉で伝えるのではなく“一緒に作業(伴走)をして、できたことを褒める(承認)”という流れを繰り返し、子どもに自信をつけさせていくことを提案します。
「例えば、今はリモートワークをしている保護者の方もいると思います。仕事の一部を子どもに手伝ってもらうのはいかがでしょう。最初はコピー取りのような簡単なことから始めて、次に資料の誤字脱字チェックやタイピングなども任せてみる。保護者が『ありがとう。おかげで仕事がはかどったよ』『タイピングが早くなったね』などと伝えることで、子どもは『少なくともお父さん(お母さん)は僕の能力を認めている。家族は僕の能力を必要としている』と自分を認められるきっかけになります」
家庭が“役立っていることを実感できる場所”“自分を認めてくれる人がいる場所”になることで、学校生活で失った自己肯定感を取り戻して、外へ出ていく力も貯めていける場所になるのです。
不登校の中学生におすすめの勉強方法は、こちらの記事で解説しています。
外へ興味が出たら2つ以上のコミュニティへの所属を目指そう
もし、子どもの意識が少しずつ外へ向いてきたという変化を感じたら、子どもの居場所となるようなコミュニティへ所属し、再び社会と接点ともつサポートを行うのがいいと塚﨑さん。
「理想は2種類のコミュニティに所属できることですね。1つは子どもの得意なことで評価される場所で、もう1つは評価は関係なくただ楽しい活動ができる場所。複数のコミュニティを用意してあげることで、どこかのコミュニティが合わなくなっても引きこもりにはなりにくくなります」
子どもに合うコミュニティーを探す時は、その内容もポイント。前者は、タイムが出る水泳などの習い事や「ビーンズ」のように成績が出る学習塾など分かりやすい結果が出るコミュニティがいいのだそう。
「子どもは自分で自分を評価できないので客観的なものを通して自分を評価するわけです。ただ、そればかりだとだんだん辛くなってくる場合が多いんです。なので、後者のように好きなことを好きなだけやれる場所があるといいんです。この2つがベストマッチの組み合わせですね」
不登校の子の学びを支える塾の選び方は、こちらの記事で解説しています。
コミュニティはオンラインゲームでもいい
また、後者のコミュニティは、オンラインゲームの場でもいいそう。
「人気の『フォートナイト』『Minecraft (マインクラフト)』など、みんなで一緒に行う系のゲームは十分コミュニティとして機能があります。むしろ、充実しすぎていて子どもたちがリアルに戻ってくる動機を失いつつある状態だと思います」
例えば、『Minecraft (マインクラフト)』は、目標とする建物を作るために中間目標やいくつかのタスクがあり、それをみんなで分担して達成していきます。しかも、完成した建物は周りから称賛されたり、壊そうとする人が現れれば力を合わせて困難に立ち向かい克服していきます。
「目的や中間目標があり、達成するためのタスクを信頼関係のある仲間とやり遂げ、人から称賛がきて、困難に対してはみんなで立ち向かう。達成感も充実感もあって、友達もできます。こんな環境が学校教育や現実世界で担保できていると思いますか? ゲームに敵う充足感をリアルな世界で提供できていないんです。ゲームは悪いものと思っている親御さんは、この点について考えてみてほしいですね」
さまざまな不登校支援や相談サービスについては、以下の記事で紹介しています。
不登校の子どもと接する際は、子どもの本音と建前に注意
家庭が安心できる場所として子どもの自信を取り戻させ、余裕が出てきたら2つ以上のコミュニティに所属させる、という流れで親は接してほしいと話す塚﨑さん。しかし、子どもの状況を見て、負担になり過ぎないように外への話をするタイミングを図るのは難しそうです。
「確かに難しいですよね。ただ、子どもには本音と建て前があるということは覚えておくといいと思います。
例えば、本当はまだ進路のことなんて考えるのが嫌だし、考えようとすると辛くなってしまうのに、『ママが前向きになることを期待してるから』『同世代の子はもう進路について考えているから』と思い、建前として『私もそろそろ進路考えようかな』『外の世界を見てみようかな』と言うときがあるのです。
子どもの言葉が本音なのか建て前なのか、普段の子どもの様子や性格、親御さん自身が思春期だった頃の気持ちを思い出して考えてみてほしいですね」と塚﨑さん。
また、建前だと気づいても、それを指摘してはいけないそう。例えば、子どもが「学校へ行ってみようかな」と言ったとすると…。
「『そんなこと言って、こないだも無理だったんだからきっとまたダメに決まってるわよ』と子どものプライドを崩す言い方は避けましょう。建前は崩さずに、『そうだよね、そろそろ考えたほうが良いよね。いつぐらいから戻るか考えてみようか』など、子どものペースで話をすすめられるようにします。最初は建前でも、考えるうちに本当に行く気になれば応援してあげればいいし、トーンダウンするようなら『どっちでもいいんだよ』と引き返しやすいようにしてあげましょう」
保護者も不安と葛藤の日々の中で子どもを肯定し続けるというのは、忍耐と努力が必要なことだと思います。
そこで、次回の記事では、塚﨑さんから不登校の子がいる保護者に向けた日々の過ごし方についてインタビューします。
次回の記事はこちら
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エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。