2020.06.26

専門家が語る中学生が不登校になる原因と悪化させない親の対応とは

文科省の調査によると平成30年度の中学生の不登校生徒数は27人に1人。クラスに1人以上は不登校の生徒がいることになります。それほどまでに中学生の不登校が増えた原因は何なのでしょう。そして、もし自分の子が不登校になった場合、親はどう子どもに接すればよいのでしょうか。不登校や学習嫌いの子への学習支援を行う「学習支援塾ビーンズ」の塾長である塚﨑康弘さんにインタビュー。彼が感じる不登校の原因と悪化させないための親の対応とは?

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文科省によると約27人に1人の割合となっている中学生の不登校。しかし、一方で日本財団が、平成28年度に現役中学生~22歳を対象に行った調査によると、不登校傾向にある中学生(年間欠席数は30日未満)は、全中学生約325万人の10.2%にあたる約33万人。文部科学省が調査した不登校中学生の数の約3倍になり、約10人に1人が不登校傾向にあるという結果が出ています。

 

不登校傾向とは、文科省が定めた「年間30日以上の欠席」という枠には当てはまらない下記のような状況の生徒を指します。

 

  • 1週間以上の連続欠席
  • 学校の校門・保健室・校長室等には行くが、教室には行かない
  • 基本的には教室で過ごすが、授業に参加する時間が少ない
  • 基本的には教室で過ごすが、皆とは違うことをしがちであり、授業に参加する時間が少ない
  • 基本的には教室で過ごし、皆と同じことをしているが、心の中では学校に通いたくない・学校が辛い・嫌だと感じている

 

つまり、クラスに3人は不登校傾向にある中学生。では、なぜ、このようなことになっているのでしょうか。

 

日本財団の調査によると不登校の中学生(年間30日以上欠席している)の中学校に行きたくない理由のトップ10は下記の通りでした。

 

中学生が不登校になった(なっている)理由トップ10

1位:朝、起きられない

2位:疲れる

3位:学校に行こうとすると、体調が悪くなる

4位:授業がよくわからない、ついていけない

5位:学校は居心地が悪い

6位:友達とうまくいかない

7位:自分でもよく分からない

8位:学校に行く意味がわからない

9位:先生とうまくいかない/頼れない

10位:小学校の時と比べて、良い成績が取れない

 

わが子が「学校に行きたくない」というと、親はいじめなどの明らかな理由を考えてしまいがちですが、ランキングの結果を見ると“明らかな出来事(外的要因)”が理由になっているのではなく、“子ども自身の感覚や内面に起因するもの(内的要因)”や、本人もうまく言葉にできないモヤモヤや不調が理由となっているようです。

 

では、実際に不登校の中学生たちと接している専門家は不登校の原因をどのように感じているのでしょうか。

 

不登校の環境的な原因は学校以外で人と繋がる場所ができたから

不登校や勉強嫌いの子のための学習支援塾「ビーンズ」の塾長である塚﨑さんによると…。

 

「学術的な裏付けがあるわけではないのですが、不登校には環境的な原因もあり、大きく分けて2つだと思っています」

 

中学生の不登校増加の環境的な2つの原因

 

学校へ行くことが当たり前ではなくなった

1つは、“学校の相対化”があると思っています。今までは、中学生は学校に行くことが当たり前で、学校以外の選択肢はありえませんでした。ですが、10人に1人に不登校傾向があって、実際にクラスに1人は不登校中という状況だと、学校に行かないという選択肢が中学生の身近にあるということになります。

 

しかも、今は中学生が気軽にインターネットで調べものをする時代。検索すれば、「学校に行きたくない」という自分の気持ちに共感する中学生が33万人もいることが分かって学校以外の選択肢を想像しやすくなったのではないかと思います。

 

“相対化される”ということで考えれば、学校の権威が落ちているとも感じています。「学校で学ぶことが果たして役に立つのか」ということに疑問や疑念を持つ子たちが増えてきているように思います。

 

リアル(学校)がネットに負けている

これまでは、不登校になるとゲームはできても、人と繋がることはできなかったはずなんです。ですが、今はネットのゲーム上で友達と繋がることができる。これは、すごく大きいことだと思います。

 

以前は、対人のコミュニケーション力や社会性を育てることが学校の存在意義のひとつだったと思いますが、ネットゲームでそれらのことがある程度は担保できるんです。おもしろいだけではなく、誰かと協力したり、達成感を得られたり、人間としての喜びや楽しみを味わえるという点で現実がネットゲームに負けてきているのではないかと感じているんです。

 

「つまり、『学校じゃなくても良いじゃん』と思いやすい環境になってきていることと、ネットやゲーム上で人と繋がることができる環境が整っていることが不登校が増えている理由の大きな要因だと僕は思っています」

 

塚﨑康弘さん不登校・勉強嫌いの中高生向け学習支援塾「ビーンズ」塾長

早稲田大学卒業後、広告代理店に勤務。退職後、2年間のニート期間を経て難関校専門の家庭教師になり、2015年8月に学習支援塾「ビーンズ」を開塾。 アップシードビーンズ株式会社の代表も務めている。 学習支援塾「ビーンズ」https://study-support-beans.com/

 

 

不登校へのきっかけは教師、学校への違和感や人間関係

しかし、いくら不登校へのハードルが下がったからといって、不登校中の中学生がポジティブな気持ちでいられるのかというと「それは違う」と塚﨑さんは話します。

 

「あえて学校に行かないという決断をした子でも、やっぱり『学校は行かなきゃいけない』『僕は学校に行ってない』という葛藤を抱えていますし、学校へ行かないことを考えるきっかけになった要因について悩み続けています」

 

不登校のきっかけとなった要因は人それぞれのようで、例えば、小学校の高学年から運動会の練習などで集団行動を強いられることに「気持ち悪い」と感じて「行きたくない」と考えた子や、進学校に通っていた子に多いのが偏差値至上主義の教師に限界を感じた子なのだそう。

 

「人間関係が不登校の原因という子も多いですね。学校の人間関係は、閉鎖的でヒエラルキーがある独特の関係、その中で正しく振る舞わないとハジかれて村八分にされてしまう。そのことが生理的に耐えられないのです。そういったことを明言する子の中には、コミュニケーションに難がある子や発達に特性がある子もいますが、そうではなくても、とにかく学校という特殊な環境下での特殊な振る舞いを強制されることに耐えられないという声を中学生から聞きます」

 

 

 

親がいなくなってこの子は生きていけるのだろうか

そんな子どもを一番身近で見守るのが親です。不登校になった子どもに「自分の育て方が悪かったのではないか」「この子の将来は大丈夫なのだろうか」とさまざまな不安を抱えています。

 

「私の塾へ相談にいらっしゃる親御さんもとてもお子さんのことを心配しています。話を伺っていると“子どもの学歴”と“社会性(コミュニケーション力)”についてを相談される方が多いですね」

 

学歴といっても、例えば“偏差値の高い大学に”というわけではないそう。「いい大学を出ていても幸せになれるとは限らない」と思っている保護者が高校を卒業してなければ就職できないのではないかと悩んだり、“読み書きそろばん”レベルの学力はつけておかないと社会で生きていけないのではないかと悩んだりしていると塚﨑さんは言います。

 

「ただし、親御さんのさまざまな悩みを抽象化していくと、最後に辿り着くのはみなさん同じで『私が死んだ後、この子は社会でやっていけるんだろうか』ということなんですよね。自分たちがいなくなった後も生きていける力を身に付けさせなければということに一番不安を感じているのかもしれません」

 

また、「不登校の原因は親や家庭での育て方にありますか?」と聞くと、かなり悩んだ様子の塚﨑さん。

 

「直接的なきっかけではないと思いますが、トリガーのひとつになっているとは思います。例えば、親御さんがテストの点数や偏差値で評価しているとします。そのことだけで不登校にはならなくても、人間関係に疲れたり、集団行動に耐えられなくなったり、別の要因が出てきた時にプラスアルファの要因となって不登校にさせてしまいやすいとは思います」

 

 

 

中学生の不登校を長引かせないポイントは雑談量

親が不登校の要因のひとつになるということは、とてもツライことですが、「だからといって親として失格というわけではない。大切なのは不登校になった後、どう接するのかということです」と塚﨑さん。

 

「不登校を長引かせないためには、どれぐらい親子で会話ができているのかが大事です。親子でどのくらい会話量を担保できているかで、不登校の期間が1カ月になるのか、1年になるのか変わっていくと思います」

 

親子なんだから会話をするなんて簡単と思うかもしれませんが、大事なのは雑談。学校や勉強などについて子どもを問い詰めないほうがいいそう。

 

「不登校になった子どもが勉強をしないとき、親御さんは心配だから勉強の話をしたり、『今後どうするのか』ということを子どもに考えさせたりしてしまいがちなんです。でも、それを大人に置き換えたら、仕事に疲れて休みを取ったのに家族に『仕事をしないのか』『会社に行かなくて今後に響かないか』と言われているのと同じなんです。そんなの嫌ですよね。

 

子どもの気持ちに寄り添うことはいいことですが、すぐに進路や今後の話をするのではなく、その前に親子の雑談量を増やして欲しいんです」

 

話すなら子どもの半径50cmの話題

では、どんなことを話せばいいのでしょう。改めて、雑談といわれると悩んでしまいそう。

 

「まずは、子ども自身が好きなものなど半径50cm以内にある話題にしましょう。子どもの好きなゲームやマンガに対して食わず嫌いせずに興味をもってみてください。今だと、とりあえず『鬼滅の刃』を読んでみたり(笑)。読んでみて『あのさ、主人公なんだけど、あんな風に妹が鬼になったらツラいよね』みたいな自分の気持ちを言う。子どもも反応しやすいですよね。こんな風に共通の話題、ネタをいくつか作って話をしていき、親子の信頼関係を築きなおしていくことが大事です」

 

雑談のポイントは親が地を出すこと

ただ、気を付けたいのは、保護者が態度を突然変えることで「俺に気つかって話しかけてきたな」と子どもに構えられてしまうこと。

 

「これは僕たちプロも気を付けていることなんですよね。『先生として私に近づくために言ってるんでしょ』と子どもに言われちゃうんです。そのために僕らが意識してるのが地を出すということ」

 

塚﨑さんの場合、子どもと塚﨑さんが共通で好きなマンガの話になったときに、単に「この作品好きなんだよね」と言うのではなく、本当に自分が好きな場面についてや、自分が100%正直に好きなところ、嫌いなところを話すことで、「立場じゃなく、ひとりの人として素で話しかけてるな」と感じてもらうそう。

 

「やっぱり素で話してもらったほうが子どもはうれしいんですよね。それは親御さんに対しても同じです」

 

子どもが好きな話題を選び、「気を使われている」と受け取られないように話すことが雑談量を増やすコツのようです。

 

 

 

中学生で不登校になっても学力は高校で取り戻せる

また、中学生の子どもが不登校になり、学力に対して不安を抱えている保護者に対して「不登校になったからといって取り戻せない学力はありません」と話す塚﨑さん。

 

「例えば、勉強でいえば小学校レベルの学力が身に付いていない子(掛け算、割り算ができない子たち、文章を読んでも主語が何か分からない子たち)は苦労します。しかし、中学レベルの数学や英語ができなくても、本人が『やりたい』と思ってくれれば高校で充分挽回可能です」

 

また、高校についても次のように話します。

 

「うちの塾の子をみていると、親御さんより子どものほうが『全日制の普通科へ行かなくちゃ』『偏差値60以上の高校へ行かなくちゃ』と思っています。いい高校、大学に行かないと幸せになれないと思い込んでいるんですよね。しかし、実際には中学校に行っていないことや全日普通科進学校に行けなかったことで幸せになれないということはほとんどありません。そのことは、社会に出ていろいろな人を見てきた親御さんなら感じているはずです」

 

 

全日制高校以外にも、日本には下記のような進路があります。

 

  • 定時制高校
  • 総合学科高校
  • 単位制高校
  • チャレンジスクール
  • 通信制高校

 

大人としては、思い込みにとらわれている子にこそ、さまざまな進路、生き方があるということを伝えたくなってしまいます。ですが、一方的に情報を押し付けるのも子どもにはプレッシャーになってしまいそうで…。

 

「まずは、子どもの思い込みを薄めてあげられたらいいですね。私の塾の生徒を見ていると、塾にきているいろんな人と話すことで思い込みは薄まっていくように感じます。子どもの意識、興味が外に向いてからの話ですが、家以外にも人と繋がれるコミュニティができるといいですね」

 

次回の塚﨑さんのインタビュー記事では、家以外のコミュニティの作り方やそのためにまずは家庭がどうあるべきかという話について聞いていきます。

 

「ソクラテスのたまご」編集部

「ソクラテスのたまご」編集部

教育に関する有識者の皆さまと一緒に、子を持つお父さん・お母さんでもある「ソクラテスのたまご」編集部のメンバーが、子どものために大人が知っておきたいさまざまな情報を発信していきます。

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