母と娘の仲が悪い理由とは?良好な母娘関係を取り戻すためにできること
親子関係は、人生の中でも深く、同時に複雑な関係の一つです。特に「娘と仲が悪い」と感じる母親にとって、その距離感や拒否的な態度は、戸惑いや孤独感の原因となることがあります。しかし、その背景には思春期から成人期にかけての娘の成長過程や心理的な変化、さらには母親自身の無意識の言動が影響している場合が多いのです。本記事では、娘が母親を拒否したり避けたりする理由について詳しく解説するとともに、関係修復のための具体的な方法を提案します。親子の絆を再び深めるためのヒントを見つけていただければ幸いです。
目次
「娘と仲が悪い」状態とは?
日常生活の中で娘とのコミュニケーションがうまくいかず、お互いに距離を感じる状況を指します。このような状態では、母親が娘に対して「どうしてこんなに冷たくされるのか」「なぜ話が通じないのか」「労わってもらえない」と感じたりする場合があります。
例えば、以下のようなケースが考えられます。
・娘が母親の話に耳を傾けなくなり、そっけない返事ばかりする。
・母親が娘に何かを提案しても、反発されたり拒否されたりすることが多い。
・娘が母親を避けるような態度を取り、部屋にこもる時間が増える。
・一緒に過ごす時間が減り、娘から話しかけてこない、連絡がほとんどなくなる。
これらの状況に陥ると、母親は「なぜだろう」と思うことがありますが、多くの場合母親自身が無意識のうちに娘に対して自分の感情をそのままぶつけたり、厳しい期待を押し付けていたことが関係悪化の原因になっている場合も多いのです。そのことに気づかないままでいると、娘の人格形成が進んだ後に、関係性が悪くなるケースが少なくありません。
母親を拒否したり避ける娘の心理状態
娘が母親を拒否したり避けたりする心理状態は、成長段階に応じて変化します。思春期では「自立心」と「依存心」の間で揺れ動き、青年期では「自己探求」が優先され、成人期には「過去の経験」や「価値観の違い」が影響を及ぼすことが多いです。
思春期
思春期の娘にとって、母親は最も身近で頼りになる存在である一方、心理的に距離を取りたい対象にもなりがちです。この時期の娘は、自分の価値観や個性を模索しながら「自分らしさ」を確立しようとします。その一環として、母親の影響や干渉を排除し、自分で決めたいという強い自立心が芽生えます。
しかし、まだ心の中では母親への依存や甘えたい気持ちも残っているため、次のような矛盾した心理状態が見られることがあります。母親から距離を取ろうとしたりしますが、一時的な物である場合が殆どです。この時期はまだまだ家族間のコミュニケーションが必要な時期です。指示や干渉を控えつつも娘の興味があることに関心を持ち、家族間のコミュニケーションを図ることで安心感を与えましょう。
青年期
青年期に入ると、思春期よりも自立心が強まり、自分の価値観や人生観を形成するプロセスが進みます。この時期には母親を拒否する行動が引き続き見られることもありますが、思春期とは異なります。
思春期には「完璧ではない母親」を拒否する感情が強かった場合でも、この時期になると「母親も一人の人間である」と受け入れられるようになり、自分の価値観を形成する中で、母親の欠点や弱さを以前よりも客観的に見るようになります。この時期は、自分の進路、交友関係、恋愛、仕事などに集中するため、母親との関係を一時的に後回しにする傾向があることから母親は距離が出来たと感じるかもしれません。
成人期
成人期になると、多くの娘は母親に対する感情を整理し、より落ち着いた関係を築くことができるようになりますが、この時期に母親を避けたり、拒否する態度が残る場合、その背景には幼い頃から思春期以降にわたり、これまでの母親の娘への対応が背景にあります。
この時期に関係性が悪い場合、娘からの信頼を得られていない場合が多いです。そのため関係性の修復が難しくなり、時間がかかる場合があります。
娘に拒否されたり、避けられたりするのはどうして?
思春期や青年期に母親から尊重してもらえなかった、否定された経験や逆に干渉が過剰だった場合、成人後にも影響があります。
このような場合、娘は母親との距離を保つことで、心理的な安定を図ろうとすることがあります。
思春期
思春期の場合、拒否的な態度をとるのは母親からのアドバイスや指示を「干渉」や「押し付け」と感じ、反発的な態度を取ることがあります。また自分の空間やプライバシーを守りたいという気持ちから、母親との接触を避けるようになります。
一方で、母親が無関心であると感じると、逆に「自分は愛されていない」と感じることもあり、自立したいという二つの気持ちが入り混じり、不安定な態度が表れることもあります。
青年期
青年期になると、母親の対応が「厳しい規律」や「過干渉」に偏ると、娘はさらに距離を取りたがるようになります。そのため、母親としては「避けられている」と感じることがあるかもしれませんが、これは必ずしも拒否ではなく「距離の取り方」が変わっただけの場合もあります。
成人期
成人期になると、娘は母親に対する感情を整理し、多くの場合落ち着いた関係を築くことができるようになります。しかし、この時期に母親を避けたり、拒否する態度が見られる場合には幼少期からの母親の対応が影響している場合が多く思春期や青年期の距離とは違いがあります。
母親は娘になんでもアドバイスできる立場だと勘違いしている場合がありますが、成人期には親自身にそれを「語る資格」があるかどうかを客観的に判断できるようになります。母親からのアドバイスや指示が押し付けに感じられる場合、都合よく使われるのではないかなど娘から信頼されていない場合には母親を避け距離を置く事になります。
どうすれば娘との関係をよくできる?
娘が拒否や回避の態度を見せると、母親としては悲しく感じたり、不安になったり、納得いかないと思うこともあるでしょう。しかし、関係修復への第一歩は、まずは娘の気持ちを理解しようとする姿勢を持つことです。以下に具体的なアプローチを紹介します。
母親自身の感情や期待を見つめ直す
「娘が思い通りに動かない」「言うことをきかない」と感じる場合、それが娘に対する感情的な甘えや、「娘だからこうあるべき」という期待から来ている可能性があります。まずは自分自身の気持ちを整理し、娘を無条件に受け入れる準備を整えましょう。娘への期待や固定観念を一度手放すことで、新たな関係の築き方が見えてくるはずです。
娘の感情に寄り添う
娘が母親に心を開くためには、「自分の気持ちを受け止めてもらえる」という安心感が欠かせません。たとえ娘の意見や態度が理解しがたいものであっても、まずはその気持ちを認めることを意識しましょう。相手を否定せず、「そう感じたんだね」と共感する姿勢が、信頼の再構築に繋がります。
娘のタイミングを尊重する
母親が自分のタイミングで娘に接しようとしてしまうケースは少なくありません。しかし、娘が距離を取りたいと感じているときに無理に近づこうとするのは逆効果です。娘が心を開くタイミングを待ち、そのときにそっと寄り添うことが大切です。「待つ」という姿勢も、信頼関係を築く大切な行動の一つです。
娘が抱える過去の感情を受け入れる
成人期以降の娘から避けられる場合、パワーバランスの逆転が起きていることがあります。これは、娘が「過去に傷つけられてきた」と感じ、「もう傷つけられたくない」という強い意志の表れであることが少なくありません。このような場合、母親自身が「自分の気持ちをわかってほしい」という願望は捨てましょう。
娘には母親に「わかってもらえなかった」という過去の経験があるため現在の関係性になっているのです。そのため、まずは娘の気持ちに寄り添おうとする姿勢が重要です。
専門家の力を借りる
関係修復が困難に感じられる場合や、自分一人では感情の整理が難しいときには、心理カウンセラーや家族療法の専門家に相談することも一つの方法です。第三者の客観的な視点が加わることで、母娘双方の気持ちを整理しやすくなり、関係改善に向けた具体的な手がかりを得ることができるでしょう。
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娘が母親を拒否したり避けたりする理由は、一時的な成長過程の一環であることもあれば、過去の母親の言動が原因である場合もあります。その態度には、娘の自立心や自己防衛の意識が深く関係しています。しかし、関係を修復し、より良い親子関係を築くためには、母親自身がまず娘の心理状態を理解し、自分の感情や期待を見つめ直すことが重要です。娘の気持ちに寄り添い、共感を示しながら、相手のタイミングを尊重する姿勢が鍵となります。
また、時には専門家の助けを借りることで、よりスムーズに関係を改善することができるでしょう。娘との距離を縮めるためには時間がかかるかもしれませんが、一歩ずつ進むことで、新しい信頼関係を築ける可能性が広がります。焦らず、自分にできることから始めてみてください。
【編集部より】娘との関係に悩む方におすすめの本
ここで編集部より、娘との関係に悩む方におすすめしたい本を紹介します。『娘が理解できません(副題:大人になった娘のために、母親は何ができるか)』は、株式会社小学館クリエイティブから発売された書籍です。副題にある通り、子育てがひと段落した母親向けの本です。
この本の大きな特徴は、親の立場に立った内容が描かれているということ。
「親捨て」「毒親」「親ガチャ」などのワードは、すべて子どもの立場から親をあらわしたものです。しかし『娘が理解できません』は、母親の立場に寄り添いながら、こじれた母娘関係についてやさしく紐解き、今からできることをアドバイスしてくれています。
著者は、岩井俊憲さん。岩井さんはアドラー心理学の第一人者であり、40年以上にわたって、親子問題の解決に向けて精力的にカウンセリングや講演などの活動を続けているのだそう。
20万人以上の親子問題に向き合う中で岩井さんが感じたのは、「どうにもならない母娘間の溝は存在する」ということ。しかし、その溝は埋められたり近づいたりすることもあるといいます。確かに、母と娘とはいえ、結局は一人の人間同士。考え方や価値観が合わない部分があるのは仕方ないことかもしれません。
関係改善に大切なのは、当人たちの努力や周囲のサポート。『娘が理解できません』を読めば、二人が笑顔を取り戻すためのヒントがきっといくつも見つかるでしょう。
『娘が理解できません』には、「毒親」のレッテルを貼られた親が、良好な母娘関係を取り戻していった体験談も掲載されています。
数十人の“先輩”たちの実話は、今悩みを抱えている方の参考になるはず。
- なぜか娘が離れていく
- 何を言っても反発される
- 娘のためを思ってやってきたのに
……など母娘間の“あるある”が満載なので、「うちと同じ!」というケースがきっと見つかるでしょう。
岩井さんが専門とするアドラー心理学は、 “未来志向の心理学”といわれています。過去にさかのぼって原因を探るのではなく、“今”に目を向けて、現状改善のための策を練っていくのが特徴です。
「親捨て」されるかもと感じたら、『娘が理解できません』をご一読ください。「何をやってもダメだった」という方ほど、「できることはまだたくさんある」ということに気づくでしょう。
本書は全5章で構成されています。
- 1章:母と娘に距離ができてしまうのはなぜ?
- 2章:「不幸」な思いグセを持っていませんか?
- 3章:こじれた母娘の心理
- 4章:嫌な親のもとで育った子どもはどうなるの?
- 5章:母と娘のQ&A
1日2日で劇的に母娘関係を改善するのは難しいかもしれませんが、お母さんの真っすぐな思いが娘さんに伝わりますように。
<参考資料>
・PR TIMES(株式会社小学館)
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療育20年、放課後デイ10年運営のベテラン。子どもの「できない」に悩む親へ、行動の原因と対策に徹底的にサポート。幼少期にこそできる家庭内療育を提供。発達障害の子への性教育も。 これまでに、『発達障害の女の子のお母さんが、早めに知っておきたい「47のルール」』(エッセンシャル出版社)、『発達障害の女の子の「自立」のために親としてできること 』(PHP研究所)と2冊の本を執筆。現在も出版に向け本の執筆をつづけている中、子育てのポータルサイトにて発達障害の子の子育てコラムを連載中。