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2022.07.29

30〜40代女性の正社員率3、4割。ワーママが「L字カーブ」のジレンマを乗り切るコツ

「L字カーブ」という言葉をご存知でしょうか。女性の正規雇用の割合が、20代後半から一貫して下がり続ける様子を表したもので、働く女性を取り巻く新たな課題となっています。今回は、働くママが陥りがちな「L字カーブ」の背景や、育児という制約があるなかで自分らしい働き方や仕事のやり方を見つけていくための方法について、ご紹介します。

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30〜40代女性の正社員率は3、4割

従来、日本の女性の働き方の課題として「M字カーブ」がありました。20代など若い年代の女性の就業率は高く、その後の結婚・出産・子育ての時期に大きく下がり、子育てがある程度落ち着いた時期からふたたび上がるという現象で、「結婚したら家庭に入る」「子どもができたら仕事は続けられない」認識が一般的だった時代です。

その後、結婚後も共働きをする夫婦が増えたり、育児休業の充実など出産後も引き続き働き続けられる制度や、女性を取り巻く社会環境が変化してきたりしたこともあり、M字カーブの「M」の谷の部分は浅くなってきました。

(男女共同参画白書「第2節 女性の労働力率(M字カーブ)の形状の背景」第1-2-1図 女性の年齢階級別労働力率の推移」より引用)

いま、「子育てと仕事を両立できる」時代になったことは確か。ですが、その「中身」はどうでしょうか。

現在、M字カーブに代わって新たな課題となっているのが「L字カーブ」。令和3年に発表された内閣府「選択する未来2.0」内の「女性の就業率と正規雇用率」によれば、女性の正規雇用率のピークは20代後半で半数以上ですが、そこからは下がり続けて上がってないという現象を、アルファベットの「L」を横にした様子になぞらえたものです。

(内閣府「選択する未来2.0」内「女性の就業率と正規雇用率(94ページ)」より引用)

いわゆる「働きざかり」の年代といえる30代前半の正規雇用率は全体の約4割。子育てが一段落してくる人も多いであろう50代前半では、全体の約3割という結果です。

さらに、このL字カーブのデータは「人口に占める正規労働者の割合」、つまり、未婚の女性や既婚で子どもがいない女性も含む結果ということになります。そのため、子どもがいるママの正社員の割合は、この数値よりもさらに低いことが想定されます。

「子育てをしながら働くこと自体はできても、正社員として働くことができている女性は少数派」という事実があるのです。

L字カーブの背景とジレンマ

女性のL字カーブが起きている背景と、正規雇用以外で働く際に子育て中の女性が感じやすいジレンマを、それぞれご紹介します。

「正社員」を続けるのが簡単ではない

そもそも、一部の大手企業や公務員などを除いて、子育てが始まっても女性が会社を辞めず、正社員・正規の職員としてずっと働き続けられる会社がどれだけあるか。もしくは、子育てを機に一旦退職した場合、「家庭との両立ができる正社員としての再就職」がどれだけ可能なのかという点が、L字カーブが起きている背景のひとつにありそうです。

働きやすさが整った企業ばかりではありません。フルリモート・フルフレックスなど柔軟な制度を取り入れていたり、子どもがある程度大きくなるまで時短勤務ができたり、週休3日制度のある企業も登場していますが、全体からすればまだ多いとはいえないでしょう。

正社員として働いていても、会社の方針が変わるなどして働きにくくなったり、体調を崩したりということもあり得ます。また、子どもがいて制約ある働き方をする女性の場合は特に、正社員だからといって必ずしもやりがいある仕事ができるとは限らないのも事実です。

そして、子育てをしながら正社員として働いていたとしても、家庭環境や子どもの状況によっては、一定時間の拘束がある働き方自体が厳しくなるケースもあります。働き方を変えざるを得ない・もしくは変えたほうが良いのかと悩む局面が出るのは、子どもを持つ女性にとっての「あるある」ではないでしょうか。

納得感ある働き方がしにくいことも

現在の日本では、雇用形態の観点でいうと、正社員がもっとも雇用・収入ともに安定しています。契約・派遣社員、パート・アルバイトといった非正規雇用の場合、時間や曜日を柔軟に設定できる、残業がほぼないなどのメリットがある一方、仕事のやりがいや金銭面などの点で、必ずしも満足できる内容になっていないことも少なくありません。

もちろん、仕事をする目的や価値観は人それぞれ。「子育てに支障のない範囲で働ければ十分」「収入は家計の足しにできれば」という場合、さほど問題はないかもしれません。

問題は、ある程度の学歴や職歴があり、「やりがいある仕事をして成長したい」「限られた時間でも自身のスキルや経験を活かしたい」意欲のある子育て中の女性。そういった女性が非正規雇用で働いた場合、自分の能力を十分に活かせないことも。その結果、納得感のある働き方ができず、モヤモヤが積み重なることもあるのではないでしょうか。

日本では「メンバーシップ雇用」が根強く、いわゆる「新卒」や「正社員」に責任ある仕事を任せる傾向があることも影響を与えていそうです。非正規雇用の場合、たとえ本人の能力が高くとも業務が限定的になったり、補助的な仕事がメインになりがちな傾向があったりなど、いわゆる「仕事の醍醐味」を感じにくいところがどうしてもありそうです。

L字カーブ中のマインドの保ち方

子どもも大切だけど、仕事は続けたい。でも、仕事にコミットできる時間は限られている。一方で家庭を最優先にしようとすると、納得感のある働き方はなかなか難しい。働くママの多くが、そんなジレンマやモヤモヤを抱えているのではないでしょうか。

L字カーブという課題があるなかでの働くママのマインドの保ち方、制限があるなかでも自分のやりたいことを実現させていくための方法を3つ、ご紹介します。

1.自分も優先させる

子育て中だと、どうしても子ども中心の毎日にならざるを得ません。一日のスケジュール、住む場所や出かける場所、働き方や休日の過ごし方まで、ある程度「子ども起点」になってしまうのは避けられないでしょう。

ですが、「子どもの母親」としての生活がメインになりがちなあまり、思っている以上に「自分」が後回しになってしまっていることも、やはり多いのではないでしょうか。

自分は本当はどんな働き方がしたいのか。何が好き・得意で何をやりたいのか。母親という役割から離れて「自分自身」のこと、個人としての夢や目標を考える時間を持ったり、やりたいことを考えたりする時間を取ってみてはいかがでしょうか。子どもは夫に任せて、純粋に自分の好きなことをしたり行きたい場所へ出かけてみる、という経験も良さそうです。

「自分の本音」に気づくことは、今後の働き方やキャリアを実現していく第一歩ともいえそうです。

2.できることをやり、あきらめない

我が子が大切な存在には変わりなくとも、子育て中の女性にとっては常に、育児という「制約」があることには変わりありません。

ですが、「子育て中=自分らしい働き方ができない」というわけではありません。思うように動くことができなくとも、あきらめさえしなければ、自分の理想・希望に少しずつでも近づいていくことは可能ではないでしょうか。

たとえば、得たいスキルを身につけるための勉強を続ける、正社員以外でも今後につながりそうな仕事を探して少しでも働いてみる、理想に近い働き方ができそうな求人を探し続けるなど、できることはたくさんあります。フリーランスやプチ起業など、これまで経験しなかった働き方を「試してみる」のも、人によっては良さそうです。

大変なことが多くても、「子どもがいるから思うように働けない・いい仕事がない」と立ち止まったままでいるより、小さな積み重ねや行動を続けていくほうが有意義で、将来の可能性も広がっていくのではないでしょうか。

3.自分を卑下しない

日々仕事と子育てを両立していても、自己肯定感が低い女性も多いのではないでしょうか。バリバリ働いているように見えるママ・または家庭最優先のママを見て、「自分はどっちも中途半端」と感じたり、「正社員じゃないし」「収入もそこまで高くないし」など、いまひとつ自信が持てなかったり。

しかし、たとえ現在どんな働き方をしていても、まずは日々がんばっている自分を認める姿勢は持っておきたいもの。「子どもの世話もしながら仕事をしている」という事実を、まずは褒めるところから始めてみてはいかがでしょうか。いまの自分ができていることを書き出して、客観的に見てみるのも良さそうです。

「思っているよりよくやっている」「できることを自分なりにがんばっている」と肯定的に見ていくことで、ネガティブな気分に陥ってしまう時間も軽減されていきそうです。

ママが「自分を変えていくこと」は可能

女性を取り巻く「L字カーブ」の課題は、社会や日本企業の仕組みなどもあり、「環境」のほうをすぐに変えていくことは難しいのかもしれません。

ただ、自分ができる努力や行動を続けたり、ときには「これくらいかな」という範囲を超えて思いっきりがんばってみたりすることで、時間はかかってもどこかで道が開けたり、自分らしい働き方に近づいていったりすることはできるのではないでしょうか。

「L字カーブ」のモヤモヤに囚われすぎず、まずは「自分がどうしたいのか」、ひとり振り返って考える時間をつくることから始めてみても良さそうです。

<参考資料>
OOTEKOMACHI「働く女性の増加で解消される「M字カーブ」、改善されない男女格差」
日本経済新聞「女性就業3000万人突破、M字カーブは解消 男性との待遇差課題」
男女共同参画白書「第2節 女性の労働力率(M字カーブ)の形状の背景」
内閣府「選択する未来2.0」

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手塚巧子

1987年生まれ。日本大学芸術学部卒業後、出版社勤務等を経てライターとして活動。主に女性の生き方、ワークスタイル、夫婦・子育て、社会問題などのジャンルで執筆。小説執筆も行い、短編小説入賞経験あり。

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