特別支援学級とは?入る基準・通常の学級との違い・選ぶ3つのポイントを解説
発達障害や発達特性がある子の場合、小・中学校への進学の際に、特別支援学級と通常の学級のどちらを選択するのか悩ましいものです。この記事では特別支援学級に入る基準(何を基準に選べばよいのか)、通常の学級との違い、特別支援学級と通常の学級の後悔しない選び方のために知りたいことを、学習支援塾を主宰する川下耕平さんが解説します。
目次
特別支援学級とは
特別支援学級
(出典)文部科学省
小学校、中学校等において以下に示す障害のある児童生徒に対し、障害による学習上又は生活上の困難を克服するために設置される学級。
【対象障害種】
知的障害者、肢体不自由者、病弱者及び身体虚弱者、弱視者、難聴者、言語障害者、自閉症者・情緒障害者
特別支援学級とは、小学校・中学校内に設置された障害がある児童生徒が支援を受けられる少人数の学級となります。対象となるのは、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害がある子です。
特別支援学級は、すべての学校に必ずあるわけではありません。そのため、例えば居住している地域の学校に知的障害の特別支援学級しかない場合、その種別に当てはまらない障害種をもっている子が通うと「学習内容が物足りない」と感じてしまう可能性があります。子どもの障害種に適合する学級がない場合は、通級指導(後述)をはじめとするほかの支援を受けながら学ぶ方法を考えていくことも必要です。
特別支援学級と通常の学級との違い
特別支援学級に入る基準や、通常の学級に入るかどうかを考える前に、改めて特別支援学級と通常の学級の違いについて、改めて整理をしておきましょう。
通常の学級とは
通常の学級は、一般的な集団で授業を受けるクラスのことです。教科書通りに学習が進んでいき、一斉指示を聞いて、行動をとる場面が多くあります。
通常の学級と特別支援学級の違い
通常の学級は学年ごとに編成されますが、特別支援学級は障害種ごとに学級が編成されるため、年齢の異なる児童生徒が同じ学級に在籍し、学習します(ただし、なお、情緒障害者と自閉症者の場合、「自閉症・情緒障害特別支援学級」という一つの学級に編制されます)。
また、通常の学級はほとんどの場合1クラス数十人程度ですが、特別支援学級は少人数学級になり、特別支援教育の知識・経験がある教師が受け持つことが多いため、きめ細かい指導をしてもらえます。時間割やカリキュラム、テストの受け方・内容などは、子ども達の実態に応じて設定されることが多いでしょう。
さらに、小学校・中学校の卒業後の進路(その後、社会人になるまでの道筋)についても、特別支援教育に基づいた専門的な情報を収集しやすいといえます。これは、特別支援学級のいいところといえるかもしれません。
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川下耕平さんへの相談はこちらから特別支援学級に入る基準とは
特別支援学級の対象は、上で紹介した種別に当てはまる障害がある児童・生徒になりますが、判断基準は障害の有無だけではありません。
文部科学省による通知や手引き等において、特別支援学級の在籍者となるかどうかの判断基準が示されています。
視覚障害者,聴覚障害者,知的障害者,肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。)で,その障害が,学校教育法施行令第22条の3に規定する程度のもののうち,市町村の教育委員会が,その者の障害の状態,その者の教育上必要な支援の内容,地域における教育の体制の整備の状況その他の事情を勘案して,特別支援学校に就学させることが適当であると認める者を対象として,適切な教育を行うこと。
〔出典〕文部科学省:障害のある児童生徒等に対する早期からの一貫した支援について(通知)
ここに書かれたとおり、特別支援学級の対象となるかどうかは、障害の有無だけで決めるものではありません。その児童生徒本人の状態や学校・地域の体制、保護者、本人、専門家の意見などをもとに総合的に判断します。
また、就学先を教育委員会や学校が一方的に決めることはありません。最終的に決定するのは、保護者になります。ただし、就学先決定に不安がある場合は、教育委員会や学校(校長先生)に相談をすることも可能です。
特別支援学級か通常の学級か、選択する3つのポイント
では、特別支援学級と通常の学級、どちらを選択するのかについては、どのように考えればすればよいのでしょうか?
選ぶ際に大切なのは、「子どもが自分の力を伸ばすことができるのか、成長できるかどうか」ではないでしょうか。ひとことで「障害がある」といっても、通常のカリキュラムで問題ない子もいれば、支援を受けながらの教育が合っている子もいます。
これまで通常の学級から特別支援学級まで、多くの子どもたちを見守ってきた経験の中で助言すると、後悔しないためには“子どもにとって、どちらの学級の方がなじめるか“という視点が大切です。
そこで、学校生活を送る上で大切な下記の3点について見ていきましょう。子どもがなじめるのは、特別支援学級と通常の学級のどちらなのか考えてみてください。
【ポイント①】学力について
通常の学級における学習内容はその学年相応のものになります。そのため、“学力的についていけるのか”ということを考えましょう。
考えるのはテストの点数についてだけではありません。授業態度、実技科目における身体能力、児童生徒同士の協力関係が築けるのかという点についても考えたいところです。カリキュラムのねらいに沿った活動ができそうでしょうか?
学力がついていけないままに通常の学級のカリキュラムについていくことは、なかなかしんどいものです。しかし、特別支援学級であれば、本人のペースやニーズに合う学習内容が提供されます。
【ポイント②】社会性について
学級内で行われることは授業だけではありません。休み時間の友達との会話、係活動、ちょっとした教師とのやりとり、学級でのトラブルの解決、給食、掃除など、他人との関わりをなくして成り立たない活動ばかりです。
このような数値化できないコミュニケーションが必要な場面で、子ども自身がなじめるか、よく観察することが必要です。
【ポイント③】空気(雰囲気)について
子ども自身が、学級の空気感、雰囲気にしっくりくるかどうかということを考えましょう。実際に通常の学級の子が特別支援学級を体験したり、その逆を体験したりしてみて、どちらの学級の方が活き活きと活動できているか。そこが判断材料になるのでは、と思います。
特別支援学級と通常の学級の選び方については、前向きに、そして具体的に考えていけるように上記3つのポイントを中心に考えてみてください。
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川下耕平さんへの相談はこちらからIQは判断材料になるか
IQを明確な判断基準にするのかどうかというところは難しいところですが、一般的に知的障害はIQ70未満とされており、境界知能と呼ばれるのは70~85です。
あくまでひとつの目安ですが、上記の数値の場合、通常の学級に通うことは課題が多くなる可能性があります。
境界知能の子は見た目から「がんばればできる」と思われがちですが、実際には、かなりがんばっていて気持ち的にいっぱいであることに想像力を巡らす必要があると思います。
また、WISC検査による4つの指標(言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度)を基に考えることが必要です。
<WISC検査についての記事はこちら>
未就学の子の保護者であれば、教育委員会の就学相談係、就学先の小学校としっかりと相談をし、専門家の見解も参考にしながらより具体的にどの学校生活の場面で困り感を感じるのかを考えていくようにしましょう。
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WISC-Ⅳの相談はこちらから学級選択で後悔しがちな5つの不安と対処法
では、通常の学級あるいは特別支援学級を選択して、後悔するようなことはあるのでしょうか? 必ずしもこうなるということではなく、可能性として、どのような後悔が考えられるのか、どう対処すべきか。例を挙げて解説します。
特別支援学級を選んだ場合に後悔するかもしれない3つの不安
まずは、「特別支援学級を選んで、もしも子どもに合わなかったらこんな後悔をするかも?」という可能性について考えてみましょう。
1.自分の子どもの実態に沿った学習内容ではなかったら?
→特別支援学級は在籍している児童生徒の学年がバラバラで、学力の幅もあります。学習は、個別対応ではなく、その学級の中で平均的な教育が行われる可能性があります。
通常の学級と同じ進度ではないだけではなく、個別対応をしてもらえるわけではないこと。特別支援学級という「集団」に入るということは、考えておく必要はあると思います。
2.人間関係が狭くなるのでは?
→少人数学級でも、他学年や教師との関わりがあり、距離も近いため深い人間関係を経験できます。
特別支援学級は少人数ですので、確かにどうしても日常的に関わり合う人の数は少なくなります。「じゃあ、人間関係がとても狭くなるのでは?」と不安を感じる方もおられますが、その点はそれほど心配ないかもしれません。
なぜなら、特別支援学級に所属していても、他学年の児童生徒との関わりもあります。教師との距離も近く、深い人間関係を経験することもできるでしょう。保護者同士とのつながりもできやすく、情報交換もしやすいと感じています。
3.周囲の目が気になってしまうのでは?
→周囲の目を気にするより、子どもの成長を第一に考えることが大切です。
周囲から「障害があるから特別支援学級なのね」という目で見られるのではないか…という心配や葛藤があるかもしれません。ですが、周囲の目を気にするのではなく、子どもの成長を第一義的に考えることが建設的です。
実際は、そういった隔たりなく通常の学級と特別支援学級の子どもが交流している事例もあります。
通常の学級を選んだ場合に後悔するかもしれない3つの不安
次に通常の学級を選んだ場合に考えられる後悔について考えてみましょう。
1.学力不足で、授業についていけないのでは?
→可能性はあります。フォロー体制を検討する必要があります。
通常の学級を選んで、カリキュラムのスピードなどについていけない可能性はあります。通級指導教室、特別支援教室でフォローできる程度かどうかを検討する必要もあります。
<通級についての詳しい記事はこちら>
2.集団行動が難しく、トラブルになるのでは?
→大人数の中では安定した気持ちになりにくい子は、トラブルになる可能性もあります。通級でのフォローが可能かなど、確認しましょう。
大人数のクラスでトラブルになりやすい子であれば、安定した気持ちで学習に向き合うことが難しい可能性もあります。
もちろん子どもは、トラブルの中から人間関係を学んでいくものです。そのようにして問題解決に至る事例もあります。しかし、学習が疎かになってしまえばそれこそ本末転倒です。この点は、所属学級を決める前に複数の専門の先生に相談することをおすすめします。
特別支援学級を卒業後の進路への影響
中学校で特別支援学級を選択するとなると、気になるのが高校進学などの進路についてですよね。特別支援学級に在籍している場合、中学校卒業後も途切れなく支援を受けられる環境を含んだ進路選択になると思われます。
「特別支援学級に在籍していると進学の選択肢が減るのでは?」と相談されることは多いですが、実際には支援の受け皿は社会的に増えています。正しい情報を知れば「選択肢が意外と多い」という印象を受けるかもしれません。
また、中学校では高校進学に関わる内申点の問題があります。特別支援学級の通知表は内申点が出ないことが多いようですが、地域や学校によっては出してくれるところもあるようです。特別支援学級を選択する際、進学先の中学校に内申点の出し方を聞いてみると判断材料になるかもしれません。
在学中に学級を変更するときに気を付けたいこと
「一度、通常の学級でどこまでできるかを試したい」と考える人もいることでしょう。もちろん、一度経験をさせてみて、その上で判断することもいいとですし、転籍することは可能です。
ただし、何回も通常学級と特別支援学級を転籍して、環境が頻繁に変わることは子どもにとって有益なことではありません。
転籍をするのであれば、教師から普段の学校生活の様子を聞くなどの情報交換を行いつつ、時期、時間をしっかりと決めて、進めていくことが重要です。
実際に転籍する場合も、学校側と密に連絡を取り、子どもの実態、情報共有を転籍先の教師としっかりと行うようにしましょう。
通常の学級から特別支援学級へ転籍する場合
通常学級から特別支援学級への転籍手続きは、教育委員会や学校に相談して行います。
ただし、手続きよりも大切なのは、子ども自身の心のケアです。子どもの発達段階や理解度にもよりますが、「なぜ通常学級ではなく、特別支援学級になるのか」をきちんと説明し、「誰のためでもない、あなたの成長のためである」と親子でしっかり話せる材料は用意しておきましょう。
また、言葉で説明するよりも体験や見学など実際に経験することも検討してみてください。子ども自身が「通常学級よりも特別支援学級の方が自分に合っているな」と徐々に思えるような、子どもへの自然な働きかけも必要です。
特別支援学級から通常学級へ転籍する場合
特別支援学級から通常学級への手続きなども、教育委員会または学校に相談します。
特別支援学級から通常学級になるにあたり、最も心配なのは、大人数の授業、集団行動についていけるかという点です。
就学前のお子さんは、幼稚園・保育園での様子を参考にし、入学後であれば特別支援学級の子が通常学級の子と同じ活動をする際(交流学級)の、集団での様子を参考にしましょう。
無理に特別支援学級から通常学級に行き、子どもの負担が多くなってしまう可能性もあります。通常学級に行くメリットは何なのか、慎重に考えていく必要があります。
専門家に相談することも大切
知らないこと、経験したことがないことを判断するのは難しいことです。そういうときこそ、専門家に相談してください。
特別支援学級という場所が実際はどんなところなのか、イメージできない保護者の方がほとんどだと思います。そして、知らないものと向き合ったときにネガティブな思考へ引っ張られがちになるのが人間です。
ですが、それは単なる思い込みに過ぎないかもしれません。考え方を少しずつ変えていくことが未来へ建設的な選択をすることにつながります。
困ったときは、ただ恐れるのではなく教育委員会、医療機関(発達支援センターを含む)、進学先・在籍校のスクールカウンセラーなど、専門家の力を借りるのも悪いことではありません。
子育ては山登りのようなものです。支援のあり方、教育環境など、どの道で行くかは麓での判断(=通常学級か特別支援学級かの選択)だけで決まるわけではありません。登山中に出会う花や動物、景色、天候などに左右されながら、たまに寄り道をしたり、道を変えたりしながらも、子どもの自立という頂上に向かって歩き続けるものです。
今回の記事や専門家への相談が、お子さんと保護者の方にとって、山頂へとつながる道しるべになることを願っています。
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