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2022.12.06

小学生のADHD(注意欠如・多動症)|特徴や症状、親ができることとは

授業中に落ち着きがなかったり、忘れ物が多かったり、片付けができなかったり…。怒られてばかりのわが子だけど、もしかすると発達障害なのかも…。そこで、ADHD(注意欠如・多動症)の特徴や症状を特別支援学校、小学校特別支援学級で10年以上の教員経験がある東美香さんが解説。親としてできることをアドバイスします。

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記事を執筆したのは

東美香さん

特別支援学校・小学校特別支援学級の教員を14年間経験。「どんなアプローチをしたら、この子は伸びるか?」を常に考えて支援・指導を行ってきた。現在は、ブログ執筆や子育てに関する悩み相談などを行っている。

ADHD(注意欠如・多動症)の子とは

ADHD(注意欠如・多動症)は、生まれつきもった先天性の障害です。忘れ物や失くし物が多かったり、感情のコントロールが上手くできず衝動的な行動をしてしまったりすることが多く、集団生活を送る上で困ってしまう状況があります。

ADHDの主な行動特性は、不注意・多動性・衝動性の3つです。詳しく説明していきましょう。

【行動特性①】不注意

「不注意」の行動特性のある子どもは、気が散りやすく注意集中の持続が難しいため、うっかりした行動が多くなってしまいます。注意をされて直せるものではなく、子ども本人も「どうして忘れてしまうんだろう」「どうしてできないんだろう」と悩んでしまうことがあります。

【行動特性②】多動性

「多動性」の行動特性のある子どもは、「止まる」「じっとしている」状態が分からなかったり、動きを自分でコントロールすることが難しかったりします。

【行動特性③】衝動性

「衝動性」の行動特性をもつ子どもは、感情のコントロールが苦手なので、集団生活の中でも困ってしまうことが起きやすいといえるでしょう。

ADHDになる原因とは

ADHDは、先天性の障害のため、決して子育てのせいではありません。

生まれつき脳の発達に凸凹があるため、行動特性で挙げたような困りごとを抱えてしまうことがありますが、適切なサポートを受けることで、その困りは少しずつ軽減されていきます。

また、成長とともに脳の凹凸が統合されていくので、行動特性は目立たなくなっていくといわれています。

小学生のADHDの特徴

では、周囲の大人が小学生の子に対して「ADHDかもしれない」とに気付いたり、疑ったりする場合、どのような言動があるのでしょうか。具体的に見ていきましょう。

「不注意」がある子の特徴

  • 忘れ物や失くし物が多い
  • 聞き逃し、聞き洩らしが多い
  • ケアレスミスが多い
  • 気が散りやすい
  • 約束を守れない(忘れてしまう)

「多動性」がある子の特徴

  • 一定時間座ることが難しい
  • 着席していても、体の一部を動かすなど常に動いている
  • 興味が移りやすい(じっとしていることが難しい)
  • 喋り過ぎる
  • 相手の話が終わらないうちに話し始める
  • 会話のやりとりが一方的になりがちである

「衝動性」がある子の特徴

  • 怒鳴る、殴るなど、衝動的な行動が頻繁に見られる
  • 「一番」にこだわり過ぎる
  • 順番を待つことが苦手
  • ルールを守ることが難しい
  • 指示に従うことが難しい

ADHDの行動特性の表れ方は、それぞれの子どもによって異なり、その強弱もさまざまです。ADHDだといっても上記の行動すべてが出るわけではありませんし、子どもによって強く出たり、ほとんど出なかったりすることもあります。

ADHDに男女で違いはあるの?

一般的にADHDは男性の方が多いといわれていますが、実際のところは分かりません。なぜなら、男性のほうが多動性や衝動性の行動特性が出やすい傾向があり、受診・診断につながりやすいという背景があるからです。

一方、女性は多動性や衝動性よりもケアレスミスや忘れ物が多いなど、不注意の行動特性が出やすく、大きなトラブルになることが少ないため、発見されづらい一面があります。

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ADHDの診断、治療とは

学校や家での子どもの様子から「ADHDかもしれない」と思っている人の中には、受診や診断を考えている人もいることでしょう。その場合は、児童精神科や小児科を受診してください。

厚生労働省の「eヘルスネット」によると、ADHDの診断基準治療は以下のようになっています。

ADHDの診断基準

  1. 「不注意(活動に集中できない・気が散りやすい・物をなくしやすい・順序だてて活動に取り組めないなど)」と「多動-衝動性(じっとしていられない・静かに遊べない・待つことが苦手で他人のじゃまをしてしまうなど)」が同程度の年齢の発達水準に比べてより頻繁に強く認められること
  2. 症状のいくつかが12歳以前より認められること
  3. 2つ以上の状況において(家庭、学校、職場、その他の活動中など)障害となっていること
  4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能が障害されていること
  5. その症状が、統合失調症、または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されないこと “ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療”

また、治療は以下のようになります。

ADHDの治療

  1. 環境への介入
  2. 子どもを取り巻く環境を暮らしやすいものにするための介入としては、教室での机の位置や掲示物などを工夫して本人が少しでも集中しやすくなる方法を考える物理的な介入法や、勉強や作業を10~15分など集中できそうな最小単位の時間に区切って行わせる時間的介入法などが有効です。
  3. 行動への介入
  4. 行動への介入では、子どもの行動のうち、好ましい行動に報酬を与え、減らしたい行動に対しては過剰な叱責をやめて報酬を与えないことで、好ましい行動を増やそうという試みを行います。

    問題行動を抑制できたことやその頻度が減ることなどにも注目してしっかりと即座に褒めてあげることが重要です。報酬を得点化して一定数になったら何らかの特別なご褒美・行事への参加(映画に行く・博物館に行くなど)につなげるようにします。

    この行動変容に関して、主として子どもに関わる保護者が学ぶトレーニングが「ペアレントトレーニング」として知られています。

    また各地で実際に当事者の保護者が活動するペアレントメンターという制度も整ってきています。
  5. 薬物療法
  6. メチルフェニデートという薬剤がADHDの不注意・多動-衝動性を軽減する可能性があるとして保険適用されていますが、これは登録された医師や専門医療機関でのみ処方が可能で、薬局の登録も必要です。その他、アトモキセチン、グアンファシン、リスデキサンフェタミンという薬剤も市場に出回っています。

ADHDは、先天性のものなので治ることはありません。しかし、周りの適切なサポートを受けることで、子ども本人も自分の特性(苦手な部分・得意な部分)に気付き、理解することができるようになります。そこから自分なりの対処方法を身に付けていくことで、前向きに幸せに生きていくことができます。

ADHDの子に効果的な対応方法とは

ADHDの特性のある子どもは、離席や注意集中が困難、感情コントロールが苦手など、表に見えやすい「困り」を抱えていることが多いため、どうしても注意されたり、叱られたりする機会が増えてしまいます。

注意される、叱られることが増えると、子どもの状態はどうなってしまうでしょうか。

「自分はダメな子だ」、「自分は何をやっても上手くできない」など、自分に対するマイナスの感情をどんどん溜めていってしまいます。状況が悪化すると二次障害に陥ってしまい、生きづらくなる可能性もあります。

では、どのような接し方や対応を心がけたらいいのか、具体的に説明していきましょう。

【対応①】困った行動が起きにくい状況をつくる

子どもの困った行動への対応というと、行動後にどう対処するのかという方向で考えてしまいがちです。

しかし、すでに困っている状態だと、「どうして〇〇しちゃったの?」「〇〇は止めようって言ったよね」など、否定的な声かけをしてしまうことが多くなります。

そこで、下記のように困った行動が起きにくい状況を事前につくるようにしましょう。

具体的には以下のような対応が考えられます。必要に応じてご褒美制を取り入れると子どものモチベーションが上がります。

【困った行動①】忘れ物や失くし物が多い

時間割や持ち物リストを元に、次の日の時間割、荷物の確認を”親子で一緒に”行いましょう。

特性のために忘れ物や失くし物が多い子どもの場合、たとえ中学年や高学年でも、適切なサポートが必要です。年齢や学年で考えるのではなく、本人ができるようになってきたら、少しずつサポートを減らしていくようにしてください。

また、言葉で確認するだけでなく、揃っていることが見て分かるように持ち物表を作り、本人が〇や✓を入れるようにすると子どもも分かりやすいですよ。

【困った行動②】気が散りやすく、注意持続が難しい

しなければならないことがあっても、気が散ってしまってほかのことをし始めてしまう子の場合、すべきことの流れを紙に書いて部屋に貼っておくようにしましょう。

例えば、「朝の支度」であれば、顔を洗う、着替えるなど、「帰宅後にすべきこと」であれば、手洗い・うがい、宿題をするなどという一連の行動を書き、目で見て一連の流れが分かるようにすることで完遂しやすくなります。

また、最初のうちは、親子で一緒に確認しながら進めて、できたところには丸や花丸を書いたり、シールを貼らせたりすることで本人のモチベーションも上がり、習慣づきやすくなりますよ。

【困った行動③】感情のコントロールが苦手

怒鳴る、手が出るなど、感情的に行動をしてしまう子の場合は、困った行動が出やすい場面を観察し、行動前に気持ちを立て直す方法を親子で一緒に考えましょう。

例えば、勝敗にこだわって負けると怒ってしまうタイプの子には、以下のような対応が効果的です。

  • 「今から神経衰弱をするけど、勝ち負けがあるよ」と、勝敗があることを予告する
  • 「勝ったらどうする?」と、勝ったときの対応方法を決めておく
  • 「負けたらどうする?」と、負けたときの対応方法を決めておく
  • 実際に神経衰弱をし、事前に決めていた方法で対応できたらほめる
  • 負けて感情を爆発させてしまったら、落ち着くまで待ち、その後「どうしたらイライラしにくくなりそうか(次に同じ状況になったときの対処方法)」を一緒に話し合う

この場合も、対応方法が見て分かるように紙に書いて貼っておいたり、上手に対応できたら丸を書いたり、シールを貼ったりすると、子どもが気持ちを整えようとする意識がもちやすくなりますよ。

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【対応②】怒るのではなく冷静に話そう

いくら困った行動が起きないようにしていても、うまくいかない場合もあります。つい叱ってしまったり、子どもの行動を否定してしまったりするかもしれませんが、行動特性は叱られて治せるわけではありません。

むしろ、叱られることで「自分はダメな人間だ」と自己否定感が強くなっていく可能性もあります。

そんなときこそ、お互いに冷静に話し合うようにすることが大切です。親も子どもも気持ちの高ぶりが収まるのを待ち、下記のような対応をしましょう。

  1. まずは、自分で落ち着けたことをほめる
  2. 次に同じようなことが起こった場合、どうするかを一緒に話し合う
  3. 次の機会で上手に対処できたらほめる

大人も子どもも冷静に話をすることができれば、子どもの困った行動は減らしていくことができるはずです。

【対応③】注意するよりできたことをほめる

子どもの様子をよく観察していると少し前と比べて「できていること」「できるようになったこと」がたくさんあるはずです。

例えば、「食器を片づけられた」「脱いだ靴を並べられた」「自分から着替えられた」「ひとりで起きた」「掃除を手伝ってくれた」など、どんな小さなことでもいいので、ぜひ子どもの「できていること」をほめて、認めてあげてください。

子どもは、認められることが増えると、どんどん意欲的になっていきます。失敗を注意するより「できたこと」をしっかりほめて、「僕(私)はできるんだ」という気持ちを育ててあげてくださいね。

【対応④】保護者も無理をしない

わが子のことは、自分が何とかしないといけないと考える保護者は多いですが、子どもへのサポートが上手くいくのは、保護者の心が安定しているときです。追い詰められてしまう前に、無理がくる前に息抜きをしてくださいね。

学校と情報共有をしたり、専門家に相談したりすることも良い方法です。保護者が安定した心で子どもと関わることで子どもは落ち着いていきます。

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毎日子どもと向き合っていると、子どもの困った行動にばかり目がいってしまうかもしれません。ですが、必ずプラスの面があるはずです。「自分でできたね」「ありがとう!自分でしてくれてお母さん助かったよ」などの声かけを続けてみてください。

叱られることの多いADHDの特性をもつ子どもだからこそ、プラスの声かけがとても大切です。周りの大人の適切なサポートが、子どもの健やかな成長につながります。

保護者も息抜きをしながら、上手に周りを頼りながら、子どものサポートをしていってくださいね。

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東美香

特別支援学校・小学校特別支援学級の教員を14年間経験。 繊細で気難しい息子(6歳)の母。 教員時代は、「どんなアプローチをしたら、この子は伸びるか?」を常に考えて支援・指導を行う。また、息子が繊細で気難しいことで、“子育てにおける困り感”・“お母さんの心のモヤモヤ”をたくさん経験。 「特別支援教育と息子の育児で得た学びを“今”困っているお母さん・お父さんに伝えていきたい。」、「お子さん・お母さん・お父さんの困り感を減らしたい。」の思いでブログ執筆や子育てに関する悩み相談などを行っている。

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