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2022.10.29

不登校に無理解な父親が変わることはある?母親ができることは?【対談:児童精神科医×不登校支援塾長】

不登校中の子どもに高圧的な態度で接しったり、引っ張ってでも学校に行かせようとする父親。そんな言動に子どもの状況が悪化しないか、夫が変わることがあるのか悩む母親へ児童精神科医の三木崇弘さんと学習支援塾長の長澤啓さんが伝えるアドバイスとは?

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話を伺った方々

(写真左)三木崇弘さん児童精神科医

兵庫県姫路市出身。小児科後期研修ののち国立成育医療研究センターこころの診療部で児童精神科医として勤務。2019年4月よりクリニック、東京都公立学校スクールカウンセラー、児童相談所、児童養護施設、保健所など医療・教育・福祉・行政の各分野で臨床活動。2022年7月より地元である兵庫県姫路市にUターンし、社会医療法人恵風会高岡病院勤務。週刊モーニングで連載中の児童精神科を舞台にしたマンガ『リエゾン-こどものこころ診療所-』監修。


(写真右)長澤啓さん不登校支援塾ビーンズ塾長

福岡県出身。東京大学経済学部卒。大学在学中より、不登校・勉強嫌い・無気力に悩む中学生・高校生のための塾、「不登校支援塾ビーンズ」で講師を務める。現在は、自身の経験を活かし、毎月100件以上のやり取りを通じて保護者とのコミュニケーションに注力しているほか、塾長として講師の採用育成プランの策定から、受験対策の立案、経営企画などを行う。

父親が無理解、横暴に振舞う原因とは

自信を失い、自己否定感が強くなっている不登校中のわが子。母親として「心のケアや将来のためにできることはないかしら」と寄り添おうとしているのに、父親である夫は無理矢理学校へ連れて行こうとしたり、子どもの話も聞かずに叱責したり…。

不登校中の子も多く通う「不登校支援塾ビーンズ」の塾長である長澤啓さんは、「当塾へ相談に来てくださる親御さんの中にも、そのようなお父さんはいらっしゃいます」と話します。

「ただし、間違えてはいけないのは、子どもが不登校になったからお父さんがそうなったわけではないということです。元々あった気質が不登校をきっかけに明らかになったケースが多いですね」(長澤さん)

中でも多いのが、父親自身が両親から学歴至上主義の価値観などを押し付けられてきて、いわゆる勝ち組といわれるような経歴を持っている場合に、子どもにも同じ道を歩ませようとするケース。

「父親自身にきつい人生を送ってきた自覚があっても、ほかの方法(生き方)を知らないから、自分と同じ道を歩めない子どもに対してきつく当たってしまうんですよね」(長澤さん)

児童精神科医の三木崇弘さんも同じようなケースを見かけるそう。

「やっぱり、お父さんが自身の成功体験と方法論に固執してしまうところはあります。あとは、元々モラハラ気質の人であるパターンが多いですね」(三木さん)

また、子どもに対する夫の態度や不登校への無理解をきっかけに夫婦仲が悪くなっていくケースもありますが、それも元々、夫婦間で見ないようにしてきた相手の嫌な部分が噴出しただけかもしれません。

「使えない夫」は面倒な長男と思い諦める

では、不登校への無理解が顕著な父親とは、どのように関わるのがよいのでしょう。

実際の診療でも家庭を職場に例えて説明することがあるという三木さんは、「戦力にならない父親は、家庭でいえばややこしい長男、職場でいえば使いづらい新卒社員みたいなもの」と話します。

「家庭は人事異動のない部署、子どもは部下とみなしたとき、どうすれば職場が上手く回りそうか考えてみてください。夫が戦力にならない場合、それは何もできない新卒社員のようなものです。経験者はあなたひとり。そのとき、あなたは使えない社員(夫)にどんな役割を求めますか? 重要な仕事に関わらせようと思いますか? 結局、使えそうな部分だけ使っても、それ以外のことに関しては諦めるしかないんです」(三木さん)

夫を頼ることができないのは寂しい気もしますが余計なことをして問題が複雑になるよりはずっといいかもしれません。

「家庭の中に頼れる存在、安心をくれる人がいないことは、お母さんにとって非常に不幸なことですが、もっと不幸なのは、期待して裏切られることです。もちろん『無理にでも諦めたほうがいい』とは言いませんが、お母さんの気持ち的に割り切れた方がハッピーという場合もあります」(三木さん)

父親が「使える」のは受験のときなど

では、学力至上主義で育ってきた父親が“使える”ときというのは、どんな場面なのでしょう。

「当塾は受験対策も行っていますが、やっぱりコンサル系の仕事をされてるお父さんは特に心強いこともありますね。やっぱり受験は作戦が大事なので、家庭での学習を見守ってくれると力を発揮してくれます。我々も頼りにするところはあります。もちろん、お父さん自身が子どもに無理をさせないことの重要性を認識し、子どものペースを第一に考えてくれている場合に限りますが…」(長澤さん)

子どもと父親を離したほうがいい場合

割り切ることで母親の気持ちをやり過ごすとしても夫が子どもに強く当たる場合、子どもの心の傷が深くなりそうですが止めたほうがいいのでしょうか。

「止めたければ止めていいと思います。ただし、止めることが夫婦喧嘩に発展してしまいそうなら止めない方がいい。夫婦喧嘩は子どもの前でしないにこしたことはありません」(長澤さん)

自己否定感が強くなっている不登校中の子は、夫婦喧嘩を自分のせいだと思い、心を痛めてしまう可能性があります。

「一方で、明らかにお父さんのせいで子どもがゲッソリしていたり、部屋から出てこなくなったり、お父さんが視界に入る度にビクッとする場合は、祖父母の家に身を寄せるなど物理的に離れたほうがいい場合もあります」(長澤さん)

子のために動いた母が孤立する場合も

一方、母親は父親から子どもを守りたいと思って夫に言い返すなどをしたはずが、想定外の子どもの反応に傷ついてしまうケースがあります。

「お子さんが男の子の場合、子ども自身が父親に憧れているケースも多いんです。なぜなら、記事冒頭に出てくるようなお父さんは、社会的には成功していたり、仕事ができたりする人が多いからです。子どもにとっては、誇りでもあるお父さんが否定されると自分を否定されたように感じてしまいます」(長澤さん)

では、傷を負っているかもしれない子どもを守ったり、心をケアしたりするために声をかけるとしたら、どうすればいいのでしょうか。

「お父さんが熱くなっているときではなく、後でお母さんと子どもだけの時間を取り、お父さんを悪者にしないコミュニケーションをしてみてください。例えば、『お父さんのあの言い方は良くないよね』と本音を言った後に、『でも、お父さんもあなたのことを心配して言っちゃうんだろうね』とお父さん側へのフォローをいれます。そして、最後にはきちんと『私はあなたの気持ちを分かってるから』という子どもへの理解を伝えるといいのかなと思います」(長澤さん)

お父さんの言動に納得できない場合、「なぜ、夫のフォローをいれなくちゃいけないんだ」とお母さんはモヤっとしそうですが…。

「確かに『お父さんはひどいことをしてるのに、子どもはお父さんの方しか見ない』と孤独を感じるお母さんもいると思います。 ただ、子どもが父親に対して憧れをもてるのは、お母さんという安心できる存在がいるからこそです。人間は水や空気がなければ生きていけませんが、水や空気があることに感謝しませんよね。同じようなものかもしれません。感謝されるかどうか以前に、お母さんがいるから子どもが生活できているという大前提を忘れないでくださいね」(長澤さん)

不登校に無理解な父親も変われる

いつまで続くか分からない不登校。できることなら、父親も子どもや不登校を理解してくれて、一緒に子どもを見守っていけたら…と望むことは無理なのでしょうか。

「無理ではありませんよ。実際に考え方を変えていくお父さんの姿も見てきました。お父さん自身が子ども時代から植え付けられてきた価値観を変えることは簡単ではありませんが、不可能ではありません。お父さんの中には相手の社会的立場によって、話しを聞き入れる姿勢が違う方もいます。専門家としての肩書きがある人から話してもらうのはひとつの方法です」(長澤さん)

父親が変わるにしろ、諦めるにしろ、不登校の子を支える母親はひとりぼっちではありません。専門家に夫や子どもを任せるときも、夫や子どもから離れて楽になることも悪いことではありません。

「日本には『がんばればなんとかなる』みたいな文化がまだ残っていて、『私がしないといけないから』と、気合で乗り切ろうとするお母さんも多いんです。でも、気合いの問題ではないし、お母さんががんばってないからうまくいかないわけではありません。お母さん自身が夫や子どもと気持ち良く関わったり、諦めたりできるようなコンディションでいてください。そのためには、休みや気分転換が必要です。子どもや夫のことより優先するぐらい、お母さんが自分自身のことを優先してあげてくださいね」(三木さん)

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浜田彩

エディター、ライター、環境アレルギーアドバイザー。新聞社勤務を経て、女性のライフスタイルや医療、金融、教育、福祉関連の書籍・雑誌・Webサイト記事の編集・執筆を手掛ける。プライベートでは2児の母。

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