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2022.08.22

「主権者教育」最前線! 中学校で実際の選挙体験を味わう「模擬選挙」密着レポート

国や社会の問題を自分の問題としてとらえ、自ら考え、自ら判断し、行動していく主権者を育成する「主権者教育」。長年主権者教育に取り組み、ユニークな授業実践を行ってきたドルトン東京学園中等部・高等部社会科教諭の大畑方人さんは、2022年7月10日の参院選直前の7月6日に、同校の中学3年生社会科(公民)の授業で、生徒が実際の選挙体験を味わう「模擬選挙」を行いました。その様子をレポートします

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「模擬選挙」授業を行ったのは…

大畑方人さん
ドルトン東京学園中等部・高等部社会科教諭

1977年東京都目黒区生まれ。早稲田大学商学部および政治経済学部政治学科卒業。私立中学校・高等学校、都立高等学校勤務を経て、2021年度より現職。上智大学非常勤講師を兼務。主な関心分野は主権者教育、法教育、キャリア教育、ESD。高校公民科教科書『公共』(東京書籍)編集委員、国立教育政策研究所「評価規準、評価方法等の工夫改善に関する調査研究」協力、厚生労働省「労働法教育に関する支援対策事業」協力、国際パラリンピック委員会公認教材『I’m POSSIBLE』制作協力、NHK for School「昔話法廷」企画協力など。共著に『ライブ!主権者教育から公共へ』(山川出版社)

各党首の「第一声」をニュース映像や新聞記事から評価

2019年に東京都調布市に開校した私立の中高一貫校・ドルトン東京学園中等部・高等部。参院選(2022年7月10日実施)を目前に控えたある日、同校では中学3年生の公民の授業で、生徒が実際の選挙体験を味わう「模擬選挙」の授業が行われました。

模擬選挙の会場となる教室内には、模擬選挙推進ネットワークから取り寄せた各政党のポスターがズラリと壁に貼られ、授業を担当するのは、同校の社会科教諭であり、主権者教育の第一人者でもある大畑方人さんです。

大畑さんの話を真剣に聞き入る生徒たち

「今回の参院選では、物価高や円安への対応策、外交・安全保障政策が主な争点となっています」と伝える大畑さん。

続いて、前面のスクリーンに、各党首の“第一声”のニュース映像が上映され、各党首の第一声が掲載された新聞記事、ワークシート「党首たちの第一声を評価しよう!」が配布されました。

生徒たちは、それらのニュース映像、新聞記事から各党首の第一声を3段階で評価。「よい点」「いまいちな点」を記入するだけでなく、隣同士で意見交換を行います。

「自民党は、国際的に物事を考え、解決しようとしている」
「立憲民主党は、男性も女性も生きやすい世の中を作ろうとしているところがよいと思う」
「消費税のせいで給料などが減っているのが本当なら、れいわ新選組がやろうとしていることは大胆でよいと思った」
など、子ども達からは素直で率直な意見が飛び交います。

意見交換を行う様子

“マイ争点”を選んで各政党の政策を比較

続いて、NHK Webサイトにより作成された、下記8点の争点について各政党の政策がまとめられた資料が配布されました。

  • 経済政策
  • 新型コロナ対策
  • 外交・安全保障
  • 憲法
  • 社会保障
  • 子育て・教育
  • エネルギー・環境
  • ジェンダー・多様性

生徒たちは、8つの争点の中から自分が気になる2つの“マイ争点”を選び、選んだ理由をワークシートに記入します。

争点に対する生徒たちの意見例

  • 「経済政策」を重視する生徒
  • 「この25年間でサラリーマンの給料が上がっていないのにもかかわらず、税金からお金をもらっている人たちは、どんどん給料があがるのがおかしいと思う」
  • 「子育て・教育」を重視する生徒
  • 「少子高齢化をこれ以上進めないためにも、もっと子どもを生み育てやすい環境が整えばいいと思った」
  • 「外交・安全保障」を重視する生徒
  • 「ロシアのウクライナ侵攻など、今後戦争が起こったとときに、一般市民の被害を出さずに解決してほしい」

資料を読んだり友達とのディスカッションなどを通し、自ら考え、日本の現状や課題について自分の言葉で“マイ争点”を表現する姿に、頼もしさを感じました。

「このようなワークを通して、生徒一人ひとりがこれから社会で生きていく上での“判断軸”を育てていきたいと思います」と、大畑さん。

ワークシートを基に選挙の争点=現代日本が抱える課題を真剣に考える生徒たち

本物の投票用紙・投票箱に一票を投じる

各党首の第一声の評価、“マイ争点”による各政党の主張の評価を経て、いよいよ実際の投票に向け、生徒たちに選挙公報が配られました。

投票を前に、選挙公報を広げて候補者の顔や略歴を読み込む生徒たち。

インターネット上で、政策に関する質問に答えることで自分の考えに近い政党がわかる「参議院選挙2022ボートマッチ」も活用しながら、「選挙区」「比例代表」の投票先を絞り込んでいきます。

そして、教室前方に、市の選挙管理委員会から借りたという金属製の投票箱が置かれ、生徒たちに投票用紙が配られました。

投票箱も投票用紙も実際の選挙と同じものを使用しています

投票用紙はツルツルとしたさわり心地で鉛筆で書きやすい「ユポ紙」が使われていますが、「折り曲げてもすぐに開く特性があるので、投票用紙が折られて投票箱の中に入っても、開票のときには紙が開いた状態で回収できるため、開票作業がスムーズに進みます」と、大畑さん。

「あっ、本当だ。折ってもすぐに開く!」「鉛筆で書きやすい!」と、生徒たちは、投票用紙の感触を確かめながら、「選挙区」「比例代表」をそれぞれ記入し投票箱に投票しました。

投票終了後、大畑さんは、世代別の投票率をスクリーンにうつし、日本の若者の投票率が低いこと、高齢者の投票率のほうが高いことで、高齢者の影響力が強くなる「シルバーデモクラシー」について言及。

「投票を国民の義務にして、しない人に罰金を設けている国、平日に投票日を設けている国など、世界ではいろいろな国が投票率を上げるための工夫を施しています」と説明し、「私たちが住む日本の若者の投票率をあげるにはどうしたらよいか、自由な発想で考えてみましょう」と生徒たちに呼びかけます。

すると、生徒たちからは『若者が興味をひくような政治内容をアピールすることに加え、SNSを活用するのが効果的だと思う』『YouTubeやTikTokを使って演説したり、ネットで投票できるようになれば選挙のハードルがさがってよいと思う』『投票に行った人が、何かしらの特典を得られるような仕組みをつくればよいと思う』などの意見が出ました。

生徒たちも選挙をわが事として真剣に自分の1票と向き合いました

参院選終了後、模擬選挙の結果を公表

模擬選挙を行ってから8日後、実際の参院選が終わったあとの7月14日。模擬選挙の授業を受けた生徒全員の投票結果を発表し、参院選を振り返る授業が行われました。

実際の選挙では、125議席のうち、自民党が63議席を獲得して圧倒的な勝利をおさめましたが、ドルトン東京学園の中学3年の生徒たちによる模擬選挙では、自民党よりも野党に票が集まり、実際の選挙とは異なる結果が出たことが明らかになりました。

ちなみに、「選挙区」の得票順位も「比例代表」と同様、実際の選挙とは異なる結果が出ました。

今回、選挙期間中に安倍晋三元総理が銃撃に遭い死亡する事件が発生しましたが、「報道を見る限り、容疑者はある宗教団体に恨みをもっていて、その宗教団体と安倍元総理が深い関係にあると考えて銃撃したとされています。しかし、今回の事件を踏まえ、民主主義の根幹である言論の自由の大切さ、そして、それを封殺することは許されるべきではないということを改めてみなさんに伝えたい」と大畑さん。

「私はあなたの意見には反対だ。だがあなたがそれを主張する権利は命を懸けて守る」という、フランスの哲学者・ヴォルテールが残した言葉を紹介。

言論の自由、選挙は民主主義の根幹です。私たち国民が、『民主主義の担い手』であり、『民主主義の護(まも)り人』でなければならない」という言葉で授業をしめくくりました。

今回の模擬選挙授業を通し、生徒たちからは次のような声が聞かれました。

「自分が18歳になったら、選挙に行くと思います。自分の一票で何が変わるかわからないけれど、投票することで、政治への関心を伝えられると思うから」
「事前によく調査をしてから選挙に足を運びたいと思う」
「目立った政策を打ち出している政党があれば、選挙に行き投票したい」

「単に投票行動を促すだけでなく、社会の問題を自分の問題として捉え、自ら考え判 断し、行動していけるような 、自分の軸をもって価値判断ができるような生徒を育てていきたいと思っています」 (大畑さん)

生徒たちが、選挙体験を通して「自分たちは社会の一員である」ということをリアルに感じ、自ら考え、発言し、対話を重ねる姿に、希望を感じました。

長島 ともこ

長島 ともこ

フリーライター、エディター、認定子育てアドバイザー。妊娠&出産、育児、教育などの分野の企画、編集、執筆を行う。PTA活動にも数多く携わり、その経験をもとに、書籍『PTA広報誌づくりがウソのように楽しくラクになる本』『卒対を楽しくラクに乗り切る本』(厚有出版)などを出版。「PTA」「広報」をテーマに講演活動も行う。2児の母。

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