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2022.03.07

学力・情緒力も向上する! 家庭でできる子どもの語彙力を増やす方法

わが子と会話をする中で、「なんだか語彙力が乏しいなあ」と感じたことはありませんか? 子どもはこんなものかな…と思いつつも、語彙力を増やしたい、鍛えたいと思う親も多いのではないでしょうか。現役小学校教師・須貝 誠さんに、ドリルや問題集に頼らずに家庭でできる語彙力アップの方法を教えてもらいます。

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子どもの語彙力は親の力で決まる!?

語彙力は、学力と関係します。考える力の基礎になります。そして、自分の思いを言葉で説明できるようになるため情緒が育ちます。

学校でも語彙力に特化した授業を行うことはありますが、頻度はあまり多くありません。そのため、子どもの語彙力アップには親の力も影響する部分が大きいと考えられます。

家庭では、子どもは親から言葉を聞く機会が多いですよね。子どもは、親が話す言葉からも学んでいきます。

親が子どもに語彙力をつけるためには、次のような方法が考えられます。

  1. 語彙力を高めるための学校の授業を、親がまねして教える。
  2. 辞書引きマスターになる。
  3. 子どもと一緒にドラマやアニメを見る。

次章以降で、詳しく解説していきましょう。

【子どもの語彙力を増やす方法】①学校の授業を親がまねして教える

小学校では言葉遊びやゲームなどを取り入れながら語彙力の授業を行うことがありますが、形容詞を教える「“~い”、“~しい”の授業」が有名です。

形容詞を教える授業を家庭で実践する方法

グループごとに、「〇〇〇しい」という言葉を出させた。①ほしい、②悲しい、③ねたましい、④いとしい、⑤いやらしい、⑥汚らしい…全部で85の言葉が出た。教科書の名詞につけて読んでいった。爆笑のうずであった。子どもたちの名前にあてはめていった。「いやらしい向山」「汚らしい横山」というようにである。ぴったりする子がいるもので、そのたびに教室はどっと湧いた。

向山洋一『授業の腕をみがく』(明治図書)より

今の時代、子どもの名前を当てはめることに抵抗がある人は多いかもしれません。学校では、子どもの名前ではなく教師の名前や子どもがよく知るキャラクター名を当てはめて行う教師もいます。

この授業は、親子でもできるものです。

子どものノートに“〇〇い、〇〇しい”と、最後に“い”か“しい”のつく言葉を書かせます。子どもの中には「オロナミンシー」など名詞になるものを書く子もいます。一度、認めてあげてから「仲間分けするよ」と言い、形容詞だけを親が集めてあげましょう。後は、学校の授業と同様です。

最後に「物の状態や様子を表す言葉で、最後が“い”や“しい”で終わる言葉を形容詞と言うんだよ」と教えます。形容詞にならないものもありますが、それは特別なものとして、機会があるときに教えてあげても良いでしょう。

遊びを通して、子どもにたくさんの形容詞を教えることができます。

四字熟語を教える授業を家庭で実践する方法

「何でもいいから、四字熟語を集めよう」と指示を出します。漢字四字なら何でもOKで、辞書を使うのもOK。それを、黒板に書かせます。そして、集めた四字熟語を使って文を作らせるのです。

『学級集団形成の法則と実践-学級通信アチャラ』(向山洋一著・明治図書)で挙げられていた四字熟語作文を例にすると、

「須貝誠様 天才少年 美顔美男 毎日毎日 百点満点  百点少年  安心帰宅」

といったように、ユニークな四字熟語作文が完成します。

ある教師のクラスの子どもが作った四字熟語作文も、紹介しましょう。

  • 山本花子 天才少女 毎日毎日 百点満点 東京大学 一発合格
  • 西岡先生 幼少時代 容姿端麗 頭脳明晰 成績優秀 証拠皆無
  • 高橋仮名 火事発見 電話通知 現場急行 危機一髪 安全消化 安心帰宅

子どもたちは、四字熟語を集める段階からその意味にも自然と触れることができます。意味が分からないと、作文を書くことができないからです。結果的に、四字熟語の知識が増えるのです。

四字熟語の作文の授業も、そのまま家庭で実践できます。

最初に、“熟語とは何か”を教えます。四字熟議は4つの漢字でできた語句であること、2つの漢字なら二字熟語、3つなら三字熟語ということも教えましょう。

あとは、学校の授業と同じです。ただし、四字熟語を集めるだけで時間がかかることもあるため忙しい親には負担に感じるかもしれません。その場合は、2日に分けて行っても良いでしょう。教師の中にも、2時間分を使って授業する人は多くいます。

【1日目】できる限りたくさんの四字熟語を集めて、ノートに書かせます。四字熟語を探すことに時間をかけた方が、作文が作りやすくなります。また、多くの四字熟語の意味を知ることもできます。

【2日目】四字熟語作文の例を示してから、子どもに書かせましょう。四字熟語の意味が分からないと作文が書けないため、子どもは自然と四字熟語の意味を覚えていくことになります。

学校でどのような授業が行われているのかは、TOSSランドなどでも調べることができます。検索窓に“語彙力”、“語句”、“言葉”、“熟語”などと入れてみてくださいね。

【子どもの語彙力を増やす方法】②辞書を引く習慣を身に付けさせる

語彙力をつけるためには、子どもが国語辞典を使えるようになることも大切です。

学校の授業では、辞書の使い方を教えた後に誰が早く引けるかを競う辞書引きコンテスト」をすることがあります。これは、辞書を引くことに慣れさせるのが目的です。

まず、教師が子どもに引かせたい言葉を一つ指定します。早く引けた子を1位から10位くらいまで教師が名前を呼びます。早く引けた子は、まだ引けていない子に引き方やページを教えます。そして、クラスみんなでどんな意味の言葉だったかを確認。これを繰り返します。

漢字辞典でも同じように行います。漢字辞典で引かせるときは、画数・部首・読みのどの方法でどんな方法で引いたかを確認します。

家庭で行う場合は、親が子どもに引かせたい文字を指定して何秒で引けるかチャレンジさせてみてください。

また、電子辞書も使えるようにしてあげると良いでしょう。電子辞書では、調べた言葉の類似語もすぐに調べることができます。

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本や新聞に出てくる言葉を辞書で調べる

絵本や漫画、雑誌、新聞などを読むときも、辞書を活用します。

『子どもの語彙力を伸ばすのは、親の務めです』(齋藤 孝著 角川書店)では、「難関中学を受験する子どもは朝日、毎日、読売などの小学生新聞を読んでいる割合が高い」と記載されています。

語彙力の高い子どもは新聞を読み、なおかつ意味の分からない言葉を辞書で調べます。小学生新聞は漢字にルビが振ってあるので読みやすく、語彙力をつけるのには最適なテキストになります。

『子どもの語彙力を伸ばすのは、親の務めです』では、「新聞の記事を切り取り、ノートに貼り付け、その横に記事を要約した文と自分の意見や考えなどを書く」ことも良いと解説されています。「ひとつの言葉から枝葉のように他の言葉につながり、言葉の意味を理解し覚えていけるようになるから」です。

新聞以外でも、絵本や漫画、雑誌などでも同じようにできます。漫画の場合は、その漫画を文章化してから行うと良いでしょう。

ちなみに、辞書は子どもの机の上だけでなく、テレビのそばやリビングなどにも置いておくのがおすすめ。子どもが分からない言葉に出合った時、すぐに手を伸ばせるからです。

辞書で調べた言葉には付箋を貼る

京都府京都市の立命館小学校では、小学1年生から辞書引きを実践させています。

どの教科の授業でも、常に机の上に辞書を置かせておきます。分からない言葉はすぐに辞書を引き、引いた言葉が出ているページに付箋を貼らせます。

続けていくと辞書は付箋だらけになりますが、辞書に付箋を貼ることには

  • 自分で辞書を引くことで、言葉の意味が定着しやすくなる。
  • 他の子との競争意識が生まれるため、辞書引きへの意欲が高まる。
  • 辞書をどんどん引くことで、語彙力が高まる。

といったメリットがあります。辞書で調べた言葉に付箋を貼るのは、家庭でも簡単にできることです。

私が中学生のときの国語の先生は、1時間かけて言葉の意味を教えてくれました。教科書の説明文を1時間かけて先生が読んだり、生徒に読ませたりしていました。その時「次の時間までにこの言葉の意味を調べて来るように」と言葉の横に線を引き、番号を付けておくように指示されました。

ノートには番号と辞書で調べた意味を書きますが、辞書によっては載っていない言葉もあったため2冊ほど使って調べました。

次の国語の時間には、調べてきた意味を黒板に書かされました。教科書の文章を読みながら課題になっていた言葉の意味が合っているか、黒板に書かれた内容と照らし合わせます。中には、辞書の説明自体に難しい語句が使われていることもあり、「その語句の意味も辞書で調べないとダメだ」と教わったことを覚えています。

辞書に付箋をつけた後、自分なりのノートを作るようにすると、より理解が深まります。自分だけの「マイ国語辞典」ができあがるのです。

余裕があれば、調べた言葉(四字熟語や慣用句なども含む)を入れた例文を作らせてみるのも良いでしょう。私が中学生時代に作っていた「語句調べのノート」(下図)を例に、ぜひ実践してみてくださいね。

【子どもの語彙力を増やす方法】③親子でドラマやアニメを見る

子どもと一緒にドラマやアニメを見るというのは、普段から行っている家庭も多いことでしょう。全く“勉強感”がない行動でも、少しのテクニックで語彙力を高めることができます。

子どもと一緒にドラマを見るというのは『子どもの語彙力を伸ばすのは、親の務めです』の著書、齋藤 孝氏が提案していること。大人の語彙に慣れることで、語彙を増やすことができるというのです。

まず、子どもにドラマや漫画、アニメなどに出てきた分からない語句を辞書で調べさせましょう。その後、ストーリーを要約させます。ストーリーに対する子どもの意見や考えなども聞いてみるのも良いですね。

親も意見や感想を話したり、子どもの意見や感想に対してコメントしたりしながら会話します。話の中で重要なキーワード(最も大切だと思う言葉や主題につながる言葉)を入れて、説明させることができればさらに良いでしょう。

余裕があれば、意見や感想をノートに書かせてみてください。親子で本を朗読した後でも同じようにできます。

このように、“会話”を通して子どもに親が語彙力をつけてあげることができるのです。

間違った言葉遣いを正すことも語彙力アップの要素に

わが子の語彙力も気になるけれど、間違った言葉遣いが気になる親もいるのではないでしょうか。

テレビ番組やYouTubeなどで変な言葉を覚えてきたり、「マジ」「キモい」などの若者言葉を使ってきたり…。

子どもの語彙力を伸ばすためには、親の接し方や環境も大切です。ここでいう環境とは子ども部屋などの物質的な環境ではなく、人間関係的なこと。子どもは、話し相手の言葉から影響を受けることもあるからです。

まずは、

  • 絶対に許せない言葉
  • 大目に見てあげる言葉

の線引きをしておきましょう。

どこまでが許せて、どこからが許せないかの判断はなかなか悩むものですが、

  • 相手の自尊心を傷つける言葉
  • 命を軽く扱う言葉

は、絶対に許してはいけない言葉だと私は考えます。

例えば「死ね」「殺す」といった言葉を子どもが言ったときには、その場ですぐに厳しく叱ります。また、その言葉を使った理由を聞いてあげることも大切です。そして、思ったこと全てを口に出して良いわけではない理由も教えてあげます。

絶対に許せない言葉以外は、それほど気にしない方が良いと考えます。親が反応し過ぎると、子どもは面白くなって逆にどんどんエスカレートしてしまうこともあるからです。

もちろん、子どもにテレビ番組やYouTubeを見せないという手もあります。しかし、時代的に全く見せないというのは難しいものですし、中には子どものためになる情報もたくさんあります。

だからこそ親が「これだけは絶対に許せない」という言葉を決めておき、毅然と対応することが大切なのです。

  1. 語彙力を高めるための学校の授業を、親がまねして教える。
  2. 辞書引きマスターになる。
  3. 子どもと一緒にドラマやアニメを見る。

この3つの方法を家庭で取り入れることで、子どもの語彙力アップが期待できます。3つ全てを取り入れるのが難しい場合は、どれか一つでも良いので試してみてくださいね。

須貝 誠

東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/

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