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2020.08.17

小学生の国語力を高めるには? 苦手な問題別に国語力を高める勉強法を解説します

小学校低学年の頃は、「国語力」について子ども間で差を感じることはそれほどなかったのではないでしょうか。しかし、3年生になると授業の内容もグッと難易度を増し、得意苦手の差が顕著に出てくることもあるようです。国語力は読解力が必要なため、「本を読もう」というアドバイスはよく見かけますね。しかし、そもそも読書が嫌いな子、読書をしても国語力に生かせていないという子どもも少なくありません。今回は、現役教師である須貝 誠さんに「国語力」について解説してもらいます。

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そもそも、国語力とは何なのか?

そもそも、「国語力」とは何を意味しているのでしょうか。

新学習指導要領では、「国語の特質を理解し、適切に使うこと、人との関わりの中で伝え合う力を高めて思考力や想像力を養うこと、国語の大切さを自覚し、国語を尊重してその能力の向上を図る」と提示しています。

「国語を適切に使う」ためには、漢字力や語彙力が必要になります。「人との関わりの中で使う力を高めて思考力や想像力を養う」ためには「表現力」が必要になります。「国語を尊重する」ためには、「読解力」も必要になるでしょう。読解を通して考え、感じ、想像することができるからです。

私は、「国語力」を次のように捉えています。

  1. 漢字力…読み・書き
  2. 語彙力…語句の意味・慣用句・ことわざ・四字熟語
  3. 表現力…情報の受信発信整理・作文・スピーチ
  4. 読解力…説明文・物語文・随筆文・読書
  5. 記述力…問題文への正確な回答

子どもの国語力が低下? 国語力が必要な理由とは?

昔に比べて子どもたちの国語力が低下しているという話は、保護者の皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか。結論から言うと、私は低下していると考えています。

2019年の「PISA国際学習到達度達成調査」によると、日本の高校生の読解力は15位と報告されています。PISA(ピサ)とは、世界79ヵ国で3年ごとに行われる国際的な学力調査のこと。前回(2016年)は8位、前々回(2013年)は4位という結果からも年々、子どもたちの国語力が低下していることが分かります。

子どもたちとの何気ない会話でも、国語力の低下を感じることがあります。

授業中によくある会話です。「先生! トイレ」。もちろん、意味はすぐに分かります。授業中に、トイレで用を足しにいきたくなったのでしょう。しかし、これは正確な表現ではありませんよね。私は、「先生! トイレ!」と言われた場合、笑顔で言い返します。「先生はトイレじゃないよ」と。すると、子どもは笑いながら「トイレに行っていいですか」と言い直します。あるいは、言い直させます。ちなみにお手洗いにいくことを“お花を摘みに行く”、“雉を打ちに行く”とも言いますね。このようなことも、機会があれば教えています。これは、周囲にトイレに行くことを想像させずその場を離れることを表現する言葉。

知っている語句が増えれば表現の方法が増え、表現力をつけることにもつながります。

学校のテストでは“かっこの中にア~ウの記号を書きなさいと書いてあるのに、〇を付ける子”、“一文で答えなさいと書いてあるのに単語だけしか書かない子”なども見受けられます。問題文の意味が理解できていない、指示通りに答えられていない子が多くいます。漢字や語句の意味、言葉の決まり(文法)の問題にはしっかり答えられているのに、記述問題のみが空欄という子も少なくありません。思考力・読解力はあっても、表現力が低下していると感じることも多くあります。

国語力も重要な文章問題のコツについては、以下の記事で解説しています

【小学4・5・6年生の算数】つまずきやすい文章問題の解き方・教え方のコツをベテラン塾講師が解説
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算数の文章問題が苦手なわが子。親からすると「なぜ分からないのかが分からない!」ということはありませんか。計算問題はできるのに文章問題になると解けないのはなぜなの.....

国語力が低下した背景

では、国語力が低下した背景には何があるのでしょうか。文部科学省は、「子どもたちの言語環境が急に変わり、読書などで長文に触れる機会が減った」と指摘しています。今の子どもたちの多くがSNSなどを多く使い、長文に触れない、読書する機会も減ったから国語力が低下したと言われています。

こうした背景も国語力の低下につながっているとは思いますが、私は他にも国語力が低下している原因があると考えています。教師による国語の授業の仕方も、子どもの国語力の低下の原因だと考えています。

小学校の国語の授業参観で多いのは、“発表形式”のもの。子どもたちが調べたことをグループごとに発表させる授業です。わが子の活躍を見たい保護者の立場になれば、全員の子どもが保護者の前で活躍できるためこれで良いのかもしれません。しかし、国語力をつけるという点から考えると怪しいもの。発表までに、教師がどのような指導をしてきたのかまでは見えません。

また、普段の授業でも次のような物語文の授業が多く行われています。

「この時のAさんは、どんな気持ちだったと思いますか」と教師が問い、子どもたちは答えます。

 「私は、悲しい気持ちだった思います」

 「いいですねえ。他にありますか」

 「悲しいとも思うけど、少しはうれしさも混じっていたと思います」

 「なるほどね。それもあるかもね」

このような感じで、子どもの答えをすべて正解として扱ってしまう授業を見たことがある保護者もいるのではないでしょうか。

漫画風のプリントが用意され、吹き出しの中に気持ちを書かせる授業も多く行われています。この場合、吹き出しに書いたこと全てが正解になります。物語文を劇にして教える授業もあります。劇をさせながら実際に体を動かし、登場人物の気持ちを考えさせるのです。吹き出しに気持ちを書かせる授業も劇にする授業も、本文からは離れた授業になってしまうことがよくあります。

筑波大学附属小学校の先生だった白石範孝氏は『国語授業の教科書』(東洋館出版)で、イメージと感覚にだけ頼る授業は今でも多く行われていると述べています。イメージと感覚だけに頼る授業とは、一言でいうと“書かれている文章から離れて自分の想像だけで答えさせる授業”と私は捉えています。

このような授業では、“読解力を身に付けるために必要な技術”を子どもが習得することはできません。当然、国語力が伸びるはずもありません。

千葉大学の附属小学校教師・大学講師・教育委員歴任などの経験がある、植草学園大学発達教育学部名誉教授・野口芳宏氏は「授業では、子どもに向上的変容が見られなければならない」と言っています。“向上的変容”とは授業で子どもが物語や説明文を読むための技術を手に入れるなど、授業を受ける前と後で成長がなければならないということ。

私も賛成です。先に述べたような吹き出しに気持ちを書く授業、劇をするだけの授業、本文から離れてしまうような授業、何でも正解になってしまう授業では国語力は身に着きません。

このように、教師が国語の授業で子どもに何を身につけさせたいのかを意識して授業していないことが意外と多いのです。では、子どもたちの国語力が高かった時代は、国語力をつける授業が行われていたのでしょうか。

野口芳宏先生は、「国語の授業は学力をつけていないと思われています。算数なら通分を勉強したと言いますよね。でも、国語の場合は、ごんぎつねを勉強したというだけで、ごんぎつねを通してなにを勉強したかが言えないのです。また、教えている先生にどんな学力をつけたのかを聞いても答えられないことが多いです」と言っています。野口先生が現役だった昔の時代のことですから、昔も国語力をつける授業は少なかったことが分かります。

しかし、そうするとなぜ今の方が国語力が低いのかという疑問も出てきますよね。私は、国語の授業以外、社会的環境で国語力をつけていたと考えます。今のように携帯電話の絵文字一つで相手に伝えることができなかった時代には、言葉で伝える機会が多くありました。親だけでなく、おじいちゃん・おばあちゃん・近所の人…いろいろな世代の人と触れ合う機会が多く、それが表現力の豊かさにつながっていたこともあるでしょう。

言葉で伝える機会や人との交流が少なくなってきている上に国語力をつける授業が行われていないのであれば、子どもの国語力を伸ばすことは難しいでしょう。もちろん、子どもに国語力をつけようと意識しながら授業を行う教師もいますが、教師の国語の授業の仕方も国語力の低下につながっていると私は考えています。

国語力はなぜ必要なのか?

ところで、そもそもなぜ国語力が必要とされるのでしょうか。

一般的にいわれるのは、“国語力は全ての教科の基礎になるから必要だ”ということ。

確かに、テストや受験などで漢字が読めなかったり語句の意味が分からなかったりすれば、問題で何を問われているのかすら分かりません。しかし、それだけでは国語力の必要性に納得できる理由というには弱いかもしれません。

文部科学省の「これからの時代に求められる国語力」では、「知的活動の基礎・感情や情緒の基盤・コミュニケーション能力の基礎・文化の基礎・社会活動の基本のコミュニケーション・国際化の進展・情報化の進展」に対応できる力を養うことが大切だと言っています。その上で、「多様で円滑なコミュニケーションを実現するためには、これまで以上に国語力が求められることは明らかである」とも言っています。コミュニケーション能力は、社会で生きていく上で必要不可欠ですよね。

例えば、学校で子ども同士がけんかをすると、すぐに手を出す子がいます。最初は言葉で言い合っていますが、言葉に詰まると手が出てしまうのです。手が出てしまうのは、国語力のひとつ“語彙力”・“表現力”の乏しさが一因であると私は考えています。言葉で相手を納得させることができないため、思わず手を出してしまうのです。

また、私は国語力は豊かな人生を送るために必要だとも考えています。代々木ゼミナールの講師である出口注氏は、「国語力で人生が変わる」とまで言っています。 

私が高校生時分の話です。家の本棚にあった『話し方で性格が変わる』という本を見つけ、読んでみました。本の中で日本話し方センターの所長であった故・江川ひろし所長の「江川ひろしの話し方・生き方教室」があることを知り、「言葉の前に心あり」という講和を聞きました。話すための技術だけを練習するのではいけない、言葉を発する前に心が動く生き方も学ばなければいけないという内容でした。

当時、決して国語力が高いとは言えなかった私ですが、こうして小学校の教師、塾では国語を教える講師にまでなれたのです。

文字を読むことができれば本を読む楽しさも分かってきます。映画を見て登場人物の気持ちも想像できるでしょう。さらには、表現し相手に伝える楽しさも感じられるでしょう。自分が考えたことなどを劇にして伝えるということもできます。本を読む、映画を見るだけでなく、自分で物語を書くことにまで興味が広がってくるかもしれません。舞台の上である劇を演じ観客に感動を与えることもできるでしょう。国語力は、子どもの可能性を広げること、人生の豊かさにもつながると思うのです。

国語力を伸ばす方法を解説します!

では、国語力を伸ばすには具体的にどうすれば良いのでしょうか。

国語の問題の項目別に解説しているので、お子さんの苦手克服の参考にしてみてくださいね。

  • 漢字力
    漢字力については私が以前、執筆した記事を参考にしてください。

    漢字の覚え方にはタイプ別のコツがある 小学生でも覚えられる漢字学習のステップとは」 

  • 語彙力
    本文を読みながら分からない単語に線を引くと同時に、単語の横に番号をつけていきます。ノートにも番号を書き、その下に辞書等で調べた意味を書いていきます。この時、2つ以上の意味がある言葉は本文に合う意味のものを書きます。

    全部書けたら、ノートに書いた意味を見ながら本文を最初から最後まで読み直していきます。文章を読みながら、辞書で調べた言葉の意味を覚えます。

    その時、言葉からイメージを広げながら覚えていきます。例えば、紙幣というと“紙”をイメージすることができます。貨幣がお金だと分かっていれば“紙”・“お金”とイメージできます。紙幣が“紙のお金”=“お札”だと分かるというようにです。単語だけを見て意味が言えるようにする、意味だけを見て単語を言えるようにすることにも挑戦すると良いでしょう。これは、私が中学生だったときに受けた授業と私が実際に家でやっていた勉強方法です。

    小学生の多くの子が苦手とするのが、ことわざ・慣用句・四字熟語。しかし、知っておくとスピーチ力や作文力につながります。ことわざ、慣用句では、使われている語句からイメージを広げていくと覚えやすくなります。

    「立つ鳥あとをにごさず」であれば、“飛び立っていく前に、にごさない”→“去る前にきれいにする”→“最後にきちんと片付ける”のようにイメージができますね。

    四字熟語であれば、多くの四字熟語を集めて作文にしてしまうという遊びのような学習を取り入れてみるのも良いでしょう。例えば、「須貝誠君 天才少年 美顔美男 危機一髪 東大合格 安心帰宅」のような作文を作るのも面白いですよ。これは、私が先輩教師から教わった方法です。例文は、本来の四字熟語でないものを盛り込んでもOK。このような楽しい作文ができれば、四字熟語も頭の中に残りやすくなることでしょう。

     

  • 表現力
    表現力をつける前に、観察力・思考力をつけておくことが大切です。作文やスピーチには、必ず自分の思いや考えがあるはずです。「書くことがない」と言う子どもは多くいますが、普段から観察力・思考力をつけておけば書くことも見つかります。

    例えばある人がバスに乗ろとしてドアの前で立っていたのに、バスのドアが開かずバスが走って行ってしまったとします。こんな様子を見た時、「どうして運転手はドアを開けてあげなかったのだろう」「お客さんが見えていたのに開けなかったのかな」「時間が迫っていたのかな」「自分が運転手だったらどうするかな」などと考えます。

    自分が見たこと(観察力が必要)、経験したことから考える(思考力が必要)ことで、作文やスピーチへの苦手意識の克服へとつながります。

     

  • 読解力
    【説明文の読み方】
    ①何度も出てくる言葉に注意する。 → これで、話題や主題をつかむ。
    ②指示語・接続語の働きを知る。 → 指示語が何を指しているのかとらえる。
    ③問の段落と答えの段落をつかむ。
    ④主題に至る理由が書かれているところを探す
    ⑤主題に迫るために具体例や体験談・理由が書かれているところを見つける

    【物語文の読み方】
    ①いつ、どこで、誰が、どうしたをつかむ
    ②登場人物の心情をつかむ(出来事があって心情がでてくる、この繰り返し) → うれしいなど直接書かれているところ・会話文・登場人物の行動や表情・情景などから考える
    ③登場人物の性格をつかむ → 心情のつかみ方と同じ・性格は1つでなく2つ以上になることもある

     

  • 記述力
    問題文の内容を正確に理解していても、問われていることに正確に答えることができないと読解力がないと判断されてしまいかねません。記述問題ではどのように答えれば良いのか見てみましょう。

    ★“書きなさい”という指示なら、本文に使われている通りに書く。“もの”とあれば“もの”、“モノ”とあれば“モノ”と書く。“もの”という漢字を知っているからと言って「物」と書いたら×になる。
    ★理由を聞かれたら、文末を“から”か“ため”にする。
    ★“〇文字以内で答えなさい”という問題には、指示がなければ“。”や“、”も一文字となる。答えの文中に例えや比喩を使わないで書く。“~とはどういう意味ですか。分かりやすく説明しなさい”という問題では、本文中に例えや比喩があっても“抜き出しなさい”という問題でない限りは“答えの中に入れてはいけない”ということ。指定された文字数を超えてしまった場合は、答えの主題に遠いものから削る。指定された文字数より不足する場合は、答えの主題に近い具体例をつけ足す。

読書の習慣も、国語力につなげることはできる!

「国語ができるようになりたかったら、本を読みなさい」という丸投げ感のあるものでは、国語力は伸びません。これまで解説したように、国語力を身につける上で必要な知識や技術が身につかないからです。

もちろん、本を読むことや読書の習慣をつけるのは悪いことではありません。

読書を国語力に結び付けるには、どのような点が必要なのか考えてみます。

  1. 読書という観点で本を読むなら → 自由に読む
  2. 国語力をつけるという観点で本を読むなら → 語句のイメージを広げる

1については、自由に読ませてOK。

一方、2については“自由に”というわけにはいきません。物語文など本の書き出しをノートに写してみるだけでも語句のイメージが広がります。これも、私が先輩教師から教わった方法の一つです。読む時に「この本に指示語がいくつあるか探してごらん。どのような指示語があるかな」とノートなどに作業させても良いでしょう。同じように、接続語探しなどもできますよ。

2については、学習・作業のために本を使うと捉えた方が良いかもしれません。読書を利用した学習・作業を通して、国語力をつけるのです。この方法であれば、親が本を選ばずとも子どもが選んだ本や国語の教科書でも可能です。

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須貝 誠

東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/

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