元校長が教える! 小学校の担任の決め方。もし担任に不満があったら…?
わが子の担任が変わる時、ワクワクする気持ちと同時に抱くのが不安な気持ち。担任との相性に影響されやすい子の親にとっては、不安の方が大きいかもしれません。そして、ふと思うのは「担任って、どうやって決めるの?」という疑問。小学校長を長く務めたCさんに、一般的な小学校の人事について教えてもらいました。
目次
小学校の担任の決め方。校内人事はこう行われる!
多くの公立小学校では、奇数学年(3年・5年)に進級するタイミングでクラス替えが行われます。そして、同時に担任も交代となります。
「今度は、良い先生が担任になるといいな」
「良い先生だったから、持ち上がりで担任になってほしい」
といった担任に対する思いは、子どもより親の方が強いかもしれません。だからこそ知りたい、小学校の担任の決め方。謎のベールに包まれた校内人事について、詳しく見ていきましょう。
小学校の担任の決め方を含め、校内人事の最終決定権を持つのが校長。元小学校長・Cさんの学校では、以下のような流れで担任人事が行われていました。
【1】学校・学年・学級経営の課題と対策の明確化
学校経営・学年経営・学級経営の取り組みについての課題と対策についてを明確にし、職員会議で共有します。
参考にするのは、
- 学校内部評価
- 学校外部評価
- 第三者評価
- 全国学力学習調査結果
などの結果です。
その後、各教員の育成面談を個別に行い、学級経営の評価と教員自身の成長と課題および対策について校長による助言が行われます。
【2】各教員への希望調査
校長が示した次年度の学校経営の目標・指針をもとに、個別に各教員の希望調査を実施。参考資料作成のためではありますが、各教員が希望する学年の希望についてを第三希望まで、理由とともに記入してもらいます。
【3】教員の力量から学年主任を決定
校長・教頭・主幹教諭(校長・教頭の補佐役)で会議を実施。
教職員人事評価ならびに勤務評価をもとに、各教員の
- 学級経営力
- 授業力
- 生徒指導力
の3点を中心に力量を検討。そこから、学年主任を決定します。
【4】教員間の人間関係を調査
教頭・主幹教諭・学年主任・養護教諭・事務職員等から、教員同士の人間関係について情報収集を行います。
【5】各学年の実態を調査
各学年の実態を調査、課題を明確にした上でそれを克服できる人員配置を検討します。教員の男女比や年齢構成なども検討材料となります。
次章「クラス分けも気になる…担任配置と関係性はある?」で解説しますが、各学年の実態を調査する上で重要な要素となるのが各児童の情報データです。
【6】各教員への打診
校長・教頭・主幹教諭で企画委員会を開き、各学年主任・各担任配置の素案を作成。新学年主任に打診を行い、運営委員会(企画委員会・学年主任・事務職員)で素案の練り上げを行います。その後、各教員に打診を行い職員会議を開催。
教員全体で協議した上で、最終的な決定を下すのが校長です。
Cさんによると、翌年度の担任人事は1月から検討に入るそう。想像以上に、綿密な配慮と検討を重ねられていることが理解できます。
クラス分けも気になる…担任配置と関係はあるの?
担任の変わるタイミングと同時に行われることが多いのは、クラス替え。子どもたちにとっては、担任交代よりもクラス分けの方が大事なイベントかもしれません。
また、親にとっても
「仲良しの〇〇くんと同じクラスになるといいな」
「〇〇さんのお母さんは苦手だから、同じクラスになってほしくないかも」
など、気になる要素はあるのではないでしょうか。
多くの小学校でクラス替えが行われる学年は新1年生、新3年生と新5年生。奇数学年に進級するタイミングでクラス替えが実施されますが、新1年生と上級生とではクラス分けの方法が異なります。
新1年生のクラス分けの方法
1月下旬〜2月下旬の間に、小学校の幼稚園・保育園等の連携担当者と養護教諭とともに次年度入学予定者が在籍する幼稚園・保育園等を訪問します。
その際、幼稚園・保育園等から提供してもらうのが
- 児童の氏名
- 児童の保護者名
- 児童の生年月日
- 児童の性別
- 児童の学力
- 児童の健康状態
- 児童の問題行動の有無
- 児童および保護者の家庭環境
- その他、配慮すべき事項
などの情報データです。基本的な内容はもちろん、小学校側で把握しておきたい細かな点も確認しておきます。これらの情報データは担任決めの際にも重要な要素となります。
同時に、小学校ごとに用意してあるクラス替えのマニュアルを渡し、幼稚園・保育園等にクラス分けを依頼します。その後、小学校の卒業式、幼稚園・保育園等の卒園式が終了する3月下旬に幼稚園・保育園等の年長児担当者・6年担任・幼稚園・保育園等の連携担当者・養護教諭によるクラス編成会議が行われます。
クラス編成の主体となるのは、幼稚園・保育園等の年長児担当者。そして、各幼稚園・保育園等で作成してもらったクラス分けを参考に、人数調整を行った上で編成の最終決定が成されます。
新2年生~新6年生のクラス分けの方法
2月中に教務主任ならびに学年主任がクラス編成データを作成し、校長や教頭と協議。校長の決裁を得た後、学年会で各学年担任(現担任)にデータを配布しクラス分けの方法を説明します。
データに記載される内容は、
- 児童の氏名
- 児童の保護者名
- 児童の生年月日
- 児童の性別
- 児童の学力
- 児童の健康状態
- 児童の問題行動の有無
- 児童および保護者の家庭環境
- その他、配慮すべき事項
など、新1年生と同じです。
3月下旬に学年会を開催し、各担任が作成したデータを基に新クラス編成が行われます。
クラス編成のポイントとなるのは2点。
1.クラス間の学力をある程度均等にすること
2.児童の人間関係、特にいじめに遭った児童には最大限の配慮をすること
ここまでで、仮のクラス編成が終了します。その後、学年主任が校長・教頭に説明を行い、校長からの決裁を得ます。そして、最終的にクラス編成が完了するのが4月2日頃です。
春休みに入る頃には、クラス分けが終了していると思っていた読者も多いのではないでしょうか? 担任配置と同様、かなり綿密に時間をかけて行われていることが分かりますね。
担任交代とクラス替えは奇数学年が絶対ではない!
多くの小学校では、偶数学年では担任の持ち上がり、クラス変更がないのが一般的です。しかし、なんらかの理由があった場合、異例の措置として担任交代やクラス替えが行われることもあるようです。
Cさんが校長を勤めてきた中でも、1度だけ年度途中に担任を交代するという例外がありました。
- 児童に対して暴言を吐く
- 授業の進め方に問題がある
- 児童や保護者との人間関係が構築できない
などの問題が担任にあり、不登校になってしまった児童が3名発生。専門家と協力しながら担任の指導を行いましたが改善が見られなかったため、教育委員会と相談した上で担任交代の措置を取ったといいます。
また、Cさんが校長を勤めた学校では、
- 問題を抱えた教員が2年間担任だった場合、取り返しのつかない状態(学級崩壊・さらなる学力低下・不登校児童の増加等)につながるため。
- 担任が全ての児童・保護者と相性が良いわけではないため、1年であれば双方が我慢できると考えたため。
- マンネリ化を防ぎ、新しい風を吹き込むため。
といった理由から各学年、毎年クラス編成と担任の変更を行っていました。
担任配置に影響大! 教師の申し送りとは
前章で解説したように、クラス編成の要素となるのが各担任(現担任)が作成した“児童の情報=教師からの申し送り”になります。次年度担任を決める上での重要な情報であり、教師間での情報共有にもなります。
実際に、どういった内容が書かれているのかも気になるところ。Cさんが校長を勤めた小学校で、実際に挙げられた児童の申し送りについて見てみましょう。
- 特別支援の配慮が必要
- 万引き等の生徒指導上問題を起こすことがある
- いじめられた経験があり友達も少なく、不登校傾向にある
- アレルギー体質のため、給食への配慮が必要
- 保護者のクレームが多い
- 虐待を受けている
- 〇〇さんの保護者と△△さんの保護者は仲が悪い
- 児童あるいは保護者が自分と相性が良くない
このような対策が必要な申し送りに関しては、学校全体で改善策を検討するそう。
教師からの申し送り | 対策 |
---|---|
特別支援が必要な児童 | 学習支援員・教頭・養護教諭が支援する |
いじめ被害者・友達がいない・不登校など人間関係を注視すべき児童 | クラス編成、友人関係は最大限考慮し、カウンセラーの協力を求める |
アレルギー体質の児童 | 養護教諭・栄養教諭などが支援し、給食は別メニューを用意する |
クレームの多い保護者 | ベテラン教員、または教頭が対応。経験の浅い年齢の若い教師はできるだけ担任から外す |
児童あるいは保護者と教師の相性が悪い | できる限り担任にならない人事配置を行う |
学校はどうしても“学級王国”になりやすい傾向にあるので、管理職(校長や教頭)は各担任に対して学年で経営することを指導し、報告・連絡・相談を密に取ることを助言します。
担任と合わない、不満がある…そんな時はどうすればいい?
最後に、ソクたまに届いた読者からの疑問について、元小学校長Cさんに答えてもらいました。
新担任に不安を感じたときはどうすればいい?
「この担任で大丈夫だろうか?」と不安がある場合、学校に相談しても良いものなのでしょうか? 相談する場合は誰に、どのように伝えれば良いか知りたいです(小1男子・母)
少しでも不安があるならば、早めに学校に相談してください。相談の窓口としては教頭、あるいは養護教諭が良いでしょう。
Cさんによると、相談窓口として養護教諭を挙げるのには次のような理由があるからだといいます。
- 養護教諭は全校児童の氏名・顔が一致しており、一人ひとりの心身状態を把握、記録している。
- 担任に相談できなくても養護教諭になら相談できるという児童は多く、児童の悩みを把握している。また、児童へのアンケートでは「担任よりも養護教諭の方が相談しやすい」という回答が多く、養護教諭のカウンセラーとしての力量が高いと思われる。
- 教頭よりも気軽に相談しやすく、保健室の方が足を運びやすい。
学校に来て、子どもの様子を見学するという方法もあります。わが子の学校での様子を実際に目にすることで、不安が払拭できる場合も多いですよ。
担任を変えてほしいという要望は通用する?
担任は、今のクラスをまとめる力量が足りないと感じます。担任を変えてもらうことはできるのでしょうか(小5男子・父)
他の児童や保護者にも影響を及ぼすため、原則、年度途中に担任を交代することはできません。まずは保護者の思いをしっかり受け止め、全職員、場合によっては教育委員会や専門家と協力しながら該当の担任の指導・支援を行います。
ただし「担任交代とクラス替えは奇数学年が絶対ではない!」でも解説したように、担任側に大きな問題があり、学校や教育委員会が指導を行っても改善が期待できなければ、担任交代の措置を取ることはあります。
担任を変えてほしくないという要望はかなう?
3~4年次の担任のおかげで、学校嫌いだった娘が楽しく登校できるようになりました。クラスの雰囲気も、とても良いです。クラス替えをしても同じ先生が担任になってほしいという希望は聞いてもらえるのでしょうか(小5女子・母)
どんなに素晴らしいと感じる担任でも、クラスの児童全員と相性が良いということはなかなかないものです。そのため、他の家庭では「担任が変わって良かった」と感じることもあるでしょう。
私の経験上、クラス替えのタイミングに担任が持ち上がるということはなかなかありません。しかし、事情によっては配慮してもらえることもあるので早めに学校に相談してみてください。
新卒の担任に新1年生をまとめる力があるのか不安
担任は、大学を卒業したばかりの新卒の先生です。授業参観で見たクラスの様子があまりにまとまりがなく、驚きました。学校の人事に疑問を感じます(小1男子・父)
新1年生の担任には、比較的力量のある中堅の教員を配置するのが一般的。息子さんの小学校の事情は図りかねますが、学校に相談してみても良いかもしれません。
もし入学前に感じている不安があるならば、幼稚園や保育園に相談するのも良いでしょう。小学校と幼稚園・保育園では、新1年生の情報交換が行われるため、親が抱く不安を共有してくれることが期待できます。
問題の多いクラスに経験の浅い担任を配置したのはなぜ?
高学年になると思春期に入る子もいます。また、娘のクラスは特別支援が必要な児童も多いのですが、経験の少ない先生が担任に…。なぜ、ベテランの先生を配置してくれなかったのでしょうか(小5男子・母)
特別支援が必要な児童は、1クラスあたり6%在籍するといわれています。全てのクラスにベテラン教員を配置するのは難しいため、経験の浅い教員が担任になることはあるでしょう。
クラスは担任一人ではなく学年部・管理職・擁護教諭・支援員・カウンセラー・福祉機関・医療機関がチームとなって運営しています。担任に足りない部分があれば、チームでフォローしながらクラスをまとめていきます。まだ担任が代わって間もないのであれば、もう少し様子を見ても良いでしょう。
また、学校は若い教員を育てる場でもあります。保護者の立場からすれば不安な気持ちはあると思いますが、若い教員にはベテランにはない良さもあるんですよ。
読者の皆さんも、わが子が通う小学校に疑問や不安を抱いたことは多かれ少なかれあることでしょう。そして「良い先生に担任になってほしい!」という願いも、わが子を大切に思うからこその親心。けれど、学校運営には保護者の理解や協力が絶対に欠かせないとCさんは言います。
最後に、元小学校長・Cさんが保護者へ伝え続けてきた“お願い事”を紹介しましょう。
1. 子どもの前で、担任の批判をしないでください。
2.子どもの頑張り、教師の頑張りを自分の目で確かめてください。学校は毎日公開しているので授業や給食時間、掃除時間に来校し、子どもたちや教員の様子を見にきてください。
3.子どもが良き方向に成長するためには、保護者と教員が“バディ”となることが不可欠です。
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