• facebook
  • twitter
  • LINE
  • hatena
2022.02.02

子どもが「予測困難な社会」を生き抜くために、高校で始まる“探究学習”とは?

文部科学省が、社会の変化に合わせて10年に1度改定している「学習指導要領」。小学校では2020年度から、中学校では2021年度から新指導学習要領が実施されており、高校でも2022年度からスタートします。今回は、それぞれの学習指導要領の改定の内容、高校で新しくスタートする“探究学習”のポイントなどを紹介します。

  • facebookfacebook
  • twittertwitter
  • LINELINE
  • hatenahatena

「予測困難な社会」を生き抜くために

ITの普及、AI(人工知能)の発達、グローバル化の加速…。ほんの数十年の間に、社会は大きく変化し、私たちの生活はどんどん便利になっていきました。

今、私たちが生きるこの時代は「予測困難な社会」といわれています。刻々と変化する社会で生き抜くためには、学生時代の“学び”が重要であることは、誰の目にも明らかでしょう。

文部科学省は、学習の指導方針となる「学習指導要領」を、社会の変化にあわせて10年に1度改定しています。直近の改定では、「社会の変化は予測しがたいが、どのような状況にあっても、子どもが自ら考えて、判断して、行動できるように」と、小中高の学習指導要領を大きく変更しました。

この新しい学習指導要領は、小学校では2020年度から、中学校では2021年度から実施されており、高校でも2022年度からスタートすることになっています。

小中高校それぞれの新学習指導要領では、どのように学びが変化するのでしょうか? また、今後の社会で求められる力とはどのようなものなのでしょうか?

この記事では、大人が考える「これからの社会で必要な力」や、小学校・中学校・高校の学習指導要領の改定の内容、高校で新しくスタートする“探究学習”のポイントなどを紹介します。

大人が社会人になってから後悔したことは…

株式会社新興出版社啓林館は、小学生から中学生の保護者を対象に、「子どもが社会人になるために必要な力」に関する調査を実施。アンケート結果から、「予測困難な社会」で生きる大人たちの後悔や葛藤が明るみになりました。

社会人になって身につけておけばよかったと思うこと

PR TIMES

まず、「自分が大人になってから、基礎勉強以外の知識や能力について“もっと早く身につけておけばよかった!”と思った経験はありますか?」という質問に、約8割(79.2%)もの大人が「ある」と回答。

社会の先輩として生きる保護者たち。その大半は、「基礎勉強以外の知識や能力を取得しておけばよかった」と後悔していることがわかりました。

「基礎勉強以外の知識や能力」が具体的に何をあらわすのかというと、語学力・思考力・表現力・行動力・判断力など。

「仕事で外国人と接する場面があり、英語が話せればと思った(50代/女性/東京都)」「仕事でのプレゼンテーションに苦労したから(50代/男性/福岡県)」など、語学面や論理的に思考すること、表現力を身につけることの大切さを実感しているという声が多く見られました。

自分の子どもに学んでほしいこと

PR TIMES

そんな自らの反省を経て、自分の子どもには「身につけてほしいことがある」のでしょう。

続く、「知識以外で子どもたちに身につけてほしい力や学ばせたいことはありますか?」という質問には、8割以上の方が自身の子どもたちに身につけてほしい力や学ばせたいことが「ある」と答えています。

子どもが社会人になるために必要な力とは

PR TIMES

それでは、今を生きる保護者たちが思う「子どもが社会人になるために必要な力」とは、一体なんなのでしょう? 

「子どもたちに教えたい、これからの社会人に必要だと思うことは何ですか?(上位3つまで)」の回答を見ると、半数以上(56.2%)が「コミュニケーション力」と答えていました。次いで「自分の意見を持てる力」(35.5%)、「自分の意見を人に伝えられる力」(33.5%)が続いています。

今は高度な計算も事務処理も、ボタンひとつで機械に任せられるような時代です。そのため学力よりも、人との触れ合い自分なりの意見を持つこと・伝えられることに重きを置いている保護者が多いことが分かります。

また、「新しいことに挑戦する力」(27.5%)や「新しいアイデアを生み出せる力」(25.8%)が必要だと感じる保護者も少なくありません。

小中高校の「学習指導要領」改定のポイントとは?

「予測困難な社会」を生きる子どもたち。どのような社会にも適応できる大人になれるよう、文部科学省が学習指導要領の内容を大きく変更したことは前述の通りです。

この新学習指導要領は、アンケートで分かった「大人たちが社会を生きる上で必要な力」が身に付くものなのでしょうか? 小中高校、それぞれの改定ポイントを見ていきましょう。

小学校の新学習指導要領の改訂内容

2020年度から実施されている小学校の新学習指導要領の主な改定ポイントは、「英語」「プログラミング教育」「道徳」です。

  • 英語:小学3年生より授業に導入
  • プログラミング教育:すべての学校で必修化。論理的思考を養う
  • 道徳:「道徳科」として正式な教科に。自分の価値、他人の価値を知ることでいじめや自殺撲滅を図る

中学校の新学習指導要領の改訂内容

2021年度から実施されている中学校の新学習指導要領の主な改定ポイントは、「英語」「プログラミング教育」です。

  • 英語:コミュニケーション能力を養い、他国の文化への理解を深める
  • プログラミング教育:プログラミングを使った問題解決やネットワークの活用法について学ぶ

高校の新学習指導要領の改訂内容

2022年度に新しく実施される高校の新学習指導要領の主な改定ポイントは、「主催者教育」「消費者教育」「学びの方法」です。

  • 主催者教育:「公共」という科目が導入される(代わりに「現代社会」が廃止)。ペアやグループでの活動を通して、社会に対して積極的に関われるようにする
  • 消費者教育:消費者契約の大切さや権利などを学習
  • 学びの方法:ディベートやディスカッションを通して、コミュニケーション能力の獲得を目指す

2022年度から始まる「探究学習」とは

未来の社会人に求められる力は多岐にわたりますが、大人が“必要”だと感じている能力を総合的に得られる内容になっていることが分かりますね。

なかでも、新しい学びの方法として2022年度から高校の新科目として追加される「探究学習」は、思考力や表現力、行動力を身につけることができる科目として注目されています。

探求学習とは、教科・科目の枠を超えた横断的で総合的な学びのこと。地域活動や自然活動、社会貢献などを通して、自ら課題を見つけ、解決策を探していく学習がスタートします。

予測困難な社会を生き抜くためには、自ら問いを見出し、探究する力が不可欠です。そのため、ひと昔前までのように、教師が生徒に質問するという一方通行の学習ではなく、生徒が自ら気づき、その答えを探すべく自ら行動・発表するような形式で授業が行われます。

激流のように変化する時代の中、問いに対して何も“正解”がないこともあるでしょう。しかし、“答えがないから指示を待つ”のではなく、“答えがないなりに自ら考える”ことがますます大切になっていくのです。

探究学習を導入している高校の事例を2つ紹介します。

探究学習の事例

宮城県立飯野高校

「地域探究」として、5人グループで活動。地域のために何ができるのかを話し合い、地元の温泉郷の活性化プロジェクトに取り組む。このグループのうち一人は、これをきっかけに地域活動に興味を持ち、温泉のある台湾へ短期留学。地域の魅力をアピールできる方法をさらに模索したいと考え、地域活性化について知見のある大学へ進学した。

東京都世田谷区駒場学園高校

シェフとして働いている卒業生が、在校生に「食育」をテーマに指導。ジビエ肉を生徒にさばいてもらうことで、食や命の大切さを伝える。

小学生、中学生でも探究学習は可能

探究学習とはつまり、教科書には載っていないことを自らの行動によって学習する機会。「なぜ?」「どうすれば良いのかな?」など「?」の気持ちさえあれば、高校生になるまで待たなくとも探究学習を行うことはできます。

たとえば、プログラミング。「なぜこう動くのか?」「こう動かすにはどうすれば良いのか?」など、自ら問いを発見し、解決へ向けて考えたり行動したりする姿勢は、社会に出たときにおおいに役立つでしょう。

教科書の中の知識だけではなく、恐竜、芸術、人体など、その探究の幅は無限大。子どもの「知りたい!」という気持ちを育て、知る喜びや学ぶ楽しさにつなげていけば良いのです。

a.school(エイスクール)tanQLABO(タンキューラボ)たんきゅう塾NEOといった探究型の学習塾もあるので、興味のあるかたはチェックしてみると良いかもしれません。

答えのない問題に向き合うための「親の心得」

予測困難な社会において、答えがないものや、答えがいくつもあるものなどは珍しくないでしょう。

そんな時に大切なのは、子どもが何かを質問してきたとき、「わからない」で終わらせないことです。

「私もわからないな。よし、一緒に調べてみようか!」と親子一丸になって楽しむ姿勢でいれば、日常生活が学習の場に早変わりです。時には難しいテーマもあるかもしれませんが、お子さんの知的好奇心を大事にしてあげたいですね。

学習指導要領改訂により、小中高の学習内容が大きく変わりました。自主性・主体性を大事にした教育で、これからの社会に必要な力を伸ばしていけるような学習が行われるようになります。

予測不能な社会を生き抜くために、大きな変革を迎えた“教育”。新しい学習内容を参考に、ご家庭でも未来のための働きかけをしてみてくださいね。

<参考資料>
政府広報オンライン「2020年度、子供の学びが進化します!新しい学習指導要領、スタート!」
大分市立竹中中学校「たけしか」
文部科学省「小学校プログラミング教育に関する概要資料」
Education Career「徹底解説!学習指導要領「生きる力」の内容と改訂のポイント」
一般社団法人Fora「今さら聞けない!探究学習ってなに?考え方、目的、メリット」
コエテコ「高校から始まる探究学習って何のこと?特徴や学習内容を徹底解説!」
みらいい「【小学校で探究学習は始まっている!】3つの小学校と2つの民間の企業を紹介!」
VIEW2 高校版 臨時増刊号 2020「予測困難な社会を生きる力を育む 探究学習 一歩前へ」

子育てのお悩みを
専門家にオンライン相談できます!

「記事を読んでも悩みが解決しない」「もっと詳しく知りたい」という方は、子育ての専門家に直接相談してみませんか?『ソクたま相談室』には実績豊富な専門家が約150名在籍。きっとあなたにぴったりの専門家が見つかるはずです。

子育てに役立つ情報をプレゼント♪

ソクたま公式LINEでは、専門家監修記事など役立つ最新情報を配信しています。今なら、友だち登録した方全員に『子どもの才能を伸ばす声掛け変換表』をプレゼント中!

\ SNSでシェアしよう /

  • facebookfacebook
  • twittertwitter
  • LINELINE
  • hatenahatena

ソクたま公式SNS