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2022.09.05

特別支援学級に入る基準は?普通級がいい?後悔しない選択へ3つのポイント

発達障害や発達特性がある子の場合、小中学校の進学の際に特別支援学級と普通学級のどちらを選択するのか悩ましいものです。何を基準に選べばよいのか、後悔しない選択のために知りたいことを、学習支援塾を主宰する川下耕平さんが解説します。

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執筆協力

川下耕平さん学習支援塾すたでぃあ主宰

大学・大学院で、心理学や特別支援教育について学び、発達障害・不登校専門の高等専修学校、公立中学校(特別支援学級)、都立特別支援学校の勤務後、発達障害や不登校、学習が苦手な子を対象とした「学習支援塾すたでぃあ(stadia)」を設立。子ども達の自分なりの学びをサポートしている。

特別支援学級と普通級の違いとは

特別支援学級に入る基準や、普通級に入るかどうかを考える前に、改めて普通級と特別支援学級の違いについて改めて整理整頓をしておきましょう。

特別支援学級(支援級)とは

支援級とは、小学校・中学校内に設置された障害がある児童・生徒が支援を受けられる学級となります。対象となる子は、知的障害、肢体不自由、病弱・身体虚弱、弱視、難聴、言語障害、自閉症・情緒障害がある子になり、障害種別ごとの学級があります。

ただし、支援級はすべての学校に必ずあるわけではありません。そのため、自分の地域に知的障害の支援級しかない場合、知的な遅れがない子が通うと「学習内容が物足りない」と感じてしまう可能性があります。

子どもの障害種に適合する学級がない場合は、通級指導をはじめとするほかの支援を受けながら学ぶ方法を考えていくことも必要です。

また、支援級は少人数学級になり、特別支援教育の知識・経験がある教師が受け持つことが多いため、きめ細かい指導をしてもらえます。時間割やカリキュラム、テストの受け方・内容などは、子ども達の実態に応じて設定されることが多いでしょう。

さらに、小学校・中学校の卒業後の進路(その後、社会人になるまでの道筋)についても特別支援教育の専門的な情報を収集しやすい点も支援級のいいところといえるかもしれません。

普通級とは

普通級は、一般的な集団で授業を受けるクラスのことです。教科書通りに学習が進んでいき、一斉指示を聞いて、行動をとる場面が多くあります。

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特別支援学級に入る基準とは

特別支援学級の対象は、障害がある児童・生徒になりますが、判断基準は障害の有無だけではありません。

特別支援学級に入るかどうかは、本人の状態や学校・地域の体制、保護者、本人、専門家の意見などをもとに総合的に判断します。

また、就学先を教育委員会や学校が一方的に決めることはありません。最終的に決定するのは、保護者になります。ただし、就学先決定に不安がある場合は、教育委員会や学校(校長先生)に相談をすることも可能です。

支援級か普通級、選択する3つのポイント

では、支援級か普通級かどちらを選択するのかは、どのように考えればすればよいのでしょうか?

大切なのは、子どもが自分の力を伸ばすことができるのか成長できるかどうかではないでしょうか。

ひとことで「障害がある」といっても、通常のカリキュラムで大丈夫な子がいれば、支援を受けながらの教育が合っている子もいます。

これまで普通級から支援級の子まで多くの子を見守ってきた経験の中で助言すると、後悔しないためには、“子どもがどちらの学級がなじめるか“という視点が大切です。

そこで、学校生活を送る上で大切な下記の3点において子どもがなじめるのは、支援級と普通級のどちらなのか考えてみてください。

【ポイント①】学力について

前述の通り、普通級の学習の内容はその学年相応のものになります。そのため、“学力的についていけるのか”ということを考えましょう。

考えるのはテストの点数についてだけではありません。授業態度、実技科目における身体能力、児童・生徒同士の協力関係が築けるのかという点についても考えたいところです。カリキュラムのねらいに沿った活動ができそうでしょうか?

学力がついていけないままに、普通級のカリキュラムについていくことは、なかなかしんどいものですが、支援級であれば、本人のペースやニーズに合う学習内容が提供されます。

【ポイント②】社会性について

学級で行われることは授業だけではありません。休み時間の友達との会話、係活動、ちょっとした教師とのやりとり、学級でのトラブルの解決、給食、掃除など、他人との関わりをなくして成り立たない活動ばかりです。

このような数値化できないコミュニケーションが必要な場面で、子ども自身がなじめるか、よく観察することが必要です。

【ポイント③】空気について

子ども自身が、学級の空気にしっくりくるかどうかということです。実際に普通級の子が支援級を体験したり、逆に支援級の子が普通級を体験して、どちらの学級が活き活きとしているか、そこが判断材料になるのでは、と思います。

支援級と普通級の選択について、前向きに具体的に考えていけるように上記3つのポイントについて考えてみましょう。

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IQは判断材料になるか

IQを明確な判断基準にするのかどうかというところは難しいところですが、一般的に知的障害はIQ70未満とされており、境界知能と呼ばれるのは70~85です。

あくまでひとつの目安ですが、上記の数値の場合、普通級に通うことは課題が多くなる可能性があります

境界知能の子は見た目から「がんばればできる」と思われがちですが、実際には、かなりがんばっていて気持ち的にいっぱいであることに想像力を巡らす必要があると思います。

また、WISC検査による4つの指標(言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度)を基に考えることが必要です。

<WISC検査についての記事はこちら>

知能検査WISC4とは|検査内容や結果の活かし方を解説します
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5~16歳11ヵ月の子ども向け知能検査WISC-IV(ウィスクフォー)。福祉や医療、教育現場ではよく知られる検査ですが、健康診断や就学前検診で初めて名前を聞いた.....

未就学の子の保護者であれば、教育委員会の就学相談係、就学先の小学校としっかりと相談をし、専門家の見解も参考にしながらより具体的にどの学校生活の場面で困り感を感じるのかを考えていくようにしましょう。

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学級選択で後悔しがちなポイント

では、普通級や支援級を選択をして後悔するようなことはあるのでしょうか? 必ずしもこうなるということではなく、可能性のひとつとして、どのような後悔が考えられるのか紹介します。

支援級の場合に考えられる後悔

まずは、支援級が合わなかった場合の可能性について考えてみましょう。

①自分の子どもの実態に沿った学習内容ではない

支援級は在籍している児童生徒の学年がバラバラで、学力の幅もあります。学習は、個別対応ではなく、その学級の中で平均的な教育が行われる可能性があります。

普通学級と同じ進度ではないだけではなく、個別対応をしてもらえるわけではないこと。支援級という集団に入るということは考えておく必要はあると思います。

②人間関係が狭くなる。

支援級は少人数ですので、人間関係は狭くなります。ですが、他学年の児童生徒との関わりもあり、教師との距離も近く、深い人間関係を経験することもできます。また。保護者同士とのつながりもできやすく、情報交換もしやすいでしょう。

③周囲の目が気になる

周囲から「障害があるから支援級なのね」という目で見られるのではないか、という心配や葛藤があるかもしれません。

ですが、周囲の目を気にするのではなく、子どもの成長を第一義的に考えることが建設的です。実際は、そういった隔たりなく普通級、支援級の子どもが交流している事例もあります

普通級の場合に考えられる後悔

次に普通級を選んだ場合に考えられる後悔について考えてみましょう。

①学力がついていけない

普通級を選んで、カリキュラムのスピードなどについていけない可能性はあります。通級指導教室、特別支援教室でフォローできる程度かどうかを検討する必要もあります。

<通級についての詳しい記事はこちら>

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②集団行動が難しい

大人数のクラスでトラブルになりやすい子であれば、安定した気持ちで学習に向き合うことが難しい可能性もあります。もちろん子どもは、トラブルの中から人間関係を学んでいくものですが、学習が疎かになってしまえばそれこそ本末転倒です。

支援級による卒業後の進路への影響

中学校で支援級を選択するとなると、気になるのが高校進学などの進路についてですよね。

支援級に在籍している場合、中学校卒業後も途切れなく支援を受けられる環境を含んだ進路選択になるかと思われます。

「支援級に在籍していると進学の選択肢が減るのでは?」と相談されることは多いですが、実際には支援の受け皿は社会的に増えています。正しい情報を知れば「選択肢が意外と多い」という印象を受けるかもしれません。

また、中学校では高校進学に関わる内申点の問題があります。支援級の通知表は内申点が出ないことが多いようですが、地域や学校によっては出してくれるところもあるようです。支援級を選択する際、進学先の中学校に内申点の出し方を聞いてみると判断材料になるかもしれません。

在学中に学級を変更するときに気を付けたいこと

一度、普通級でどこまでできるかを試したい」と考える人もいることでしょう。もちろん、一度経験をさせてみて、その上で判断することもいいとですし、転籍することは可能です。

ただし、何回も通常学級と支援級を転籍して、環境が頻繁に変わることは子どもにとって有益なことではありません

転籍をするのであれば、教師から普段の学校生活の様子を聞くなどの情報交換を行いつつ、時期、時間をしっかりと決めて、進めていくことが重要です。

実際に転籍する場合も、学校側と密に連絡を取り、子どもの実態、情報共有を転籍先の教師としっかりと行うようにしましょう。

普通級から支援級へ転籍する場合

普通級から支援級の転籍手続きは、教育委員会や学校に相談して行います。

ただし、手続きよりも大切なのは、子ども自身の心のケアです。子どもの発達段階や理解度にもよりますが、「なぜ普通級ではなく、支援級になるのか」「誰のためでもない、あなたの成長のためである」ときちんと話せる材料は用意しておきましょう

言葉で説明するよりも体験や見学など実際に経験することで、子ども自身が「普通級よりも支援級の方が自分に合っているな」と徐々に思えるような子どもへの働きかけも必要です。

支援級から普通級へ転籍する場合

支援級から普通級の手続きなども教育委員会、学校に相談します。

支援級から普通級になるにあたり、最も心配なのは、大人数の授業、集団行動についていけるかという点です。

就学前だと、幼稚園、保育園での様子を参考にし、入学後であれば支援級の子が普通学級の子と同じ活動をする際(交流学級)の集団での様子を参考にしましょう。

無理に支援級から普通級に行き、子どもの負担が多くなってしまう可能性もあります。普通級に行くメリットは何なのか慎重に考えていく必要があります。

専門家に相談することも大切

知らないこと、経験したことがないことを判断するのは難しいことです。そういうときこそ、専門家に相談してください。

支援級という場所が実際はどんなところかイメージできない保護者がほとんどだと思います。そして、知らないものと向き合ったときにネガティブな思考へ引っ張られがちになるのが人間です。

ですが、それは単なる思い込みに過ぎないかもしれません。考え方を少しずつ変えていくことが未来へ建設的な選択をすることにつながります。

困ったときは、ただ恐れるのではなく教育委員会、医療機関(発達支援センターを含む)、進学先・在籍校のスクールカウンセラーなど、専門家の力を借りるのも悪いことではありません。

子育ては山登りのようなものです。支援のあり方、教育環境など、どの道で行くかは麓での判断(普通級か支援級かの選択)だけで決まるわけではありません。登山中に出会う花や動物、景色、天候などに左右されながらたまに寄り道をしたり、道を変えたりしながらも、子どもの自立という頂上に向かって歩き続けるものです。

今回の記事や専門家への相談が山頂へとつながる道しるべになることを願っています。

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