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2021.02.04

ギフテッドの診断方法や特徴とは?日本で受けられる教育も紹介

子どもの才能や可能性を伸ばす目的で、1860年代後半ごろからアメリカで始まったギフテッド教育。近年、日本でも注目を集めていますが、どんな子が対象でどんな教育を受けられるのでしょうか。そこで、ギフテッド教育の概念や対象となる子どもについて、さらに日本でギフテッド教育を受けられる教育機関などについて紹介します。

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ギフテッドとは

ギフテッドとは、一般的に生まれつき、特別な才能や高い能力を贈られた(=Gifted/ギフトを授かった)子どものことを指します。日本では明確な定義はありませんが、ギフテッド教育の先進国であるアメリカでは、教育関連の連邦法における定義によると次のように書かれています。

ギフテッド

学問や言語能力、芸術、創造性、リーダーシップなどのさまざまな領域の特定分野において、同年代の子どもと比較して突出した才能を持つ子ども

この定義によると、ギフテッドの子どもの才能が現れるのは“特定の分野”とされています。つまり、「何でもできてしまう天才!」というよりも、例えば、数学だけ、語学力だけ、など関心のある1つの能力が優れているということになります。

また、ギフテッドについて語る際に、ギフテッドかどうかを識別する値として“IQ130以上”という基準が用いられることがありますが、IQのみで判定されることは世界的にもあまりないようです。

ギフテッドの子どもの特徴は?発達障害との違い

アメリカのギフテッド教育の推進団体『ギフテッド児童協会(National Association for Gifted Children。NAGC)』では、以下のような特徴を挙げています。

ギフテッドの特徴

  • 物覚えが良い
  • 記憶力が良い
  • 語彙が通常以上に豊富で、複雑な文章を構成できる
  • 数字遊びやパズルをはじめ、問題を解くのが好き
  • 深く、激しい感情や反応を表す
  • 物事に過敏に反応する
  • 幼少期から理想や正義感を持っている。
  • 注意力や集中力が長く続く
  • 自分の考えに浸るなど、妄想傾向がある
  • 人に探りを入れるような質問をする
  • いろいろな方法を試して実験することに興味がある
  • 鋭い、変わったユーモアセンスを持っている
  • ゲーム的思考や複雑な構図で、人や物を系統立てたがる
  • 鮮明な想像ができる(幼児期に空想の友だちをつくるなど)

このようにギフテッドの特徴は多岐にわたりますが、どれも「当てはまる気もするし、違う気もする」ケースが多くあいまいな印象です。つまり、保護者が「自分の子どもがギフテッドか」を判断するのは簡単ではないのです。

ギフテッドと発達障害の違い

ギフテッドの子どもと混同しやすいのが、ADHDやASD(自閉スペクトラム症)等の発達障害です。例えばADHDは感覚が過敏だったり、得意分野にのみ関心を持ち、集中力が偏ってしまうと言った特徴があります。このような感覚過敏や集中力の偏りはギフテッドにも共通します。

ただADHDに見られる衝動性や注意力欠如、好奇心の旺盛さは、ギフテッドの特徴とは異なります。衝動的な言葉を使うことによる友達とのトラブル、ケアレスミスなどはギフテッドには起こりにくいです。

ASDは先天性の脳障害が原因と言われており、感覚過敏や特定の物事、人物に対しての愛着、関心の深さが特徴にあげられます。これらも特定の分野に集中するギフテッドと共通しています。

しかしギフテッドが得意とする人の感情への共感、集団行動への適応、リーダーシップ等は、発達障がい者にとっては苦手なことが多いです。

ただし、ギフテッドなら発達障害ではない、と言い切ることもできません。ギフテッドで発達障害を持つ人もいるからです。

アメリカでのギフテッド診断方法

ギフテッド教育先進国であるアメリカでは、ギフテッドの客観的な判定のために下記のような方法が用いられているようです。

【診断方法①】WISC-IV(ウェクスラー式知能検査)

一般的に「ウィスク4検査」と呼ばれる同検査は、5~16歳11ヵ月の子どもを対象とした知能検査のこと。発達障害を診断する際などによく使用されており、全体的な認知能力(IQ)だけでなく、言語理解、知覚推理、ワーキングメモリー、処理速度という4項目のテストで測定されます。学校のペーパーテストとは違う側面から、子どもの能力を測ることができます。

WISC検査に関する記事はこちら

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【診断方法②】総合的判断

IQの数値が130に達していなくても、ギフテッドの可能性はあります。また、知能検査では、音楽的知能などの芸術的な能力や対人的知能、創造性、語彙力などを測定することはできません。

そのため、親や教師への質問紙、子ども本人の様子や日常行動に関する観察記録、学力テストや各種受賞歴などの学校成績といったさまざまな項目・方法によって総合的な判断を行います。

【診断方法③】RTIモデル

ほかの子どもと能力的発達に違いがある子どもの才能・能力や必要な支援などを、客観的に判断する方法です。教育環境をはじめとする外部要因と、その子が先天的に持つ特性である内部要因の両面から判定を行います。

通常学級内でのハイレベルな指導から、少人数での補足支援の追加、個別支援という3段階で、より正確かつ早期でのギフテッド判定を目指します。

日本におけるギフテッド診断方法

日本では、ウイスク検査が用いられることが多く、IQでは測れない能力などを総合的判断で補うのが一般的です。

検査はどこでできる?

ウイスク検査は児童精神科・小児科などの病院や教育支援センター、カウンセリングルームなどで診断を受けられます。一方で、RTIモデルが使われることはほとんどないのが現状のようです。IQ検査については心療内科などの病院や自治体で実施していることもあります。

ただし日本でのウイスク検査はあくまでも発達障害などの診断に用いられるものです。ギフテッドは医学的な病名ではないため、病院で検査を受けても、「ギフテッドです」という診断を受けることはできません。

ギフテッド教育とは

ここまでギフテッドについて説明してきましたが、そのような特性を持つ子どものための特別な教育がギフテッド教育です。

ギフテッド教育の歩み

ギフテッド教育の最も古い取り組みの1つが、1868年にアメリカ・セントルイスの公立学区で行われた「柔軟な進級制度」だといわれています。

その後、アメリカ全土でさまざまな教育プログラムが行われて、1958年制定の国家防衛教育法(National Defense Education Act)で前述のギフテッドの定義が規定されました。

それ以降、ギフテッド教育のための予算・財源が確保され始め、ギフテッド教育はさらに広く浸透。現在のアメリカでも、「平等な教育機会の提供」「すべての子どもへの個別化した教育機会の提供」が求められる社会情勢の中で注目やニーズが高まっています。

さらに、アメリカの事例を参考に、ヨーロッパやアジアでもギフテッド教育を導入する国が増えてきています。

ギフテッド教育の2つの目的

ギフテッド教育に関する定義や手法についても定まったものはありませんが、以下の2つの目的を基本方針とする教育手法が多いようです。

①英才教育

通常の学校教育や横並びのカリキュラムではなく、それぞれの子どもの特徴やペースに合わせた特別な教育や接し方を行うことで、効果的に才能や能力を開発していきます。

②2E教育

“二重に例外的な”という意味を持つ「2E(Twice exceptional)」。特定の分野に関する能力に優れている一方でほかの分野が苦手である子どもたちを指します。彼らは発達障害や学習障害と診断されることも多いですが、2E教育とは、彼らの特性の凸凹のうち、凸(優れた能力)を伸ばしていく教育になります。

ギフテッド教育の代表的な3つの教育法

残念ながら、日本におけるギフテッド教育は、まだ成熟しているとはいえず、各教育機関が独自に取り組んでいる状態で、普及までには時間がかかるでしょう。そこで、いち早くギフテッド教育の研究や各種制度の整備などに取り組んでいるアメリカの教育内容を紹介しましょう。

アメリカでは州ごとにさまざまなギフテッド向け教育プログラムが行われていて、公立学校でも導入されています。その中から、代表的な教育方法を3つ紹介します。

【教育法①】エンリッチメント方式

ギフテッドの子どもも通常のクラスに入って、ほかの子どもたちと一緒に過ごします。そして、ギフテッドの子どもには難易度の高い課題の出題や、各種コンテストへの参加の促進を行って、才能を伸ばすチャンスを提供します。一般的な子どもたちと生活しながら、それぞれの才能・能力を伸ばしていけるのが特徴です。

【教育法②】プルアウト方式

普段は通常のクラスで学んで、定期的にギフテッドの子どもたちが集まる学校などで学習する機会を設ける方式です。個々に合ったハイレベルな学習ができるのと同時に、自分と知能レベルが近い子どもと交流することで、他者とのより深いコミュニケーションや相互理解なども期待されます。

【教育法③】アクセルレイト方式

日本で「飛び級」と言われるものです。能力が高い子どもに対して、「一つ上の学年での学習」や「卒業年数の短縮」「一段階上の学校への進学」などの対応を行います。

そのほかにも、世界中から参加者が集まることで有名なジョンズ・ホプキンス大学のサマーキャンプのような「サマースクール方式」や、自宅学習を中心にした「ホームスクール方式」なども、アメリカではメジャーなギフテッド教育の方法とされています。

日本におけるギフテッド教育への取り組み

ギフテッド教育後進国と言われる日本ですが、近年、さまざまな取り組みが行われ始めています。

翔和学園

東京都中野区の本校と長野県長野市の系列校で、2Eの子どもたちを対象としたギフテッド・クラスを設置しています。アメリカで実績のあるギフテッド教育のメソッドを導入して、「人間の生きていく気力を育てる」を理念とする特別支援教育が特徴です。

また、小学校から大学まで併設し、ギフテッドの子どもたちが進む先にある“未来”を考えた一貫教育も行っています。

日本ギフティッド協会

ギフテッド教育に関わってきた日米のスタッフらが運営する「日本ギフティッド協会」では、ギフテッドの子どもたちに関する教育計画書「GIEP」を作成しています。

この計画書の目的は、日本でギフテッドに関する概念を理解・浸透させることや、ギフテッドの子どもを持つ保護者の方などの苦労や負担を減らすことです。クラスの参加法や個別の宿題など、学校側で必要なサポートも含まれています。

ギフテッド応援隊

ギフテッドの子どもを持つ保護者の全国的なコミュニティとして、2017年の設立以来、会員相互の交流や情報発信、講演会などのイベント企画を行っています。

社会や学校にも積極的に働きかけ、日本のギフテッドの子どもたちの“自分らしい生き方”を応援する活動を展開しています。

TEAM GIFTED

ギフテッドの子どもたちに対して学習支援を行うだけでなく、進学や自立などそれぞれの子どもたちに合わせた支援を行うNPO法人。アメリカ、イギリス、ニュージーランドに提携している学校があり、留学も支援してくれます。

現在、文部科学省や経済産業省が推進する国家的プロジェクトでも、「ギフテッド教育における個別教育の重要性」や「日本ならではのギフテッド向けの特別教育プログラム」などについて議論されているようです。

まだ発展段階にある日本のギフテッド教育ですが、今後はさらなる整備・拡充が期待されています。

あつしな・るせ

ライター、コピーライター、編集など。広告出版会社のクリエイティブ職~オーストラリアの新聞社のデザイナーを経て、フリーに。雑誌やWebメディア、企業サイト、広告、PRツールなど、様々な媒体で執筆。ジャンルは、文芸、企業PR、テクノロジー、教育、音楽、法律、アート、妄想、ライフスタイル、旅行、人材系など。また、大手企業経営者からアイドルまで幅広く取材を経験。現在、東京在住。一人娘と座敷猫を溺愛中。

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