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2019.12.23

子どもが自分で解けない問題。“答えを見る”のはアリ? ナシ?

小学校で使う漢字ドリルや算数ドリルなどの教材。子どもが問題を解く時に答えを見ないようにするため、担任の先生がドリルの答えを子どもから回収しているということがあります。しかし、問題を解く時に本当に答えを見せてはいけないのでしょうか。考えてみましょう。

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小学校のテスト。教師は生徒にどのように指導している?

テストを“自分の力で解く”というのは、ごく当たり前のことでしょう。

テスト用紙を配って「始め!」とだけ言ってやらせることもありますが、次のような声掛けをしてから始めることもあります。

  • 「テスト用紙が配られたら、名前を書きなさい」
  • 「テストですから、お話をしてはいけません。黙ってやります」
  • 「お隣の席の人の解答を見たり、教えてもらったりしてはいけません」
  • 「お隣の人に答えを教えたり、見せてあげたりしてはいけません」

また、他の子のテストの答えを見ないように、あるいは見ることができないように隣の子と席を離す教師もいます。

テストで「どんどん、お隣の人の答えを写して書きなさい」「お隣の人にもどんどん答えを教えてあげなさい」「相談しながらテストをやっていいですよ」と言う先生はいないでしょう。騒々しい教室の中でテストを行う教師もいません。テストで「お隣さんの答えを見ていいですよ」とも言いません。

しかし、小学校低学年の場合は事情が少し変わってきます。自分で考えても問題を解けなかった子の中には、諦めて騒ぎ出す子もいます。「他の子の答えを見ないでやります」「黙ってやります」とは伝えますが、テスト中の1・2年生を見ていると隣の子の答えを見ている子が出てくるのです。席を離す教師がいるのはこのためでしょう。しかし、明らかに隣の子の回答を見ているのが分かっていてもその子に何も言わないという教師は、私を含め意外と多いのです。

“写す”ことも勉強だから、答えを先に見せても良い

小学校低学年のテストの時間に、他の子の答えを見ている子を見つけても何も言わないのはなぜか。その前に、普段の授業の様子について触れておきましょう。

授業で子どもたちに計算問題を解かせると、どうしても自分の力で解けない子が出てくることがあります。そういった子に対し「もっと自分で考えなさい」と言う教師がいます。しかし、答えを与えず問題にずっと向きあっているとボ~ッとする時間になってしまったり、分からない子は分からないままになってしまったりということも…。さらに、“見てはいけない”ということをあまりに強く教えてしまうと「先生、僕の答え見られた!」「見るなよ!」といったように、“答えを見ること”に対して子どもたち自身が厳しくなります。

私の場合、問題を全部解けた子(答えが不正解であっても)に黒板に書いてもらうことがあります。1問につき2人ずつ黒板に書かせます。そして「黒板に書かれたものをヒントにしていいですよ」と言い、分からなかった子に写させます。全ての問題の丸付けが終わった段階で「写すのもお勉強のうち、一番いけないのは何もしていないことです」と言うのです。これは、私が先輩教師から教わったこと。写すことも勉強になるのです。

同じ問題の答えを2人ずつ書かせるのは、解けなかった子に“写す時間”を与えるためでもあります。2人の子が順番に説明している間に、ノートに写せます。これも先輩教師からの教えで、私がどの学年でも同じように行っている方法です。

また、答えを先に教えてその答えを導く理由や証拠探しをさせることもあります。

私の授業では、このように“写す”ことをはっきり認めることも多いです。ひらがな・漢字・習字のように写すことから始まる勉強もあります。音楽も体育もお手本を見て、まねてできるようになります。まねることも学習だとすれば、答えを見てはいけないということにはならないのではないでしょうか。

“答えを見る”学習。家庭ではどのように応用できる?

家庭においても一度、自分で考えさせてから分からない問題があれば答えを見せても良いのではないかと思います。「自分を褒めることのできる子は伸びる! 子どもの自己肯定感を高めよう」でも言及しましたが、証拠探しの勉強にもなるのです。

例えば、漢字テストでは漢字をしっかり覚えていないと答えを書くことはできません。いくら自分の頭で考えても正解を出すのは難しいでしょう。どのように書くのか答えを見て、覚え直す。その後、見ないで書けるかを確かめ、見ないで書けるようになるまで繰り返します。これは、どの教科においても同じです。家庭で勉強を見てあげる時は、次のようにすると良いでしょう。

  1. まずは、問題に向き合い自分で考える
  2. 考えても分からない問題は、答えを見る
  3. 答えを見た問題に印を付け、答えを見た後に正解するまで解き直す
  4. 答えを見なくても正解できたら、印を消す

「最初から答えを見る癖がつくのでは?」と心配する保護者もいると思います。もちろん、初めから「答えを見てもいい」とは言いません。一度目は「何も見ないで自分でやってごらん」という声を掛けます。子どもが自分で考え、どうしても分からないという時に「答えを見てもいいよ」と言います。決して「自分で何とか答えが出せるまでずっと答えを見るな!」とは言いません。一度は自分で考えさせることで、初めから答えを見る癖がつくことは避けられるでしょう。

家庭でテストをすることは少ないですが、問題集を解く時などには“答えを見て学習する”方法が家でも使えます。『ずるい暗記術』(佐藤大和著・ダイヤモンド社)でも、「答えを見て思い出す作業を仕組み化すれば、ラクして覚えられる」という主張があります。

繰り返しますが、いつでも何でも答えを見ていいとは子どもに教えません。「テストでも答えを見ていいんだ」と勘違いさせないようにしましょう。中学、高校、大学入試、就職試験などでは、当然ですが答えを見ることは許されません。子どもが勘違いしないように配慮することが必要です。

子どもが“勘違い”しないための声掛け

  • 「テストだから、お隣さんの答えを見てはいけません」
  • 「一人で黙ってやりましょう」
  • 「消しゴムを落としても、自分で拾ってはいけません。席を立つと他の子の答えを見たと勘違いされるかもしれないからね」

こういった声掛けをしても見てしまう場合は、先に述べたようにそっとしておき、まずは“写す”ことで学習させると考えます。中高学年の子であれば「カンニングは入試や社会に出てからは許されない」という話をしても良いでしょう。

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須貝 誠

東京都小学校準常勤講師・塾講師・ライター。30校以上の教育現場で教えてきた経験があり、進学塾では主に国語を担当。教師が集まる民間教育団体であるTOSS相模原・和(のどか)会員として指導法を学んでいる。https://www.toss.or.jp/

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